東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー)   作:紗代

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トーカちゃん視点、というか独白?


閑話・姉さん

最初にミヅキを見たのは去年の秋頃。私はまだ学校に行ってなくて、ただあんていくで働いていた頃の事だった。

いきなり春頃に20区へやってきてCCGに知られることなく水面下で20区を荒らしていたマヒトの連れとしてあんていくに来店した女。マヒトの奴は負けなしのその実力から所謂「個人主義」に分類される喰種で、それまでここにあまり寄り付かなかったし来たとしても誰かと一緒に来るなんてことはまずありえなかった。だからはじめにアイツに連れられてやってきたミヅキを見た時はギョッとしたのを覚えてる。

 

しかもミヅキは人間だったしいい匂いがしたから、もしかしてマヒトの奴が自分が食うためにミヅキに近づいたんじゃないのだろうか。正直私としてはあまりそういう小細工じみたことは趣味が悪いと思うが、喰種によってはそういうことをしている奴もいる。そうでなければマヒトが連れと一緒にここに来るはずないとそう思っていた。

 

でも違った。いつの間にかマヒトの目は前の冷え切った棘のある目じゃなくて、そういう棘が融けて優しい目つきになっていた。ミヅキと一緒にいるときはより優し気に、気遣わし気になっていたのを見てミヅキがマヒトを変えたのだと確信した。

それと同時に、マヒトは20区を荒らすことはなくなり、あんていくに肉を買いに来るようになった。本人は何も言わなかったけど、おそらくミヅキに捕食現場を見られたくなかったのだろう。

 

いつしかマヒトの目はもっと優しく温かみのある雰囲気になっていて、本人は否定してたけど傍から見れば仲のいい理想のカップルだった。

本来ならありえない喰種と人間の共存がそこにあって、私はそんな二人を見て羨ましさと期待が心のどこかにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

今年の4月、しばらく二人が来なくなった。5月になって気落ちしたミヅキだけがやってきて、マヒトはいなかった。それと同時にミヅキの匂いが変わったことに気付いた。その匂いは喰種に近くなってて驚いてしまった。その夜、肉探しに名所を回っていたらミヅキに出くわした。飢えるとまずいとあんていくに連れて行って店長と事情を聞く。

 

ミヅキはマヒトが喰種だと知っていた。知ったうえで受け入れて普通の友達として傍にいた。――――――つまり本当に、この二人は共存していたのだ。そして何より

 

『人を殺す覚悟は出来てないし食べることにも抵抗はあります。でも、話が通じて敵意を持ってない相手を嫌いになったりなんかしませんよ。実際、彼は私を食べないでいてくれたし・・・最後は私を生かしてくれた。感謝や尊敬はしても軽蔑や嫌悪なんてありません。それに食べ物云々で言ったら人間だって動物性たんぱく質取ってるじゃないですか、なのに生きるための食事を否定できるほど私はえらくないですよ。むしろ生きたいと思って何が悪いんですか?』

 

『最初だけだね、最初に私に向けてきた目付きだけ・・・「食材」を選り好みするようなあの目以外は全然怖くなかった。どっちかというと「得体の知れないもの」のほうが怖いから喰種だってわかった時は「ああ、だからか」って納得できて逆に安心した。』

 

『私は人間とか喰種とかそういう括りで制限されたくないの。マヒトのことにしたってたまたま気の合う友達が喰種だっただけのこと。マヒトがマヒトだったから私はマヒトと一緒にいた。ただそれだけ・・・できることなら、もっと一緒にいたかったなあっては思ってる』

 

こんな言葉を言うような人間がいるなんて、知らなかった。

 

こんなふうに私たちを受け入れてくれる存在がいるなんて、夢でも見てるんじゃないのかと思うくらい衝撃的だった。

 

ミヅキと私は歳が近いこともあってよく一緒にいる。だからいろんなことを話した。ミヅキには血の繋がらない弟が二人いるらしい。アメリカで出会った幼馴染でバスケットボールの天才なのだという奴と、親の再婚で出来たまだ中学生だというバレーボールの天才だという奴。バスケの奴とは過去にケンカ別れし、バレーの方は帰国してすぐに一人東京にやってきたのであまり一緒にいなかったのだという。・・・普通は家族みんなで一緒に暮らすもんだと思うが、人の家の事情はそれぞれなのであまり深く聞かない方がいいのだろう。

そのせいか、時々姉っぽく世話を焼いてくれたりフォローしてくれたりする。私の方がバイト長いのに・・・私は上に兄妹がいないので何とも言えないけど、姉がいたらきっとこんななんだろう。

 

ミヅキと一緒にいると安心する。ミヅキの近くは酷く居心地がいい。これが「姉」という存在に対しての感情なのか、はたまたは別の何かなのかは分からないが、深く考えるのはやめておこう。

 

 

 

 

ミヅキの匿っていた親子のことを嗅ぎ付けた捜査官があんていくに来た。そいつらに連れていかれるミヅキは追いかけたくても追いかけられない私に

 

『大丈夫。いってきます』

 

たったその一言とほんの少しの笑顔だけ残して車に乗せられていった。

その後はとにかく無事に帰って来てくれることだけを願った。アヤトがいなくなって、ミヅキまでいなくなってしまうなど考えたくもなかった。

ミヅキが連れられて行って約数時間、もう外は日が落ちて暗くなっていた。そんな時、来店を知らせるドアの音、が――――――

 

「ただいま戻りました。」

「!!」

「ぉわ!?」

 

出てったときと変わらないその姿に、反射的に抱き着いた。

 

「トーカ?」

「よかった・・・無事で・・・ほんとに」

「・・・うん」

 

ミヅキによるとケイタやその父親の事についての聴取だけで済んだらしい。拍子抜けすると同時に安心した。あと気が抜けたせいか間違えて「姉さん」って呼びそうになった。本人も含めた全員に聞かれてた。やばい、顔見れない。でもミヅキは嬉しそうにしてたから・・・まあ、考えてみてもいいかもしれない。

 

「姉さん」呼びになるのは時間の問題だ。

 

 




兎は月に焦がれるのです。
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