東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー)   作:紗代

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色々な前触れっぽい話。オリキャラも最後あたりに登場します。


新たな出会い

月山さんとの一件があってから、私は稽古の時だけでなく、毎日あんていくの地下に通い詰め戦闘訓練と赫子の操作について練習していた。

 

「ミヅキ、お前は動きや反応はいいが相手に触れる瞬間に加減する癖がある。前は人間相手だっただろうが今は喰種だ、白鳩も容赦なく殺しにかかってくる。時と場合を見極めろ」

「はい・・・」

 

稽古終わりに四方さんから最もな指摘を受ける。やっぱり長年の癖を外すのは結構キツイらしい。赫子に関しては訓練の甲斐もあって初めの頃にあったタイムラグもほとんどなくなっている。どうにかして癖を直さないと・・・

 

「・・・今日はここまでだ。」

「はい、ありがとうございました。」

「・・・そういえば、ウタの奴がマスクが完成したから取りに来るようにと言っていた」

「あ、もう完成したんですか?というか四方さん、ウタさんと知り合いなんですか?」

「・・・昔の馴染みだ」

「そっか・・・じゃあ、近いうちに取りに行きます。」

「そうしろ、店長からもあると思うが・・・最近20区に白鳩がうろついている。」

「白鳩が・・・」

「・・・何事も用心するに越したことはない。気を付けておけ」

「・・・はい」

 

ここ20区は割と平和なところだとマヒトは言っていたし、私のような人間(今は半喰種だが)が何も気にせずに生活出来ていたことから他の区に比べて静かで穏やかなところなのだと思っていた。あんていくのおかげで争いや大きな事件も比較的少ない。そんな区のはずなのにどうしてそんなところにCCGの捜査官が・・・?

 

 

*****

次の日、私はマスクを受け取りに「HySy ArtMask Studio」に来ていた。

 

「こんにちは」

「やあ、いらっしゃい」

「マスクが出来上がったって四方さんから聞いて、受け取りにきました。」

「うん、そこにあるよ」

 

ウタさんに指さされた方を見るとそこにあったのは――――――顔のトルソーに着せられた眼帯のハーフマスクだった。顔を覆う布地の色は黒。右目はやや蒼みのある星・・・いや花のようなカッティングのストーンが付いている。眼帯を支える紐は同じ黒の布地にそれより一回り大きい(といってもネックレスやペンダントよりやや大きめ程度の)チェーンでできており、眼帯の下からマスクに繋がる装飾のようなチェーンにはもっと透明な雫が付いていた。そこから目線を下げると首にも眼帯と同じストーンが付いておりそこにもチェーンが二重に巻かれている。

 

「これが、私のマスク・・・」

「僕なりに君をイメージして作ったんだ。自分で言うのもあれだけどかなりの力作になったと思うんだけど・・・気に入ってくれた?」

「はい」

「そう、よかった」

 

まるで雪の結晶のようなストーンとそこから伸びたチェーン。

とても綺麗で美しいと思うのに――――――何故か泣いているように見えた。

 

「さてと、じゃあマスクも渡したし、行こうか」

「?行くってどこにですか?」

 

私が問いかけるとウタさんは振り向いてこちらにウインクしながら内緒話のように口元に人差し指を当てて悪戯っぽく微笑んだ。

 

「とっても便利でとってもいいところ、だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだよ」

 

ウタさんに連れられて14区のバーにやって来ていた。

 

「『ヘルタースケルター』?」

 

促されてバーの扉を開け・・・

 

「ぶ!?」

「え゛」

 

私が扉を開けると同時にゴ、と扉に何かがぶつかる音と蛙が潰れたような悲鳴が聞こえた。そのまま開けなおすとそこには長い茶髪の美女がへたり込んでいた。

 

「いててて・・・」

「あ、あの大丈夫ですか?」

「・・・そうやって驚かそうとするからだ、イトリ」

「四方さん!!」

 

奥に寄りかかっていたのだろう四方さんが近づいてくる。というか何故ここに!?

 

「うー、大丈夫。ありがと、君は優しいね」

「いえ結構凄い音がしたので・・・」

「・・・いつまでも入り口を塞いでおくわけにもいかないし、とりあえず中に入ろうか」

 

ウタさんに言われてまだ入り口だったことに気付き急いでバーの中に入った。

 

 

 

 

 

「いやー、初っ端から変なところ見せてごめんね、ミヅキちゃん。ま、今日は私の奢りだから好きなだけ飲んで・・・あ、未成年だっけ。好きなだけ寛いで行きたまえよ」

「はい、というか名前・・・」

 

このバー「ヘルタースケルター」の店主だというイトリさんは元は今ウタさんのいる4区にいたらしく四方さんとウタさんとはその時からの付き合いらしい。そのせいかお互いに遠慮がない。今だってお酒を勧めようとしたイトリさんを四方さんが睨んで制してくれた。

・・・私の名前はこの二人経由なんだろうか。

 

「話は色々聞いてるよ~氷室美月ちゃん。4月に交通事故に遭って、所縁真人の臓器を移植された半喰種」

「!!」

 

この人の情報の精度に戦慄した。マヒトのことは公式的にも伏せているし、自分で打ち明けたのもトーカや店長にだけだ。ならなんで・・・?

