歌、奏でし戦姫と花咲く勇者   作:アウス・ハーメン

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本年度初投稿となります。ゆゆフォギア第1章3話。
今回はゆゆゆ1期10話をベースとしたお話。風先輩との出会いの話となります。


第1章3話 勇者部の少女

 市立讃州中学校。

 かつて西暦と呼ばれていた時代は観音寺中学校という名であったこの学校の歴史は長い。また同時代においてはこの中学校の生徒たちがとある老齢の女性の危機を救ったとされ、観音寺市と呼ばれていた当時の自治体から生徒に感謝状が贈られたこともあるという。

 

 この日、この学校は新たに仲間となる生徒たちが、期待と希望を胸に入学式を迎えていたのであった。

 そしてその式が終わり各々が自分たちのクラスとなる教室へと向かい終えた時。

 

「立花さ~ん!」

 

 そのクラスの担任となった女性教師の怒号が鳴り響くのであった。

 

「えっと……この子がですね、木から降りられなくなってて……」

 

「それで~?」

 

「きっとお腹を空かせているのかなぁ~って……ハハハ……」

 

「立花さん!!」

 

「うひッ!」

 

 それは彼女、立花響にとっては元の世界の恒例行事であったもの。

 それがあろうことかこの世界、この学校でも見事に再現されてしまったのである。

 

「響ちゃん……またなのね」

 

「もう、響の馬鹿……」

 

「アハハハ……」

 

 そしてそれを、既に自分たちの席についていた親友3人は、苦笑いを浮かべながら見守っていたのであった。

 

 

 

 

 

 初日の授業を終えた響は、今朝の事で担任教師に、それも入学初日に見事な雷を落とされたのが効いたのか、思い切り机の上に突っ伏していた。

 

「はぁ~~~~~入学初日にクライマックスが百連発気分だよ~私呪われてるぅ~」

 

「半分は響のドジだけど、もう半分はいつものお節介でしょ?」

 

 元の世界にて、リディアン音楽院に入学した当時にしたやり取りが、ここでも繰り広げられる。響にとっては災難だが、未来にとっては久方ぶりの響との日常、正直悪い気はしていなかった。

 

「人助けと言ってよ未来。人助けは私の趣味なんだよ」

 

「響のは度が過ぎてるの」

 

「それに、今朝のは人ではなく、猫助けでしょ?」

 

 そのやり取りに気兼ねなく入ってくる人物が2名ほど。

 この世界で知り合った、響と未来の丁度反対となりとその隣に住むクラスメイトにして、この世界においてはもはや無二の親友となった結城友奈と東郷美森である。

 

「でも、響ちゃん流石だなぁって思うよ。困っている人がいたら、どんな時でも勇んで助ける。まるでヒーローみたい」

 

「えへへ~友奈ちゃんは分かってくれるんだぁ~」

 

「こら響、友奈ちゃんを巻き込まないの」

 

「友奈ちゃんも、そんなことで遅刻なんてしたら、恥ずかしいわよ?」

 

 友奈は響のその人助けを勇んでやる姿に羨望の眼差しを向けるが、一方で未来と東郷の2人からはきっちりお説教が飛んできた。

 ここだけの話、実を言うと友奈もかなり頻繁に人助けなどの善行を行っており、未来と東郷が引っ越してくる前は、響とともに日夜町で困っている人がいたら人助けをすすんでしていたのである。

 

「友奈ちゃんも響ちゃんも、人助けとなると前後不覚というか」

 

「後先考えないもんね、見てるこっちは冷や冷やするんだよ」

 

 そんな、渚突猛進な親友達に頭を抱えることもあるが、それでも未来も東郷もそれらが一番彼女たちらしいと、親友たちの度を越した人助けを時には手伝ったりしたりもしている。

 

 それから1週間は何事もなく平和な毎日を響、友奈たちは過ごしていた。

 響は相変わらず、本人曰く趣味の人助けを行い始業ギリギリの登校で雷を落とされることもあったが、元の世界同様の充実した毎日を送っていた。

 

 そんなある日の放課後。

 

