問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ?   作:嘉多華

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最近本当に執筆ペースが落ちてる…。何とかもう少し上げないとですね。



第33話 予言

 時間は少し進み、十六夜と黒ウサギの追いかけっこに決着がついた後の事。

 

「わはは。こりゃまた、随分と派手にやったみたいだなぁ、十六夜君?」

 

 天燈は壊れた時計塔の残骸を見ながらゲームの決着についてあれこれ言い争って言る二人に向かっていう。

 

 十六夜は、てっきり自分よりももっとうまく逃げているものだと思っていた天燈がわざわざ黒ウサギの前に現れたことに、黒ウサギは、

 

「天燈さん…? あれ、今日はイオさんではないのですか…? って、それよりも、ようやく見つけたのですよ!」

 

 まずイオではなく天燈であったことに戸惑い、続いて先ほど姿を見つけることが出来なかった天燈をようやく見つけたことで、絶対に逃がさないようにと意気込む。

 

「もう逃がさない――「別に逃げねえけど?」――のですよ…って」

 

 言葉の途中に挟み込まれたセリフを聞いて戸惑う。

 

「えーっと、・・・今なんと?」

 

「だから、別に逃げないって。そもそも俺最初から逃げてないし」

 

 事実本当に天燈は逃げてない。最初から黒ウサギ達が“サウザンドアイズ”の支店に帰ってくるのを待っているつもりだったのだが、街の方で何やら二人が面白そうなことをしているのを感じ取ってこうして捕まるついでにやって来たのだ。

 

「その言葉、信じていいのですね?」

 

「疑り深いなぁ全く。ならほれ、とりあえず一度捕まえとけ~」

 

 ガシガシと面倒そうに、だが相変わらずにやにやと楽しそうに笑いながら黒ウサギに向かって手を伸ばす。

 

 そんなこと言って、本当は逃げるのではないかとまだ疑っている黒ウサギは、天燈の動きを注意深く観察しながら近づいて、宣言通り全く逃げることなくその腕をつかまえることが出来たことに驚く。

 

「ほ、本当に逃げなかった…」

 

「だから言ったろ。別に逃げねえって」

 

 すみませんと、素直に謝る黒ウサギ。しかし、そう思われるような態度をいつもしている天燈やイオに問題がないわけでもない。だから天燈もそれ以上は何も言わない。

 

「あ、そうです! 天燈さんにお願い、というよりはイオさんの方にお願いがあります。この壊れた時計塔を何とか直してもらえないでしょうか? さすがにここまで酷い惨状だと…」

 

 黒ウサギは天燈の手を掴んだまま、後ろに広がる惨状、破壊された時計塔の残骸を指し示す。示された光景を改めて眺めた天燈が、

 

「あー、そりゃ無理だ」

 

「…そうですよね。やっぱりいつも通り直してくれるわけないですよね」

 

 自分から聞いておきながら全く期待していなかった黒ウサギ。かっくしと肩を竦める黒ウサギに、天燈が初めて表情に申し訳なさそうなものを浮かべた。

 

「そういう訳じゃなくてだな…あー、まあ今言っちまっていいか。今の俺とイオは完全に別れてるんだ」

 

「別れてる、だと? そいつは一体どういう事――」

 

「そこまでだ貴様ら!!」

 

 空気を読まず、大事な話を切り出そうとしたタイミングで邪魔が入る。

 

 三人の周りには炎の龍紋を掲げ、蜥蜴の鱗を肌に持つ集団が集まっていた。“サラマンドラ”のコミュニティが、騒ぎを聞き付けて来たらしい。黒ウサギは痛烈に痛そうな頭を抱え、両手を上げて降参するのだった。

 

 

   ☆ ☆ ☆

 

 

「随分と派手にやったようじゃの、おんしら」

 

「ああ、ご要望通り祭りを盛り上げてやったぜ」

 

「胸を張って言わないで下さいこのお馬鹿様!!」

 

 スパァーン!と黒ウサギの振るったハリセンの音が鳴り響く。その後ろでジンはやれやれと額を押さえて首を左右に振っていた。

 

 二人と、巻き添えで連れてこられた天燈は、運営本陣営の謁見の間まで連行されてこられた。

 

 白夜叉は必死に笑いを噛み殺して、真面目な姿を装う。

 

 そして、一同の目の前にいる真紅の髪を頭上で結いった幼い少女が、竜の純血種。星海龍王の龍角を継承した、新たな“階層支配者”。炎の龍紋を掲げる“サラマンドラ”の幼き頭首で今回の誕生祭の主催であるサンドラである。

 

 サンドラの側近らしき軍服姿の男が鋭い目つきで前に出て、高圧的に見下す。

 

