最初の方は本作での勇者部5カ条誕生秘話。
後半は響たちとともに転生した紅い方の子が登場いたします。
響たちが犬吠埼風という上級生に誘われ入った勇者部という部活。人助けなどいわゆるボランティア活動を主に行う子の部活動。
設立してから間もないという事で、当初は設立者である風とともに色々と奔走する毎日であった。しかし、パソコン関係に強い東郷美森がホームページを立ち上げ、対応能力や管理能力に長ける小日向未来が積極的に依頼を引き受けたり、交渉したりなど奔走し、響や友奈の持ち前の明るさと一生懸命さを発揮し積極的に依頼をこなしたこともあり、次第に学校内でもこの部活は認知されるようになった。
それどころか、ホームページを見た校外からもその一生懸命さが伝わったのか依頼が徐々にだが来るようになり、勇者部の名は次第に世間に広まりつつある。
そんなある日、風はじめ響、友奈等勇者部の現部員たちは部室の一角に集まり、何やら話し合いを行っていた。
「さて、我等勇者部も今や世間様に広く知れ渡るようになったことだけど。ここでこの際出し、我らが勇者部のルールってか決まり事みたいのを作ろうかなって思ってね」
風がいつになく部長らしい、そのような発言を行う。
「そういえば、これまで考えたこともありませんでしたね」
「設立して間もなくの頃は、色々忙しかったもんね」
「タイミングとしては、良いのではないのでしょうか」
響、友奈、未来、東郷らは風の意見に賛成の意を示す。そこで早速5人はこの勇者部のルール、というか簡単な決まりごとのようなものを考え始めた。
「よし、それじゃあまずは最初のはどうする?」
「最初ですから、挨拶に関することなどどうでしょうか?」
東郷がまず風にそう提案すると、風は用紙にマジックでこう書いていく。
一、挨拶はきちんと
「早速一つ目ね」
「良いですね」
「人助けの部活ですから、まずはきちんと挨拶ですね」
早速最初の決まりができ皆上機嫌になる。
「それじゃ今度は私から」
次に友奈が風に提案を行う。
「なるべく諦めないっていうのはどうですか?」
「なるほど」
「勇者部は誰かのためになることを、勇んで行う部活なんですから、依頼してくる人たちって本当に困ってるって思うんです。だから、そんな人たちの依頼、出来るだけ頑張りたいんです」
その友奈の提案に風も納得し、2つ目の決まりを用紙に描く。
一、なるべく諦めない
「では、3つ目は私から行きます!」
「おッ! じゃあ響、言ってみなさい!」
「変なことは言わないでね響」
3つ目は響が提案した。
「私の昔の師匠からの教えです! 『ご飯食べて、アニメ見て寝る! 女子力の鍛錬はこれで十分!!』――」
「響~」
「あ、えっと……すみません」
響の提案に未来は先の忠告が全く意味をなさなかったことに頭を抱えつつ、当の親友に凄んで見せた。
だが一方をそれを聞いた風はというと。
「な……女子力……なんと素晴らしい響き!!」
どうやらお気に召したのか、勢いそのままに響のこのおバカ発言を用紙に書き足そうとしていた。
「ちょっと風先輩! これ響の冗談なんですよ!?」
「そうです風先輩! 決まりなんですからちゃんと考えた方が良いのでは!?」
それを慌てて止める未来と東郷の2人。
「でも、響ちゃんの師匠さんの言うことも一理あると思うな私」
「まあ、確かに間違ってるとは言い切れないわね」
「なら、表現をもう少し砕いて……これでどうですか?」
すると友奈がある種の妥協案のようなものを出し、未来がそれを用紙に書いていった。
一、よく寝て、よく食べる
それでついに決まりが3つになった。
「よし、他に何かある人は挙手!」
「なら、今度は私が良いですか?」
4つ目の決まりの提案を行ったのは未来。
「勇者部が、世のため人のためになることを行う部活だってことは、ちゃんと分ります。でも、だからこそなんですけど、みんな自分たちだけで抱え込んだりせず悩みがあったら相談してほしいんです」
「なるほど、流石未来」
「未来ちゃんの言うとおりね」
「それじゃ4つ目はこれですね!」
「よし! じゃあ書くわね」
風は未来の提案を受け早速4つ目の決まり事を用紙に書いていった。
一、悩んだら相談
「これで計4つね、あと一つあれば勇者部5カ条って感じでカッコいいんだけどなぁ」
これで一応の決まりはできたが、風はまだ満足してはいない様子。
そこで風、友奈、東郷、響、未来の5人はみんなで残り一つの決まり事を考え始めた。そしてしばらくしてから東郷がこのような提案を口にした。
「なせば大抵、何とかなるというのは?」
「おぉ~!」
「なんだかいいですねそれ」
「うん、流石東郷さんだよ!」
「うんうん、私たち勇者部にぴったりの決まりじゃない。これで完成っと!」
そしてついに、勇者部の決まり事――
名付けて『勇者部5カ条』が完成した。
一、挨拶はきちんと
一、なるべく諦めない
一、よく寝て、よく食べる
一、悩んだら相談!