「友奈ちゃん、チアリーディング部から誘われてたんでしょ。入らないの?」

 

 東郷が何気なくそう友奈に尋ねていた。

 今日は4人で讃州中学の部活を色々と見学して回っていたのだ。

 

「う~ん、押し花部からの誘いだったら大歓迎なんだけど」

 

「そんな部活ないでしょ?」

 

「アハハ、響ちゃんはどう?」

 

「う~ん、私も正直どこにしようか悩んでるなぁ。未来はどうするの? 小学校の時は陸上やってたけど、陸上部に興味とか」

 

「色々とあって流石にブランクがなぁ。この辺は結構強いところだし」

 

 とはいっても、4人ともどの部活に入るか決めかねている様子であった。

 そうして、あーでもないこーでもないと互いに話しながら構内を徘徊していると。

 

「貴方たちにぴったりの部活があるわ!」

 

 横から突如声をかけられた。

 一体何事かと声のした方を向くと、そこにはウェーブのかかった黄色に近い茶髪の長い髪をシュシュで結ってツインテールにしている、響たちよりも一回りほど背丈の高い少女が、何やら片手に多数のチラシを手にし立っていた。

 

「貴方ちにぴったりの部活があるわ!」

 

「ふぇ!?」

 

「何故2回!?」

 

「そりゃ大事なことだから」

 

「そんな、お決まりっぽく言われても……」

 

 中々さばけた印象のその少女に響、友奈たちは少々呆気にとられる。

 

「アタシは、2年の『犬吠埼風』、勇者部の部長よ」

 

『勇者部?』

 

 その少女が発した聞きなれない単語に、頭の上で『?』マークを浮かべながら首をかしげる響たち。

 

「とってもわくわくする響きです!!」

 

「「「え゛ッ!?」」」

 

 そんな中唯一人、友奈だけが風のその言葉に目を光らせるのであった。実はこの少女、結城友奈は小さいころからヒーローや勇者という言葉に憧れがあり、それを聞くとある種前後不覚になるという癖があったのだ。

 今回のこの犬吠埼風の言った『勇者部』という単語は、友奈にとってはまさしくドストライクなのである。

 

「おぉ~フィーリングあうねぇ」

 

 友奈のその様子に気分が乗っているのか、目の前の上級生である風はその『勇者部』なる部活の活動内容の描かれたチラシを手渡してきた。

 そこに描かれていたのは、非常にわかりやすくまとめられた活動内容の数々。

 

「勇者部の活動は、世のため人のためになることをやっていくこと」

 

「要するに、人助けってことですか?」

 

「そうそう、話が早くて助かるわ」

 

 それはまるで、普段響や友奈が積極的にやっている趣味を部活動としてやる部という事ではないだろうか。

 

「世のため人のため……なんてすばらしい響き!!」

 

 そして、それに食いついた二匹目の魚がここにいる。それは言うまでもなく、人助けを趣味と語る、立花響である。

 

「おぉ~さては君は、日々人助けに興じておる噂の新入生くんかぁ?」

 

「はい! 立花響12歳! 誕生日は9月の13日! 血液型はO型! 趣味は人助けで大好きなものはご飯&――」

 

「はい響そこまで!」

 

「ウェ!? 未来~?」

 

「ここ廊下のど真ん中だよ、そんな誰が聞いても恥ずかしい自己紹介のオンパレードは人のいないところでやってよね」

 

 響も友奈同様、趣味に走ると前後不覚になるばかりか、響の場合は後先を考えるということがあまりないので、このような暴走は茶飯事である。もっともそんな親友と長いとこ付き合っている未来にとってはもはや日常的なことなので、手綱のにぎり方もしっかり心得ており、今回も響の暴走を見事に止めて見せるのであった。

 

「すみません先輩、私の親友が失礼なことを」

 

「いやいや良いって、それよりどう? 興味があるなら一度うちの部活覗いてみなよ。と、言ってもまだ申請すらしてない出来立てほやほやなんだけどね~」

 

『へっ!?』

 

 突然の風のぶっちゃけ発言に今一度響たち一同が固まる。

 

