問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ?   作:嘉多華

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はいはい。つづきです。そして続きます。・・・ごめんなさい!
私の実力が足りないばかりに、もう少しお付き合いさせてしまいます。
・・・次の話で、終わるといいなぁ
という訳で、本編どうぞ~!


第22話 もうだれにも止められない

 ルイオスはありえない存在を前に呆然としていた。黒ウサギがため息交じりに割って入る。

 

「残念ですが、これ以上のものは出てこないと思いますよ?」

 

「何?」

 

「アルゴールが拘束具につながれて現れた時点で察するべきでした。 ・・・・・・ルイオス様は、星霊を支配するには未熟すぎるのです」

 

「っ!?」

 

 ルイオスの瞳に灼熱の憤怒が宿る。射殺さんばかりの眼光を放つルイオスだが・・・・・・否定する声は上がらなかった。黒ウサギの言葉が真実だからだ。

 

 イオとしては、むしろみなどうして気づいていなかったのかと思うのだが。最初からこのルイオスにそれだけの実力がないことは明らかだっただろうに。

 

 だが、イオ以外にこの惨状をだれが予想できた。数多のギフトで身を固め、さらには世界を石化できるほど凶悪な星霊を従えたルイオスが“名無し”に負けるなど、誰にも予知できまい。

 

「―――ハッ。所詮は七光と元・魔王様。長所が破られれば打つ手なしってことか」

 

 失望したと吐き捨てる十六夜。これで勝敗は決した。黒ウサギが宣言しようとした、その時―――十六夜は、この上なく凶悪な笑みでルイオスを追い立てた。

 

 ―――化け物が隅で準備運動を開始しているのに気付かずに。

 

「ああ、そうだ。もしこのままゲームで負けたら・・・・・・お前たちの旗印。どうなるか分かっているんだろうな?」

 

「な、何?」

 

 不意を突かれたような声を上げるルイオス。それもそうだろう。

 

 彼らはレティシアを取り戻すために旗印を手に入れるのではなかったのか。

 

「そんなのは後でも出来るだろ? そんなことより、旗印を盾にして即座にもう一度ゲームを申し込む。―――そうだなぁ。次はお前たちの名前を頂こうか」

 

 ルイオスの顔から一気に血の気が引いた。

 

 その時、彼は初めて周囲の惨状に目がいったのだ。砕けた宮殿と、石化した同志達に。

 

 だが十六夜は一辺の慈悲もなく凶悪な笑顔のまま尚も続ける。

 

「その二つを手に入れた後“ペルセウス”が箱庭で永遠に活動できないように名も、旗印も、徹底して貶め続けてやる。たとえお前達が怒ろうが喚こうが、コミュニティの存続そのものができないぐらい徹底的に。徹底的にだ。・・・・・・まあ、それでも必死に縋りついちまうのがコミュニティってものらしいけど? だからこそ貶めがいがあるってもんだよな?」

 

「や、やめろ・・・・・・!」

 

 ここで敗北すれば旗印を奪われる。そうなれば“ペルセウス”は決闘を断ることはできない。ましてやこんな壊滅した状態で戦うなど不可能だ。

 

 ルイオスは・・・・・・今になってようやく気が付く。

 

 自分達のコミュニティは今まさに、崩壊の危機に立っているのだと。

 

「そうか。嫌か。―――ならもう方法は一つしかないよな?」

 

 一転して凶悪さを消し、今度はにこやかに笑う十六夜。

 

 指先で誘うようにルイオスを挑発し、

 

「来いよ、ペルセウス。命がけで―――俺を楽しませろ」

 

 獰猛な快楽主義者が、両手を挙げてゲームの続行を促す。彼はまだまだ遊び足らなかった。自らが招いた組織の危機に直面したルイオスは、覚悟を決めて叫んだ。

 

「負けない・・・・・・負けられない、負けてたまるか!! 奴を倒すぞ、アルゴォォォル!!」

 

 輝く翼と灰色の翼が羽ばたく。コミュニティの為、敗北覚悟で二人は駆けるのだった。

 

 ―――だが、それを遮る影が一つ。

 

「残念。ここからは、僕のゲームだ」

 

 パチンと、指を鳴らした音が響く。それと同時に、どういう訳かルイオスの翼が消え去り、そのまま地面を転がる。数メートルほど転がり、そこでようやくルイオスが止まったのを確認してから、原因であるイオは闘技場に舞い降りる。

 

「何のつもりだ、イオ?」

 

「二人だけ楽しんで、ずるいよ。しかも勝手にことを進めるのはもっとずるい。たしかに僕は今回の戦いを十六夜君に任せたけど、その後の事まで自由にしていいなんて一言も言ってないよ?」

 

 十六夜の問いかけを受け、いつものようにニコニコと笑いながら不満の声を上げる。

 

「・・っ! 邪魔を、するな!」

 