一、なせば大抵なんとかなる
それは正しく、この勇者部を象徴する決まりへと、その後変わっていくことになる。
勇者部の活動も軌道に乗り始め、最近では校内以上に校外の活動も多く依頼が入るようになってきた。特に多いのが幼稚園などでの子供会の手伝いや、老人会の方々へのオリエンテーション、河原や公園の掃除など、まさに世のため人のためになる活動である。
普通であれば学業を優先する中学生、トラブルなどを避けたがる学校という組織の在り方故校外での活動などは学校側もこの神世紀の世と言えどあまりいい顔をしてはくれないことが多いのだが、彼女たちの直向きな姿勢に加え、部員である少女たち5人の熱意もあって比較的好意的に捉えられている。
「このくらいで良いですかね?」
「ああ、助かったよ、人手が欲しいと思っていたところだったんでねありがとうお嬢ちゃんたち。お疲れさん」
『お疲れ様でーす!』
今日も勇者部の5人の少女は街のとある公園の清掃活動を手伝っていた。単純に公園を綺麗にするだけなら、専門の業者を雇うのが費用対効果など効率面を考えればそちらの方がはるかに早くて良いのだが、こういったボランティアなどによる清掃活動をあえて行うのは、人々の繋がりを何よりも強く尊重すること、それこそが神樹様により護られる人々のより良い在り方であるという、神樹信仰と道徳教育をより深く重視するこの世界ならではともいえる。
何よりもみんなで使う公園だから、街のみんなで綺麗にしようというごくごく当たり前の人々の思いからの物も強い。
「しっかし、こう頑張ってくれたからなぁ、おじさんたちで何かお礼がしたいんだが」
「いえ、気にしないでください。私たちも部活動でやってることなんで」
「そうかい? でも若いのに君らはよくやってくれたよ。今どきはこういう活動もあまりやらないからなぁ、ましてや若者なんて中々参加してくれねえもんだし」
それに直向きに汗をかきながら公園を綺麗に清掃する勇者部の少女たちの姿は、同じくこのボランティアに参加する大人たちにとって励みとなっていた。
学校に勇者部の活動にと、響と友奈たちは慌ただしくも楽しい日常を満喫していたそんなある日、既に年も明けお正月を家族と共に過ごした生徒たちも再びの学校生活に戻っていたそんなとき、響と友奈、未来、東郷の通うクラスでとある事件が起きた。
「転校生?」
響がそう首をかしげながら未来に話しかけていた。
「うん、実は年明けの前にすでに決まっていたんだって。でも諸々の手続きとかで今日まで引き延ばしになってたって先生の話を聞いたんだ」
「こんな時期に転校生ですか」
「いったい誰なんだろうね」
そういつもの4人で話していると、丁度担任の先生が入ってきたのが見え、響たちは慌てて自分たちの席へと戻っていった。
「おはようございます。皆さん」
教壇に付くと担任教師は軽く挨拶を行う。
「突然ですが、このクラスに新しい仲間がやってきました。どうぞ、入ってきなさい」
響と友奈たち4人はあらかじめ知っていたが、他の生徒たちは今日までそのことを知らなかったため、にわかに教室内はざわめいている。しばらくすると担任教師の言葉に応じ一人の女子生徒が教室内に入ってきた。
(えぇっ!?)
その女子生徒を見た響は心の中で驚きの声をあげていた。
その女子生徒は銀髪の髪を赤いリボンで細くツインテールにした、端正な顔立ちの誰もが美少女と形容してもおかしくない容姿を持つ少女であった。
響はその少女に見覚えがあった。
忘れるはずもない。何せその少女は――。
「雪音クリスさん。今日から皆さんと同じクラスになります。雪音さん、みんなに自己紹介を」
「雪音クリスです。よろしくお願いします」
立花響にとって大切な戦友の一人なのだから。
突然の転校生に響たちのクラスはあっという間に騒がしくなる。休み時間ともなればどの世界でも共通しての事なのか、転入生にとってお決まりと言える洗礼を当のクリスも盛大に浴びせられていた。
「ねえ、雪音さんって前はどこで暮らしてたの!?」
「綺麗な髪だよね」
「お父さんとお母さんって、有名な音楽家なんだってね!?」
それを少し離れた位置から響、友奈たち4人は眺めている。
「ねえ、止めなくていいの?」
「それは……山々なんだけど……」
友奈と東郷はクリスの紹介の後、1限目の授業が終わった休み時間の時に響と未来から転入生であるクリスに関して少しばかり聞いていた。
もっとも、響と未来にとってはこの世界でのクリスの人となりに関する事しか話さなかったのだが。
この世界のクリスは両親が健在であり、またその両親は元の世界でのクリスの両親同様、父がバイオリニスト、母が声楽家であり、四国ではかなり有名な音楽家と名が知られている。
