「ショーヤ、この前のドラマの続き見せてよー」
【宿題が終わったらな】
「ぇー」
ベザードに来てもう半年。何起きるわけでもなく、平和に過ごしております。ちなみにシェルディアの言っているドラマってのは、アトリームで放送されてたやつだ。アトリームにもありましたよ。地球よりも多くのドラマや映画が……っていうのは言い過ぎだが、普通に面白いものがたくさんあったので情報収集ついでに集めて観賞するのが、アトリームでのひそかな楽しみになっていた。で、それを勉強のご褒美ってことにしたら、見事に二人とも食いついてきて今にいたる。ちなみに最近の二人のお気に入りは昼ドラ系だ。君ら、そんなドロドロしたのがいいの?お兄さんちょっとわからないや。
「にしても見つからないねえ、ミストって人」
「うん。時々変な機械の残骸が表れたってニュースは増えてきたけど」
【うーむ……】
で、肝心のミストさんとレヴリアスだがまるで見つからないんだよなあ。時折謎の機械(たぶんアトリーム製)の残骸が突如現れたってニュースは見るんだが。いい加減心配になってくる。
(無事なのかなぁ)
いやまあ、無駄にバイタリティあるタイプだし、生きてさえいれば平気な気はする。一人で惑星ベザードにたどり着いて、信頼を勝ち取った彼を信じよう。いや、この時間軸じゃないけれど。
ただなあ、地球にたどり着いて記憶喪失のフリでごり押したりするような奴でもあるしなあ。……あかん、考えだしたら不安になって来た。
「ねえ」
【ん?】
などと考えていると、レムがつんつんと突っついて来た。ってどうしたんだそんな捨てられた子犬のような目をして。
「ミストって人が来たら、ショーヤは行っちゃうの?」
「レム、ショーヤを困らせないの」
「うー」
そうなんだよなあ。この半年で、なんかレムにやたら懐かれてしまった。元々シェルディア以外の人との接触が少ない事も原因だったのかもしれないが。数少ない友達が居なくなっちゃうって感じなんだろうか。俺今AIだけど。もう少し他の人とも触れ合えればいいのかもしれないが、この半年暮らしててわかったけどそれも難しそうだ。
この星で神の石、クリスタル・ハートの存在はかなり大きい。信仰の対象であると同時に、機械を動かす動力源という実益ももたらしている。もちろんクリスタル・ハート一つですべてをまかなっているわけではないが。それでも、この惑星ベザードの文化の象徴みたいな存在だ。それを近づくだけで止めてしまう人間がどういう扱いをされるのか。さすがに表立って暴力を振るわれたりはしないが、それでも人は彼女に近づこうとしない。買い物ですら、シェルディアと一緒じゃないとできないのだ。あの時ほど、体が無いのがもどかしいと思った事はない。
【ミストさんが来ても、すぐに居なくなる事はないさ】
「本当?」
【ほんとほんと】
だからまあ、今はとりあえずこう言うしか出来ないよなあ。というかこの子、この後ガズムかル=コボルの依り代にされるんだよな。どんだけ人生ハードモードなんだよ。エルリックの時には原作通りの流れにすることにそこまで罪悪感なかったけど、レムの場合罪悪感をひしひしと感じる。そこまで話したりする機会がなかったエルリックと違って、この半年ほぼずっと一緒に過ごしてきたからだろうか。
【とにかく、今はこの問題を解くことを考えよう】
「はーい」
うーん、レム憑依の回避ルート無いかなあ。さすがにこのまま放っておくのはなんかイヤだ。なんかエルリックがジト目でにらんでる気がするけど、そこはおっさんと女の子の扱いの差って事で勘弁してくれ。
いや、真面目な話するとエルリックの特攻は下手に止めるとミストさん達全員まとめて全滅の可能性があったけど、レムの場合そんなこともなさげだしなって言うのはある。とは言え、どうするかって言われると具体的なアイディアなんざこれっぽっちも無いのだよなあ。んー、安全な場所に避難させるとか?どこだよ安全な場所って。
「ショーヤ、終わったよー」
「私も」
【む、速いな】
とりあえず、今は目の前の答案を採点する事に集中するとしよう。
「終わったら、あれ見せてね。ボク続き気になってるんだから!レムもそうでしょ?」
「うん!」
うーん、昼ドラの良さはやっぱりわからん。
それからさらに数日たったある日の事だった。
「ショーヤ!」
学校帰りのシェルディアが、慌ててレムの部屋まで走ってきた。何があったのかとカメラを向けると、そこには懐かしい姿があった。
(ようやく来たか、ミストさん)
主役は遅れてくるとは言え、俺と半年近く差があるのはどうなんだ。見た感じ怪我もなさそうだしよかったよかった。とりあえず再会の挨拶をしようと思ってたら、シェルディアが一言。
「ミストさん拾った!」
「ひ、拾った……」
いや、シェルディアさん。そんな捨て猫拾ったみたいに言わないであげて。ミストさんも困ってるから。
そんなこんなでミストさんも到着。ミストさんは誰を選ぶのだろうか……