東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー)   作:紗代

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Midnight encounter(ミッドナイト・エンカウンター)

アヤト君

 

私は捜査官に聞こえない程度の小声でアヤト君の名前を呟いた。

 

「・・・・・・」

 

アヤト君は無言のまま受け止めた刃を握り砕き、私の赫子に絡まったチェーンも引きちぎってくれたので、私の赫子は自由になりすぐに赫包へしまいこんだ。

 

「何君?そこの二人のお仲間?ああ、それともそこの子の彼氏とか?ま、形はどうあれ『助けた』わけだし・・・喰種だったら殺しゃいいし、まあ人間だったとしても喰種法にこじつけりゃ大体なんとかなるっしょ!」

 

捜査官は本数を更に増やしてアヤト君へ飛ばすが、アヤト君は全て躱して一瞬で捜査官と距離を詰めると顎にアッパーを決めた。捜査官はその衝撃に耐えられなかったのかそのまま勢いよく宙を舞い地面に叩きつけられる。

 

「げっ」

「・・・・・・」

 

落ちた捜査官を一瞥するとアヤト君は私たちの方を振り返った。

 

「結局巻き込まれやがって、話聞いてなかったのかよ半端女」

「っ」

「・・・ごめん」

 

アヤト君の言葉に私は素直に謝り、ケイタ君は自分のせいだと思っているのかビクッと反応した。アヤト君はそれを見て何か言いたそうにしていたけどそのまま私たちに背を向けた。

 

「・・・行くぞ、いくら夜中だったとしてもこんだけ暴れて気付く人間がいないとも限らない。見つかる前にずらかる」

「ええ、そうね。喰種ながらにその状況把握能力、称賛に値するわ」

「!!」

「なっ!?」

 

女性の声とともにアヤト君は脇腹を切られていた。

 

「ぐ、テメェ・・・!!」

「まあだからと言って君に興味があるわけでもないから、赫包だけおいて死になさいな」

 

女性が刀のようなクインケを振りかぶる。まずい、このままじゃアヤト君が――――――

 

 

 

なら―――私がやれ(オレを使え)ばいい。

 

「!!」

「おま、え・・・」

「―――そう簡単にやらせるかっての」

 

(オレ)は燐赫で捜査官のクインケを受け止め、捜査官を払いのけようとしたが寸でのところで避けられ取り逃がす。それに残りの三本で追撃するが全て器用に避けられた。こいつ、かなりの手練れだ。

その動きは無造作なものではなく、無駄も隙もない完璧な身のこなしで女捜査官は後退すると、片割れである地面に伏した捜査官に声をかけた。

 

「起きているんでしょう、いい加減に立ちなさい加瀬宮一等」

「・・・バレてました?」

「バレバレよ」

「すいませーん・・・もうぶっちゃけ眠いんです・・・」

「・・・・・・あなたのデスクの引き出しに入ったお宝、全部売りさばくわよ?」

「はい、起きます!!」

「それでよし、仮眠なんて後でいくらでも取れるんだから・・・今はこっちに集中なさい」

 

そう言って二人とも武器を構えなおす。やばいな、(オレ)一人でならどうとでもなるけどこっちは三人だ。生憎(オレ)は誰かを守りながら戦くことに慣れてない。それにマヒト(オレ)のこともあるし・・・(バレたら面倒だ)

するとアヤト君の方から提案があった。

 

「おい、おまえは女の方をやれ。男の方は俺がやる」

「・・・わかった」

 

実践経験もほとんどなくそのうえ相性の悪さを考慮してくれたのだろうその案に私も乗る。そして私はケイタ君をより強く抱きしめると走り出した。

 

「逃げられると思うなよ」

 

すかさず刀のクインケを携え追ってくる女捜査官。よしこのままここからなるべく離れることを最優先に。けど―――

その場にとどまったアヤト君の方を見る。傷と口から血を流す彼は私たちの方を見ることなく、男の捜査官と対峙していた。

きっと私がいても邪魔なだけだ。だからここはアヤト君を信じてより遠くへ行かなければ。

私は足に力を入れて追いつかれないように先を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、水義さんもあっち行ったし、俺もあっちに―――」

「させるかよ!!」

 

すぐに羽赫の結晶を撃ち出し白鳩が向こうに行こうとするのを制する。

 

「ちょ、マジでなんなの君。今回の任務はあの子を殺したら終わりなのに、サービス残業とかマジで勘弁してくれよ~俺もう眠いんだって。お分かり?」

「ああ、なら二度と目エ覚まさなくてもよくしてやるよ!!」

 

昂る感情に羽赫の放出が強まった。それを見た白鳩は溜息を吐くとクインケを構えなおした。

 

「やれやれ・・・大人をなめるなよ、ガキ」

 

*****

とにかくまたひたすらに走る。追いつかれては困るがかと言って人間が越えられないような障害物のところに行ってアヤト君の方に引き返されても困るのでなるべく越えられそうなところを選んで進む。しかしそう都合のいい道が続くわけもなく―――

 

「っ行き止まり」

 

