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「赤城、寒くはないか?」
灯りも無い暗闇の部屋の中、男は共寝する女にそう囁くと、互いの体温を感じ合う様に強く後ろから抱きしめる。
冬の澄んだ空気の影響だろうか。「流石に、この時期になると随分冷え込むな……」と呟く男の声は、狭い部屋によく響いた。
赤城と呼ばれた女は、自分を抱きしめる男の手に応える様に、愛しげに手を重ねると、うっとりとした声色で囁き返す。
「うふふ……赤城の身体は、指揮官様の愛でやけどするくらい火照っているので心配は要りませんわ。それに、その心遣いだけで、赤城は幸せです。指揮官様の方こそ、身体が冷えませんか?」
まるで第三者が聞くと歯の浮くようなセリフ、もし赤城の後輩が聞いたら悶絶からの抱腹絶倒が容易く想像出来るほど甘い言葉だ。
指揮官様と呼ばれた男は、その言葉を聞くと照れ隠しのように更に強く抱きしめると「俺だって、赤城の愛で寒さなんか感じないさ」と言い返す。
「それに、元指揮官だ。俺はもう軍とは関係ないからな」
その時、雲に隠れていた月光が部屋に射し込み、二人の姿が露になった。妖艶な雰囲気が漂う狐耳の生えた美女、彼女が赤城なのだろう。見つめていると呑み込まれてしまいそうなほど美しい赤い瞳が、月の光で瞬いた。まだ少し幼さの残る精悍な顔つきの青年、彼が指揮官なのだろう。
そして、月光は彼らだけではなく、彼らの住む部屋も露にする。それは、およそ人の住むようなものでは無かった。傷だらけの壁、ひび割れた窓、床の畳はボロボロで、二人の布団はお世辞にも寝具と形容し難いものである。
月光が再び雲に隠れる頃、赤城の身体を抱きしめ続けた影響だろうか。指揮官の欲望は赤城の臀部と接触し続けた故に剛直と化していた。
「あ、赤城。これは……その、生理現象だから」
勿論、指揮官と赤城は既に男女の仲であるしお互いを愛しあっている。ただ、この男はムードや雰囲気というものを至極大切にする人間であり、そのムードを自分の欲望がぶち壊したために自己嫌悪しつつ、弁明をした。
「指揮官様…?指揮官様がしたいのなら、この冷え込みを互いの身体で暖めあってもよろしいですよ?」
が、そんな指揮官をからかい弄ぶ様に赤城はそう呟き、手を指揮官の手の上から離し、身体を反転させると、片方の手で彼の身体をまさぐり、もう一方の手で指揮官の唇の周囲をなぞるように愛撫する。
「指揮官様……元ならあなた様と呼んだ方がいいですか?うふふ……」
自分が発した「あなた様」という言葉に酔いしれる赤城はきゃーきゃーと言いたげに顔を真っ赤に染め、指揮官を見つめる。
「軍を抜けても、例え何が起きても、指揮官様はこの赤城の指揮官様ですわ。赤城の……赤城だけの指揮官様……」
何度も何度も自己確認するように呟く赤城。そんな彼女を目の前に、指揮官の剛直ははち切れんばかりにまで膨らんだ。まるで、自分が赤城の
「指揮官様。赤城、やっぱり寒くなってしまいましたわ……指揮官様の溢れる熱い愛で、赤城が壊れるほど暖めてくれますか?」
指揮官の答は口づけだった、彼も男だ我慢出来るわけがない。「んっ……んーー!」悦びの声を塞がれた唇から漏らす赤城、指揮官の舌を貪るその姿は正にその狐耳と尻尾に違わぬ獣だった。
「ああっ……!しきかんさまぁ……、あなたさまぁ!うふふ…あなた様の方が、とーっても良い反応ですわ……今夜だけは、あなた様とお呼びしますわ……んっ!」
廃屋で今宵も二匹の獣が貪り愛し合う。身分を捨て、役目を捨て、仲間も家族も捨てた二匹の獣。そんな二人の夜は更けて行った……