問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ?   作:嘉多華

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気分が乗ったから、2話連続での投稿です。
この話から、天燈ではなく、イオの表示で行きますので、間違えないように。


第5.5話 イッツショータイム!

 宣戦布告を終えて、ただ黒ウサギたちを待っていてもツマラナイ。と言う事で、

 

「イオちゃんの簡易マジックショー! どんどんパフパフ~」

 

 場所はカフェテラスのテーブルの上。ガルドはすでにここからいなくなっている。

 

「ふふ、今度はどんなマジックを見せてくれるのかしら?」

 

「・・・楽しみ」

 

 飛鳥と耀は先ほどイオのマジックを見ているため、その腕前を知っているが、彼女の腕前を知らないジンは二人に質問する。

 

「そんなにすごいんですか?」

 

「ええ、私たちはさっき一度見せてもらったから。きっとすごいものが見られるわよ」

 

「へえ、それは楽しみです!」

 

「いや~、今回はお店の中だし、そんなに派手なことはできないよ? まあ、できるだけ楽しいマジックをするつもりだけどね♪」

 

 飛鳥に褒められたのが照れ臭く顔を赤くして頬をかく。

 

「さて、それではみなさん、こちらにご注目!」

 

 イオはそう言って手元にトランプを取り出す。

 

「ここにあるのは何の変哲もないただのトランプです。今回はこれを使って簡単なマジックをしようと思います」

 

 ちゃんとカードの表を見せて普通のトランプであることを確認してもらう。

 

「それじゃあ、これをジン君にシャッフルしてもらおうかな」

 

「ぼ、僕ですか?」

 

「うん。できるだけしっかりと、気が済むまでシャッフルしてくれて構わないから」

 

「わかりました」

 

 トランプを受け取ったジンは少し緊張した様子でカードをシャッフルしていく。イオはそれをにこにこと眺めている。

 

 シャッフルし終えたトランプをジンから受け取る。

 

「それじゃあ今度は、シャッフルされたこのトランプをテーブルの上において、飛鳥ちゃん!」

 

「なにかしら?」

 

「この中から好きなカードを一枚引いて、私に見えないように確認してもらえるかな?」

 

 言われた通りにこちらに見えないように一枚選び確認する。

 

(ハートのAね)

 

「ちゃんと確認できた?」

 

「ええ、大丈夫よ」

 

 うんうんと満足そうに頷き、イオは続ける。

 

「実はワタシ、飛鳥ちゃんがなんのカードを選ぶのか最初から分かっていました! という訳で耀ちゃん! 三毛猫君の首輪を確認してみてくれる」

 

 言われた通りに調べると、そこには一枚の紙が挟まっていた。

 

「いつのまに?」

 

「うーんと、耀ちゃんがガルドを止めようとしたのを僕がとめた時?」

 

 その時からこのマジックをやるつもりでいたらしい。用意周到だった。

 

「という訳で、耀ちゃんはそこに書いてある文字を読んでもらっていいかな?」

 

「・・・『飛鳥ちゃんは絶対にきっとおそらくたぶん、ハートのAをひくでしょう!』、って書いてある」

 

「すごいわ。あたりよ」

 

 パチパチと、店員やほかの客も含めたその場の全員が歓声を上げる。

 

「とまあ、これは有名な予言のマジックだね。二人ともごめんね、今回はこんなつまらないマジックしかできなくて」

 

「そんなことないわよ。十分楽しめたわ」

 

「・・・耀ちゃんは?」

 

「私も楽しかった」

 

「・・・あはっ! ありがとね、二人とも」

 

「本当にすごいですね。そういった予言のマジックって、大抵は数枚の決まったカードを使ってやるものだと思っていたんですが」

 

「まあ、それはよくあることだね。初心者だとそうしないと難しいし。まあ、僕の場合は普通とは少し違うから、タネを知っている人が見ても、」

 

 一度言葉を区切り、再び山に戻したトランプの一番上をめくる。

 

「多分どうやっているのかわからないだろうけどね」

 

 そのカードはハートのAだった。

 

「・・・いつの間に?」

 

「ふふふ、さていつでしょう?」

 

 地味にすごいマジックだった。今まで誰もトランプに触っていなかったし、飛鳥もカードは真ん中ぐらいに確かに入れたのに、カードをたたんで一度整えるようにテーブルにとんとんと叩いただけで一番上に移動させていた。

 

「さて、そろそろ二人も戻ってくるし、今回はお開きだね」

 

 その声に、もっと見たいという他の客の声が上がったが、

 

「ごめんね、また今度どこかでやる機会があったら、今度はもっと大がかりなマジックをするから、今日は我慢してね♪」

 

 そう言ってウインクを一つ返す。

 

「それじゃ、今日はこれにて終了! ―――それ!」

 

 掛け声とともに、手に持ったトランプを空に向かって投げ上げる。

 

 降り注ぐトランプにイオの姿が一瞬隠れ、再び現れるとそこには――、

 

「―――へ?」

 

 いつの間にか、イオの隣には黒ウサギと十六夜の姿があった。

 

「またの機会に、お会いしましょう」

 

 そう言って綺麗なお辞儀を決めて見せる。最後の最後に大技を披露してくれたイオに対して、その場にいたすべての人から盛大な拍手が送られた。

 

「い、いったいこれはどういう事でしょうか?」

 

 そんな中。黒ウサギは状況が読み込めずにあたふたとするのだった。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「まさか、最後にあんなサプライズを披露してくれるなんて、本当にイオってすごいのね」

 

「あはは、そんなことないよ~」

 

「うん。本当にすごい。あれ、どうやったの」

 

