剣の道にて   作:ぎが

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はい、3話です。
フェイトまたみてきました。
複数回みるのはラブライブ以来です。
ではどうぞ。


3話 剣の心

戦いが終わったのは午前10時程であった。

 

「お姉様、大丈夫かな...」

 

アーナは自室でロゼの心配をしていた。

 

昼ごはんは喉を通らず、なんとなくぼーっとして過ごしていた。

 

「そういえば、こんなにのんびりしたのはいつぶりだろう...」

 

毎日が地獄のような訓練だったため、休みなど望むべくもなかった。

 

「...」

 

鎧を脱ぎ、横になったアーナは部屋の隅に立てかけてある剣をながめる。

 

「あの剣...」

 

その剣というよりナイフの様な形状のそれは、姉妹が剣を習い出したその日に、継承された二振りの剣の一つである。

 

「懐かしいな...」

 

そう口にした瞬間、ゾワッ、と嫌な気配が背後に現れたのを感じた。

 

「ふぅぅーっ♡」

 

「ひゃあああぁんっ!?」

 

突如、アーナの右耳に生暖かい風が当たり、変な声を出してしまう。

 

「あははっ、アーナは耳が弱いんだねぇ!」

 

「あっ、アリーナさん!?」

 

「はぁーい。アリーナさんだよー」

 

ゆるい感じで現れたアリーナは、当然のようにベッドに腰をおろす。

 

「アリーナさん...なんでここに?私の精神世界にいたんじゃあ...」

 

「そうだよー。だから、あなたにしか見えてないし、感じることもできない」

 

なんでもありかこの人は...

 

「ていうかそんなことはどーーでもいいの!それよりこの剣!」

 

「はあ、昔頂いた剣ですね。」

 

「これ、私の剣なのよ。」

 

「ええっ!?アリーナさんの!?って、さすがに騙されませんよ。もし本当なら、純銀製のこの剣が、なんで錆びずに何百年もあるんですか...」

 

アーナは呆れたように言う。

 

「ふふ、推理は正しいかもね。でも本当はそうじゃない...」

 

「?」

 

「アーナ、その剣に最後に触ったのはいつ?」

 

「えーっと、多分貰ってから一年は振ってましたけど、それからは全然...」

 

もらった当初はこんなに辛い練習が続くとは思っていなかったため、嬉しくて毎日降っていたものだ。よく覚えている。

 

「なるほどね。じゃあ、多分いまならわかる。持って構えてみて。」

 

「?いいですけど...」

 

アーナは剣を片手で持つ。刃渡りは大体30cmくらいだろうか?剣というには短く、ナイフというには長い微妙な長さの剣は、見た目の割に軽かった。

 

「えっと...多分、こう。ですね。」

 

アーナは剣に導かれるように構える。

 

右手で剣を握り、体は半身。左手は背中に回して剣と平行に。

 

敵はどこを狙うにしても剣を経由しなくてはならず、被弾を抑えるために表面積を減らす構えである。

 

そして、アーナはぐっと構え、敵をイメージする。

 

「!?」

 

すると、目の前にあったタンスが、バラバラになった。

 

「なっ!?何!?」

 

正確には、バラバラになるイメージが頭に浮かんだのだ。あまりにもリアルに。

 

「見えたかな。それはその剣の能力の一つなんだ。そして、わかる?その剣からなにか感じる?」

 

「こ、これは...魔力...ですよね?」

 

「そ!大当たり!やるねぇ。修行もなしに魔力を感じ取るなんて。魔術師が聞いたら卒倒するだろうねぇ。」

 

アリーナは心底愉快そうに笑う。

 

「さて、さっきの話の続きね。その剣は魔剣アース。あなたのおねぇさんに渡った剣はムーン。覚えてる?」

 

「は、はい。思い出しました...」

 

そうだ。たしかあの日、二振りの剣から姉と自分で選べと言われたのだった。

 

最も、姉は強そうな大きい剣を即座に選んで持って行ってしまったため、自分は選んだわけではなく残ったこの剣になったのだ。

 

「その二振りの剣は元々一つの剣でね。アムーっていうただの大剣だったの。で、折れた二つの剣に魔力を注いでできたのがその夫婦剣のアースとムーンってわけ。」

 

「し、知らなかった...」

 

「大剣の方は正直あんまりね。対象物が大きければ大きいほど魔力は流れにくいから。まあよく切れる剣って感じ?欲張りはいつも貧乏くじ引くのよ。童話でもよくあるじゃない?」

 

「童話ではそうですが...」

 

「で、あなたが言ってた純銀製って話ね。アースは確かに純銀でできてる。けど、それは私の魔力によって時間が止められた剣なの。」

 

