東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー)   作:紗代

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ミヅキ覚醒の回。
カネキ覚醒を基に書いたのでグロ注意。
家族捏造設定。


静かに芽吹く報復の華

「なんで、マヒトがここに」

「なんで?おまえに呼ばれたからに決まってるだろ」

 

聞きやすい、よく通る久々に聞く声を淡々と紡ぎながらこちらに近づいてきて私の目の前で止まった。

 

「っていうことは、やっぱりあなたは生きてるマヒトじゃなくて」

「ああ、おまえの現実逃避の思い込みで作られた幻だ。・・・わかってんだろ」

「・・・うん」

 

ほんの少し、期待してしまった。あの事故で、この状態で、来てくれるはずなんてないのに。嫌だな、本当に、こんな自分が嫌だ。

 

「ま、俺が出てきたのなんておまえの深層心理の気まぐれみたいなもんだ。」

「そうなんだ・・・そうだよね。・・・ちゃんと考えればわかることなのに」

「・・・まあそうしょげた顔すんな。実際こうやって慰めにもなるか分からない妙な会話できてんだから」

「そうだね」

 

ならここは私の作り出した精神世界なのだろうか。

 

「ねえマヒト」

「なんだ」

「ごめんね。私、あなたのこと何も理解してなかった」

 

泣きたくてでも泣けなくて、とにかく言っておかなければと口が動いた。

 

「喰種のこと、なにも知らないままにのうのうと生きてた。マヒトは私と一緒にいてくれたのに、私はマヒトに何も返せなかった。」

「いいんだよそれで。元々をおまえをこっちに引き込む気なんて更々なかったんだから・・・とりあえずこの話やめようぜ。時間がもったいない」

「・・・・・・う、ん」

 

言われて気付く。ああそっか私もう死にかけてるんだっけ、ならマヒトがここに現れたのも納得がいく。きっと走馬灯の一種なのだ。なら次にくるのは私の人生の記憶なのだろうか。

そんなふうに思っているとマヒトは私の椅子の横に座った。

 

「なあ」

「なに」

「おまえってなんでも一人で抱え込もうとするよな」

「そうかな?」

「ああ。あれってなんでだ?」

「さあ、性分なんじゃない?」

「なんで疑問形で返すんだよ・・・」

 

呆れたように言うマヒトはその場から立ち上がり私の椅子に手をかけた。

 

「なあ、あの子どもは?」

「子ども?」

 

言われてみれば微かだけど足音がする。マヒトに言われて顔を上げた私が見たのは――――――バスケットボールを持った小さい頃の私だった。

ああそっかここは私の世界で走馬燈を見てるところなんだっけ。なら納得だ。

 

「あれは、子どもの頃の私。まだアメリカにいた時だね」

「ふーん、髪、短かったんだな・・・つか無地のトレーナーにズボンにバッシュっておまえ顔見なきゃ後ろ姿まんま男だぞ。」

「最初は間違われるの嫌だったんだけど、バスケするのは基本的に男子との方が多かったから目立たなくて逆によかったよ?」

「ってことは最初は自分の意思でやってたわけじゃないんだな」

「・・・まあそうだね」

 

私はマヒトの指摘を流すと再び昔の私に目を向ける。みんなが揃ってタイガも混ざってバスケに明け暮れていた私がそこにいた。

 

「あの赤っぽい奴がタイガ、か?」

「うん、私の弟」

 

そうしてみんなが帰って行くなか、私とタイガは一緒にあるところへ向かった。―――アレックスの家だ。

 

「誰だあの女。母親じゃねえよな」

「うん。あの人はアレクサンドラ・ガルシア、大学時代女子バスケの州チャンピオンになった人で私とタイガの師匠。私たちはアレックスって呼んでる。」

 

私はタイガと一緒にアレックスの家に泊まることが多かった。いや、タイガ以上にアレックスに頼っていた。

だって家に帰れば母親がいるから。

 

私の母親、氷室静華は資産家の一人娘として幼い頃からその煌めく美貌と多才さで蝶よ花よと愛で育てられ、常に人の上に立ってきた存在だった。故に敗北を知らず、挫折を知らない。つまり、その手の精神耐性がなかった。

見合いで会った父親に一目惚れし、見事射止め幸せの絶頂を迎えた。

 

――――――私を産むまでは。

 

 

 

 

