問題児たちと《偽物転生者》が異世界から来るそうですよ?   作:嘉多華

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2014年12月4日微修正


第六話 同志との出会い?

 散々振り回されて疲れ果てた黒ウサギに連れられて、一行は次の目的地に向かう。

 

「で、どこに行くんだよ?」

 

「ゲームは明日ですからね。“サウザンドアイズ”に皆さんのギフト鑑定をしていただこうかと」

 

 十六夜の質問にジンが答える。聞いたことのない名前にイオが疑問を口に出す。

 

「“サウザンドアイズ”? それってコミュニティなのかな?」

 

「YES。サウザンドアイズは特殊な“瞳”のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」

 

「(特殊な瞳。ってことは天燈の魔眼と同じような力なのかな?)ギフトを鑑定すると何かメリットがあるの?」

 

「勿論、ギフトの秘めた力や起源などを鑑定することです。自分の力の正しい形を把握していた方が、引き出せる力はより大きくなります。皆さんも自分の力の出所は気になるでしょう?」

 

 同意を求める黒ウサギに、十六夜・飛鳥・耀の三人は複雑な表情で返す。思う事はそれぞれあるのだろうが、拒否する声はない。イオは少し気に入らないところもあったが、ほかの三人がいいのなら一人だけ断るのも面倒だと言う事で何も言わない。

 

 道中、呼び出された四人は興味深そうに街中を眺めていた。

 

 日が暮れて月と街灯ランプに照らされている桃色の花を散らしている街路樹の並木道を、飛鳥は不思議そうに眺めて呟く。

 

「桜の木・・・・・・ではないわよね? 花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

 

「・・・・・・? 今は秋だったと思うけど」

 

ん?っと噛み合わない三人は顔を見合わせて首を傾げる。黒ウサギが笑って説明した。

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召還されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」

 

「へえ? パラレルワールドって奴か?」

 

「むしろこれは、立体交差並行世界論ってところかな?」

 

「「えっ」」

 

 イオが何気なく呟くと、黒ウサギと十六夜の二人が驚いた声を上げる。何のことかわからない飛鳥と耀はきょとんと首を傾げている。

 

「ん? どうしたの? 何か間違ってた?」

 

「い、いえ、その通りです。・・・・・・よくわかりましたね」

 

「驚いたな。よくこれだけの情報でそこまで思い至るもんだ」

 

「これぐらい普通の事でしょ? そんなにすごいことでもないよ」

 

 何が凄いのか本当に理解していないイオはこともなげにそういってのける。その姿に黒ウサギと十六夜の二人は頬をひきつらせる。立体交差並行世界論について知っていることもそうだが、普通なら十六夜の言ったようにパラレルワールドなどと考えるのが普通なのに、真っ先にそこに思い至ることができるだけのその思考力に驚愕する。

 

「ねえ、その立体交差並行・・・・・・ってなんなの?」

 

「ああ、それはね? ―――」

 

「申し訳ありませんが、今から説明していてはとてもじゃありませんが時間ががかかりすぎますし、またの機会にと言う事にしてください。それにもう目的地につきましたので」

 

 曖昧に濁して黒ウサギは振り返る。どうやら店に着いたらしい。商店の旗には、蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている。あれが“サウザンドアイズ”の旗なのだろう。

 

 日が暮れて看板を下げる割烹着の女性店員の姿に、黒ウサギは慌ててストップを、

 

「まっ」

 

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

 ・・・・・・ストップをかける事も出来なかった。黒ウサギは悔しそうに店員を睨みつける。

 

「あっはっは、さすがは超大手の商業コミュニティだね。押し入る客の拒み方に隙がない」

 

「なんて商売っ気のない店なのかしら」

 

「ま、全くです! 閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

「出禁!? これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」

 

 キャーキャーと喚く黒ウサギに、店員は冷めたような目と侮蔑を込めた声で対応する。

 

「なるほど、“箱庭の貴族”であるウサギのお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

「・・・・・・う」

 

