問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ? 作:嘉多華
の前に、ここらで天燈ちゃんの容姿を簡単に説明したいと思います。
見た目の年齢はおよそ14歳程度と割と小さ目。ひざ裏までの長い黒髪をツインテールにしたゴスロリ服の少女。主な武器として頑丈な傘を使う子です。今明かせるのはこの変かな?
そのほかのもろもろは後々明かしていくのでどうぞお楽しみに。
今度こそ、本編へどうぞ~
しばらく天燈のマジックに驚いて呆けていた黒ウサギはふと思い出す。
「って、そうじゃありませんよ、このおバカ様!」
「はうっ!」
慌ててどこからか取り出したハリセンを使って天燈の頭を叩いた。
「いきなりなにするのよぅ。痛いじゃない、ウサギちゃん」
本当に痛かったらしくうっすらと涙を浮かべた瞳で抗議する。黒ウサギはそれに取り合うことなく続ける。
「どうもこうも、これは黒ウサギとお三方のゲームであって、あなた様は参加しないと言っていたではないですか! それなのにどうして邪魔するのですか!」
「別にいいじゃない。どうせあのまま続けてたら三人の勝ちだったんだし。それに、現に三人とも今絵札を持っているんだから三人の勝ちでしょ?」
「確かに絵札を手にしていますけれど、それはあなたが引いたカードじゃないですか!」
「別にルール違反でもないんだから問題ないと思うよ。今みんなが持っているのはあの時テーブルに並んでいたカードだし、ルールではカードの中から一枚選んで、絵札だったら勝ちなんだから。ちゃんと二人は降ってきたカードの中から一枚選んで、逆廻くんも自分でカードをめくったんだからそれはみんなが選んだカード。ちゃんとルールに沿った結果だよ。どうしても疑うっていうんならご自慢の目と耳で確かめてみたら?」
「な! ・・・・・・わかりました。しかし、それがルール違反だった場合はそれなりの覚悟をしてください」
「いいよ。問題ないもん」
黒ウサギは確認する。
「そんな・・・!?」
「どうだったんだ?」
十六夜が代表して突然大声を上げた黒ウサギに質問した。
「箱庭の中枢から有効であるとの判定が下されました。皆さんクリアです」
信じられないとうなだれる黒ウサギ。でも悪いのはルールを決めるときにちゃんとどんな形であろうともイカサマをした場合は負けとする、と決めていなかったのが悪い。
「ほらね。僕の言ったとおりでしょ?」
「・・・・・・はい」
「もし次があったときは今度はちゃんとルールを決めておかないとだめだよ。じゃないと次も同じようにイカサマされてどんな命令されるかわからないからね♪」
「はい。そうします・・・・・・。でも、それはあなた様もですよ!」
「? 何が?」
「今回は問題ありませんでしたが、次からはこんな無茶苦茶なことはしないでください!」
何を言っているのかわからないと首をかしげる天燈。別に無茶苦茶なんて言うようなことじゃないと思うんだけどなぁ。ちゃんとルールに従っているんだし。
「ん。了解了解。次からは気を付けるね」
「まったく、本当に気を付けてくださいよ・・・・・・?」
「で、勝負は俺たちの勝ちなんだよな? だったらこっちの命令を聞いてもらおうか」
それまで静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。
ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていること、視線が鋭さを増したことに気がついた黒ウサギは、構えるように聞き返した。
「だ、ダメですよ! 性的なことは」
「ま、それも魅力的ではあるんだが、そんなのはどうでもいい。俺が聞きたいのは・・・・・・ただ一つ―――」
「な、なんですか?」
十六夜は視線を黒ウサギから外し、他の三人を見回し、巨大な天幕によって覆われた都市に向けた。
彼は何もかもを見下すような視線で一言、
「この世界は・・・・・・面白いか?」
他の三人も無言で返事を待つ。
彼らを呼んだ手紙にはこう書かれていた。
『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。
それに見合うだけの催し物があるのかどうかが三人+αにとって重要なことであった。
黒ウサギは一瞬目を瞬かせると、笑顔で言った。
「―――YES。『ギフトゲーム』は人を超えたものたちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
☆ ☆ ☆
その後、黒ウサギに連れられて問題児たちが箱庭と呼ばれる天幕巨大都市に向かっていた。その途中で十六夜が不意に天燈に向かって話しかけてきた。
「なあ、オマエ」
「ん、何かな? 逆廻くん」
相変わらずのオマエ呼ばわりだが、天燈は飛鳥のように変なプライドなんて持ち合わせていないので特に気にすることもない。そんな姿を見て十六夜は面白いというようにわずかに表情に笑みを浮かべる。
「これからちょっくら世界の果てにでも行ってみようと思うんだが、一緒にどうだ?」
「あらあら、わざわざ僕の事を誘うだなんて。もしかしてそれはデートのお誘いかな?」
おどけて見せる天燈の返答に、
「まあ、そんなところだ」
十六夜もおどけた態度で返す。
その返しが予想外のものだったのか、一瞬目を丸くした天燈はクスス、と笑みをこぼしてしまう。
「ふふ、随分と魅力的なおさそいだね。でもごめんね。今回は遠慮させてもらうよ」
「そいつは残念」
最初から断られると思っていた十六夜も特に残念とも思っていないような態度だった。
「もし次があるようなら、その時は一緒にデートしてあげてもいいよ」
