リクエスト作品   作:黒廃者

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リクエストを受けてから三か月と少しくらい……長らくお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。


勇者であるシリーズにドハマりしてだらだらしてたらこうなりました。私を殴れ!

そして前編と比べて入れたいこと全部入れたらほぼ倍の文字数という……。

あーもうほんと、クソ(ポプテピピック並感)


二振りのSwords 後編

 その事件は、風鳴翼と天羽奏が大勢の観客を前に、ステージ上で華麗なパフォーマンスと共に歌を披露している最中に起きた。

 太古の時代、統一言語を失った人類がお互いを殺すために作り出した兵器であり、現代において認定特異災害と指定されていた異形の存在「ノイズ」が突如として出現したのだ。

 その原因は地下で行われていた完全聖遺物『ネフシュタンの鎧』起動実験時、鎧の奪取を図ったフィーネによる犯行であった。

 

 

 そんな陰謀など知る由もなく、ノイズと接触した生命は、すべて等しく炭と化し生を終える。

 人類のみを攻撃するようにプログラムされた人造生命体は逃げ惑う人々を次々と炭素の塊へと変えていく……。

 かの立花響も居合わせたパニック状態の現場に、二人はいた。

 

 

 

 黄勢桃と上原瀬奈。

 

 

 

 ツヴァイウィングの大ファンである活動的な瀬奈に誘われる形でやってきた少しおとなしい性格の桃。

 先ほどまで熱の籠った声援を送り汗だくになるほど体温は上昇していたというのに、今はどうだろう。死を明確に前にした少女達の表情は恐怖で歪み、周囲にいる大勢の人間と同じようにあてもなく逃げ惑っていた。

 それでも繋いだ手だけは離さなかった。桃と瀬奈はお互いの存在を確かめるようにギュッと手を握りしめることで、親友が傍にいてくれるという事実を常に感じることで、理性の崩壊を食い止めていた。

 

 「いやぁあああ!!!助けて、助けてぇえええ!!!!」

 

「ひっ!」

 

 半ば瀬奈に引っ張られるようになりながら逃げていると、隣を走っていた女性がノイズに捕まり、一気に炭となって散っていく……そんな壮絶な光景に今にも泣き叫びそうになるも、なんとかこらえる。

 

「頑張って走って桃!もうすぐ出口だよっ!!」

「う、うん……!」

 

 瀬奈がより一層桃の手を強く握り 咤した。

 桃は涙でくしゃくしゃになりながら、何度も頷いた。

 

 懸命に、必死に走り続ける。生きるために、この温もりを消させないために……。

 

 

 

 

 

 

「くっ……数が多い!」

「翼!まだ逃げ遅れている人達がいる!ここはあたしが食い止めておくから、お前は救出に迎え!」

「! わかった!」

 ツヴァイウィングの天羽奏と風鳴翼は『S.O.N.G.』の前身とも呼べる特異災害対策機動部二課のシンフォギア装者だった。

 

 

 聖遺物の欠片【ガングニール】と【天羽々斬】をまとった二人は超人的な力を以って敵を屠っていく……。

 

 しかしそれでも、届かない刃はいくつもあった。

 ノイズの出現からおよそ15分……既に100を超える命が炭となって消え失せていた。

 

 

 

 周囲にまとわりつくノイズを片っ端から斬り伏せながら、翼は走る。

 

 

 

 

 

 一方、桃と瀬奈もドームの階段を必死に駆け上がり、ついに出口を前にしていた。

 近くにノイズはいない。ツヴァイウィングの奮闘で被害がドームの外に広がることは辛うじて防がれていた。

 

「ここを出れば!」

 

 心からの安堵と共に、桃は前に出る。

 外に出れば安全だ。瀬奈と一緒に、帰るんだ……。

 

 

 

 

 

「危ない!!!!」

 

 

 

 

 確信した瞬間、背中を思いきり押された。

 バランスを崩し倒れこみながらも、何事かと背後を見た。

 

 

 

 

 その瞳に映ったのは、何年も一緒にいて、泣いて、怒って、笑った、最愛の…………。

 

 

 

 

 

「はぁあああああ!!!」

 

 

 翼が剣を振るうと、ノイズが一刀両断されて朽ちていく。

 目の前にいたのは、呆然とノイズの残骸を見つめる桃だった。

「大丈夫か……っ!」

 すべてを悟る。数刻の差で届かなかった刃。目の前の少女が、何もかも手遅れであることを告げている。

 