 一転して言葉に詰まる黒ウサギ。しかし十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。

 

「俺たちは“ノーネーム”ってコミュニティなんだが」

 

「ほほう。ではどこの“ノーネーム”様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

 ぐ、っと黙り込む。黒ウサギが言っていた“名”と“旗印”がないコミュニティのリスクとはまさにこういう状況だった。

 

(ま、まずいです。“サウザンドアイズ”の商店は“ノーネーム”お断りでした。このままだと本用に、出禁にされるかも)

 

 全員の視線が黒ウサギに集中する。彼女は心の底から悔しそうな顔をして、小声で呟いた。

 

「その・・・・・・あの・・・・・・私たちに、旗はありま」

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギイィィィ!」

 

 黒ウサギは店内から爆走してくる着物風の服を着た真っ白い髪の少女に抱きつかれ、少女と共にクルクルと回転して街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛び、ボチャン、と転がり落ちた。

 

「きゃあーーー・・・・・・!」

 

 遠くなる悲鳴を聞きながら、十六夜達は目を丸くし、店員は頭を抱えた。

 

「・・・・・・おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか? なら俺も別バージョンで是非」

 

「ありません」

 

「なんなら有料でも」

 

「やりません」

 

 真剣な表情の十六夜に、真剣な表おじゅできっぱり言い切る女性店員。二人は割とマジだった。

 

「何なら僕が代わりにやってあげようか? 有料で」

 

「ほう・・・・・・ちなみにいくらならいいんだ?」

 

「そうだねえ、大体このサウザンドアイズが一年で稼ぐ金額くらい?」

 

「は、それは大変そうだ」

 

 そんなどうでもいい話をしている二人をよそに、フライングボディーアタックで黒ウサギを強襲した白い髪の幼い少女は、黒ウサギの胸に顔を埋めてなすり付けていた。

 

「し、白夜叉様!? どうして貴女がこんな下層に!?」

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに! フフ、フホホフホホ! やっぱりウサギは触り心地が違うのう! ほれ、ここが良いかここが良いか!」

 

「し、白夜叉様! ちょ、ちょっと離れてください!」

 

 黒ウサギは胸に顔を埋めている白夜叉を引き剥がすと、頭を掴んで店に向かって投げつける。

 

 クルクルと縦回転した少女を、十六夜が足で受け止めた。

 

「てい」

 

「ゴバァ!お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」

 

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

 

 ヤハハと笑いながら自己紹介する十六夜。

 

 一連の流れの中で呆気に取られていた飛鳥は、思い出したように白夜叉と呼ばれていた少女に話しかけた。

 

「貴女はこの店の人?」

 

「おお、そうだとも。この“サウザンドアイズ”の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

 

「オーナー。それでは売り上げが伸びません。ボスが怒ります」

 

 何処までも冷静な声で女性店員が釘を刺す。

 

 濡れた服やミニスカートを絞りながら水路から上がってきた黒ウサギは複雑そうに呟く。

 

「うう・・・・・・まさか私まで濡れる事になるなんて」

 

 反対に濡れても全く気にしない白夜叉は、店先でイオ達を見回してニヤリと笑った。

 

「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たということは・・・・・・遂に黒ウサギが私のペットに」

 

 白夜叉のその一言を聞いて瞬時に、

 

「それはだめだよ! ウサギちゃんは今日から僕のペットになるんだから」

 

「なりません! どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」

 

 イオも言葉を返す。二人でそれを聞いた白夜叉もイオに顔を向けて、二人の視線が交差した。

 

 そして次の瞬間―――

 

「「がしっ!」」

 

 二人は固い握手を交わす。何やら通じるものがあったらしい。

 

 片や白髪の和風ロリ、片や黒髪のゴスロリ。見た目的にも正反対な二人の姿は、なんとなくかみ合っていると見えなくもなかった。

 

ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギい、どこまで本気かわからない白夜叉は笑って店に招く。

 

「まあいい。話があるなら店内で聞こう。特におぬしとはよく語り合ってみたい」

 

