東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー)   作:紗代

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居場所

「あの・・・」

「?」

「ひょっとしてここ、あなたの縄張りとかだったりする?」

「違うけど。ただここはよく肉集めに来る場所だから来ただけ・・・何?あんたも飯探しに来たクチ?」

「うん、そうなるかな。人を殺すことに抵抗があって店で話してた名所巡って食糧探し回ってたんだけどどこもなくて・・・今日はいいや。また近いうちに出直すよ」

「待って」

 

空のボストンバッグを持って立ち去ろうとすると呼び止められた。

 

「本当にそれで大丈夫なの?あんた」

「空腹は感じて無いけどそろそろ半月ぐらいになるから早めに食糧確保しておこうと思っただけだから、だめならコーヒーでなんとか凌ぐ」

「・・・喰種の飢えを甘く見んじゃねえよ」

「そうだね、まだ体験したことはないけどやっぱり餓死はきついから」

「そうじゃない・・・ったく、ついてきなよ」

「?どこにいくの」

「あんたも知ってるとこ、ほら行くよ」

 

私は言われるがままに彼女に付いて行くことにした。

 

*****

そして連れてこられたのは「あんていく」だった。営業時間ギリギリで客はやっぱりもういないので店内にいるのは店長だけだった。

 

「只今戻りました。」

「ああ、おかえりトーカちゃん」

「あの、実はちょっとお願いがあって・・・この人に肉、分けてもいいですか?」

「ほう、彼女にかい?」

「はい。なんかここ最近食べてないらしくて、まだ空腹は感じてないみたいなんですけど飢えた事がないから飢えのこともよく知らないみたいだったので・・・」

 

彼女、トーカちゃんは私の事を促すように横に立ち、私は店長と向かい合う。

 

「君は・・・たしかよくマヒト君と一緒に来ていた子だね?」

「はい、氷室美月といいます。」

「・・・ふむ。どうやら訳ありのようだね。今日はもう店仕舞いにするから二階へ行って話すとしよう。トーカちゃんも一緒に来てくれるかい?」

「・・・はい、わかりました」

 

私の戸惑いを察したのか店長は店の奥へ行くことを勧めてくれて、私をここに連れてきたトーカちゃんも一緒に話すことになった。

 

 

 

 

 

場所を二階へと移し、私はこれまでのことを二人に話した。マヒトと一緒にいた時に交通事故に遭い重傷を負ったこと。その私に臓器を提供したことでマヒトが死んでしまったこと。マヒトの臓器が移植されてから今までの食事が食べられなくなり、感覚が鋭くなったこと。

 

「・・・これは私の推測ですけど、おそらくマヒトの臓器を移植された時点で私は喰種寄りの存在になったんだと思います。ここ数週間、コーヒー以外を摂取していないのに空腹を感じない。今日念のために「名所」を巡って死体に巡り合ったら甘くて美味しそうな匂いを感じました。家から出られなくなるほどの感覚の鋭さも・・・まだ肉を食べていないので本当に体質が変わったのかはわからないままなんですけど・・・」

「なるほど。だから君は名所でトーカちゃんと出くわしたんだね」

「はい。人を殺す覚悟はまだないので、「あんていく」の他のお客さんが言っていた「名所」で遺体の一部をもらおうと思って」

 

店長は私の答えに少し考え込むようにすると再び口を開いた。

 

「君は、マヒト君が喰種だと知っていたのかい?」

「はい」

「え!?」

 

その質問に私は即答し逆にトーカちゃんが驚いていた。

 

「あんた、それマジで?」

「うん。そもそも東京に来たばかりの頃の私に構ってたのだってたぶん捕食しようと思ってのことだと思うよ?いつのまにか普通に出かける友達になってたけど」

「・・・・・・」

「君は喰種が・・・人間を食べることが怖くないのかい」

 

店長の質問。おそらくこの二人が一番聞きたいことなのだろう。驚いていたトーカちゃんも真剣なやや陰りを帯びた眼差しを向けてくる。

 

「人を殺す覚悟は出来てないし食べることにも抵抗はあります。でも、話が通じて敵意を持ってない相手を嫌いになったりなんかしませんよ。実際、彼は私を食べないでいてくれたし・・・最後は私を生かしてくれた。感謝や尊敬はしても軽蔑や嫌悪なんてありません。それに食べ物云々で言ったら人間だって動物性たんぱく質取ってるじゃないですか、なのに生きるための食事を否定できるほど私はえらくないですよ。むしろ生きたいと思って何が悪いんですか?」

「!・・・」

「ふむ・・・」

 

トーカちゃんがはっとしたように私の方をみた。店長はさっきよりも雰囲気が柔らかくなり僅かに微笑んでいる。私、なにかおかしいこと言ったんだろうか・・・

 

「ミヅキちゃん、ここで働いてみる気はないかい?」

「ここ・・・「あんていく」でですか?」

「そう。ここでなら色々なお客さんがくるから喰種についての事をより知ることができるだろう。定期的に肉も手に入るしどうだろう?」

「私にとっては条件が良すぎるくらいなんですけど・・・あの、なんで私にここまでよくしてくださるんですか?ただ常連だからっていうわけじゃないですよね」

 

「私は好きなんだよ、・・・人がね。だから喰種であることを知りつつもマヒト君を受け入れてくれた君を拒絶なんてしない。ましてや君は今や私たちと似た存在なのだから。・・・手を取りあって助け合う、それが私たち「あんていく」の決まりだ」

 

その店長の言葉に私はうなずいた。

 

「――――――はい、よろしくお願いします」

 

こうして私に新しい居場所が出来た。

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