 

 

 その瞳は、絶望で濁り切っていた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「忘れるわけがない。そして、その後すぐに、奏までも……」

 すべてを語り終えた翼は、強く拳を握りしめていた。

 理屈ではない。仕方がなかったでは済ませられない。確かな自責。

 もっと自分が強かったなら。もっと自分が頼もしくあれたなら。

 

 

 

 

 

 

 

 ────世界で、一番のドクターになって……。

 

 

 

 

 

 

 もっと自分が、彼女を想いやることができていれば……。

 飛彩は、その絶望を知っている。

「……!」

 その時、飛彩のスマートフォンが小刻みにバイブレーションを始めた。

 永夢からだった。

「なんだ、研修医……なに!?」

「? どうしました?」

「患者が攫われたらしい!悪いが俺は行く!」

 表情を一変させた飛彩は急ぎCRに戻ろうと駆けだした。

「私も行きます!」

 翼もその後を追いかけようとする……。

 すると、騒々しいクラクションを響かせながら、一台の車が二人の行く手に急停止した。

 

 

「乗りな、お二人さん!」

 

 

 助手席の窓に腕を乗せながら、雪音クリスが不適に口角を釣り上げた。

 

 

 

 

 

 

『S.O.N.G.』の構成員が運転する車の中で、クリスは二人に、今起きていることを説明し始めた。

「西の工場地帯を中心にバグスターウイルスのパンデミックが起きているだと!?」

「ああ。今頃はCRにも連絡いってると思うが……」

「……いや、恐らく動けるのは、俺だけだろう」

「それはどういう……?」

 

「研修医が何者かの襲撃を受け、患者が連れ去られた」

 

「なっ!?」

「そしてこのタイミングでのパンデミック……その何者かが関係している可能性は大いにあり得る」

「して、その正体は?」

「現時点では不明だ。ただボロボロのローブを羽織って異形の体を隠していたそうだが、研修医はバグスターのようには見えなかったと言っていた」

 二人はどんどん考察にのめり込んでいく。

 難しい顔をして意見交換する二人を見かね、クリスが渋い顔をしながら声をかけた。

「……先輩、あたしらは十中八九、めんどくせぇ制約で正式には動けないだろ」

「分かっている。だが、近くで苦しんでいる人がいるなら、私は救いたい。例えあの子でなくともだ」

 その瞳は、まっすぐだった。

 翼は前を向いていた。決して忘れたわけではない、決して捨てたわけではない。

 幾多の戦いを経て、彼女は強くなった。だから……。

 

 

「今度こそ、この剣は届かせてみせる」

 

 

 その言葉を聞き、クリスは、

「……へっ、上等!」

 と息巻いた。

 彼女もまた、翼を保護してこのまま手を引くには惜しいと感じていたようだ。

「本来なら俺一人で十分だが……。真に患者を救うためには、君の力がいる、のかもしれない」

 飛彩は、翼と視線を交錯させて頭を下げた。

 

 

「また力を借りるぞ、シンフォギア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 工場地帯 内部

 桃を攫ったローブの怪人は、既にバグスターが分離し苦しむ彼女と共にいた。

 チラリと上階を見上げると、桃から分離したドレミファビートのバグスターが陽気なダンスを踊りながら下っ端のバグスター達を操り、工場で働く人々を感染させ、苦しめていた。

「う……く……」

 桃は大量の汗をかき、心臓を圧迫されていくような苦痛に耐えながら、怪人を見つめる。

『……違う。欲しいのは、こいつじゃあない』

 怪人がノイズのようにざらついた声で呟くと、高く飛び上がり……。

 

『欲しいのは、貴様の、元だ』

 

 ドレミファビートのバグスターの胴体を鉤爪で切り裂いた。

 下まで落ちるバグスター。怪人は襲ってくる他のバグスター達を蹴散らし、追い撃つように踏みつける。

 そしてドレミファビートのバグスターに再度、鉤爪を突き立てると、

 

 

『ギャアアアアアアア!!!!』

 

 