「うん、僕もあなたとはいろいろ話したいな。それこそ、夜通しでね」

 

 一目で意気投合した二人はそう言ってにやりと笑う。

 

「よろしいのですか? 彼らは旗も持たない“ノーネーム”のはず。規定では」

 

「“ノーネーム”だとわかっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する侘びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」

 

 む、っと拗ねるような顔をする女性店員。彼女にしてみればルールを守っただけなのだから気を悪くするのは仕方がない事だろう。女性店員に睨まれながら暖簾をくぐり、不自然な広さの中庭に出た。

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

 

 障子を開けて招かれた場所は香の様な物が焚かれており、風と共に五人の鼻をくすぐる。

 

 和室の上座に腰を下ろした白夜叉は、大きく背伸びをしてからイオ達に向き直る。

 

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

 

「よ、美少女~!」

 

 隣ではやし立てるイオにさらに気分を良くする白夜叉。早くもどことなく二人の息があっている。

 

「はいはい、お世話になっております本当に」

 

投げ遣りな言葉で受け流す黒ウサギ。その隣で耀が小首を傾げて問う。

 

「その外門、って何?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです。ちなみに私たちのコミュニティは一番外側にある、七桁の外門ですね」

 

「そして、私がいる四桁以上が、上層と呼ばれる階層だ。その水樹を持っていた白蛇の神格も私が与えた恩恵なのだぞ」

 

 白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。白夜叉が指すのは十六夜が素手で叩きのめした蛇神のことだろう。

 

 神格とは、生来の神そのものではなく、種の最高のランクに体を変化させるギフトのことだ。人に神格を与えれば現人神や神童に。蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に。鬼に神格を与えれば天地を揺るがす鬼神と化す。更に神格を持つことで他のギフトも強化される。コミュニティの多くは目的のために神格を手に入れるため、上層を目指して力をつける。

 

白夜叉が与えた、という言葉を聞き、十六夜が反応する。

 

「へぇー。じゃあオマエはあの蛇より強いのか?」

 

「当然だ。私は東側の“階層支配者”。この東側の四桁以下にあるコミュニティで並ぶ者がいない、最強の主催者だからの」

 

“最強の主催者”―――その言葉に、十六夜・飛鳥・耀の三人は一斉に瞳を輝かせ、立ち上がる。

 

「“最強の主催者”か、そりゃいいな」

 

「ええ、ぜひともお相手いただきたいわね」

 

「・・・・・・」

 

 耀は無言だったが、その眼には闘志が宿っていた。

 

 三人は剥き出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る。白夜叉はそれに気づいたように高らかに笑い声を上げた。

 

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

 

「え? ちょ、ちょっと御三人様!?」

 

 慌てる黒ウサギを右手で制す白夜叉。

 

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には窮しておるからの」

 

「そいつは奇遇だな。俺も同じだ。少し遊んでくれよ。最強の主催者様?」

 

 三人が嬉々として白夜叉を睨む。

 

 イオはそんな三人を、若いっていいねえ、と思いながら見ている。

 

「ふふん。よかろう。じゃが一つゲームの前に確認しておく事がある」

 

「なんだ?」

 

 白夜叉は着物の裾から“サウザンドアイズ”の旗印―――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、表情を壮絶な笑みに変えて一言、

 

「おんしらが望むのは“挑戦”か―――もしくは、“決闘”か?」

 

 刹那、三人の視界は光に視界をふさがれた。そして気が付くとそこは白い雪原と凍る湖畔―――そして、水平に太陽が廻る世界だった。

 

「・・・・・・なっ・・・!?」

 

「へぇ・・・」

 

 あまりの異常さに、十六夜達は同時に息を呑んだ。

 

 イオは一人、感心するように白夜叉のことを見つめる。強いとは思ってはいたが、なるほどこれは確かに自分で最強というだけの事はある。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜の魔王”―――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への“挑戦”か? それとも対等な“決闘”か?」

 

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