「ふん! “ノーネーム”の分際で我々のゲームに騒ぎを持ち込むとはな! 相応の厳罰は覚悟しているか!?」

 

「これマンドラ。それを決めるのは頭首のサンドラであろ?」

 

 白夜叉がマンドラと呼ばれた男を窘める。

 

 サンドラは謁見の間の上座にある豪奢な玉座から立ち上がり、三人に声を掛けた。

 

「“箱庭の貴族”とその盟友の方。此度は“火龍誕生祭”に足を運んでいただきありがとうございます。時計塔の一件ですが、白夜叉様のご厚意で修繕してくださいました。負傷者もいなかったため、この件に関しては不問とさせて頂きます」

 

 チッと舌打ちをしたマンドラ。意外そうに十六夜が声を上げる。

 

「へぇ、太っ腹なことだ」

 

「うむ。おんしらは私が直々に要請した協力者だからの。何より怪我人が出なかったことが幸いした。前金とでも思っておけ」

 

 ほっと胸を撫で下ろす黒ウサギ。十六夜は軽く肩をすくませた。

 

(随分とまあ、気前のいいことだ。でもまあ、これだけで俺達のコミュニティに頼みたいことってのは大体理解できたな…)

 

 同時に、イオがどこにいるのかも大体予想がついた。何をしようとしているのかはまだ曖昧なままだが。

 

「……ふむ、いい機会だしこの場で昼の続きを話しておこうかの」

 

 白夜叉が目配せをし、サンドラも同士を下がらせる。マンドラだけは残って。この場に残ったのは彼ら覗いて十六夜・黒ウサギ・天燈・ジンの四人だけだ。

 

 サンドラは人が居なくなると、固い表情と口調を崩して年相応の少女らしく愛らしい笑みを浮かべてジンに駆け寄った。

 

「ジン、久しぶり! コミュニティが襲われたと聞いて随分と心配していた!」

 

「ありがとう。サンドラも元気そうでよかった」

 

「ふふ、当然。魔王に襲われたと聞いて、本当はすぐに会いに行きたかったんだ。けどお父様が急病や継承式の事があって…」

 

「それは仕方ないよ。でもあのサンドラがフロアマスターになっていたなんて―――」

 

「その様に気安く呼ぶな、名無しの小僧!!!」

 

 二人の会話を聞いていると、マンドラが獰猛な牙を剥き出しにし、台頭していた剣をジンに向かって抜こうとする。なのでとりあえず天燈はその剣を先に奪っておく。

 

「たく、止める気のない脅しは止めてもらいたいね」

 

「ふざけるな! サンドラはもう北のマスターになったのだぞ! 誕生祭も兼ねたこの共同祭典に“名無し”風情を招き入れ、恩情を掛けた挙げ句、馴れ馴れしく接されたのでは“サラマンドラ”の威厳に関わる! この“名無し”のク――」

 

「そこまでにしておけ? じゃねえと…どうなってもしらねぇぞ?」

 

 マンドラが最後まで言い切る前に、天燈が奪った剣に手を掛ける。

 

「おい、天燈。俺が我慢してやったんだ。先に手を出すんじゃねえぞ?」

 

 そこに横から十六夜まで加わり、その場の空気が一触即発なものになる。

 

 さすがにこのままだと不味いため、慌ててサンドラが止めに入る。

 

「マ、マンドラ兄様! 彼らはかつての“サラマンドラ”の盟友! 此方から一方的に盟約を切った挙句にその様な態度を取られては、我らの礼節に反する!」

 

「礼節よりも誇りだ! そんなことを口にするから周囲から見下され、」

 

「これマンドラ、いい加減に下がれ」

 

 呆れた口調で諌める白夜叉。しかし尚も食ってかかるマンドラ。

 

「“サウザンドアイズ”も余計な事をしてくれたものだ。同じフロアマスターとはいえ、越権行為にも程がある。『南の幻獣・北の精霊・東の落ち目』とはよく言ったものだ。此度の噂も、東が北を妬んで仕組んだ事ではないのか?」

 

「マンドラ兄様ッ! いい加減にしてください!!」

 

 見かねたサンドラが叱りつける。

 

 しかし、事情を知らない一同は首を傾げる。

 

「噂って何のことだ? 俺達に協力して欲しいことと関係があるのか?」

 

「ま、魔王さんが来るって事だろ?」

 

「うむ、この封書におんしらを呼び出した理由が書いてある。己の目で確かめるがいい…って、なぜ知っておる!?」

 

「そんなのどうだっていいだろ。それよりも十六夜君は早く封書見てみ~」

 

 十六夜達だけでなく、その場の全員が怪訝な表情を浮かべる。言われた通りに、手紙を受け取った十六夜が、内容に目を通す。

 