 突如襲い来る激痛に、左右に身を捩じらせるが、意味はない。

 一方怪人は鉤爪を通してバグスターから少量のウイルスを取り込むと、ぞんざいに蹴り飛ばしてしまう。

『必要な力は手に入った。もうこの世界に用はない』

 そう言うと、怪人はローブに隠れた瞳をギラリと光らせ、再び世界に裂け目を発生させた。

 跨ぐように片足を入れた瞬間、ぴたりと動きを止め。

 

 

 

『…………だが一度は滅ぼし損ねた世界、そしていずれは殺す世界』

 

 

 

 それは更なる異物を呼び込む魔。

 怪人が裂け目を通して繋げ見せたのは、薄暗い雲空の下を駆ける一体の黒い飛行物体の姿。

 微かにそれを視界に捉えた桃の目が大きく見開かれる。

 

 

 その異形は、【ネウロイ】という。

 独自の文化が存在するこことは異なる世界、70年以上前の時間において、世界中の人類が敵対している怪異であるが、当然その名前を知るわけがない。

 裂け目の先にいるのは小型だ。

 怪人は小型飛行ネウロイを裂け目に飛び込ませ、こちらの世界へと出現させる。

 すると瞬く間に瘴気が工場内部に満たされ、ゲーム病で苦しむ桃や人々に更なる地獄を味合わせることに。

 

 

『せいぜい楽しんでくれよ……もう一つの地球(アナザーアース)

 

 

 怪人は今度こそ、閉じていく裂け目に飲み込まれるようにしてこの世界から姿を消した……。

 

 

 

 

 

 

 

 工場地帯に到着した翼達は、車から降り、道にゲーム病感染者を安全な場所まで運びながら桃の捜索を続けていた。

 「そっちはいたか!?」

 「ハズレだ!」

 「この辺りにはいないか……。よし、もっと奥へいくぞ」

 症状が悪化して手遅れになりかねない状況に、流石の飛彩にも焦りの色が見えていた。

 奥まった敷地へ走る三人。その時、視線の先には、バグスターの群れが現れた。

 「魑魅魍魎がわらわらと……相手をしている時間はないというのに!」

 「だが雑魚だ。すぐに切除してやる」

 と、翼はペンダントに、飛彩はガシャットに、それぞれ手を伸ばそうとする……。

 

 

 

 

 瞬間、二人の動作を待つことなく向かってきた先頭のバグスターが無数の弾丸に貫かれた。

 

 発砲音は、すぐ傍から……。

 理由は確認するまでもない。この問答無用、一気呵成の大火力。

 

 

「はん!余裕だな!」

 

 

【イチイバル】の装者、雪音クリス以外有り得ない。

 

 

 クリスはいつの間にか【イチイバル】のシンフォギアを身にまとっていた。

「雪音……」

「ここはあたしに任せて、先に行けよ先輩。なーに心配ご無用。バグスターなんて敵じゃねえ」

 

 

 

「いや、そうではなく、だな……厳重処分覚悟でシンフォギアを使うつもりだった私より先に手を出したな、と」

「あ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒い体に赤き斑点模様……小型ヘリコプター程度の大きさのネウロイは突然変貌した景色に困惑するようにその場に留まっていた。

 それは人間と敵対しているネウロイが比較的近くに転がっている桃に目もくれないことから見て取れよう。

 仲間がいないことを不思議に思っているのか、異世界にやってきたことを理解して動かないのか、何にせよ意思疎通が不可能に近い個体のため判断は難しい。

 生物に有害な瘴気もまた、世界移動の影響か本来ほどの濃度ではない。

 とある世界では人類共通の宿敵とされる怪異は、あらゆる面で異常行動を取っていた。

 

 そして次の瞬間。

 

 ネウロイの瞳と推測できる部分が、地に横たわる異形を捉えた…………。

 

 

 

 ガシャン!と勢いよく扉が開かれた。

 入ってきたのは飛彩と翼だ。

 

「!? なんだ、この穢れた気配は……?」

 

 二人もネウロイが発生させる瘴気にやられ、若干ながらも不調を訴える。

 だが、動けないほどではなかったので、気にしながらも桃がいないか周囲を見渡す。

 

「! いた!」

 桃は、意外、そして幸いにも扉のすぐ近くに倒れていた。

 急いで駆け寄る。

 呼吸は荒く体温も高い。体も半透明で、既にバグスターが分離していることを瞬時に理解すると、飛彩は猶予が少ないと判断、「少しだけその子を頼む」と桃を翼に預け、即座にバグスターの捜索に移った。