 負けられない戦いを横から強引に邪魔されたのだ。怒るのは当たり前だろう。

 

 ルイオスは手に持ったハルパーでイオに切りかかる。

 

「・・・気安く僕に触れるな。三下が」

 

 イオはそれに一瞥だけを向け、クンッと首を軽く捻る動作をする。それだけで、ルイオスの体はまるで縫いとめられたかのようにその場から動けなくなる。

 

「な、なんだ、これは!?」

 

 何が起こっているのか、その場にいるだれもが理解できなかった。

 

「クソ!? アルゴール! そいつを倒せ!」

 

 たとえ動けなかろうが、ここで負けるわけにはいかないルイオスだけは諦めずに戦おうとする。

 

「・・・・・・」

 

 だが、アルゴールはなぜか全く動こうともしない。それどころか、まるでイオに従うかのように彼女の隣に立ち止まる。

 

「ど、どうした! 何をしているアルゴール!」

 

「無駄だよ。これはもう、僕の操り人形だ」

 

 イオはそう言ってアルゴールに向かって手を伸ばす。それと同時に、アルゴールはその体を動かした。

 

「な、イオさん! ダメです、危険です!」

 

 それを見て、無防備に近づくイオに黒ウサギが制止の声をかける。だが、彼女はそれに従わない。

 

「別に、問題ないよ。言ったでしょ? これはもう、ただの人形だ」

 

 心配する黒ウサギを安心させるように、ニコニコと微笑みかける。その言葉通り、アルゴールはイオを襲う事は無かった。まるで主に対する騎士のようにその場に膝を突く。

 

 アルゴールの頭に手を置き、優しくなでるようにしながらイオは話す。

 

「そういえば、まだ僕のギフトについて説明してなかったっけ? いい機会だから教えてあげるよ」

 

 アルゴールに寄りかかるようにして、全員を見れるように振り返る。戸惑うジンと黒ウサギ。無表情の十六夜。状況を飲み込めず、身動きすら封じられてただ焦ることしかできないルイオスを一度見まわしてから、説明する。

 

 説明のためにイエローゴールドのギフトカードを取り出し、そこに書かれたものが少し変わっていることに驚く。

 

 

 (さっき一度使ったからかな。まあいいか。特に気にすることでもないし)

 

 気にせずイオは説明を始めた。

 

「まず、此処にある最初のギフト。蒐集者“コレクター”のギフトだけど・・・」

 

「ちょっと待て、そのギフト、以前白夜叉のところで見た時には別の言葉が入ってたはずだろ?」

 

 十六夜が瞬時に言葉をはさむ。それに若干不機嫌そうになるイオ。

 

 だが、彼の言う通り確かにイオのギフトカードは変化していた。

 

 依桜天燈・ギフトネーム“蒐集者”(コレクター)“魔術師の栄光”“人形師”(ドールマスター)

 

 以前白夜叉のところで受け取った時には、蒐集者のギフトに名前はなかった。だが今は確かに、コレクターという名前が入っている。まるで、何かに修正されたかのように。

 

「さあね。これは僕にもどうしてか知らないよ。今見たら変わってたんだもん」

 

「・・・そうか。悪かったな、邪魔して。そのまま続けてくれ」

 

 なんとなくイオが不機嫌になっているのを察した十六夜はすぐに謝る。なのでイオも機嫌を戻して説明を再開する。

 

「これは文字通り、蒐集のギフト。つまり“奪う”ギフトだ。・・・こんな風にね」

 

 そう言って、イオはその足に輝く翼を作り出す。それはまさに、先ほどまでルイオスが使っていたギフトと同じものだった。

 

「なっ! まさか、ギフトを奪うギフト!? そんなものをどうしてただの人間であるイオが持っているのですか!?」

 

 黒ウサギが叫ぶように声を上げる。ギフトとは与えられるものであり、奪い取るものではない。ギフトゲームなどの正式な契約の上であれば不可能ではないが、その場合はあくまで譲渡という形である。それに何より、そんなギフトがあれば、ギフトゲーム自体が成り立たないことだってあるのだ。

 

「実際にあるんだから、現実を受け止めなよ。まあ実際は、どんなものでも自由自在に奪えるわけではない。奪えるのは一人につき一つだけだ」

 

「それでも―――っ!?」

 

「うるさい。いくらウサギちゃんでも、邪魔しないで。今、せっかく楽しんでるんだからさあ!」

 

 そこでようやく、皆が気付く。十六夜達には見慣れていたはずのその笑顔が、狂気のようなものに満ちていることに。

 

「どうしたんですか、イオさん! こんなのあなたらしく」

 

「僕らしい? 君が僕の何を知っているっていうのかな、ジン君!」

 

 表情は、いつもと変わらない。だが、放たれる威圧感は、これまで感じていたものとは決定的に違っていた。

 

 もはやそこにいるのは、遊ぶことだけしか考えていない化け物だった。

 