「?おまえが無事に生まれたんだから資産家の令嬢としての面目躍如だろ。なんでそこで区切る」

「今となっては昔と違って女でも家を継ごうと思えば継げるし、それなりに問題はあるかもしれないけど別になんてこともない。でもあの人は違ったみたい」

 

母親は男児を渇望していた。周りもそこまで強くは言わなかったが母が一人娘だったこともあって期待していたらしい。宣言した手前、生まれてきた私に周囲はやや落胆したようだった。今までそんな目を向けられたことがなかった母は酷く落ち込んだ。周りがそれでも喜び祝福するなかで、当の本人である母だけがプライドを傷つけられたことに納得がいかないままだった。

周囲が私に構うようになって自分を見ないと錯覚したことで更に私を嫌悪するようになった母は、私を抱き上げることなく、また構う事もなかった。

でも私が外界に出るようになってからは私の服装や行動に制限をかけてきた。

 

「あの中性的な恰好はその影響」

「なあ・・・見てて、てか聞いてて思ったんだけど・・・いわゆるおまえの母親って今流行りの「大人こども」ってやつの典型なんじゃないのか?」

「おそらくね」

 

そこで場面が切り替わる。私の頭を撫でるあの人は―――

 

「おまえの父親、か?」

「うん」

 

家族の中で唯一優しかった父親。でも正直あまり思い出は残っていない。

 

「なんでだよ」

「一緒にいる時間がほとんどなかったんだよ。私は家から逃げたくてバスケに打ち込んでたし、父親も婿入りだったから居づらかったんじゃない?それに、私が生まれてから育つにつれて母親がヒステリックになっていって口論が増えてケンカが絶えなかったから・・・嫌になったのかもね、家庭そのものが」

「・・・・・・結局、ろくでなしだろ。それ」

「気持ちはわからなくもないから、なんとも」

 

父親が消えてから更に母親からの干渉は激化した。暴力も振るわれるようになったけど、周りの人間は外部は母親の外面の良さに気にもかけず、内部の母親を知る人間は母親の権力と自分たちへの飛び火を恐れてみて見ぬ振りだった。

でもバスケがあったし、アレックスやタイガもいたからちゃんと逃げ場があった。

 

それが崩れたのは、タイガがバスケの才能を発揮し始めた頃。私は追いつけなくなってきて大好きなバスケで負けるのが悔しくてタイガと別れた後も練習してた。ただただ負けたくない、追いつきたい、それだけだった。

 

「でも、ある大会の決勝でタイガのチームと当たった時、手加減されたんだ。タイガに。私の怪我のことを知ってても、それでも全力で戦って欲しかった。だから―――次こそは本気で戦うように約束して別れた。もうこの身体だしそろそろ死ぬからどっちにしても叶わないんだけどね」

「・・・」

 

また場面が切り替わる今度の景色は日本の宮城だ。男性と背の高い学ランを着た少年がこちらに向かって来る。ああ、これは新しい家族との顔合わせの時のか。

 

「これって、おまえが前に話してた母親の再婚相手と新しい弟か?」

「うん。でも案の定私も母親もお互いに一緒にいたくないから私は東京に進学してほとんど一緒にいたことないけど」

「・・・それで、東京で俺と出会う、か」

「・・・うん」

 

そして私は、マヒトに生かされて半喰種になった。

 

「恨んでるか、俺のこと」

「ううん。私を生かしてくれたんだもの、感謝はしても・・・」

「それ」

 

マヒトが私の正面に移動し、両手で私の頬を挟むようにして視線を合わせた。

 

「ちゃんと俺と目を合わせて言えるのか?」

「!」

 

その言葉に、その目に逃げられない。―――何から?見透かされている。―――何を?

様々な疑問が浮かぶなか、マヒトは私の戸惑いを知ってか知らずか手をゆっくりと離し私に背を向けた。

 

「まあいい。いや良くないが―――タイムアップだ。奴が来たぜ」

「!!」

 

――――――――――――

はっとして現実に引き戻される。

近づいてくる足音に舌打ちをしたくなるが、筋肉を動かすことそのものが辛いので身動きせずに相手を待つ。

 

「やあ!久しぶり!っていってもほんの数時間だけど・・・気分はどうだい?」

「・・・人生で二番目に最悪だよ」

 

そういうと即座に殴られた。・・・沸点低いな。

 

「・・・いやだなあ!そこは一番最高って言うところ。素直じゃないね、君も・・・まあ」

「ぐ、ゔぁ、あ!!」

 

