東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー)   作:紗代

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題名のまんまいろんな人のきっかけ話。


切欠

三人で私の部屋に帰るとまず最初に順番にお風呂に入り直し(私の部屋にはケイタ君とカサイさんの服しか男物の服はないのでアヤト君にはカサイさんの服を着てもらってる。サイズ的に余裕があり過ぎてるけど仕方ない)、あんていくからの肉を食べて怪我の手当をした。アヤト君はやっぱり相当無理していたのかあの時刺された脇腹以外にも腕や肩、お腹なども相当出血した跡があった。

 

「・・・あのケイタとかいう奴は」

「ケイタ君なら寝てるよ。今日はいろんなことがあったし・・・お父さんのこともあって衰弱してたから・・・相当堪えてただろうに、強いよ」

「・・・・・・」

「アヤト君」

「・・・なんだよ」

「ありがとね、助けてくれて」

「別に、そんなんじゃねーよ」

「でもアヤト君が来てくれてなかったら、きっと私たちはここにはいなかっただろうから。ありがとう」

「ふん・・・」

 

アヤト君は不機嫌そうにそっぽを向いた。

 

「それから・・・ごめんね、怪我」

「なんでお前が謝んだよ」

「だってもっと私が動けてれば、もっと痛い思いせずに済んだんじゃないかなって、思って」

「はあ?バッカじゃねーのおまえ。これは俺の落ち度だ、変な気遣うんじゃねーよ。うぜーし気色ワリィ」

「そう、かな」

「・・・・・・」

 

そこで一旦、会話は途切れる。なんだかアヤト君が気落ちしているように見えるのは気のせいだろうか。

 

「今日はもう休もう。布団ならもう敷いてあるから」

「はあ?!俺は泊まるなんて一言も言ってない!」

「いいから。それともトーカに説明できるの?それ」

「ちっ・・・わかった」

「うん」

 

こうして三人一緒に寝ることにした。川の字で寝るなんて初めての事だった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

『うんその根性は認めるけど、弱いねえ君!』

 

あの捜査官に言われた言葉が頭の中で反響する。たしかに、いくら隙を突かれて負傷したと言ってもあまりにも一方的にやられ過ぎた。

 

『アヤト君』

 

あの時呼ばれた俺と向かい合わせで眠るこいつの声。その声を聞いたとき、微かに安心した自分がいた。なんだってこんな中途半端な奴のことで安心するのか。いやむしろそもそもなんでここまでこいつが気になるのか。

 

「なんなんだよクソが・・・っ」

 

二つのイラつきがより俺の機嫌を悪くしていく。けど――――――

 

「弱い、か」

 

このままではだめだ。もっと強くならなければ、力が無ければ――――――何も守れずに野垂れ死ぬだけだ。

力が欲しい。もっと、もっともっと圧倒的な力が。

 

「ん・・・」

「・・・・・・」

 

少なくとも、こんな戦い慣れてないようなこいつが戦わなくてもよくなるくらいの・・・って何考えてんだ俺は。こいつは関係ない。アネキも親父もだれも関係ない。俺の問題だ。そのためにも俺は――――――

 

 

*****

東京都1区・喰種対策局本部。

 

「はあ・・・」

 

ロビーの一番隅にあるテーブルで加瀬宮一等の帰りを待ちながらため息を吐いた。

 

 

『あなたは!それでも人間ですか!?』

 

『じゃああなたにはわかるんですか?人を騙して生きていく辛さが、人と味覚を共有できない辛さが、両親や仲間を殺されて一人になる辛さが、人間にも喰種にも狙われる恐怖が、人を信用しきれない気持ち悪さを・・・喰種の事を知ろうともしないくせに。自分だってこの子の親を殺したくせに、被害者面しないで!!』

 

『間違っているのは私たちじゃない。間違っているのは――――――この世界そのものだ!!』

 

あの戦いからずっと頭から離れない。あの片目の赫眼、声、言葉―――たかが喰種の一匹如きに、何を振り回されているんだ、私は。

けれど、あの言葉に言い返せるような言葉を、私はもっていない。あの喰種の言っていたことは紛れもない事実だ。「やられる前にやる」が基本姿勢の私たちは喰種であれば容赦なく殺す。それが親子であろうと関係ない。私達は人間で、喰種は生きるうえでの天敵。それさえ抑えていればいい。そしてそれは喰種だって同じはずだ。

 

『この子も私も、あなたを殺そうとは思っていません。だからもうこれ以上追って来ないで』

 

―――しかしあの眼帯の喰種は私を殺さなかった。

 

いや、もし喰種の事を理解してしまったらきっと私は――――――

 

「・・・にしても加瀬宮一等遅いわね」

 

ラボラトリーから昨日の急造の尾赫クインケをちゃんとしたクインケにしてもらうための手続きなんてそんなにかからないはずなのに。

 

「まさかまた女の子捕まえてるんじゃないでしょうね」

 

思考を中断して書類をまとめて席を立つと、おそらく相方がいるであろうラボラトリーに向かった。

 

 

 

 

 

 

ラボラトリーに入り受付に行くと―――

 

「そうなんですよー、やっぱ急造品じゃだめですね」

「そうか、脆かったか・・・でもこれで君もクインケの特徴も把握できたことだし、そのまま打ち損じてしまったことは痛手だが、まあよかったじゃあないか。」

 

この声は―――!!

 

「真戸さん!!」

「おお、水義くん。久しぶりだね」

 

加瀬宮一等と話す真戸さん―――真戸呉緒上等とそのパートナーの亜門鋼太郎一等がいた。

 

「お久し振りです。亜門さんも昇進祝いの時以来ですね」

「あ、ああ。あの時はありがとうございました。」

「いえ。また何かあれば言ってくださいね、駆け付けますから」

 

亜門一等はぎこちなく私と会話する。硬派っぽい真面目な人なのでひょっとしたら女性が苦手なのかもしれない。

 

「今回は惜しかったねえ、子どもを確保しようとして邪魔が入ったんだって?」

「はい。クインケも粉々に砕かれてしまいまして・・・力不足ですね、私。やっぱり素手で相手を仕留められるようになった方がいいんでしょうか」

「えー、じゃあ黒磐特等みたいなゴリゴリマッチョになるんですか?俺そんな水義さん見たくないなー」

「ふむ。まあ「手足をもがれてでも戦え」と言ったのは私だが・・・奴らを追い詰める手段は何も武力だけとは限らないぞ」

「―――そうか、情報!」

 

真戸さんの言葉で気付いた。そうだ。よく思い出すとあの子どもは20区で父親を討ち取って追い詰める前―――少なくとも20区に来る前までは二人だけで行動していたらしい。なら20区になんらかの喰種の組織がある、もしくは個人的なつながりのある人物がいる?―――でもそうすればここ最近まで20区に居座ることは可能だ。

 

「ありがとうございます、真戸さん!!さっそく調査に当たってみます。失礼します。」

「え、はや!?あー、俺も行かないとどやされそうなんで、すみません。じゃ!」

 

私たちは真戸さんたちには申し訳ないが足早にそこを去った。そうと決まれば急がなければ、せっかくの標的の手掛かりが―――あの眼帯の喰種の手がかりになりそうなものが無くなってしまう。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ捜査官になったことで落ち着いてきたと思ったが・・・まだまだお転婆だな、彼女は」

「・・・・・・」

 

父親のような眼差しで見守る真戸と無言で彼女の背中を見つめる亜門だけがその場に残された。




CCGヒロインの予定の水義さんは元真戸さんのパートナーでアキラさんとも姉妹みたいに仲がいい設定です。
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