問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ? 作:嘉多華
もはや完全に不定期更新になりかけていますが、それでも消して書くことはやめるつもりはありません。気長に待って下さると助かります。
それでは、本編の続きをどうぞ~♪
まだ十六夜や天燈達が北へ向かう前の早朝。イオはただ一人でサウザンドアイズに来ていた。
「お帰り下さい」
ついて早々に十六夜達同様、割烹着姿の女性店員に門前払いを受けていた。
実はイオは、課金のため以外にも白夜叉の友人として何度も訪れている。黒ウサギに着せる衣装についての話し合いやイオの作った衣装を二人で確認をしたりなど、割と入り浸っていた。
そのたびにこうして何度も同じような対応をされてきた。
いつものようにニコニコとした笑顔で、傘を持った手を後ろ手に組む。軽く身を乗り出し、古首を傾げてイオは女性店員に言う。
「そろそろ僕の事毎回追い返そうとするのやめてほしいなぁ? これでも常連さんだよ?」
「何時も何時も勝手に忍び込んでいるくせに、何を言うのです」
「忍び込むなんて酷いな~♪ 一応白ちゃんの許可はもらってるんだけど?」
ちなみに、白ちゃんとは当然白夜叉の事である。そんな風に呼ぶ程度には、二人は仲良くなっていた。
女性店員は竹箒を片手に八重歯を剥きながら唸り、叫ぶように、
「それでも、何度も申しているように、うちの店は! “ノーネーム”御断りです!」
いつものように、彼女は決して引き下がろうとしない。だから何時も忍び込むことになっているというのに。
はあ、とため息を一つ。いい加減このやり取りを面倒に感じてきた。これから先も何度も訪れることになるのに、いつまでもこんな対応をされ続けるとなると思うと気が滅入る。
そう思ってしまったイオがやることは、
「もう、いいや」
「―――え? っ・・・!?」
いつものニコニコとした笑顔を無くし、冷たい無表情をしたイオがパチンと指を一つ鳴らす。女性店員はそこで意識を失った。
☆ ☆ ☆
「どうしたの? 大丈夫?」
「ん、んん・・・?」
体を揺さぶられる感覚に、少しずつ意識を取り戻す。自分が何故意識を失っていたのか分からず、それでもこのままとはいかないので目を開けると、
「・・・わっ!?」
すぐ目の前にイオの顔があった。
どうやら倒れていた彼女を抱きかかえていたらしく、女性店員は慌てて身を起こした。
しかし、急に起き上ったせいか眩暈がし、体勢を崩してしまったところをもう一度イオに支えられてしまう。
「っと、駄目だよ。あまり無理しちゃ」
「す、すみません。ありがとうございます」
「いきなり倒れたからびっくりしたよ」
「すみません・・・。でも、大丈夫です」
今度は落ち着いて立ち上がる。今度はふらつくこともなかった。
本当に何故倒れてしまったのか分からない。ちゃんと休養だってとっているし、疲れがたまっているわけでもなかった。それに、いったいいつ倒れたのか―――
「ん~・・・」
考え込んでいる女性店員に近づいたイオがいきなりその両手で顔を包み、こちらの顔をじっと覗き込んできた。
「にゃ、にゃに・・・!? いきなり何をしているんですか!?」
「・・・うん。大丈夫そうだね♪」
「え?」
「きっと少し疲れがたまってたんだろうね。念のため今日は少し早めに休んだ方がいいよ♪」
両手を離して一歩後ろに下がったイオが、微笑んで告げる。女性店員は赤くなった顔を覚ましながら小さく頷く。
「余計な心配をおかけして申し訳ありません」
「そんなの別に構わないよ~♪ それじゃ、ボクは白ちゃんの所に行かせてもらうね」
頭を下げて謝る女性店員にそう告げてイオは店の中に入っていく。それを見送った女性店員は再び店先の掃除を再開させる。
「・・・そういえば、どうしてイオ様を呼び止めていたのでしょうか?」
最後にそんな疑問が浮かんだが、すぐ必要ないと考えるのをやめた。
☆ ☆ ☆
もはや勝手知ったる人の店といった感じで、店を通らず白夜叉の座敷に向かう。そこそこ大きなコミュニティであるのに、その内容には一切興味がないとでもいうかのように、ワイワイとにぎわう喧騒を無視する。
「あまり無茶なことは控えてもらえんかの?」