「ヤハハ、まじでかそれ。んじゃ、次の機会を楽しみにしてるぜ」
天燈は十六夜の態度を見て笑みを深める。チャンスを与えると言うと今度は割と嬉しそうに十六夜は笑うのだった。
「んじゃ、ちょっと世界の果てを見てくるぜ!」
飛鳥と耀にも聞こえるように、でも黒ウサギには聞こえないように少し声を大きくして言うと十六夜は歩くのをやめ、宣言通りに反対方向へと向かっていった。
「いってらっしゃーい!」
気楽に手を振って見送る天燈と、呆れたように見送った二人は、それを黒ウサギに伝えることなく目的地まで向かった。
「ジン坊ちゃーン! 新しい方を連れてきましたよー!」
階段で待っているローブを着た少年に黒ウサギが話しかけた
「お帰り、黒ウサギ。そちらの御三方が?」
「はいなこちらの御四人様が―――」
黒ウサギがクルリ、と三人を振り返り、
「・・・・・・・・・え、あれ?」
カチン、と固まった。
やっぱり、黒ウサギの反応は面白いな。こうも思い通りの反応をされると、もっともっといじめたくなっちゃう。などと天燈が思っているとも知らずに黒ウサギは再び動き出す。
「もう一人いませんでしたっけ? ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児”ってオーラを放っている殿方が」
「ああ、十六夜君のこと? 彼なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”と言って駆け出していったわ。あっちの方に」
あっちの方に。と飛鳥があっさりと指差すのは上空4000メートルから見えた断崖絶壁。
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「“止めてくれるなよ”と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「“黒ウサギには言うなよ”と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です! 実は面倒くさかっただけでしょう皆さん!」
「「うん」」
ガクリ、と黒ウサギが前のめりに倒れる。三者三様の反応に心から面白いという風に天燈は笑うのだった。
そんな黒ウサギとは対照的に、ジンと呼ばれた少年は顔を蒼白にして叫ぶ。
「あはははは! はあ、ほんとみんな面白いね」
「ぜんっぜん、面白くなんてありませんよ! た、大変です! “世界の果て”にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が――」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て”付近には強力なギフトを持ったものがいます。出会ったら最後、とても人間には太刀打ちできません!」
「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?・・・・・・斬新?」
「あはは、二人とも辛辣だねぇ」
「冗談を言っている場合じゃありません!」
ジンは必死に事の重大さを訴えるが、二人は叱られても肩を竦めるだけである。天燈に至ってはずっとにこにこしているだけだった。
黒ウサギはため息を吐きつつ立ち上がった。
「はあ・・・・・・ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、皆様の御案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒ウサギはどうする?」
「問題児を捕まえに参ります。事のついでに―――“箱庭の貴族”と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやりますよ」
悲しみから立ち直った黒ウサギは、これまで問題児たち、主に天燈によってたまりにたまった怒りのオーラを全身から噴出させ、つやのある黒い髪を淡い緋色に染めていく。
「きゃあ! 何それなにそれ、カラーチェンジ? 三倍速くなったりするの?」
その姿に一人だけ嬉しそうにはしゃぐ天燈を無視して、外門めがけて空中高く跳び上がった黒ウサギは外門の脇にあった彫像を次々と駆け上がり、柱に水平に張り付くと、
「一刻程で戻ります!皆さんはゆっくりと箱庭ライフをご堪能ございませ!」
全力で跳躍した黒ウサギは弾丸のように飛び去り、あっという間に四人の視界から消え去っていった。
巻き上がる風から髪の毛を庇う様に押さえていた飛鳥が呟く。
「・・・・・・。箱庭の兎は随分早く跳べるのね。素直に感心するわ」
「ウサギたちは箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが・・・・・・」
飛鳥はそうとから返事をすると、心配そうにしているジンに向き直った。
「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」
「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。皆さんの名前は?」
「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱き抱えているのが」
「春日部耀。こっちの傘を持っているのが」
「依桜天燈だよ。よろしくね、小さなリーダーさん?」
ジンが礼儀正しく自己紹介する。飛鳥、耀、天燈もそれに倣う。
「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」
飛鳥がジンの手を引いて外門をくぐり、二人もそれについていくのだった。