IF~獣の特別~ 作:コズミック変質者
注意)空っぽの頭で書き続けていたので期待はしないでください。前半は4ヶ月前に書いていたものなので自分自身も何書いてるか分かりません。
彼女との邂逅から三年がたった。世界が植民地の奪い合い、それを原因とした戦争の日々を警戒しながらも、私と彼女は1914年、ハレ王立学科ギムナジウムへと入学した。
入学してから一年、私と彼女はギムナジウムの敷地内にある寮で、各々生活している。
三年前と比べ、私達の中で、色々と大きな変化があった。まず一つは彼女の家族のこと。まず先も述べたように戦争への警戒のために、イスターツ少将は二年前から出軍している。流石に少将となると仕事が多いのか、彼女が最後にイスターツ少将に会えたのは二年前の出軍前が最後だ。
そして二つ目はこれまた彼女に関係するものだが、彼女の十歳上の兄であるデルリック・イーネア・イスターツが、若くして秘書を務めていた、とある有力な国会議員の娘と婚姻を結んだこと。
今の時代には珍しい政略結婚ではなかったらしく、その事だけでも貴族達の夜会では噂になるほどだ。
ただの政治家の娘と軍人の長男が婚姻を結ぶだけであれば、ここまでの噂にはならない。せいぜいが酒のつまみとして扱われるだけだろう。問題は『イスターツ家』の者が誰かと婚姻を結ぶということだ。
イスターツ家の血が通った者には皆共通して当てはまる事がある。それは『武』に優れているか、『知』に優れているかだ。
例えばイスターツ少将ならば『武』。
デルリックさんならば『知』。
イスターツ家の血は特別である。なにせ片方が平凡でももう片方は異常と呼べるほど必ずの確率で優れるのだから。
故に、さらなる家の発展を目指す貴族達にとってはイスターツ家はどうしても家に迎え入れたいのだ。だが下手に拉致などをすればたちまち何らかの方法で痛い目を見るだろう。
イスターツ家にいるのはデルリックさんとクリスタ。この中でデルリックさんは既に既婚者として名を馳せている。ならば残っているクリスタへと貴族達の目は向くが、その難易度は果てしないものである。
クリスタはデルリックさんとイスターツ少将から愛されすぎているという程愛されている。それこそかつては過保護という程でもあった。
そこまでならば自分から手を出そうとする貴族達は減っていただろう。それこそ毎夜、数多の家に呼び出されることはなかっただろう。
クリスタは異質だった。イスターツという異才を持つ家からしても異才。イスターツの血を引くものは『武』か『文』のどちらかに優れるものが多いが、時折異才ではなく、天才のレベルまでに落ちるが、両方を持ち得る者もいた。だがクリスタはあろうことか、両方を持ちえたものであり、イスターツ家の過去最高の『才』を持っていた。
そのことが知られたのはすぐのこと。あの手この手で彼女を丸めこようとし、知られて間もない頃は時折拉致誘拐という危険な方法をとっていた貴族もいた。
彼女専属のボディーガードがいなければ今頃どうなっていたか、想像したくもない。確かに彼女は異才だが、それでも幼い少女である。肉体の発達は男性には劣り、大人数が相手ならば疲れも出てくる。
今無事でいるのは奇跡とすら言えるだろう。最も、彼女がそのことを私の前で気にしたことは一切ないが。
少しは自身の身を案じてもらいたいものだな・・・。
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1916年。
学院への入学から大分時はたった。当初、引く手あまただった彼女の勧誘は大分収まってきた。
聞く話によれば彼女を家からの指示で勧誘していたもの、もしくは純粋な恋慕を持っていた者達は、どうやら裏で見守り続けると決めたらしい。
その噂がではじめた頃に、何故か私の友人の一人が、「幸せにしないと許さないからな!」と言って教室から走って出ていったこともあった。その後すぐに戻ってきたが。
彼は一体何がしたかったのだろうか?