 瘴気による息苦しさが徐々に増していく。これ以上内部にいるのは危険と判断した翼は桃を外へと運び出すことにした。

 素早く背中におぶり、光の届く外へと出る。瘴気から逃れた二人は新鮮な空気に当てられ、心身の違和感が取り除かれたことに少しの安堵を覚えた。

 桃の瞳がゆっくりと開かれる。

 

「……風鳴、翼さん?」

 

 そこで初めて、自分の目の前に翼がいることに気が付き驚愕の表情を露わにした。

 

 

 

 

 

 ゲーム病に侵され気を失っているスタッフに応急処置を施しつつ、飛彩は静寂な建物の中を彷徨う。

 クリスが一手に引き受けたバグスターの群れ。だがあれが本隊と考えるには、いささか違和感を覚えた。

 感染者を餌に自分と翼を内部に誘導したのであれば、ここにバグスターが一匹もいないのはおかしい。

 そもそも肝心のドレミファビートのバグスターはどこに……?

 そして永夢の言っていたローブを羽織った怪人の姿も見当たらない。

 

(逃げられたか……いや、だとしたらこの息苦しい空気はなんだ?)

 

 その時。

 放置されたドラム缶が倒れる音がした。

 反射的にガシャットを構え、ジッとそちらから目を逸らさずに、音を立てずに身構えた。

 視線の先は、暗闇。日の光が当たらないせいだ。

 だがそれが一層、飛彩の心の鼓動を速める。

 

 

 

 ────いる。

 

 

 

 

 直感的に彼は悟っていた。

 見えない。故に不安。潜在的に脳が危険信号を送ってくる。

 やがて暗闇から姿を現したモノに、彼は驚愕した。

 

 

「……なんだ、こいつは!?」

 

 

 一見、そいつはドレミファビートのバグスター。

 されど、その色は漆黒に染まっており、大きな赤い斑点模様を有していた。

 ドレミファビートのキャラクターであるはずのバグスターは、陽気な性格が多い。だが目の前の奴はどうだ。陽気さどころか、生気すら感じない。

 

 ネウロイだ。

 

 

 先程呼び寄せられたネウロイが、ドレミファビートのバグスターに取り憑き、まったく未知の変化を起こしていたのだ。

 

 便宜上、こいつはネウロイバグスターとでも呼称しようか。

 

 あまりに異質で正体不明。ただ一つ分かっていることは……。

 

 

『タドルクエスト!』

 

 

 

「術式レベル2。変身」

 

 

 

『タドル・メグル・タドル・メグル・タドルクエスト~!』

 

 

 

 こいつが敵だということだ。

 

 

 

 飛彩改め、仮面ライダーブレイブは、ガシャコンソードを手に先手を仕掛けた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして……」

 

「ちょっとした縁でね。鏡先生も来ている。病気もすぐに」

「放っておいてくれて、よかったのに……」

 否定する。突き放すように漏れた呟き……。

 

 最早生きることなどどうでもいいとでも主張するように。

 

「……」

 

 しばし生まれる沈黙。

 互いに視線を合わすことができず、ぎこちない時間が流れていく……。

 絶対的な壁があった。

 均衡を破ったのは、桃であった。

「どうして、助けたんですか……あの時友達を犠牲にした私に、生きている資格なんてないのに。あの時瀬奈が伸ばした手を掴むことすらしなかった薄情者の私なんか、あのまま死んでいればよかったのに!!」

 

「っ……馬鹿なことを言うな!」

 

「だったら!どうしてあの時瀬奈は死んだんですか!!私が悪いのに、私がもっと注意していれば、瀬奈は無事だったはずなのに!私が、私が臆病で弱かったばかりに……」

 

 言い合いの果てに、ああ、やっぱり……と、翼は疑念を確信へ変えた。

 

 この子は、友達のことが大好きなんだ。

 大好きだから自分の責任だと思う。大好きだから後ろめたさを感じる。

 それは至って平凡で、最高に優しい想い……。

 

 

「──同じだ。私も奏を失い、それを自分の責任と感じて孤独に剣を振るう日々を過ごしていた……でもそれではダメなんだ」

 

 

 そうであるなら、そうであるからこそ、風鳴翼は、心から訴える。

 

「思い出せ。君の友達は、どうして身を挺てまで君を庇ったのか……胸の内にあったのは、後悔でも、憎悪でも、恐怖でもなかったはずだ!」

 