グリグリと私の腹の中を指でかき混ぜ引き抜かれる。

 

「そんな悲鳴や表情も、堪らないんだけど」

「shit・・・」

「さて、あのヤローの匂いが少しするのは気に入らないけど、いい匂いだしちょっと味見してみようかな~」

 

レイルは私の腹を散々かき混ぜた赤黒い手を一舐めする。その途端表情が変わった。

 

「旨 い」

 

ぼそりと呟かれた言葉。それと同時にこちらを見てくる眼光。

 

怖い 恐怖 戦慄する これは これはこれはこれはこれ は

 

「あはぁは♡そっかぁ――――――そぉっかぁ」

 

捕食者の、顔だ。

 

「やっぱり、君は、最後まで味わい尽くそう――――――どろどろに 原型が無くなるくらい」

「っ」

「そのためには課程も楽しまないと―――ああいいこと思いついたからちょっと出てくるよ。あとあの子。君と一緒に来た男の子。脱走しようとして瓶の奴らに追いかけられてるって言ってたなあ。今頃どうなってるんだろうね?」

「!!」

「どうせ動けない君には関係ないだろうけど・・・じゃあね♪」

 

足音と、扉の閉まる音。わずかにあった希望が絶望に侵食されていく。

ケイタ君は、なんの関わりもないただの子どもなのに、私に付いてきたばかりにこの組織に始末された。言葉は濁しているが、そうとってもおかしくないものだった。

 

「・・・私のせいだ」

 

頭の中で思っていることを声にして発する。静まり返ったこの冷たい空間に空しく響き渡った。

 

―――――――――

 

「そうかもな」

「!マヒト」

 

再び精神世界に呼び戻される。マヒトは私の椅子の後ろに胡坐をかいて興味なさげに返事をした。

 

「あのガキは、おまえについてこずに大人しくおまえの部屋でおまえの帰りを待ってりゃよかったんだ。無理に付いてきたりなんかするからこうなる。自業自得だ」

「でも」

「おまえもだぜ、ミヅキ。おまえが余計な気を起こしてあの羽赫のガキを嗅ぎまわってなければこんなとばっちりみたいなことに遭うこともなかった。野次馬根性ならぬ藪蛇根性ってやつ・・・お節介が必ずしも成功するとは限らない。その辺に関してはおまえもわかってたんじゃないのか?」

「そんなの、わかってた」

 

そう、私は分かっていたんだ。アヤト君が私を振り払うであろうことが。それどころかトーカのためとかアヤト君に傷ついてほしくないとかそういうのは二の次で――――――すべては自分のためだった。

折角できた居場所を失いたくない。自分を慕ってくれる人を失いたくない。自分に優しい、居場所のある世界で生きていたい。そんな、エゴだった。

 

「でも・・・っもう、失いたくない・・・」

 

マヒトとカサイさんを思い浮かべて呟いた。

 

「もう何もできないのは、嫌なんだよ・・・」

「・・・・・・そんな状態で何が出来んだよ」

「それ、は」

「そういやどっかの文章であったよな「この世のすべての不利益は当人の能力不足」。今まさにお前の陥ってる状態そのもの」

「・・・っ」

「おまえが一番わかってんだろ。天才と自分は初めからちがう。強者と弱者を分ける一線。」

「・・・・でも!それでも助けたかった!!」

「思うだけで実行できてないんじゃ同じことだろ」

「あ・・・」

「おまえはさ、現実的なくせに妙なところで理想主義だ。世の中は甘くない・優しくもない。それが分かってても突っかかっていって痛手を負う。・・・もういいんじゃないのか、休んでも」

「それは、私に死ねっていうこと?」

「・・・・・・有り体に言えばそうなるかもな」

 

声のトーンが下がったマヒトの表情は見えないが、きっと物凄く言い辛そうにしているんだろう。

 

「ありがとう。でもできれば、この姿では死にたくないな」

「・・・そうか。・・・でも、そうも言ってられないみたいだぞ」

 

―――――――――

 

「ただいま、いい子にしてたかい?」

「・・・・・・」

「だんまり・・・まあいいか。そんな君にプレゼントを用意してみたんだ!!気に入ってくれるといいんだけど」

「・・・・・・」

 

上機嫌に近付いてくるレイルは私の目の前に来るとその後ろに回して隠していた両腕を広げた。

 

「!・・・っ」

「蛇とムカデ、どっちがいい?」

 