「ふっふっふ、それは秘密♪」

 

 楽しそうにガールズトーク? をする三人の傍ら、石造りの通路を通り、箱庭の幕下に出た瞬間に、いきなりなぜかあの場所に出たことに戸惑っている黒ウサギは、おそらくそれをなした張本人であるイオに質問する。

 

「あ、あの、天燈さん――」

 

「ああ、僕の事は天燈じゃなくて、イオって呼んで、ウサギちゃん」

 

「あ、はい。分かりました。って、そうではなくてですね、どうして黒ウサギたちは突然あの場所にいたのでしょうか?」

 

「別にそんなに珍しいことじゃないでしょ? ただの瞬間移動のマジックぐらい」

 

「いえ、マジックだけで片付けられることではないでしょう!?」

 

「そんなこと言われたって。マジックはマジックなんだから他に説明のしようもないよ?」

 

 納得がいかないとなおも食い下がる黒ウサギだったが、結局何度問いかけてもただのマジックとしか答えないイオに疲れ果て、それ以上の追及をあきらめた。そしてジンのところへ向かうのだった。

 

 今度は十六夜がイオに話しかける。

 

「面白いな、お前のマジック」

 

「まあねえ、これでも前の世界じゃそれなりに名の知れたマジシャンだったし。それよりも、世界の果てはどうだったの?」

 

「おう。そりゃあ凄かったぜ。」

 

「あはっ! それなら僕も今度見に行ってみようかなあ?」

 

「その時は俺が案内でもしてやろうか?」

 

「うーん、そうだね。その時はお願いしようかな?」

 

 特に断るような理由はないし、飛鳥と耀とはもう仲良くなれた。今度は十六夜と仲良くするのもいいかと思う。

 

「あ、そうだ。逆廻くんも僕と友達になってくれないかな?」

 

「友達?」

 

「うん。飛鳥ちゃんと耀ちゃんとは友達になったから、同じ呼び出された者同士仲良くしようよ」

 

「そういう事なら、いいぜ」

 

「やった! じゃあ今度から僕の事はイオって呼んで。僕も十六夜君って呼ぶから」

 

「なるほど。依桜《いざくら》だからイオって訳か」

 

「うん。それじゃ、これからもよろしくね。十六夜君♪」

 

 そんな感じで二人で話していると、

 

「な、なんであの短時間に“フォレス・ガロ”のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」

 

 黒ウサギがウサ耳を立てて怒っていた。

 

「しかもゲームの日取りは明日!? それも敵のテリトリー内で戦うなんて! 準備している時間もお金もありません!! 一体どういう心算があってのことです! 聞いているのですか四人とも!!」

 

「「「「腹が立って後先考えずに喧嘩を売った。今は反省しています」」」」

 

「黙らっしゃい!!!」

 

 誰が言い出したのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に激怒する黒ウサギ。それをニヤニヤと笑ってみていた十六夜が止めに入る。

 

「別にいいじゃねえか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

 

「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ? この“契約書類”を見てください」

 

 黒ウサギが見せた“契約書類”は“主催者権限”を持たない者達が“主催者”となってゲームを開催するために必要なギフトである。

 

 そこにはゲーム内容・ルール・チップ・賞品が書かれており“主催者”のコミュニティのリーダーが署名することで成立する。黒ウサギが指す賞品の内容はこうだ。

 

「“参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する”―――まあ、確かに自己満足だ。時間をかければ立証できるものを、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」

 

 ちなみに飛鳥達のチップは“罪を黙認する”というものだ。それは今回に限ったことではない。これ以降もずっと口を閉ざし続けるというものである。

 

「でも時間さえかければ、彼らの罪は暴かれます。だって肝心の子供たちは・・・・・・その、」

 

 黒ウサギが言い淀む。彼女も“フォレス・ガロ”の悪評は聞いていたが、そこまで酷い状態になっているとは思っていなかったのだろう。

 

「そう。人質は既にこの世にいないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出るでしょう。だけどそれには少々時間がかかるのも事実。あの外道を裁くのにそんな時間をかけたくないの。それにね、黒ウサギ。私は道徳云々よりも、あの外道が私の活動範囲内で野放しにされることも許せないの。ここで逃がせば、いつかまた狙ってくるに決まってるもの」

 

「ま、まあ・・・・・・逃がせば厄介かもしれませんけれど」

 

「僕もガルドを逃がしたくないと思っている。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」

 

 ジンも同調し、黒ウサギは観念したようだ。

 

「はぁ~・・・・・・。仕方がない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。“フォレス・ガロ”程度なら十六夜さんが一人いれば楽勝でしょう」

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえぜ?」

 

「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ」

 

 フン、と鼻を鳴らす二人。黒ウサギは慌てて二人に食ってかかった。

 

「だ、駄目ですよ! 御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

 

「そういうことじゃねえよ黒ウサギ」

 

十六夜が真剣な顔で黒ウサギを制した。

 

「この喧嘩は、コイツらが売って、ヤツらが買った。なのに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ。それに、イオがいるんだから何の問題もないだろ」

 

「あら、わかってるじゃない」

 

「・・・・・・。ああもう、好きにしてください」

 

 イオに散々驚かされ、十六夜を探すのに全欲で走り回り、最後にこれだ。丸一日振り回され続けて疲弊した黒ウサギはもう言い返す気力も残っていなかった。

 

 どうせ失うものはないゲーム。もうどうにでもなればいいと呟いて肩を落とした。

 




今回は本当に簡単なマジックしかやりませんでしたので、またいつか大掛かりなマジックショーをやらせたいと思います。
まあ、いつになるかは全くわかりませんが。
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