私たちは路地を抜けた奥まったところにある空き地にたどり着いてしまった。幸い他に人はいないがそのかわり遮蔽物も、身を隠せるようなところもない。まずい。

淡々と迫りくる靴音がこの空間に入ると同時に止まった。

 

「色々気を使って逃げてたみたいだけど、もうそれも終わりよ。私達に鬼ごっこして遊ぶような時間はないの」

「・・・私達だって遊びであなた方と対峙しているわけではありません。」

「あらそう、ならさっさと死になさい!」

「っ」

 

距離を詰められ居合の要領で繰り出される淀みのない一閃を間一髪で避け後ろに下がる。私もすかさず赫子で応戦するが四本全て避けられ弾かれた。

 

「動きはいいけど何これ?私を気遣ってるとでもいうのかしら?人間をナメるなよ化け物め!」

「ぐ!、う、う」

 

斬られそうになったのを避けるも避けきれず肩を斬られた。

 

「お、お姉ちゃん」

「大丈、夫だから」

 

ケイタ君が蒼白になって私を見てくるのでなるべく安心させようと笑顔を作った。

 

「ふん、全く物分かりの悪い。その子どもさえあの場で逃げなければここまでの被害は出なかったというのに」

「・・・なぜあなたはそこまでこの子を狙うんですか?まだ子どもなんですよ?」

「親を殺された喰種の子どもが人間に牙を剥くなんてよくあることよ。だからその子を野放しには出来ないの」

 

食物連鎖 

      自己防衛

            排他的に  合理的に  機械的に  

 

「あなたは!それでも人間ですか!?」

「・・・ええ、そうよ。だから喰種(あなたたち)と戦うの。」

 

殺す気で放たれる一閃を赫子で受け止める。お互いに譲らない閃撃を繰り広げる中で睨み合う。

 

「あなたたちは存在そのものが間違っている!!」

「な・・・」

「あなたは分かる?CCGに保護された両親を失った子どもたちの顔を。大切な人を奪われて気が狂った人の末路を。この世に喰種なんてモノがいるから世界が歪むのよ!」

 

何それ

 

 

「ふざけんな!」

「っが!?」

 

私は赫子ではなく素手で捜査官を殴った。

 

「あ、づ」

「じゃああなたにはわかるんですか?人を騙して生きていく辛さが、人と味覚を共有できない辛さが、両親や仲間を殺されて一人になる辛さが、人間にも喰種にも狙われる恐怖が、人を信用しきれない気持ち悪さを・・・喰種の事を知ろうともしないくせに。自分だってこの子の親を殺したくせに、被害者面しないで!!」

「!!」

「間違っているのは私たちじゃない。間違っているのは――――――この世界そのものだ!!」

「くっ、この・・・」

「せい!!」

「!?クインケがっ」

 

抵抗しようと振り上げてきた刀型クインケを粉々に破壊した。意外と脆く感じるのはきっと私が攻撃特化の燐赫だからなのだろう。

 

「・・・もう、この子を狙わないでください。」

「お姉ちゃん」

「この子も私も、あなたを殺そうとは思っていません。だからもうこれ以上追って来ないで」

「・・・・・・」

「行こう」

「・・・うん」

 

私はケイタ君を抱えると捜査官を残してその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羽赫の結晶を捜査官に飛ばすが全て避けられる。

 

「あっぶねー、にしても君さあ大丈夫?羽赫ってエネルギー消耗激しいんでしょ?水義さんのクインケも甲赫で羽赫の君からしたら最悪だし。顔色悪いまんまだよー」

「っうるせえ、黙って死にやがれクソヤローが!!」

 

とはいえその通りだ。認めたくないがもう赫子を展開しているのもやっとで、爪先も指先も感覚がない。

 

「ま、そんなボロボロの姿で言われても痛くも痒くもないし・・・女の子逃がすくらいだから結構やるのかなって思ってたけど、うんないわ!水義さんは君の赫包持ってこうとしてるみたいだけど俺としては君みたいな弱いのいーらない」

「テメェ!!」

 

羽赫を硬化させた特攻。しかし白鳩はそれを読んでいたかのように軽く避け俺にクインケを刺した。

 

「か、がっ!」

「うんその根性は認めるけど、弱いねえ君!・・・言ったろ大人をなめるなって」

「ちっ、くしょ・・・」

「死ね」

 

奴の持つクインケの刃が俺に向かって振り下ろされる。くそが・・・

 

「あんたがな!!」

「ぶ!?」

 

俺に振り下ろされるはずだったクインケは俺に振り下ろされることなく持ち主とともに地面に打ち付けられた。犯人は――――――言うまでもなく半端女だった。

不意打ちだったせいか、それとも相当強く打ち込んだのか白鳩の奴は白目をむいてぐったりと動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・何しにきた」

「何しにって、迎えに」

「・・・誰もそんなこと、頼んでねえだろうが」

「でも私がしたいの。一緒に帰ろう」

「ふん・・・」

 

アヤト君に肩を貸しケイタ君と手を繋いで、私は雨降る深夜の帰り道を歩いていくのだった。

 




やっと戦闘終わりました!
次は日常かCCG側のヒロイン・水義さん視点をちょこっと書きたいです(必ずそうするわけではないあくまで予定です)。
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