その両腕にあったのは、小さな蛇と大きいムカデだった。

私はそのおぞましさに背筋が凍る。ーーー一体、それらをどうするつもりなんだろうか。

 

「憧れのヤモリさんのやり方を思い出してね。これを君の耳の中にいれようと思うんだけど」

「!嫌だ!いやいやいやいやいや」

「嫌だ、なんて返事はないよ?どっちかだけ」

「嫌だ、やめろやめて来ないで」

 

必死に抵抗しようと身動ぎする私にレイルは酷く歪んだ笑顔で応えた。

 

「選んでもらえないみたいだし、もう両方ともいれるね」

「!いや、いやっ、嫌だああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

おぞましい頭の中で何かが蠢いている感覚がする。それでも、考える頭があるということはまだ正気なのだろうか、それとももう正気だと思うくらいイカれているのだろうか。

ここに縛り付けられてどのくらい経ったんだろう。この狂いそうな状態になってどのくらい経ったんだろう。最後の食事はいつだっけ。あんていくに行ったのは?トーカと会話したのは?

 

わからない わからなくなるほど気の遠くなる時間、私はここにいるのだ。

コツコツと、近付いてくる足音。もう聞き慣れたこの部屋の主の足音だ。でも今回はそれに加えて何かを引き摺る音と暴れるような不規則な音のおまけ付きだ。

 

「ただいまー。最後のプレゼント持ってきたよー。」

「何を・・・!!」

 

私が目にしたのは――――――必死になってレイルの手から逃れようとしている二人の捜査官だった。

 

「んー!ん゛ん゛ー!!」

「いやーついさっきアジトに入って来るの見かけてさー最後の食事には持ってこいだと思うんだ。で、男と女―――どちらを食べるか、選べ」

「そ、んな、の」

 

――――――選べるわけがない。

 

両方とも、涙と冷や汗を浮かべて必死の形相で私を見ている。死にたくない、と。

私は、人間の頃はもちろん喰種になってからも自殺者の遺体を食べていたので狩りをして人間を食べたことは一度もない。だからこんな命の取捨選択なんて、したことがなかったし。したくもない。

 

「い、嫌だ・・・私、は 食べたくない」

「あぁ?」

「私は食べない だからこの人たちを―――」

「解放なんてするわけねーだろバァカ!!」

 

言葉とともに女の捜査官の頭を持ち上げ――――――握りつぶした。

 

「――――――!!!!」

「ははっ、イライラしてたからちょうどいい!!———あーあ。おまえが選んでさえいればもっと長生きできただろうになぁ?」

 

そのまま床に落ちた遺体を足で床にこすりつけるように、すり込むようにしてグチャグチャにしていく。

 

「ん゛ー!!」

「・・・ああもういいや。いらないって言われたし、さっきから呻き声うるさいし・・・君、もう死んでいいよ」

 

そして残った方の捜査官も、床に倒れているのを足で心臓を踏み抜かれ―――絶命した。

 

「だめだよ~好き嫌いなんかしちゃ・・・君にとっての最期の晩餐なんだからさぁ―――食え」

「っ!?」

 

口にあの捜査官どちらかの肉を押し当てられる。でも私は口を開けない。絶対に、開けない。

するとそれに痺れを切らしたのかレイルは舌打ちするとおもむろに口に肉を含み――――――わたしに口付けた。

 

甘い血と肉の味、ざらつく舌、気色悪い―――そして私が肉を飲み込んだのを確認すると、そのまま私の舌を噛み千切った。

 

「ゔ、ぉ゛え  が かゴ」

 

私が吐き気と舌を失ったことによる窒息で喘いでいる中、当のレイルは口内の私の舌をゆっくりと味わうように咀嚼し、やがて飲み込んだ。

 

「くふ、やっぱいいねえ君の味、ここまで追い詰められても壊れない精神力、容姿―――ほんと、好みだよ」

「ゴホ、げっ ぺ あ゛」

 

 

―――――――――

「腹とか手足は今ので治ったが―――これまた随分とやられたもんだな」

「・・・・・・」

「これでハッキリしたはずだ。理想で現実は救えない。理解しているが実感したくない実感を体験したわけだが――――――さっきの答え合わせだ。おまえの、本音は?」

 

「とは・・・って・・・かった」

 

マヒトの答えの催促の声と視線に押し負けた。もう何も考えたくなかった。最後に、我儘をぶつける以外私がすることなんてきっとない。

 

「本当は、連れて行ってほしかった!」

 

