とはいえ、実際どうしたものかな。レムが近づくとクリスタル・ハートが止まる以上、レヴリアスやセリウスIIに相乗りさせるわけにもいかない。かといって一人残せばイディクスの連中の依り代にされる。原作をなぞれば命の心配はないとはいえ……それはやだな。うん、嫌だ。ただのわがままなのかも知れないが嫌だな。
(でもどうする……手が浮かばない)
レムの中の欠片を排除できれば一番手っ取り早いんだが、そのためにはそれこそ一回イディクスの依り代になるしかないわけで……それが嫌なんだというに。何か、何かないか?
「ねえ、私が神の石に近づいちゃってもいいの?」
「んー、なんかショーヤが思うところがあるんだってさ」
考えても何も浮かばなかった俺は、ミストさんに頼んでレムをレヴリアスの近くにつれてきてもらった。クリスタル・ハートの不具合が原因でミストさん達と別行動になるんなら、その原因を解決できないかという訳だ。まあ、欠片が原因な以上まず無理なのは解ってるがダメ元だ。
【やっぱりダメか?】
「うーん、うんともすんとも言わないな」
ミストさんにレヴリアスを起動してくれるよう頼んだが、やはり起動しないらしい。ダメ元だったとは言え、残念だな。ってあれ?
【おかしいな】
「どうした?」
【ちょい待ち。なんだこれ】
外部からのアクセスだと?レヴリアスは起動してないのにどこから?接続先をたどると、同じく起動してないはずのセリウスIIからだった。いや、正確にはその、動力部か?
(クリスタル・ハートそのもの?)
いや、不思議動力源だから何があってもおかしくは無いと思ってたけど。混乱する俺をよそに、クリスタル・ハートから情報が流れ込んでくる。これは、圧縮されたプログラムか?
「大丈夫か?ショーヤ」
【あ、ああ】
気がつくと、クリスタル・ハートとのアクセスは途切れていた。すぐにクリスタル・ハートから送られてきたプログラムを解凍する。そして、そのプログラム名に驚愕した。
「あ、お兄ちゃん達結局何してたの?」
「んー、俺にもよくわからない。ショーヤ、何がしたかったんだ?」
【ああ、うん。ちょっとな】
「ふうん?」
「じゃあ、帰ろうか!お姉ちゃんが待ってるよ!」
ミストさんに適当に答えながら、俺はもう一度プログラムを確認した。
『クリシュナ・イーター』
おい、クリスタル・ハート。お前は俺に何をさせるつもりなんだ?
その日の晩、皆が眠ってからプログラムをスキャンしてみた。結果は、解析不能。アトリームの技術じゃ訳がわかりませんって事だ。だが、起動はできるときた。
(実際に使ってみるしかないって事か?)
だけどコレ、一体なんだっていうんだ?クリシュナ・ハートへ対抗するためのものにしては、こんなデバイス1つに入りきるような代物な訳ないだろうし。しかしイーター、イーターか。
(食う、喰らう。何をだ?)
イディクスの連中をか?んな物騒な。というかプログラムの身でどう喰えと。いや、精神生命体を情報の塊と仮定するなら?
(だとしても何でこのタイミングなんだ?)
そんな感じのプログラムだとしても、なんで今クリスタル・ハートがこんなもんをよこしたかがわからない。クリスタル・ハートが俺に何かさせたいっていうなら、俺はレヴリアスには結構前、アトリームに居たころからアクセスしていたぞ?アトリーム最終戦ではコントロールぶんどってたし。それとも、ベザードのクリスタル・ハートが特別なのか?
だめだ、わからん。
(レムに使えって言うんだろうか)
何が起きるかわからない代物をレム相手に使うとか何それ怖い。でも、もしこのプログラムでレムの中の欠片を除去できるなら、状況は変わる。
(……どうする?)
そもそも無理をしなくても、この後レムはイディクスの幹部に憑依されるだけで命は無事だ。原作通りにいけば最後はハッピーエンドで収まる。それをわざわざ俺のわがままで取り返しのつかない状況になったりしたら。
【……できないよなあ】
「何が?」
【ってレム!?】
いつの間にか、レムが起きてきていた。
「なんか様子がおかしかったから」
【そうか?】
「なんとなく、そう思ったの」
そういうと、レムは俺の置かれてる机の上に座り込んだ。
「ショーヤが今悩んでることって、私が関係してるの?」
【……どうしてそう思った?】
「だって、昼間急に私をレヴリアスのところに連れてったりするんだもの。隠せてるつもりなら残念過ぎるよ?」
【んぐっ】
いやまそりゃそうだよなあ。
「昨日私が言ったこと、気にしてる?」
【……気にしてる】
「そっか。気にしなくてもいいのに」
11歳の少女に気を使わせるってどうなんだよ、俺。
「ねえ、ショーヤが何かしようとしてるんだったら、私はやってほしい」
【いや、それは!】
「危ないの?」
【わからない】
そう、わからないからできないんだ。
「わからないなら、やってみたほうが後悔しないと私は思う」
【レム……】
「それに、ショーヤを信じてるもん」
【そうか】
ここまで言われたら、腹をくくるしかないよな。俺のわがまま、通させてもらう。信じるぜ、クリスタル・ハート!
レムの腕に俺を取り付けてもらって、プログラムを起動する。
≪クリシュナ・イーター 起動≫
「きゃっ!?」
【レム!】
瞬間、部屋の中に光が広がった。
「これは?」
気がつくと、何もない空間に浮かんでいた。体がある事に違和感を感じる。ここは、どこだ?
「そうだレム!」
周りを見回す。すぐに、レムの姿が見つかった。そして、
「あれは?」
レムの胸に食い込む、紫色のまがまがしい結晶。直感的に、あれがレムの体に巣食うル=コボルの欠片だと理解する。だったらやることは一つだ。
「レムから、離れろぉ!」
結晶をつかむ。瞬間、感情の本流が俺の体に流れ込んできた。怒り、悲しみ、憎しみ、そういった負の感情に一瞬のまれそうになったが、何とか踏みとどまる。
「喰らえってんだろ?だったら食らいつくしてやる!」
時間にしてほんの数十秒で、結晶は全て俺に取り込まれた。くそ、疲労感がすごい。というかいまさらだが、これ取り込んで良いようなものなのか?そんなことを考えているうちに、レムが目を覚ましたようだ。
「ん……ショーヤ?」
「起きたか」
さて、どう説明したものか。
「意外と、かっこいいんだね」
「おい、第一声がそれってどうなんだよ」
もっとこう、ここはどこなのとか何が起こったのとかいう事あるんじゃない?
「だって、信じてるって言ったじゃない」
「そうだったな」
信頼がくすぐったい。
「まあ、もう終わったから寝ていいぞ」
「そうなの?うん、なんか疲れたから寝ちゃうね」
そういってすぐレムは目を閉じた。その場からレムの姿が掻き消える。
「これでよかったのか?」
残された俺は自問したが、すぐに頭を振った。レムが信じてくれたんだ。良かったと俺も信じよう。そしてすぐに俺の体も消え始めた。久しぶりの体の感覚に名残惜しさを感じる。そうして、その空間から消える直前。
〔あの子を、お願いします〕
そんな声が、聞こえた気がした。
でもこの主人公、大学生くらいの年齢設定だから11歳相手って普通にロリコンだよね
(白目)