東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー)   作:紗代

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運命の日

人を殺すことは罪です。

人を食べることは罪です。

人を犠牲にすることは罪です。

なら私が生きているのは罪なのでしょうか――――――

 

 

 

「で?」

 

2011年4月。喫茶店あんていくで私と向かい合って座っている青年はやや不機嫌そうに細めた目をこちらに向けてくる。

 

「で、って?」

「なんでおまえは本読んでんだよ」

「いやさっきまでテレビに釘付けだった人に言われたくないよ、マヒト」

「うるさい。せっかく久しぶりに会ったってのに結局本屋に行ってここって・・・いつもと変わりねえだろうが。他に行きたいとことかないのかおまえは」

「んー、でもここほど美味しいコーヒー出してもらえるところってないし。バスケと読書(コレ)とこうしてあなたと出掛けること以外特にやりたいこともないから。私は至って満足だよ?」

「おまえ・・・おまえはなんでそう」

「?」

「いやいい。どうせ無自覚なんだろうし、こっちが調子狂うだけだろうから言わない」

「何それ」

「だからいいんだよ、知らなくて」

 

私からやや気まずそうに視線を逸らすマヒトに問い詰めているとあんていくのテレビにはいまだ喰種による捕食殺人事件についての議論が続いている。

 

「・・・また食い残しかよ、めんどくさい。行儀よく全部食えよな」

「まあまあ・・・でも確かに白鳩の人に追われることを考えたら結構命知らずなことする人もいるもんだね」

「大方、調子に乗ってるバカだろうな・・・ったく」

 

そういうマヒトは苦虫を嚙み潰したような何とも言えない顔をしていた。思い当たる節でもあるのだろうか?でも聞く前にマヒトが席を立ちあがった。

 

「もうコーヒー飲み終わったし、行くぞ」

「待って、会計」

 

私が伝票を持とうとするとそれは空振りに終わり、伝票はいつの間にかマヒトの手に渡って既に会計を終えていた。そのまま店を出ていくマヒトに続いて私も店を出る。

 

「どこもかしこも捕食捕食捕食捕食!」

「雑誌なんかだと結構食い散らかしも酷かったみたいだしね。・・・生きるためには必要なことなんじゃないの?」

「けど限度ってもんがあるだろうが、そんな頻繁に食わなくても俺らは生きられる。今回の奴は食いすぎだ。むしろ遊びで殺してる可能性もある」

「・・・そう」

 

そう苛立つマヒトは―――所縁真人(ゆかり まひと)は喰種である。人間を捕食してしか生きられない生き物。片や私は捕食される側、人間。この歪とも正常ともとれる友人関係は日本に帰ってきて早々実家を離れ東京で一人暮らしをしている身としてはありがたいことこの上ない。話せるのと話せないのでは雲泥の差である。

 

「ま、今回のはココから遠いし大丈夫だと思うが・・・なんかあったら呼べよ」

「うん、やっぱり優しいね。マヒトは」

「・・・優しくなんかねーよ。・・・・・・こんなことするのなんてお前だけだ」

「?何か言った?」

「別に」

 

話し込んでいるうちに雨が降り出してきた。

 

「・・・嫌な雨だ」

「マヒトが言うとシャレに聞こえないから。ほら、ちょうど折り畳み傘持ってるし、帰ろう」

「そうだな、でも傘持つのは俺な。おまえの方が背小さいんだから俺が屈まなきゃならなくなるし」

「はいはい。じゃあお願いします」

 

私たちは俗にいう相合傘をしながら雨降る道を帰る。そういえばこんなふうに誰かと至近距離に並んで帰るなんていつ以来だろうか。懐かしい記憶を手繰り寄せつつ私はこのちょっとした時間にほんのり心が温まるのを感じ笑う。

 

「なんか、いいね。こういうの」

「ふ・・・そうだな」

 

お互いに笑い合って交差点に差し掛かる、視界は見えづらいけどまだ赤なので横断歩道の手前で止まる。でもすぐに青に変わったので足を踏み出し――――――

 

「ミヅキ!!」

 

私は視界の端に映った猛スピードで突っ込んでくる車と、マヒトの私を呼ぶ声を聞くとそのまま意識を飛ばした。

 

 

 

 

 

「俺だ。おまえに頼るなんざしたくなかったがそうも言ってられない。おまえに頼みがある、嘉納明博」

 

「ミヅキに――――――氷室美月に俺の臓器を―――・・・」

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