「一人は嫌だ」

 

「たとえ未来がなくても マヒトと一緒にいたかった!!」

 

いつの間にか泣いていた。理解者がいないこの世界は生きづらい。

 

もう いいのだ。最後にこうしてマヒトと一緒に終わる。それでいいんだ。

 

「アホ、おまえには「あんていく」って居場所がもうあるだろうが」

「でももうこんな状態じゃ・・・帰れっこない」

「ああ。でも、帰りたいんだろ?」

「それは・・・」

 

「それに」とマヒトは目の前から再び私の椅子の横に立つとそのまま寄りかかる。

 

「あんていくがこのまま無事でいられる保証もないしな」

「―――え」

「おまえはこの組織の一部の奴らに顔が割れてる。そのうえ喰種は基本的に戸籍がないことが多いから足も付きにくいが・・・お前の場合、人間として生きてきた分戸籍や自分の情報を隠しているわけじゃない。俺と関わりがあるかもしれない(・・・・・・・・・・・・・・)。そんな不確定要素だけでここまでやるような奴を有する組織だぞ?あんていくどころか過去におまえと関わりのあった人物―――弟たちまで死ぬかもしれない」

「そ んな」

 

一瞬にして景色が変わっていく。

 

血塗れの私の部屋――――――部屋以上に血塗れになったケイタ君とアヤト君。

 

血塗れのあんていく――――――首を締め上げられて折られ血を吐いて倒れるトーカ。

 

庇おうとしたタイガごと八つ裂きにされるアレックス  赫子で貫かれ投げ棄てられるトビオ

 

 

気付けば私の周りは、仲間の遺体に囲まれていた。

 

「あ―――あぁ」

「おまえが死のうが生き延びようが、遅かれ早かれこうなる可能性がある・・・なんでかわかるか?―――それはおまえが弱いからだ」

「わ、たしの、せい」

「そうだ。おまえが弱くて無責任だからこんなことになった。―――なあ、悔しくないか?憎くないか?」

 

悔しい、憎いその言葉が私の中で反響する。

 

――――――私がレイルより強ければこんなことにはならなかった。

――――――私がケイタ君を家に送ってからアヤト君を探せばケイタ君は巻き込まれずに済んだ。

――――――私が捕まりさえしなければあんていくやタイガたちを危険にさらさずに済んだ。

 

憎い。この男(レイル)も私もこの組織も世界も。

 

なんで私がこんな目に遭うんだ。なんでせっかくできた居場所を奪われないといけないんだ。なんでなんでなんでなんでなんでなんで。

 

殺してやる 奪ってやる

 

――――――私の居場所を奪う奴は 消してやる。

 

「奪われたくないなら、奪うしかない」

 

マヒトの声が響く。それは響きとは逆に幼子に言い聞かせるような優しい声だった。

 

 

 

 

いつの間にか私たちは白い竜胆の花畑にいた。―――ああいい匂い 甘い香りが鼻をくすぐる。

 

「ミヅキ」

 

名前を呼ばれて抱きしめられる。

 

「俺を食え」

「!!」

「大丈夫だ。元々俺はおまえの中にいる。また会える。だから―――食べてくれ」

 

私の唇は、自然とマヒトの首筋に齧り付いた。い、やだ。なんで―――

 

「当たり前だ、俺がそれを望んでいるから―――おまえは無意識に俺の望みを叶えようとしている。ただそれだけだ。」

「い やっ、いやだマヒト!ずっと一緒にっ」

「だからこうして一つになるんだ。言ったろ「守る」って」

「!!」

「ああ俺ってほんとに――――――」

 

その時見たマヒトの顔は、とても晴れやかだった。

 

私たちのいるところ、マヒトの血が滴った花から一気に景色が変わる。これは竜胆じゃない。

黒い―――曼珠沙華だ。

 

「あ―――ぁ」

 

もう後戻りなんてしない。

マヒトが私を生かしたように私もマヒトを生かし続ける。

 

「・・・私は」

 

 

――――――喰種(グール)だ。




カネキ君の時は白のカーネーション(?)から赤い曼珠沙華でしたがミヅキは白の竜胆から黒い曼珠沙華にしました。
白の竜胆の花言葉は「貞節」と「的確」。竜胆全体に共通する花言葉の一部に「悲しむ君が好き」「悲しむあなたに寄り添う」。
本来曼珠沙華に黒は無いのですが、精神世界ということで流してもらえると助かります。
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