「!」

 

 少女は震える。思い出すのが怖かったから。炭となって散っていく友をただ見ているしかなかった事実と向き合いたくなかったから。

 

「わ、私は……」

 

「身勝手に死を選べばそれこそ、彼女の想いを裏切ることになる。生きるんだ。あの時、君は君の友達に未来を繋いでもらったのだから!!」

 

 翼は叫ぶ。瀬奈が遺したのは、絶望だけではなかったはずだと。

 

 桃は追憶する。瀬奈が、命尽きる最期の瞬間まで、自分を想ってくれていたことを。

 

 今こそ桃は向き合う。自分を責めるあまり、あの瞬間だけでなく、幸福の記憶すら否定してしまった自分と……。

 

 

 

 

『無事でよかった……』

 

 

 

 

「瀬奈……瀬奈ぁ……!」

 気付けば、頬は涙で濡れていた。

 そんな彼女を、翼はそっと抱きしめる。

「生きるから……あなたの分まで、精いっぱい生きるから……!」

 失った命は取り戻せない。でも、想いは永遠に生き続ける。

 少女を縛り付けていた枷は、ついに解れて消えていった……。

 

 

 

 

 

「その言葉を待っていた」

 

 

 

 

 

「! 鏡先生!?」

 

 ブレイブだ。だが鎧はボロボロで、明らかに消耗の色が見える。

 しかしそれは今本人にとって、些細な問題に過ぎなかった。

 ブレイブは変身を解いて、鏡飛彩の素顔を晒し膝を折って目線を近付ける。

 何より大切な患者の、真の本心を聴くために……。

 

「改めて聞く。君は、生きたいか?」

 

「……生きていたい。瀬奈の分も、長く、長くこの世界で生きたいです……!」

 

 結果……死を望む姿はなく。

 それは確かに、心からの言葉に違いなかった。

 

 

『────!!』

 

 

 と、その時。解読不能の言語を叫び散らしながら、ネウロイバグスターが工場内部の壁を突き破り三人を狙う。

 桃が臆する中、飛彩は口角を釣り上げると、スクっと立ち上がった。

 

 患者の願いは聞き届けた。ならばあとは、ドクターとしてやるべき使命を果たすだけだ。

 

「患者が治療を望んでいるのなら、どれほど困難であろうと完璧に治す。それが俺の主義だ!」

 

 

 

『タドルファンタジー!』

 

『Let’s Going King of Fantasy!』

 

 ブレイブはガシャットギアデュアルβを手に、ダイヤルを回した。

 

 「術式レベル50……変身!」

 

『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアーップ!』

 

 

 

『タドル・メグル・RPG!タドルファンタジ~!!』

 

 

 

 仮面ライダーブレイブ ファンタジーゲーマー レベル50

 

 魔王の装飾をふんだんにあしらった威風堂々としたブレイブ最強の姿。

 

 だが、飛彩はこれまでレベル50の力を使いこなせないでいた。

 今も変身状態を保っているだけで、体を蝕むパワーに思わず表情を歪める。しかし……。

 

 

(もう立ち止まらない。あいつに誓った約束は、必ず果たしてみせる!)

 

 

 それでも、前へ歩く。痛くても、辛くても、苦しむ患者を救うためなら、決して止まることはない。

 ドクターであることの、意志の強さ……。

 そうすることが、亡くなった恋人──百瀬小姫の願いだから。

 

 レベル50の力を経験値と精神力で完璧に制御してみせた花家大我。

 

 消滅した九条貴利矢が遺した技術で、レベル99となった宝生永夢。

 

 負荷は克服した。もう、遅れは取らない。

 

 

 

 そして、戦士は一人ではない。

 

 

 

 

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

 

 

 

 

 

 蒼き輝きを放つ、歌姫の少女。

 

 同じ痛みを知る少女。

 

 

「私も、共に。今よりも先に進むために!イグナイトモジュール、抜剣!」

 

 

 【アメノハバキリ】を纏い、さらに力を引き出す抜剣を行使した翼は刃を悪しき黒へと向ける。

 もう二度と失わない、失わせない。

 

 二人は並び立ち、ネウロイバグスターの前に立ち、決意の剣をその手に己が果たすべき使命を示した。

 

 