「おーい、ライニー」
「ん?ああ、すまない」
「珍しいね。ライニが私のこと無視して考え事なんて」
確かに。言われてみれば初めてかもしれない。
今いる場所は学院の図書室。各地から集められた蔵書に囲まれて、私と彼女は向かい合って座っている。
共に勉学に励んでいる、と言いたいのだが、残念ながら私は彼女に教えを乞う立場だ。長年共にいるとはいえ、少し失礼だったな。
本来なら私語厳禁なのだが、時間帯は夕餉を既に過ぎている。今ここにいるのは私と彼女の2人だけだ。学院生には2人1組の自室が与えられているため、態々夜にここまで来る必要がないのだ。来るとすれば男女性別が違う者同士位か。
最近、二人でいるときに、何故か頭が上手く働かない。
「もしかして誰か好きな人でも出来た?」
彼女が瞳を爛々とさせてこちらを見てくる。やはり彼女も年頃。他者のそういった話に興味を持っているのだろう。しかし、それは私には残念ながら当てはまらないな。なぜなら私は・・・私は・・・。
———◼◼を◼◼て◼る。
そうだ・・・私は・・・。
———◼◼て◼る◼◼◼◼◼せ!
「おーい!ライニー!」
彼女に肩を叩かれる。なんだ・・・今のは?まるで自分じゃない誰かが頭の中で叫んだような・・・。しかし私は何を考えたのだ?
「ちょっ・・・ライニ、近い近い!」
「っ!?すまない!」
いつの間にか身を乗り出してきた彼女の両肩に衝動的に手をかけてこちらへ引っ張ってしまっていた。同時に顔が赤面して彼女から目を逸らしてしまう。
彼女ははァ・・・とため息をついて乱れた服を正す。
「今日はもうおしまいにしよ。あんまし集中出来てないみたいだしさ」
「・・・すまない」
「謝らなくていいよ。代わりに、今度のお休みに買い物に付き合ってもらうから」
彼女はそう言うと荷物を纏め、また明日ねと気楽に言いながら急ぎ足で出ていってしまった。
全く・・・急ぎすぎてペンを一つ落としているが、どうやら気づいていないらしい。明日会った時に渡しておかねばな。
それにしても、本当にどうしてしまったのだろうか私は。今まで色恋への興味など微塵も持たず、彼女とも仲のいい幼馴染だと思っていたのだが・・・。突然あんなことをしてしまうとは。
もしかしたらこれが原因でお互いの関係に溝ができてしまうかもしれない。その時は受け入れなければ。すべて私の責任なのだと。
しかし、どうしてこの心臓はここまで煩いのだろうか。
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私は知っている。彼は生まれながらにして人を超えた存在だと。
私は知っている。彼は『何か』に飢えていると。
彼を理解するものは恐らく現れないだろう。現れるとしても、それは恐らく神様くらいのものだろう。だがその神様でさえも、彼の理解者でさえも彼の『飢』をなくすことは出来ない。
全人類で過去最高とも呼べる『飢』を持った彼を、誰が理解できるのだろうか。誰が共にいてあげられるのだろうか。少なくとも今の彼の周りにはいない。
今の私では、彼の『飢』を満たしてあげることはできないだろう。誤魔化すように満たしたところで、次はもっと深く、強く求めてしまう。
彼にとって『飢』を満たす行為は一種の麻薬だ。満たし、乾けば次を求め、また満たして乾いて求める。彼は終わることのない円環の中にいるのだ。
ずっと一緒にいるから分かる。ずっと彼を見てきたから分かる。彼が救われることはない。一時の救済さえも意味をなくしてしまうほどに、いつかは『飢』は強くなってしまう。それこそ、世界から彼の『飢』を一時的にとはいえ満たせるものでさえ。
そこに辿り着いたらどうなるか。考えたくない。彼が苦しむ様を、私は見たくない。
ならば、私が彼の求めるものになろう。私が彼の『飢』を満たし続けよう。今は無理でも、研鑽を重ね、思考を続け、修練を積んでいけばいつかは辿り着けるはず。彼が求め、届かない場所へ。私だけが彼の所へ迎えに行けるように。
彼が私に辿り着く必要は無い。永劫私が彼の前に居続けて、彼に手を差し伸べ続ければいい。決して私の前には行かせない。一度超えちゃえば、手遅れになるから
醜い願いなのかもしれないだろ。それでもいい。たとえ誰になんて言われても、全てから裏切られても、そして彼から侮蔑されようとも、私は彼のために、彼を永劫待ち続け、導き続ける。
それが私が彼に送れる、隠し続けてきた◼なのだから。
——とある貴族の日記——