返事も聞かずに白夜叉の座敷に入ったイオに、白夜叉は開口一番にそういった。
「無茶なことって?」
「・・・はあ。まあ、大きな被害があるという訳でもないか」
何のことか本当にわからないと首を傾げるイオに、ため息を吐いて仕方なくそれ以上は何も言わないことにする。
「にしても、お主一人だけか? てっきり全員で来るものと思っておったが・・・」
「ああ、招待状なら読んでないよ。ここに来た理由は聞きたいことがあったからだよ」
「聞きたいこと? ふむ、私とお主の仲だ。答えられる範囲であれば何でも聞くがいい」
「ん、ありがと白ちゃん♪」
いえーいと、意味もなくハイタッチする二人。出会ってまだそこまで経っていないにもかかわらずもはや長年の友人のようだった。
一通りはしゃいだ後。二人は話を戻すために座り直す。そのまま何事もなかったかのようにイオが聞く。
「聞きたいことっていうのは、“火竜誕生祭”が行われる場所の正確な位置と距離について」
「・・・お主、本当に招待状は読んでおらんのか?」
「うん。読んでないのはホント。でも、書かれている内容は予想できたけどね。僕が知っていたのは、別の情報源から仕入れたからだけどね♪」
以前垣間見えた未来の映像。それについて自分で調べ、たどり着いたのが“火竜誕生祭”と言う事だった。
なぜ招待状の内容を予想できたのかは、未来の映像の中に“ノーネーム”のメンバーが見えたから。そこまで分かれば後は簡単だ。
「そこまで分かるのなら、自分でっ調べることもできたのではないのか?」
「ん~、確かにできない事は無い、んだけどね。今から調べると時間がかかるし、白ちゃんに聞けばすぐにわかるから。あと、ちょこっとだけ教えておきたいこともあったから」
なるほどと白夜叉は頷く。
その後、此処から北側までおおよそ98000kmであること。都市がある外門の位置などを白夜叉からある程度教えてもらい、イオは考えをまとめるように目を閉じ、そのまましばらく動かなかった。どうかしたのかと白夜叉が口を開こうとしたとき、
「・・・うん。見えた」
小さくそう呟く。
「見えたと言う事は、例の見たいものを見ることが出来るというギフトか?」
「うん。見たいものが見れると言っても、正確な距離とかは見ただけじゃわからないからね。移動するにしてもどういったルートになるかとか知っておきたかったし・・・。でもこれじゃあ走っていくのは面倒だね」
「だろうな。もうしばらく待っておれ。他の奴らがついたら一緒に送って―――」
「それは無理なんだ」
白夜叉の提案を遮る。これからイオがやろうとしていることは、十六夜達と一緒であると少々不都合がある。
時間ももうあまりない。先ほど天燈達が此処に向かって移動し始めるのが見えた。このままだとここで鉢合わせてしまう。
「ここまで分かれば後は自力でいくよ。それじゃあね♪」
「待たんか! お主一体何をしようとしている!」
「ごめんね。それはちょっと教えられないかな」
引き留めようとする声を無視して立ち上がり、イオは座敷の扉に手をかける。
そこで言い忘れていたことを思い出し、少し慌てて振り返る。
「そうだ、忘れるところだった! もう少ししたら、もう一人の僕がここに来るだろうから、もし何か聞かれたら出来る範囲でいいから教えてあげて! じゃあ、行ってきます♪」
「待たんか! そもそもどうやって行くつもり―――!」
言うだけ言ってさっさと走り出すイオを追いかけ白夜叉も座敷を出るが、そこにはもうイオの姿は無かった。
いったいどうやって、一瞬で自分に気づかれずに移動したというのか。
(本当に、末恐ろしい奴だ。・・・本当に、人間なのか?)
気配すらもうつかめない以上、探したところで意味は無いだろう。それに、どうやら他の問題児達もここに来たようだ。
「しょうがない。今はあ奴らを向かいに・・・うん?」
店の入り口に向かおうとしたところ、中庭に何が落ちていることに気づく。その何かを拾い上げると、それは人形だった。どこにでもあるような綿の詰まった人形。それがなぜこんなところに落ちているのか。
気にはなったが、いい加減迎えに行かなければいつまでも入ることもできないだろうから、その人形は座敷の中に置き、白夜叉は問題児たちの元に向かうのだった。