 その後風からしっかり事情を聴いたところ、どうやらまだこの勇者部は部として正式に学校側から認可されていない、つまり風が勝手に始めただけの活動でしかなかったのだ。

 そのことに目を光らせていた友奈と響の親友2人は呆れて溜息をつき、風に関しては生真面目なその2人から上級生であるのにきっちりお説教を食らったのである。

 

「あ……あなたたち2人の親友って……こんな怖いのね……」

 

「ア……ハハハ……」

 

「ご愁傷様です……」

 

 とにもかくにも、この風曰く勇者部をキッチリ部として認可してもらうにはまずは部員を集めなければならないのだが、それに関しては心配無用であった。なぜなら人助けが主な活動方針の部活。すでに友奈と響の2人は入部する気満々であり、先ほど説教を食らわせた未来と東郷もそんな親友たちの手助けがしたいと、入部を決めていた。

 

「何はともあれ、これで私たち勇者部の力は5倍になったわ! それじゃ早速部の申請してくるし、活動に関しては多分早ければ明日からできるから、今日はこれにて解散、以上!」

 

 最後に風はそれだけ言い残すと、瞬く間に部の新星のために職員室へと駆けていくのであった。

 

「名前の通りの嵐のような方でしたね」

 

「私は響が3人に増えたって気分だったよ」

 

「なんだかすごく楽しい人でしたね」

 

「うん! きっとこれからもっと楽しくなるよきっと」

 

 まだ少しだけ不安な感情の残る東郷と未来だが、響と友奈のその言葉には素直に納得できた。

 確かに少し、というか結構大雑把な印象が強い犬吠埼風という少女だが、悪い人ではないことは素直に理解できた。何より人助けを活動の方針とするその姿勢からもそれはわかる。

 実際、多少の不安はあってもどこかあの人なら大丈夫だと思える何かをあの風という少女は持っているのだと未来も東郷も感じていた。

 

「さて、それじゃあそろそろ帰ろうか。もう日も傾きかけてることだし」

 

「そうね未来ちゃん、友奈ちゃんと響ちゃんも」

 

「うん、東郷さん!」

 

「了解だよ~未来!」

 

 4人はそうして、これまでと変わらぬように仲良く、自分たちの家へ帰る場所へと向かうため学校を後にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜の小日向家。

 未来は入浴と夕食を済ませると、いつものように寝るまでの空いた時間を潰す目的で親友とSNSをやろうとスリープモードとなっていたスマホを開く。

 

 だが、そこには彼女にとって、出来ることなら来てほしくはなかったメールが1通届いていた。

 

【宛先:小日向未来様

 差出人:大赦巫女部・安芸

 

 先日、新たなる神託が下りました。小日向様に与えられしお役目は、嘗てと同じお役目に当たる勇者となる少女たちの御付きとなります。

 お役目のその日が来るまで、勇者様方と共にお役目に備えるようお願いいたします。

 

追伸:――】

 

 未来はメールを読み終えると。静かにそのメールの削除ボタンを押し、メールを完全に消し去った。

 

「わかっています。それが私に与えられた役目だってことも」

 

 未来はそう一言だけ呟くと、隣にある親友の家の方を見つめる。その瞳は、昼間学校での彼女のモノとは違う。

 

(あんな悲劇、絶対に繰り返したりなんかしない。響も、友奈ちゃんも……◆◆ちゃんも絶対に守って見せる)

 

 それは決意に満ちた強い眼差しであった。

 

 明るく暖かな日常の中で、少女たちが担う過酷なお役目の時は――。

 

 

 

 

 

 静かに差し迫っているのであった。




遂にゆゆゆ2期、勇者の章が完結を迎えました。
感想等は活動報告の方に事前に乗せましたのでこちらでは簡潔に一言だけ。

「彼女たちは、正しく勇者であった」


では、今回から次回予告的なものを乗せようかと思います。

「転校生?」

「こんなに早くお二人がこちらに来るなんて……」

「これで勇者部の力は、さらに倍増ってことね」

「ようこそ、勇者部へ!」

第4話 BAYONET CHARGE
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