東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー) 作:紗代
「はいこれ、忘れ物」
「!それ無くしたと思ってたやつ・・・どこにあったの?」
「入見さんがロッカーの前に落ちてたのを見つけて拾ってくれたんだけど、今日は終わりまで仕事で届けに行けないからって、私が届けに来たの」
「そっか、よかった。・・・ありがと」
「いえいえ、届けられてよかった・・・ところでそっちの子は?」
「こいつは私の弟のアヤト」
「・・・・・・」
「えっと、よろしく」
「ふん」
そのままアヤト君はこの場から出て行ってしまった。
「なんか嫌われたみたいだね、私。・・・じゃあ渡すものも渡したし、今日はもう帰るよ」
「待って」
「?なに」
トーカちゃんに引き止められて立とうとしたその場に座り直した。引き止めた本人はなんともいえない気まずそうな目を向けてくる。
「その、あんたさ・・・マヒトと、友達だったんでしょ?」
「うん」
「怖くなかったの?アイツが喰種だってわかった時」
「んー、その時には既に怖くなかったな。最初だけだね、最初に私に向けてきた目付きだけ・・・「食材」を選り好みするようなあの目以外は全然怖くなかった。どっちかというと「得体の知れないもの」のほうが怖いから喰種だってわかった時は「ああ、だからか」って納得できて逆に安心した。それよかその目以外は至って普通の人間として暮らしてたしあの演技は凄いよ本当に。・・・それにさ、私は人間とか喰種とかそういう括りで制限されたくないの。マヒトのことにしたってたまたま気の合う友達が喰種だっただけのこと。マヒトがマヒトだったから私はマヒトと一緒にいた。ただそれだけ・・・できることなら、もっと一緒にいたかったなあっては思ってる」
「そ、っか」
「でも、昨日ヨモさんや店長から喰種について教えてもらって、私って全然知らなかったんだなって、思った。喰種についても、マヒトについても・・・なんか、私って情けないね。友達って言っておきながら、喰種って知っておきながらお互いに踏み込めないまま終わるなんて」
「・・・そんなこと、ない」
私が困ったように笑うと今度はトーカちゃんが口を開いた。
「私らは人間に混じって生活してる分喰種ってばれないように演技して生活してる。喰種ってばれたら友達だろうが恋人だろうが全部終わり。だからマヒトがあんたに打ち明けたのは普通じゃ考えられないことでそれを打ち明けられてもそのまま一緒にいるあんたも普通はありえないんだよ・・・・・・上手く言えないけど、マヒトにとってはあんたが救いだったんじゃないの?」
「そっか・・・そうだといいな」
この一見クールで短気に見えるトーカちゃんのやさしさを感じ取りながら、私は本当にそうならいいと願った。
この一件でトーカちゃんと距離を縮めたと同時に、トーカちゃんとアヤトくんの姉弟間の溝を深めてしまうことを私は知らない。