 

「あー、そんな怖い顔しなさんな。ここはあんていくとはまた違った喰種と喰種の社交場ってやつなんだから、色々噂や話題が入ってくるの。だから情報屋じみたことなんかもやってるんだわ。それの一環で知ってるだけ。別に悪用とかはしてないよ」

「そう、ですか」

「うんうん。ってなわけで情報が欲しいときはぜひともご贔屓に、ね。もちろんタダってわけにはいかないけど報酬の額や私の知らないレアな新しい情報によっては甘々なのから超ど級にすんごいのまで用意して待ってるから。ああ、あと成人したら普通に酒かっくらいに来てもいいわけだし。ま、今後とも末永くよろしくってね」

 

そう言って飲みかけのグラスの中身を呑み切り、ボトルから注ぎ直すイトリさん。この人には聞きたいことがたくさんある。半喰種のこと、マヒトのこと・・・でも一番はやっぱり今迫っていることだ。

 

「あの、イトリさん。さっそく聞きたいことがあるんですけど」

「ん~?今日は私の奢りって言ったし、いいよ。何が聞きたい?」

「最近20区をうろついてるっていう捜査官の情報ってありますか?」

 

するとイトリさんは私の思っていることを理解しているのかフッと薄く笑ってグラスを傾けながらこっちを見る。

 

「おやあ?その情報なら確かにあるけど意外だねえ・・・本当にそれでいいの?もっと聞きたいこととかあるんでないの?半喰種についてとか所縁真人についてとか」

「はい、どっちにしても生き延びないと意味がないので。口惜しいですけど今度にしておきます。私はまだ捜査官と戦ったことがないし、あんていくのみんなやトーカや四方さんに助けられてばかりなので、なるべく足手まといになりたくないんです。」

 

はっとしたような顔のイトリさん。え、私変な事言った?

 

「こ、この子いい子や!!ねえレンちゃん、ミヅキちゃんくれない?」

「・・・やるわけないだろう」

「ちぇ、レンちゃんのケチ」

「あはは・・・」

 

そして気を取り直してイトリさんは私と再び向かい合う。

 

「でもそっかそっかあ。うんそういうことならね、納得。で、その今回の捜査官の情報ね。―――捜査官は若い男女のコンビ。しかも両方とも箱持ち。箱の中のクインケまでは正確な情報は来てないけど、奴らは今ある喰種の親子を探してるみたい」

「喰種の、親子」

「そ、大方ちょっと不信な行動とかで疑惑かけて識別番号みたいな振ってるんじゃないの?今のところあんていくよりちょっと遠い区の境目辺りを捜査してるらしいから他の区に行くときは気を付けたほうがいいかもね」

「ありがとうございます。」

「いえいえ、こちらこそ」

 

そうしてひとしきり話すと私たちはバーを後にした。

 

*****

一旦あんていくに寄って今日の分の食事とコーヒーを持って帰る。四方さんにはイトリさんが迷惑をかけたからとちょっと多めに肉を貰った。気にしなくていいのになあ・・・。と夜道を歩いていると何処からか血の匂いがした。この匂いは喰種だ。

匂いを頼りに路地に入って奥へ進んでいくとそこには脇腹から血を流す男性と、泣きそうになりながらその人にすがるように呼び掛けている男の子がいた。

 

「お父さん!死なないでお父さん!!」

「っ・・・」

 

喰種の親子・・・今日イトリさんの言っていた捜査官のターゲットになってしまった人なのだろうか?いや、考え過ぎか。

私は二人の前に姿を現した。

 

「あの、大丈夫?」

「!」

 

私が声をかけたことでビクッと男の子が反応して恐る恐るこちらに振り返る。声だけでは分からなかったが、その子は泥だらけで、今にも泣きそうな雫が溜まった目で私を捉えた。

 

「お願い、お父さんを、助けて」

 

藁にもすがるような思いで絞り出されたその声に、私は ―――応えた。

 

「うん、もう大丈夫」

 

そう言って頭を撫でると、とうとう堪えきれなくなったのかぼろぼろと泣き出した男の子と倒れているお父さんを抱えてマンションに帰った。




マスクはカネキ君みたいなハーフマスク。赫眼は右目にしようと思ったのですが、知恵袋の記事の考察を読んで考えた結果、『「強い思い・目的」を持って半喰種になったわけではない』ので左目にしました。
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