また雪音家はこの世界において神樹を祀る組織、大赦とも深いかかわりのある名家の1つだという。その為か普通の転入生以上にクリスは多くのクラスメイトから質問攻めにあっていた。
「悪い、少し外してもらえないか? ちょっと話したい奴らがいるんだ」
「え? ええ、分かったわ雪音さん」
「後で色々聞かせてね」
「ああ、いいぞ」
すると何やらクリスが周りの生徒たちを下がらせ響たちのいる方へやってきた。
「あ、クリスちゃん」
「立花響と小日向未来、ちょっと一緒に来てくれるか?」
「あ、うん……」
「良いよクリス。ごめんね友奈ちゃん、東郷さんも……少し外すね」
響と未来は友奈、東郷の二人にそう理を入れると、クリスと共に教室から出ていく。
「いったい何のお話なんでしょうか雪音さん」
「ちょっと気になるよね」
友奈と東郷の2人は響たち3人の事を気に掛けるも、何か大切な話でもあるのだろうと、彼女たちの帰りを待つことにした。
教室から出た3人がいたのは、丁度階段脇にある人目の付きにくい一角。そこでクリスと響、未来の3人はいうなればこの世界に転生してから起きたことを簡潔に話し合っていた。
「驚いたよクリスちゃん、まさか私たちと同じクラスになるなんて……もしかして留年した?」
一言二言多いのが響の悪い癖。当然それはクリスを思い切り怒らせることになる。
「ふざけんな! この世界じゃ何でか知らないけど、アタシの年齢がお前らと一緒なんだよ!」
「ふぇ!? そうなの?」
「うん、私も最初驚いたよ。前に通っていた小学校でも同じクラスだったし」
なんと、この世界ではクリスと響、未来が同い年なのだという。
元の世界でのクリスは響、未来よりも1歳年上であったので最初転生したての頃、未来はそのことに驚いたと語る。
「でも、そのおかげで情報のやり取りとかにはあまり困らないね、3人一緒のクラスだから」
「まあ、神樹様もその辺を配慮でもしたんだろうな。余計なことをと思うが。それに……」
「クリスちゃん?」
「何でもねえよ。それより、そっちはどうだよ?」
クリスは現在までの響たちの近況を聞く。
「今は普通に過ごしてるよ」
「そうだ、こっちで仲良くなった友達と一緒の部活やってるんだ。よかったらクリスちゃんもどうかな?」
「なんだよ部活って」
「フフフ、その名も勇者部っていうんだ!!」
「勇者部~?」
クリスは響の口から出た言葉に若干呆れ顔になる。
「そ、世のため人のためになることを勇んで行うっていう、もう、この世でこれ以上ないって楽しい部活なんだよ!!」
響は今現在自分が入っている部活に関して、拳を握り締め正に熱く語る。だが一方その話を聞いていたクリスはというと。
「なんだそりゃ、まるでお前が毎回やってるスクリューボールなことをそのまんま部活にしましたみたいな感じじゃねえか」
「流石クリスちゃん! 分かってるぅ!」
「分かりたくねえよ……」
「アハハ……」
響とは真逆に盛大に呆れていた。それもそのはず、響の美徳は言うまでもなくどのような苦難も何のそのといった感じでまっすぐなまま解決しようとすることや、彼女自身趣味と語る人助けなのだが。クリスはその響きの度を超す人助けに心底げんなりすることが多かった。
まさかこの世界で迄そのいわゆる『悪い癖』を発揮してるばかりでなく、まさかそれを部活動でやっているとは、しかもそんな部活を作る輩がこの世界にいるなど。クリスは正直頭が痛くなった。
「でも、響の言うことも一理ありかな。実際に楽しい部活だよ。みんないい人たちだし」
「うんうん、だからクリスちゃんも、見学だけでもいいから来て見なって」
しかし、未来からも進められクリスも正直理辛くなり、まあ見るだけなら減るものでもないしといった気持となった。
そして時間はあっという間に過ぎ放課後となる。響と友奈、東郷、未来に新たに加わったクリスの5人は揃って勇者部の部室へと向かうのであった。
今回はここまで。
本作での勇者部5カ条はそれぞれのメンバーで意見を出し合い作ったという形にしました。
それぞれの5カ条をだれが出したかは以下の通り。
一、挨拶はきちんと←東郷 理由:真面目な性格なので真っ先に提案。
一、なるべく諦めない←友奈 理由:内容的に友奈が適任と判断。
一、よく寝て、よく食べる←響 理由:内容的に明らかに響にぴったりだったので。
一、悩んだら相談←未来 理由:この世界と元の世界での自分を照らし合わせてといった感じ。
一、なせば大抵何とかなる←みんな これのみ本編と同様みんなで作ったといった形に。
解説:
クリスの両親
本作では健在。
名前は元の世界と同じ。クリスの母親は西暦末期に日本、四国に移住してた外国人の血筋という設定。
雪音クリス
本作では響が転生する少し前に転生で響、未来と同い年。
そうした理由は全装者を元の設定のまま讃州中学に集めると翼が卒業状態となってしまうため。