では、本編どうぞ。
「....朝だ。」
いつもの朝。変な夢を見た。
「はあ、あんな夢を見るくらいなんだから、私も相当参ってるんだな...」
朝一から憂鬱だった。
「とりあえず顔を洗って朝ごはん食べよ...」
そうして顔をあらい、食堂へ向かう。
無駄に(アーナはそう思っている)広い屋敷には大きな食堂があり、朝食は毎日そこで食べることになっていた。
「今日はトーストかあ。ご飯だけが私の楽しみになってる気がする...」
楽しいこともなんとなくナーバスな今は嫌な方向へと気持ちが向いてしまう。
「おはよう、アーナ。」
「おはようございます、ロゼお姉様。」
姉のロゼだ。
「あなた、今日は昨日みたいな負け方はしないことね。お父様はご立腹でしたよ。」
「はい...がんばります。」
「朝食がおわったら早速練習よ。広場へ来なさいとお父様がおっしゃっていたわ。」
「わかりました。」
今日もか...いやだ、また痛い思いをして、悔しいまま寝るのだ。
「はあ...朝食の時間が終わらなきゃいいのに」
そう思っていたが、トーストはあと一口だけしか残っていなかった。
「む、遅かったなアーナ。早速始めるぞ。昨日のような醜態は晒してくれるなよ。」
「はい、お父様。」
「手加減はしませんよ、アーナ。」
手加減をしてくれたところで勝てたことは一度だってないのだ。
「では、両者前へ。」
ザッ、と一歩前へ出る。
腰につけた鋼の剣を両手で持ち、構える。
「あら、アーナ。あなたそんな構えだったかしら?」
「え...?はい、多分...。」
二人の構えは大きく違っていた。
アーナは姉の真似しかしてこなかったので、姉と同じ構えだったはずだが、今日の構えはどことなく攻撃的、達人にのみ許される防御を捨てた構えだった。
「まあ、いいです。構えが変わったくらいでは大した違いなどでません。」
自分でもなぜかの構えなのかわからない。だが、なぜかこの構えが一番しっくりきた。
「始めるぞ。準備はいいな?」
「はい。」
「はい。」
空気がひりつく。この二人の間だけ、時が止まっているようだ。
『なんだろう、この感じ...剣に重さがなくなったみたいに自然な気持ち...。』
アーナは初めて感じる心地良さに身を委ねていた。
「では、始めッ!」
「やああっ!!」
始め、の合図でロゼは大きく振りかぶり、アーナに駆け寄る。
一方、アーナは。
「...ッ!」
アーナは二人の間にあった4m程の距離を一歩、一瞬で食い破り、ロゼの懐に舞い込んだ。
「なっ!?」
「フッ!!」
そのまま、アーナは鋼の剣をコンパクトに振る。その剣の軌道は、ロゼの左横腹を大きく捉えていた。
「...はっ!?」
落ち着き過ぎているとも言えたアーナの顔がいつもの優しい顔に戻る。
肉薄していた二人の距離は、アーナが大きく後退することで5m程に広がった。
「ご、ごめんなさいロゼお姉様!」
なにが起こったのか。始まって気がついたら、自分がロゼに剣を当てる手前だった。
否。あの剣は、当たれば確実にロゼの命を刈り取っていた。その確信はたしかにあった。
「昨日の...夢...?」
そう呟いた瞬間、アーナの視界が真っ暗になる。そして明るくなり、目の前にアリーナがいた。
「ピンポーン!昨日ぶりだねアーナ!調子どうかな?」
「あ、アリーナさん。これは一体...?」
なんというか昨日から色々驚きっぱなしだ。同じ毎日を送ってきた自分には刺激が強すぎる。
「んー?これって?この場所?それとも今の戦いのこと?」
とぼけるように首をかしげるアリーナ。
「どっちもです!」
「あはは、怒らない怒らない!ちゃんと教えてあげるってば」
怒られても全く気にしていない。どころか、楽しそうである。
「ここはね、あなたの精神世界。ここで人は夢を見たりするの。そして、私はずっとここにいたってわけ。」
「めちゃくちゃな...」
なんとも破天荒な人だ。
「んで、今の戦いのことね。感じたでしょ?あなたの強さ。私はあなたの潜在能力をほんのちょっぴりだけ引き出しただけなんだけど、あれほどとはね。」
「ほ、ほんのちょっぴりですか。」
「そ。アーナ、お姉ちゃんが最初に斬りかかってきたとき、何を思った?」
何を?いつもなら、怖い。その一つである。
「え...そ、それはやっぱり怖かった...です。」
「嘘ね。」
急に真剣な顔になるアリーナにゾッとする。
「あなたはたしかに思ったはずよ。斬りかかる足が遅い、脇が甘い、大きく振りかぶり過ぎ、そして、弱い。」
「っ!?」
たしかに、そう感じた。怖いなど少しも感じなかったのだ。あれほど怖かった姉は、あの瞬間は恐怖など微塵も感じていなかった。
「勝てる。あなたはそう思った。勝つ方法だけを考えていたはずよ。」
「それは...違います...。」
「何が違うの?」
一つ、違うことがあった。アーナが感じたもの。
「私があのとき思ったことは、勝てる、じゃなかったです。」
「じゃあ何を?」
恐ろしくて声に出さなかったそれを、アーナは口にした。
「殺せる。」
「私は私の姉を、どう殺すかを考えていました。」
「...っ。」
アリーナがニヤリ、と笑い言った。
「やっぱり私の目に狂いはなかったわね!ここからはあなたの戦い。せいぜい殺さないように戦うことね。」
そうして、その世界はふっと消え、さっきまでいた広場へ戻っていた。
戦いはまだ始まったばかりである。
はい、読んでくれてありがとぽん。
ということで、第1話です。
最近急に寒いので震えながら洗濯物干してます。 それだけです。
またよろしく。