歌、奏でし戦姫と花咲く勇者   作:アウス・ハーメン

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前の投稿からあろうことか4か月もたってしまいました。
誠に申し訳ないm(__)m

今回はゆゆゆ1期1話の冒頭部分のお話になります。

なかなか進まないこちらのお話ですが、どうか最後までお付き合いしてくだされば幸いです。


第1章7話 始まりの時

 香川県讃州市内にある幼稚園。

 そこでは現在勇者部の面々が園児たちへの催し物として人形劇を行っていた。

 

「やっとたどり着いたぞ魔王! もう悪いことはやめるんだ!」

 

「わしを怖がって悪者扱いを始めたのは村人の方ではないか!」

 

 人形劇の内容はよくある昔話の『勇者が魔王を退治する』といった感じのお話である。しかし今回勇者部の演じるそれは最終的には魔王を退治ではなく。

 

「だからと言って嫌がらせはよくない! 話し合えばわかるよ!」

 

 魔王を説得するというモノである。

 これは主に友奈や響たちの提案で当初のモノからお話の内容が変わった結果でもあった。

 ちなみに今回勇者役を担うのは友奈。魔王役は風である。

 

「改めてだが、魔王様を説得する終わりとは。あのバカたちらしい結末だな」

 

「ふっ、どのような者たちであろうとも手を差し伸べようとする。立花達らしいとは思わないか?」

 

「そりゃな。あのバカたちでなきゃ思い浮かばねえよそういうの」

 

 劇の結末をめぐる勇者部でのやり取りを知っているからか、舞台裏でBGMを主に担当しているクリスと翼からはそのような言葉が漏れ出ていた。

 

 人形劇は佳境を迎え遂に結末へと向かっていたのだが。

 

 ここでちょっとしたハプニングが勇者部面々を襲う。

 

「君を悪者には、しない!!」

 

 友奈がそう台詞を言った時、つい演技に熱が入り過ぎたのか。

 

「あっ……」

 

「お姉ちゃん…………」

 

「ドエライ事故デス……」

 

 友奈と風が人形劇に使っている張りぼてのステージを倒してしまったのだ。

 突然の、それも大失態と言えるような状況に慌てふためく友奈と風の2人。

 

「し……しまった~」

 

「ど……どうしよ風先輩……」

 

 幸いなのはあれだけ大きいにもかかわらず張りぼてが園児たちに当たらなかったことだろうが。劇はもう完全にグダグダな状況になってしまった。

 

「勇者キーック!!」

 

「ちょ、おまっ! 話し合おうってさっき!」

 

 どうにかこの状況を打開しようと友奈が突如風の演じる魔王に必殺の勇者キックをかます。

 しかし、そんなことは勿論台本にはない完全なアドリブな上に、話の展開からしても支離滅裂な友奈の行動に風はすかさず突っ込む。

 

「話し合うはずがいつの間にか戦いに……」

 

「友奈ちゃん。せめて脚本に従った内容にしてよ……」

 

「アハハ……」

 

 突発的過ぎる友奈の行動にはさすがに響や未来、調など他の勇者部メンバーも溜息を零さずにはいられない。

 

「何がどうなって……」

 

 とはいえどうにか人形劇を完結させなければいけない。

 劇自体はもう色々な意味でグダグダだが、幸いなことに園児たちは楽しんでいる様子でもある。ここは友奈の作った流れに乗るべきだろう。

 

「みんな、勇者を応援よ!」

 

 東郷を中心に園児たちにそう呼びかけ突然のハプニングにどうにか対応。

 

「ぐわぁあああ、皆の声援が私の力を弱らせる~」

 

「今だ、勇者パーンチ!!」

 

 当初の結末からは大きく外れ、おまけに張りぼてステージが倒れ人形を操る友奈と風の姿があらわとなっている、最早人形劇ともいえない代物と化してしまったこの催しものを。

 

「というわけで、みんなの力で魔王は改心し祖国は守られました」

 

「みんなのおかげだよ」

 