「今宵、我らが志すものは1つ!命を脅かす悪しき魍魎よ、この二振りの剣の前に散れ!」

 

 

「これより、バグスター共同切除手術を開始する!」

 

 

 

 ~月下美刃~

 

 

 「こいつは生半可な攻撃ではすぐ自己修復する。 弱点箇所は先の攻防では把握できなかった」

 「ならば先手必勝!」

 イグナイトモジュールによって大幅な能力強化が成されたシンフォギアは、適合者である翼をネウロイバグスターが捉えられない速度でゼロ距離まで到達させる。

 真下から豪快に斬り上げられたネウロイバグスターだったが、ブレイブの言う通り、手応えのようなものはなく、即座に傷口は修復されていく。

 追撃は悪手だと判断した翼は敵のキックをかわし後退。

 だが抜剣状態には時間制限がある。攻めあぐねいていては勝機を失う可能性があり、故に弱点が不明ながら彼女から打って出るしかない。

(さてどうしたものか……!?)

 その時、翼は奇妙な光景を目にする。

 先程とは違う、マントを羽織った兵隊のようなバグスターウイルスが軍団となってネウロイバグスターに襲い掛かった。

 「慌てるな……まずは腫瘍の位置を見つけ出す」

 バグスター達を操っていたのは、ブレイブ。タドルファンタジーは魔王が世界を征服するゲーム……その主人公に相応しい能力と言える。

 

 

『──!!!』

 

 

 

 ネウロイバグスターの咆哮と共に、ビームが壁を、地面を、草木を、金属さえも跡形もなく消し飛ばす。

 ブレイブのバグスターもそれに巻き込まれ消滅していく中、ブレイブはビームに臆せずビームの合間を縫って肉薄した。

 

『マッスル化!』『鋼鉄化!』

 

 途中のゲームフィールドに配置されているエナジーアイテムを獲得しながら、ガシャコンソードの一撃を叩きつける。

 ダメージは相変わらず虚無に消えていく。が、攻撃に際する衝撃の余波までは無効化することはできない。

「はぁ!」

 ネウロイバグスターがブレイブの衝撃波による攻撃を受けて大きく吹き飛ばされた。

 さらに間髪入れることなく、翼が上空より豪雨のような鋭い『千ノ落涙』を浴びせ、行動を妨げる。

 

 

 

 

 全身という全身を穴だらけにし、膝をつくネウロイバグスターの中央に、きらりと輝く核があった。

 

 

 

 

「「見つけた!」」

 翼とブレイブの声が重なる。

 

 

 

「いざ翼参る!譬え神でも、不義理は許さぬ!!」

 翼はアームドギアの二刀で今にもビームを放たんとするネウロイバグスターの両腕を斬り飛ばし、

 

「仏に逢うては仏を斬りて!喉笛かっさばく!介錯すら甚だしいっ!!下郎に遅れなど可笑しいっっっ!!!」

 

 赤い斑点模様すべてに小刀を突き刺し、攻撃の手を封じ、

 

「覚悟の太刀影の、錆に成りて還らむ!」

 

 核の収められた胸部装甲に刃を突き立てたが……。

 ネウロイバグスターは寸でのところで自ら体を引き、核への直撃を避けた。

 

「浅いかっ!……だが」

 

 止めとはならない一撃、しかし彼女は不適に笑う。なぜなら。

 

 

『ガッチョーン!キメワザ!ガッチャーン!』

 

『ガシャット!キメワザ!』

 

 

「俺に斬れないものはない!!」

 

 ゲーマドライバーのレバーを操作し、ガシャコンソードにタドルクエストガシャットを挿入するブレイブが背後まで迫ってきていたからだ。

 翼はそれを確認するやアームドギアを引き抜き、巨大化した一つの大剣を腰を落として構えた。

 

 ネウロイバグスターを前後で挟み込んだ二人は、ゼロ距離で爆発的なエネルギーを蓄えた剣をぶつけた。

 

 

『タドル・クリティカル・スラッシュ/フィニッシュ!!』

 

『蒼ノ一閃』

 

 

 ブレイブは右肩から左脇腹へ、翼は左肩から右脇腹へ力を込めて、斬る!