「時間が、止められた...?」

 

魔力に疎いアーナはよくわからない話に頭がクラクラしてしまう。

 

「私の魔力によって時間が止められたアースは、切れ味が落ちることがない。ついでに折れないし錆びない。作られた時のままの状態を維持し続ける。」

 

「す、すごい...」

 

「私は愛剣アムーが折れちゃってからはアースとムーンの二振りを両手で持ってて、それから家宝として保存してたの。それから、この一家の娘が剣修行をはじめる初日に代々受け継がれてきたってわけ。」

 

「か、片手で...」

 

アーナはもう一振りのムーンを想像していた。刃渡りは2m近く、明らかに人間に触れる代物ではなかったはずだ。姉も、もらったはいいが振っているところを見たことはない。

 

「ま、まずムーンを持ち上げることすらただの女の子には無理ね。」

 

「でしょうね」

 

「それはそうと、アースを持ってみて、どう?」

 

「あ、はい。すごく馴染みます。あと、目にしたものがバラバラになる幻覚を見るんですけど...」

 

タンスに始まり、ベッド、姿見、カーテン。果ては床に至るまで、目に入る全てがバラバラになっていく。

 

「ああ。それは、あなたが少し動揺してるからね。落ち着いて、リラックスしてみて。タンスとかに向かって、敵意がないことを確認するの。」

 

「はい...」

 

アーナは目を閉じて、ゆっくりと呼吸する。変な話だが、動かない家具たちに向かって、あなたたちを切るつもりはないよ、と優しく語りかける。

 

「じゃ、目を開けてみて。」

 

「あ、戻りました。いつもどおりです。」

 

目を開けると、そこはいつもの自室だった。

 

「ん、よろしい。じゃあ、次はこれをみて。」

 

アリーナはそういうと、ポケット(のように見えたが、アリーナの服にポケットはついていない。どこから出したのだろうか。)から手のひらサイズのボールを取り出す。

 

「これを、切ってやる!とか、殺してやる!って気持ちで構えてみて。」

 

「ええ、ボールに向かってですか...?」

 

なんか恥ずかしくないだろうか。

 

「そう!このボールに、親が殺されたと思ってさ」

 

「これにやられる私の親って...」

 

情けない気持ちになりながらも、アーナは構える。

 

すると。

 

ズバババッ!

 

「ふふ」

 

アリーナの置いたボールは粉々に切断され、床に伏した。

 

「な、なにこれ...」

 

アーナは少しも動いていない。ボールを切るイメージをして、立っていただけである。

 

構えていると、ボールが切れるイメージが浮かんで、それがそのまま現実となって現れた。

 

「アースの能力はね、あなたの斬撃のイメージとか気持ちを現実にしてしまうの。切るぞ!ってイメージが相手にものすごい負荷を与えて、切られた!ってイメージが相手そのものを本当に斬り伏せてしまう...そんな力。」

 

「す、すごい...」

 

「さて、アースの説明はこのくらい。慣れないと本当に疲れちゃうから、今日はゆっくり休みなさいな。」

 

「は、はい...わかりました。」

 

「じゃ、またね。」

 

アリーナはそういうとすうっと消えてしまった。

 

「剣はまだまだ知らないことだらけだ...」

 

そう言って、アーナはまた眠りにつくのだった。

 

「ふふ、あの子、本物ね。無機質にイメージを送り込むのは人にイメージを送り込むのより何倍、いえ、何万倍も難しい。末恐ろしい...ふふふ...」

 

アリーナはアーナの精神世界で、一人笑っていた。




はい、ぎがです。
読んでいただきありがとうござい。
さて、今回のあとがきでは魔剣アースについて補足を。
魔剣アースの能力は「自身のイメージの伝達」です。
決して遠隔で切りつけるだとか、そういうやつではありません。
所有者の「切るぞ!」「殺してやる!」「こう切ってやろう!」
という意思の力が対象に伝わり、それを受けた対象は、「切られてしまう!」「殺されてしまう!」「こう切られた!」といったイメージを自分の中で膨らませてしまい、結果触れることなく相手は自分のイメージに斬り伏せられてしまいます。
あくまでイメージの力なので、所有者のイメージが弱かったり、対象の精神が強かったりすると、効果を発揮しません。
無機物はとくに、「切られる!」という感情が存在しませんから、所有者のイメージの強さだけが効果発動のトリガーになっています。
ちなみにアリーナが生前つかっていた時には魔力の守りをつけていなかったため、ムーンは割とボロボロですが、アースは切りつけることがなかったためとても綺麗な状態で保存されています。
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