 どうにか最後までやり切ったのであった。

 

 

 

 

 

「よくもまああれで続けたもんだよな……」

 

「まぁ、途中でやめるわけにもいかなかったしな……」

 

「とはいえ、こりゃもう色々グッダグダじゃねえか……」

 

 幸いなことは突然のハプニングこそあったものの、催し物それ自体は園児たちの大盛況で終わったという事だろう。

 とはいえ、反省点ばかりの人形劇であるのは事実。後日勇者部では今回の劇に関してキッチリ反省会と再発防止に向けての対策を行うこととなったのであった。

 

 

 

 

 

 香川県讃州市の丁度高台付近にある、西暦時代は観音寺中学と呼ばれていたこの中学こそ、現在結城友奈、立花響らが在籍する讃州中学である。

 その中にある家庭科準備室というプレートの丁度真下に勇者部部室と書かれたプレートが掲げられている。ここが友奈や響たちが属するこの学校の部活動の1つ、『勇者部』の部室であった。

 

「こんにちわ~友奈及び東郷」

 

「響&未来&クリスちゃん、入りまーす!」

 

 その部室の扉が勢いよく開けられ、5人の少女たちがそう元気に挨拶を行う。

 

 直後に一人の、銀色とも形容できる色合いの髪の少女がヒヨコを思わせる髪型の少女に向かって何やらチョップをかました。

 少女たちの名はそれぞれ。

 

 赤毛で桜の花弁を思わせる髪飾りを付けた少女が結城友奈。

 その友奈の押す車椅子に腰かけている黒髪の少女が東郷美森。

 ヒヨコを思わせるような独特の茶髪の髪型の少女が立花響。

 銀色の髪を細長いツインテールにしている少女が雪音クリス。

 そして東郷と同じく黒髪だが白い大きなリボンを付けた少女が小日向未来である。

 

「へぶっ!」

 

「たく! お前はなぁ~」

 

「痛いよクリスちゃん……」

 

「いくら部室に付いたからって挨拶にしては声がでかすぎだ!!」

 

 どうやらそのクリスは教室内に入る寸前でのこの少女、立花響の挨拶時の声が大きかったことに腹を立てたらしい。

 

「お疲れ様です」

 

「相変わらずねクリスと響は」

 

「お疲れデース!」

 

「お疲れ様です」

 

「みんな、よく来たな」

 

 響たちの姿に気づいたのかすでに部室内にいた部長の犬吠埼風と同学年の風鳴翼。

 そして本年度、讃州中学の新入生となり晴れて正式に勇者部に入部した風の妹の犬吠埼樹とその樹と同級生である暁切歌、月読調の5人も挨拶を返した。

 

「昨日の劇、大成功でしたね」

 

「おい、お前はアレを成功というのか!?」

 

「それはクリスに同意よ。何もかもギリギリだったわよ……むしろNG……」

 

「でも、みんなが喜んでくれたから、結果オーライですよ!」

 

「友奈ちゃんのアドリブで盛り上がりましたしね」

 

「無理を無理で押し通すとは、結城もやるものだ」

 

 話題となったのは先日幼稚園で行った催し物の人形劇に関して。友奈や響は結果として園児たちが喜んでくれたという事で成功と口にしたが、正直な話し風やクリスの言うとおりあの盛り上がりは結果的にであって人形劇として考えたらまごうことなき失敗と呼べるものであった。

 

「底抜けにポジティブですよね友奈さんは」

 

「ポジティブすぎるとは思うけど……」

 

「でもくよくよしてても始まらないデース。みんなが喜んでくれたのならそれで良かったってことデスよ」

 

 それでも何事もポジティブにとらえる友奈の姿勢は他の勇者部メンバーからも評価されている。

 

「さて、気を取り直して、本日のミーティングを始めるわよ!」

 

 一通り話し終えると風は今日の勇者部の活動内容を響、友奈たち勇者部全員に説明し始めた。

 風が経つ背後の黒板にはかわいらしい子猫の写真が複数枚貼られている。

 