 そのままイオは、説明を続ける。誰も口をはさむことは、できそうになかった。

 

「まあ、今はこのギフトは特に関係ないね。さっきのルイオスが地面に落ちた理由を説明しただけだし。今重要なのは別のギフト。今ルイオスを縫いとめているのと、アルゴールを操っているギフトの方が重要だよね。これも、実際に見せた方が早いね♪」

 

 静かになったことをいいことに上機嫌に話していく。奪ったギフトで空を舞うように踊りながら、説明していく。

 

「ここは、我が世界。我が楽園。我が王国! 我が前にその姿を現せ、“人形の楽園”、“魔術師の工房”よ!」

 

 その宣言に意味はない。ただの彼女の気分であり、ただのノリである。

 

 だが確かに、イオの宣言が終わると同時に、世界は文字通り一変する。

 

 眩しい光に世界が飲み込まれ、再び目を開くとそこは闘技場ではなかった、なんていう事は無い。砕けた宮殿の姿は変わらずそこにある。だが、確かに世界は変わっている。

 

 それにいち早く気付いた十六夜が、呟く。

 

「これは・・・糸か?」

 

 それを聞いて、他の三人も気づく。

 

 イオとアルゴールを含めて、その場にいるすべての者たちの体から、糸が伸びていることに。

 

 その糸は、まるで繰り人形“マリオネット”のように全身から出ており、空に向かって何処までも伸びていた。

 

「そう! 糸だよ。これが、僕の“人形師”のギフトの力さ! 人を、物体を、全ての存在を動かしている力。それを、糸という形で世界に具現化する! それを操ることですべての存在は僕の操り人形になるのさ!」

 

 アルゴールから伸びる糸は、イオの手につながっていた。そして、ルイオスの糸も同様に。

 

 イオは狂ったように、ケタケタと表現するような、まるで人形のような笑い声をあげる。

 

「さて、ここからが本題だ! これから、十六夜君には僕と戦ってもらいます!」

 

「「「なっ!?」」」

 

 唐突な宣言、その内容に十六夜、黒ウサギ、ジンの三人は驚きの声を上げる。それもそうだろう。なぜこの流れでイオと十六夜の二人が戦うのか、理解すらできない。

 

 だが、イオの表情には嘘や冗談を言っているようには見えない。ゆえに、代表として、リーダーとして、ジンが問いかける。

 

「ど、どうしてお二人が戦うのですか?」

 

「どうして? そんなの、面白そうだからに決まってるでしょ?」

 

「な!? そ、そんな理由で―――!?」

 

「うるさいよ」

 

 イオが軽く手を振る。それだけでジンの体から伸びていた糸がイオの手に握られた。それだけで、ジンは身動き一つとれなくなる。

 

「ついでだ。ウサギちゃんにも邪魔させないよ」

 

 黒ウサギにも同じように、操る。そこは最早、完全にイオに支配された空間だった。

 

「おいおい、本気、なのかよ?」

 

 さすがの十六夜も、冷や汗をかいて戸惑う。そもそもなぜこんな展開になるのか理解できない。

 

「本気だよ。まあ、実際に戦うのは僕じゃなくて、このアルゴールだけどね」

 

 イオに操られたアルゴールが、イオの前に立ち、十六夜と対峙する。彼女は、本気だった。

 

「十六夜君もつまらなかったんでしょ? それは僕だって同じだ。だからさ、一緒に楽しもうよ!」

 

「―――っ!」

 

 十六夜は、思い出す。これまでのイオが行ったデタラメな出来事を。

 

 イオは、おそらく自分よりも強い。実際に戦った事は無いが、醸し出す雰囲気、これまでのデタラメな行動を見ていると、そう思った。

 

 元・魔王であるアルゴールの力は期待していたものとは違った。だが、イオがそれを操るというのなら、おそらく先ほどとは違い手ごわい相手となるだろう。もしかしたら、いや、自分では勝てないかも知れない。

 

 十六夜の感じる、イオという存在はそれほどまでに大きいものだった。

 

 だから、

 

「―――ああ、そうだな。やろうぜ!」

 

「十六夜さん!? 何を言っているのですか!」

 

「うるせえ黒ウサギ。こんなおもしれえ状況、めったにあるもんじゃねえんだ。邪魔すんな!」

 

 快活に笑う十六夜に、そもそも身動きの取れない黒ウサギは何も出来ず、何も言えなくなる。

 

 そして察する。この二人は、もう止められないと。

 

(この、問題児様方は・・・!!!)

 

 心の中で毒づくのだった。

 




本当にどうしてこんなに長くなったのか。まあ私の腕が悪いせいなんですけどね?
それでも、やっぱり自分で考えた話はどうしても頑張ってみたくなりますね。
本当に申し訳ないですが、もう少しお付き合いいただけると幸いです。
それではまた来週も読んで下さると嬉しさで泣いてしまいます。
どうか、来週は予定通りに終わりますように…!
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