東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー)   作:紗代

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私たちは再び赴く。


疑惑の狭間で

捜査官たちとの戦いがあった日から数日。あれ以来アヤト君とは会っていない。あの深夜の公園にも来なくなった。トーカも、同じくらいの時から落ち込んでいる。・・・アヤト君に何かあったんだろうか。

アヤト君が来なくなったのとほぼ入れ違いで姿を見せるようになったのは――――――

 

「やあ!今日も美しいね氷室さん!!」

「・・・またですか、いらっしゃいませ、月山さん」

 

あの滅多刺しから回復しピンピンしているこの男(月山さん)である。

というか仮にも自分を滅多刺しにして重傷を負わせた奴になんで付きまとう必要があるんだろうか。普通なら近寄ることさえしなくなると思うんだけど。

 

『あの時はすまなかった。僕もどうかしていたよ。これはほんの少しの御詫びの気持ちだ・・・受け取っておくれ』

 

と差し出されたのは花束だった。

さすが御曹司というか、こういった礼儀的なことを忘れることなくスマートな立ち振舞いで素直に謝ってくれるのは好感が持てるけど・・・あの時のことやトーカから聞いた「美食家」たる彼の変態こだわりや執着を聞いてしまっている今は許したとしても信用できないのでやや距離を置いている。

尤も、それは私に限ったことであり、月山さんの方から寄ってくるのだけど。

 

「今日もスパイシーかつフルーティーな匂い、まさに君の味を表しているようだ」

「あの」

「そういえばこのあとの予定はもう決まっているのかい?もし良ければ一緒に食事でもどうかな?」

「いや私食事は・・・」

 

矢継ぎ早に言われても反応に困る。

 

「おい月山、ミヅキを困らせんじゃねえよ。注文しないならとっとと帰れよ、仕事の邪魔だ」

「君は相変わらず冷たいねえ霧嶋さん。まあそんなところも君の魅力の一つなのだけれど」

「うぜえ、寄ってくんな気色悪い」

 

トーカに対しても言い寄る月山さんにトーカは嫌なものを見る目で月山さんに「しっしっ」と手でジェスチャーした。

 

「やれやれ、それでは僕は失礼するよ。ではね氷室さん」

「ありがとうございました。」

 

出来れば客として以外寄り付かないでほしいけど。そんなことを思いながらにこやかに営業スマイルで送り出した。

 

「ったく。毎日来るとか暇人かよアイツ」

「ありがとう、トーカ。助かったよ・・・」

「別にいい。ウザいのは月山で、あんたは悪くないんだし」

「うん・・・」

 

トーカはいつも通りを装っているけど、やっぱりどこか無理をしているようだった。

 

「ねえ、トーカ・・・」

 

私が声をかけようとした時、ちょうど入口のドアが開いた。そこにいたのは―――あの時対峙した、捜査官の二人組だった。

 

「いらっしゃいませ」

「こんにちは、あなたはこの喫茶店のオーナーの方ですか?」

「ええ、私がここの責任者です。」

 

店長が落ちつきを持って対応してくれているため私たちもなるべく自然な動作で他の作業に移る。幸か不幸か客はほとんどおらず、ケイタ君はここの2階に匿われているため私の部屋で何かあっても大丈夫だけど・・・まさか捜査官がここに来るなんて私も気が気じゃない。みんなに迷惑をかけたくないのに結局迷惑をかけてしまっている。

 

「失礼ですがここに氷室美月さんはいらっしゃいますか?」

「「!!」」

「・・・たしかにここで働いてくれていますが・・・彼女が何か?」

「紹介が遅れて申し訳ありません。私たちはこういった者です。」

 

そう言って名刺を取り出し店長へ手渡した。

 

「ほう、喰種捜査官、ですか。」

「はい。実は先日この20区に親子の喰種が逃亡してきまして、その親子らしき人物と彼女が一緒にいたという証言があったものですから。」

「ついこの間親の方はなんとかなったんですが、子どもの方は確保前に逃げられてしまったので、ひょっとしたら面識のある氷室さんに危害を加える可能性がないとも限りません。この店舗を嗅ぎ付けられて被害が拡大してしまう可能性もあります。・・・不躾で申し訳ありませんが、彼女に同行願えませんか?」

「なるほど」

 

店長はゆっくりと理解したようにうなずいた。これ以上ここに居られて色々みんなに迷惑をかけるのは嫌だ。それなら素直に同行した方が得策だ。少なくとも私の出方によっては私以外のみんなが助かる可能性もある。

 

「店長」

「ああ、ミヅキちゃん」

 

店長が私の名前を呼んだことで二人の視線は私に向いた。

 

「あなたが氷室さんですね」

「はい」

「申し訳ありませんが、局までご同行願います。」

「・・・はい」

 

ここでこの反応は正解だろう。同行しなければ何かやましいことがあると勘繰られかねないし、喰種法などの法律で喰種を擁護する人間にも厳罰が与えられる。喰種であろうと人間であろうと、無実だということを証明できなければ終わりなのだから。

私が捜査官二人に促されて店から外に出ようとしたその時、酷く不安そうに私の方を見るトーカと目が合った。

 

「・・・っ」

 

何か言いたそうにしているけど言えない。そんな表情のトーカにほんのちょっと申し訳なくなったので、口パクで捜査官たちに気付かれないように伝えた。

 

『大丈夫。いってきます』

「!!」

 