「未解決の飼い主探しの依頼。どっさり残ってるわ」

 

「こりゃまたずいぶんきたもんだな」

 

「大変そうなのデス」

 

 それは勇者部がかねてから行っている子猫の飼い主探しの案件である。

 先日の人形劇の練習やらセットの制作やらで滞っているうちにどっさりと増えてしまっていたのだ。

 

「ということで、今日から飼い主探しの強化月間にするわよ! まずは東郷と未来! ホームページの強化お願いね!」

 

「了解です!」

 

「PC以外でも携帯なんかからもアクセスできるよう、モバイル版も作ります!」

 

 風の指示を真っ先に受けたのが東郷と未来、この勇者部の実質頭脳ともいえる2人である。

 東郷と未来はさっそく2人で勇者部のホームページに飼い主探しに関連したページの制作に取り掛かった。

 

「それじゃ、私たちはどうしようか」

 

「海岸とか神社とかにお掃除のお手伝いもよくいきますから」

 

「そこでもいろんな人たちにお願いするデース!」

 

「それ、名案ですね」

 

「うん! それじゃそうしようか!」

 

 一方で響、調、切歌、樹、友奈の5人はよく清掃活動のお手伝いに行く海岸やら神社やらで飼い主になれそうな人たちに声掛けなどを行っていくことを決めたようである。

 実際普段から顔見知りの人たちなどに助けを求めるというのはなかなか有効な手ではある。

 

「それじゃアタシらはどうする先輩?」

 

「うむ、ポスターなどを作って張り出すのはどうだろうか」

 

「それは名案っすね」

 

「うむ! 猫のイラストを描いて張り出せば興味を持ってくれる者たちもいるかもしれん」

 

「まぁ、その場合分かり辛いような現代アートまっしぐらな絵柄はご遠慮願いたいものですが」

 

「むっ!? どういう意味だ雪音!」

 

「さぁね~」

 

 翼とクリスは子猫のポスターを制作し張り出すことを提案。この際クリスが何やら翼相手にポスターに描く子猫のイラストに関して何やら翼相手に口にしていたようだ。

 

「ホームページの強化終わりました!」

 

『はやっ!』

 

 と、そうこう話している間に東郷と未来の2人はホームページの強化をあっさり終わらせてしまったようである。

 

「しかも見やすい!」

 

「東郷は兎も角、小日向もやるものだなぁ……」

 

 ものの十数分でホームページの強化を終えた東郷と未来の手腕に舌を巻く勇者部の面々であった。

 

 

 

 

 讃州中学からそれほど遠くない位置にあるうどん処『かめや』。

 勇者部部員たちもよく通う有名うどん屋の1つであり、味も絶品。特に勇者部メンバーは皆、毎日の部活帰りに小腹がすいた時など足しげく通っている。

 本来は異なる世界出身であった響たちもこの世界のうどんの味には慣れており部活帰り以外でもよく立ち寄るようになっていた。

 

「ハイお待ち!」

 

「おっし!」

 

「来た来たぁ!」

 

「響、これで3杯目……」

 

「風先輩もですね……」

 

 なお、これはもはや勇者部メンバーにとって毎度の事なのだが、風と響はかめやに来るとこのようにうどん、それも極めてボリューミーな肉ぶっかけ、かなりの大盛りであるにもかかわらず最低3杯は食べる。

 響は元の世界でもあの世界における響たち御用達のお好み焼き屋さん『フラワー』のおばちゃんから人の3倍食べると言われていたから未来たちは分かっていたが、風もそれに負けず劣らずの大食感であり、毎回の如く勇者部員たちを驚かせと気に呆れさせていた。

 

「うどんは女子力を上げるのよ!」

 

「そうそう! だから毎日3杯は当然です!!」

 

 ちなみに当の本人たちはこう語っているものの、いつも大食いしてお腹をパンパンに膨れさせるそのさまを見てとても女子力が上がっているとは言えるものではないが、誰も突っ込むのも野暮だと口にはしない。

 