 

『火龍誕生祭にて、〝魔王襲来〟の兆しあり』

 

 

「ほ、本当に天燈さんの言った通り…」

 

「正直意外だぜ、てっきりマスターの跡目争いとかそういう話かと思ってたんだがな」

 

「内容を聞かずに引き受けたのはおんしらだからな。謝りはせんぞー」

 

「違いねえ。……で、俺達は何をすればいい? 魔王の首を取れっていうなら喜んでやるぜ? つーか、この予言は当たるのか?」

 

「まず間違いなかろう。なんせ送り主はラプラスの悪魔だ」

 

「あの、予言ですべてを見通すという…!?」

 

 白夜叉が言葉に、黒ウサギが驚いて返す。

 

「うむ。ここには魔王襲来の事実しか書かれておらぬが、だが奴の事だ。おそらく魔王を呼び込む犯人も突き止めているのだろう」

 

 白夜叉の言葉に、マンドラが食ってかかる。

 

「我々を愚弄するつもりか。犯人を知りながら魔王襲来の事しか教えぬと…!」

 

「兄様!」

 

 それをサンドラが止めて、そこに横から十六夜が口をはさむ。

 

「事件の発端に一石投じた主犯は分かっているが、その人物の名前は出せない。つまりそれは、口に出すことができない立場の相手ってことか」

 

 ハッと声を漏らしたジンが、サンドラを見る。

 

『幼い権力者をよく思わない組織が在る』。その人物がもしその人物であるというのなら、

 

「まさか……他のフロアマスターが魔王と結託して?」

 

 ジンの言葉が静かな謁見の間に響く。

 

 白夜叉は悲しげに嘆息し、首を左右に振る。

 

「まだわからん。しかし、サンドラの誕生祭に他のマスター達が非協力的だった事は認めねばなるまいよ」

 

「その理由が〝魔王襲来〟に深く関与しているのであれば、それは一大事です」

 

 唸る白夜叉と、絶句する黒ウサギ達。…そして、実にどうでもよさそうに欠伸をしている天燈。

 

 十六夜は一人、どうしても得心がいかずに首を傾げる。

 

「それ、そんなに珍しいことか?」

 

「へ!?」

 

「珍しいも何も、最悪です。フロアマスターは魔王から下位のコミュニティを守る、秩序の守護者。防波堤なんです」

 

「けど所詮は脳味噌のある何某だ。秩序を預かる者が謀をしないなんてのは、幻想だろ?」

 

 彼のいた世界ではそうだった。秩序や政を預かる者が道を踏み外すことなどさほど珍しい話ではない。なんとなくそれを察した白夜叉は、静かに瞳を閉じて首を振る。

 

「なるほど、一理ある。しかしなればこそ、我々は秩序の守護者として正しくその何某かを裁かねばならん」

 

「けど目下の敵は、予言の魔王。ジン達には魔王のゲーム攻略に協力して欲しいんだ」

 

 サンドラの言葉に合点がいったという顔で、天燈を除いた一同は頷く。

 

 魔王襲来の予言があった以上、これは新生“ノーネーム”の初仕事だ。

 

 ジンは事の重大さをしかと受け止め、重々しく承諾した。

 

「わかりました、“魔王襲来”に備え“ノーネーム”は両コミュニティに協力します」

 

「うむ、すまんな。だがこれも、箱庭の秩序を守る為。いずれ主犯には相応の制裁を加えると誓おう」

 

「“サラマンドラ”も同じく………ジン頑張って! 期待してる!」

 

「…うん」

 

 緊張した面持ちのジンに、白夜叉は硬い表情を一変させ、哄笑を上げた。

 

「そう緊張せんでもよいよい! 魔王はこの最強のフロアマスター、白夜叉様が相手をする故な! おんしらはサンドラと露払いをしてくれればよい」

 

 扇を広げ、呵々大笑する白夜叉。

 

 しかしながら、十六夜はスッと目を細めて不満そうな表情を浮かべる。

 

 それに気がついた白夜叉が、口元を扇で隠しながら苦笑を向けた。

 

「やはり、気に食わんか? 小僧」

 

「いいや? 魔王がどの程度か知るにはいい機会だしな。だが別に、何処かの誰かが偶然に魔王を倒しても、問題はねぇよな?」

 

 挑戦的な笑みを浮べてる十六夜に、白夜叉は呆れた笑いで返す。

 

「よかろう。隙あらば魔王の首を狙え。私が許す」

 

 その後、謁見の間で魔王が現れた時の段取りを決めて過ごした。

 

 




次はなるべく予定通りにあげられたらいいのですが…とにかく頑張ります…!
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