トーカが一瞬目を見開いた。よし、ちゃんと伝わったかな。生憎あんていくの入口とカウンターの距離はそんなに離れていないのでそのあとの反応は見れないけど、あの反応からして伝わったであろうと思っておくことにした。

 

そして私は車に乗せられて喰種対策局20区支部へと同行するのだった。

 

 

*****

喰種対策局―――通称CCGというそこは思っていたより普通のオフィスビルといった外見で中の造りも至って普通だ。空港の飛行機に乗る前に潜る金属探知機のようなゲートがあるのと、行き交う人々の全てが捜査官という事を除けば、だが。

 

「えーと、俺らが使っていいのってどこでしたっけ?」

「2階の第三会議室よ。では氷室さんそのままついてきてください」

「はい」

 

言われるままに女性捜査官―――水義さんというらしい。についていくとさっき目に付いたゲートに着いた。

 

「えっと、このゲートは?」

「ああ、このゲートのことですか?不審者侵入防止のための認証システムです。」

「え、じゃあ捜査官や職員じゃない私にも反応するんじゃ・・・」

「いいえ、あらかじめ許可は取っておきましたから大丈夫です。」

「悪いねー。CCGのクインケを面白半分に流出されたりしたらまずいし、喰種じゃなくても擁護派の人間が一般人装ってテロを起こされても困るからさ。そういうの徹底してるんだ。」

「そう、ですか」

 

二人に見守られながらゲートを潜り抜けた。――――――よかった本当に何でもない。

 

「・・・・・・」

「あの、何か?」

「―――いえ、では行きましょうか」

「はい」

 

何とも言えない表情をしていた水義さんはそのまま相方の加瀬宮さんと一緒に私を2階の会議室まで案内してくれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このたびは勤務先まで押し掛けるような真似をしてしまい申し訳ありません。」

「いいえ、私は大丈夫です。それで、お話ってなんですか?」

「はい。私たちがやってきたことで察してくださっているとは思いますが、この人物に見覚えは?」

 

そう言って私の目の前に置かれた写真にはカサイさんが写っていた。

 

「・・・たしかに知っています。お子さんを連れて、なんだかピリピリしていましたし・・・弱っているようだったのでとても印象深い人でしたね」

「なるほど」

「はい、あの、この人が何か?」

「単刀直入に言いましょう。この人物とその連れていたお子さんは喰種です。」

「喰、種?あんな弱っていた人が?」

「はい。我々の追手から逃げていた時あなたと出会ったのでしょう。その出会った後も交流がおありで?」

「―――はい。ピリピリしてましたけど弱ってたしお子さんもいるようだったから心配になって声をかけて。そしたら事情があって家に帰れないって言うから私の部屋に上げたんです。」

「ではその時からあなたの部屋に居座っていたと?」

「はい、とは言っても食事までごちそうになるのは申し訳ないから素泊まりでいいと言われてしまって・・・出かける時はいつもお子さんと一緒で家族仲はよかったみたいですけど・・・たしかに思い出してみれば一度も一緒に食事とかしたことないですね。でもそういうのって聞かない方がいいでしょうし、新しい物件探しをしながら外食してるのかと思ってたので・・・」

「ふむ、ということは氷室さんはあの親子が喰種だったことを知らなかった、ということでいいのかな?」

「はい」

「―――分かりました。聴取はこれで終了です。お忙しいところありがとうございました。」

「いいえ、こちらこそ。何のお役にも立てず申し訳ありません。お仕事、頑張ってください。」

「ありがとうございます。」

 

こうして長いような短いような、体感時間が狂いそうな緊張感を持った時間から私は解放され、無事にあんていくに帰ることが出来たのであった。

 

 

*****

「水義さんの嘘つきー」

「なんのこと?」

「ゲート。なんで素直にRcゲートだって教えなかったんですか?」

「・・・彼女がもし喰種だった場合、それを知ったらあの場で暴れてその場にいる全員に被害が及ぶ可能性があったし、人間だった場合にしたって、ただでさえ強制連行してるのにそれ以上に疑われていると感じて黙秘されても厄介でしょう。それに、案外あなたも乗り気だったじゃない」

「それはまあ、あの子美人でしたし困り顔も可愛いなーって思ったんで、悪乗りしてみました。」

「・・・調査ついでに海に沈められたいの?」

「ごめんなさい」

 

しかし近隣住人たちの証言と容姿から一番有力な人物であったことに変わりはない。つまり振り出しに戻ったわけだ。

悔しいが「美食家」や今のところ鳴りを潜めている「姉弟」、他の区で問題になっている「大喰らい」などもっと危険度の高い喰種はごろごろいるのだ。親の方を討ち取ってしまった以上、まだ力ない子に時間を割くような余裕は私たちにはない。私の本命視する眼帯の喰種に至っては正体不明、きっとそんなことに上層部は首を縦に振ることはないだろうし。もうこの案件はお蔵入りだ。

 

「―――眼帯の喰種」

 

私はまだ知らない。他の捜査と平行しながら彼女と再び対峙することを。彼女との関わりが私に多大な影響を与えることを。

まだ、知らない。




ミヅキちゃんピンチの回。
冒頭でわかると思いますがもうアヤト君はトーカちゃんと決別しています。
月山さんはカネキ君的興味をミヅキちゃんにも向けている模様。
そして勘の鋭い水義さんは当たってるんだけどニアミス(ほんとはニアミスなんかじゃないけど)。
Rcゲートの件でRe本編見てる人は分かると思いますが勿論マヒトも所属していた喰種です。

あとミヅキちゃんは演技が上手い設定です。
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