「あ、それはそうと。そろそろ文化祭の出し物決めないとね」

 

「はぁ? まだ4月だろ!? 早すぎやしないか部長」

 

 そんなこんなでおいしいうどんに舌鼓を打っている中、風がそのようなことを切り出した。クリスがそのことに疑問をぶつけるが、風曰く時期が迫ってバタバタし出すのもアレだから今からきちんと決めておきたいとのことだった。

 

「結局、去年はバタバタしちゃって何も手を付けらんなかったからさ」

 

「発足1年目だったのだから、無理もないさ」

 

「まぁね、今年は猫の手が3つも入ったことだし、ちゃんとやりたいのよ」

 

 そう言いつつ樹を撫で調や切歌たちへも視線を送る風。

 理由を聞き一次ぼやいたクリスも風の真剣さが分かったのか静かになるほどと頷いていた。

 

「とはいえ、何がいいモノやら」

 

「できるなら一生の思い出になるものがいいよね」

 

「娯楽性とかのあるモノの方が、大衆も喜びますよね」

 

 みんなもここにいる間に何かしらいいアイディアをと首をひねるが、中々良いアイディアは浮かばず。

 

「こりゃ、みんなの宿題ってところね。各自考えておくように」

 

 結局、風がそう告げてこの場は解散となる。

 

「すみません、おかわりお願いしまーす!」

 

「あ、私ももう一杯!」

 

 なお帰り際に風と響が4杯目を注文し、今一度他勇者部メンバーを呆れさせたのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 すっかり空は茜色に染まり、亀屋の前には一台の軽ワゴン車が止まっていた。足の不自由な東郷が利用しているデイサービスの車であった。

 友奈、東郷、響、未来の4人は家が同じ方向のため一緒に車に乗り込み、勇者部メンバーはここで解散となった。翼とクリス、調と切歌もそれぞれ別方向であるためしばらくは残った6人で歩いていたものの、しばらくして別れ現在はイツキと風の2人だけで帰路についている。

 

 そんな中、風の携帯に1通のメールが届いた。

 

「…………」

 

 そのメールの内容に怪訝な表情になる風。

 

「お姉ちゃん?」

 

 そんな風の様子に心配になったのか、樹が声をかけてきた。

 

「ううん、何でもない」

 

 慌てて平静を取り繕うも、やはり不安な様子は伝わっていたのか樹はじっと風の顔を見つめている。

 

「ねえ、樹……お姉ちゃんに隠し事があったら、どうする?」

 

「えっ!? えっと、よくわからないけど……」

 

「例えばね、甲州勝沼で援軍が来ないのに戦えーって言わなきゃいけなかったとして……」

 

「近藤勇?」

 

 我ながら何を言っているのかと風は苦笑いを浮かべるが、実際はそんな冗談が通じるたぐいの話ではない。風が気にしていたのは先ほど形態に来たメールに関してのモノだったのだから。

 しかし、内容が内容故に妹の樹は勿論、他の勇者部の面々にも話せることではなく、今は風一人がその胸の内に抱えていることでもあった。

 

「アハハ……何言ってるんだろう……ごめんね樹――」

 

「ついていくよ、何があっても。お姉ちゃんしか家族はいないんだし」

 

「樹……ありがとね」

 

 今は何も言えない、しかし大切な妹のその言葉。それは少しだけ風の心を軽くした。

 

(そうそう、当たるものじゃないよね……)

 

 できることなら、この日常がいつまでも続いてほしい。それが今、風が心の奥底で強く感じ、思っていたことでもあった。

 

 しかし、運命はそんな少女たちの思いとは裏腹に巡ってくる。

 

 

 

 

 少女たちがこの世界の現実に直面するのは、そう遠い未来の事ではなかった。

 

 




次回はついにバーテックスとの戦闘に入る予定でいます。
正直、いつくらいにできるかは未定ですがどうかしばしお待ちをm(__)m

なお今回は解説及び次回予告はありません。

理由は今回のお話がゆゆゆの1話を基準としているためです。
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