東京喰種 Another Rainy Blue(アナザー・レイニーブルー) 作:紗代
梅雨真っ盛りの6月半ば。私はあの日以来ほぼ毎日来るようになった月山さんと本の話題で盛り上がり、彼に馴染んできた頃。
「今度一緒に出掛けないかい?」
「?どこにですか」
「高槻泉の訪れる喫茶店にだよ。それに他の本も見繕いたいし、君に選んでもらえると助かる。・・・どうかな?」
「いいですよ」
「ありがとう、氷室さん!では今週の土曜日にでも」
「はい、わかりました。」
これが、三つ目の間違いだった。もう少し怪しめばよかったのに、警戒を怠るなんて。
約束の土曜日。約束通り私と月山さんは高槻泉御用達の喫茶店、各区の本屋などを巡り一日を満喫した。
「今日はありがとうございました」
「いや、僕の方こそありがとう。やはり君と話して正解だったよ。これまで以上に本を楽しめそうだ。」
「ならよかった」
「けど、本当に送らなくていいのかい?」
「はい。・・・今日はありがとうございました。」
そして私は月山さんに背を向けて歩き出した。
「・・・いけないな、ここ最近は物騒だというのに・・・こんなふうに、ね!」
「!」
背後の気配に最低限の動きで回避する。そこには鋭い剣のような―――肩からの甲赫の赫子があった。
「へぇ・・・実に良い反応だ。益々君に興味が湧くよ」
「・・・なら見逃してもらえませんか?」
「ノン、それは出来ない相談というものだ。」
「そうですか」
「さあ、食事前の軽い運動といこうじゃないか!」
「!」
月山さんの攻撃を躱しながら一撃蹴りを見舞う。しかしあまり効いていない。まずいな、せっかく稽古つけてもらってたのに「相手を殺さない程度」の加減をする悪癖は健在だ。月山さんは色々と格上の存在なのでこれが致命的なことに繋がりかねない。
「いいね!反応といいこの蹴りといい・・・しかし赫子はどうしたんだい?この僕が赫子を出して対峙しているというのに・・・まさか出せないのかい?」
「・・・」
「これは好都合!ならまずは・・・味見だ」
「!!ぐ、あっ」
距離を取ったのに一瞬で詰め寄られ、てがわたしのおなかをかんつうしてた。
そのまま、なげとばされて、たてものにぶつかって。
近付いてくる月山さんの足音だけが異様に響いて聞こえる。
私
死
ぬ
の
?
まあ、頑張ったじゃないか。喰種に成り立ての身にしてはまずまずの結果だ。
―――ごめん。マヒト、せっかく生かしてくれたのに。
もう終わりだ。我ながらろくでもないけどいい人生を送ってきた気がする―――
『ふざけんなよ』
は
『言ったろ、守るって』
なん、で
―――――――――
「口惜しいがこれでラストワルツといこうじゃないか、氷室さん。やはり僕の目に狂いはなかった!!この味わったことのない甘く芳醇でこの上無い美味しさに僕は!僕は感動にうち震えている!」
「・・・が・・・の」
「んん?なんだい?最後の言葉くらい聞いてあげようじゃないか」
「少し優位に立ったからって、調子に乗るなよクソ
「ッッ!!」
「は、やっぱ、最低限しか食べてねえのか。こいつ」
「!」
元々人間で人間を食うことに抵抗があるのだろう。やはり出力の差は否めないが名残で人間の
「よお、久しぶりだな美食家、相変わらず面倒なことしてんなおまえ」
「氷室さん・・・?いや君はだれだ?」
「はぁー、最後に会ったのからまだ一ヶ月くらいしか経ってないのに・・・この赫子としゃべり方で分かんねえかなあ・・・まあ、世間では俺は死んだことになってるみたいだから仕方ないか」
「喋り方・・・赫子!!まさか君はマヒト君なのか!?」
「まあ、当たりといえば当たりだ。・・・だからっておまえと感動の再会なんて有り得ねえけどなあ!!」
再び燐赫で月山を攻撃する。一番使い勝手の良いのでこいつをよく使っているが今回はほんの少しだけ甲赫のも混ぜ込んで一際硬い一撃をお見舞いしてやろう。
「そおらよっと!!」
「っ!!」
バキンという音とともに砕け折れた月山の赫子が地面に突き刺さる。―――そしてその隙を狙い月山をハチの巣にした。
「そんな、馬鹿な・・・なぜ君、が・・・」
「そんなんどうだっていいだろ。そのままくたばってろよ変態――――――ミヅキに手エ出したら殺す。それだけ覚えとけ」
――――――まあ、それだけだ。じゃあな。
切り替わるようにその一言だけ聞くと私の意識は浮上した。血塗れの私、それ以上にスプラッタな月山さんだけが取り残された現場から、私は痛む体で月山さんと月山さんの折れた赫子を回収しそのままあんていくに向かうのだった。