 

 

『!!!!!!!!』

 

 

 耐えられず肉体が吹き飛ぶネウロイバグスター。瞬間、赤く光る球形の核がむき出しになって二人の前に現れると、音を立てて破裂し、塵となって風に呑まれて夕空へと溶けていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日……拉致され、ネウロイの瘴気で体力を消耗していたため大事を取っていた桃は晴れて無事退院することとなった。

『S.O.N.G.』の許可なくシンフォギアを使用した翼とクリスの処分が気がかりであったが、今回は結果的にCRの助けとなったということで、日向審議官の意向を汲んでお咎めなしとなり、それを聞いたクリスは心の底からホッとしていたという。

 ただ一つ、宝生永夢の遭遇したローブ怪人の姿がどこにもなかったことだけが迷宮入りとなってしまったが、桃の証言を聞く限り、この世界にこれ以上の害はなさそうだと衛生省は判断し、捜査を打ち切ることになった。

 

 

 

 聖都大学附属病院 CR入口

 飛彩と永夢、それに翼が見送りのためこの場に集まり、翼はあの時間に合わなかったことを頭を下げて詫びた。

 しかし当然、桃は彼女を咎める気などなく、むしろ謝らなければいけないのはこちらだと同じように深々と頭を下げる。

 いやそれでも謝罪をとさらに頭を下げを繰り返し、ついにはお互い土下座の恰好となって周囲の目を引いたために永夢が慌てて二人を止め、飛彩はため息をついた……。

 

 

 

「この度はお世話になりました。鏡先生、翼さん、本当にありがとうございました」

 

 

 

 いくらか気の抜けるバタバタしたやり取りの後、桃は改めてそう言って、心からの笑顔を見せて帰っていった。

 比較的軽症で済んだ永夢は、桃が笑顔を取り戻してくれたことに満足そうに微笑み、それを成し遂げてくれた二人にお礼を言いながら研修の方へと戻っていく。……途中、何もないところでずっこけて小児科研修時代の看護婦に呆れられていたが……。

 

「……いつものことだが、あれでドクターなどと思いたくないものだ」

「フフ、確かに。でも存外、そういう人が何でもやり遂げてしまうものです。うちにもそそっかしい奴はいますし」

「まったくだ」

 軽く吹き出す二人。

 その時、翼の端末がバイブレーションする。

「……帰還命令か?」

「どうやらそのようです。もう行かないと」

「別にいい。もともとこちらから呼び付けたことだ。文句はない。それどころか礼を言わなければいけないくらいだろう」

「礼をしなければならない理由ならばこちらにも。彼女のことと真剣に向き合う機会ができたのですから」

 翼が右手を差し伸べた。一瞬、怪訝に思う飛彩だったが、

 

「剣を振るう戦場は違えど、私達は同じ想いを胸に戦う戦友です。頭を下げて丁寧な言葉を取り繕うよりは、これで十分かと私は思いますが……」

 

「…………」

 

 あまり慣れ親しむような行為を、飛彩は意識して経験したことがない。しかし二度の共闘を経て、風鳴翼と並々ならぬ絆を紡いだ今ならば分かる。戦友としての礼儀は、これで十分なのだと。

 

(悪い気はしないな)

 

 故に、無言でその手を握ることで、翼の言葉を肯定した。

 翼はキリッとした笑みを浮かべると、「それでは」と一言残して自分のバイクに跨ると、風のように病院を去っていった。

 

 

 

「鏡先生!」

「急患です!すぐにオペ室にきてください!!」

 

 

 彼の後ろで、看護師のみずきとさつきが慌てた様子で叫んでいた。

 

「すぐに行く」

 

 白衣を翻しながら、飛彩は向かう。全うすべき、もう一つの戦場へ。

 

 

 

 世界で一番のドクターになるために……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後に、鏡飛彩は百瀬小姫の命を巡る苦悩の果て、真の答えを得ることとなるのだが、それはまた別の話…………。

 

 

 

 See you Next crossover

 

 Story of BRAVE WITCHES & MASH with SUPER HEROES




半年以上経ってしまいましたが、第二弾も一旦プロットを練り直して鋭意製作中です。当時の予告から大きく変更することはないと思いますが、それでも多少は変わってくる可能性もあるのでご了承を。

それではまた遠くない未来に。今後ともよろしくお願いいたします。






ゆゆゆ良いなぁ(湧き上がる妄想)(構築されていく設定)(故に現行が疎かになる)(平成ジェネレーションズFINAL二回観た)(控え目に言って神)

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