「一体何をするつもりだ!」
「簡単な事さ。この星とあの星をぶつける。それで終わりだよ」
声を荒げるミストさんに、何事でもないかのようにヴェリニーは言い放つ。本当にそれで終わりだから始末が悪い。
「くそ、このままじゃこの星は!」
「砕け散るねぇ」
そう楽しそうに笑うヴェリニーに腹が立つが、どうしようもない。そもそも、わかっていたことだ。惑星ベザードは滅ぶ。どうあがいても戦力が足りないのだ。物語の主役級の機体が集まった主人公部隊でようやく戦える。そんな相手にロボット二体とその他戦力では善戦はできても大局は覆らない。さらに相手にはプラネット・クライシスなんてとんでも札まで持っているのだ。解っていた。解っていたさ。それは、アトリームの時もおんなじだった。
だから、俺は”考えないようにしていた”。ミストさん達近しい人間以外の事を、意識して思考から切り離していた。そうだ。いくらAIだからって、人にかかわらない訳がない。ミストさんの学友が居た。街の人が居た。防衛隊の気のいいおっさんも居た。ミストさんと同期の女の子も居た。
このベザードでだって、ミストさんが世話になってた親方とか、他にもいろいろ。そう言った人達を助けられない事を『仕方のない事だ』と考えないようにしていた。だというのに。
「ん?なんだいこの感じは」
「え、レヴリアスが勝手に!?」
どうしてこんなにも怒りが、憎しみが沸き上がってくるのか。感じる。ベザードに居る人々の恐怖が、怯えが、怒りが。目の前の相手を滅ぼせと。
≪クリスタル・ハート 侵食開始≫
【お前は】
「え、ショーヤ?」
≪コントロール AI名『ショーヤ』に譲渡≫
【潰す!】
「うわっ!?」
「何!?」
衝動のままに、レヴリアスの操作を奪ってビクトーラに突っ込む。ステアードで連撃。防いだところを蹴りでこじ開ける。
「おい、ショーヤ!おい!」
「くっ、なんだいこいつ!急に動きが!ぐぁあああ!?」
こじ開けたところにグルーヴァイン・バスターをねじ込む。撃つ。撃つ。撃つ。
「くそ、なんだかわからないけどヤバい気がする。ショーヤ!」
「な、舐めるんじゃないよ!」
ビクトーラの蹴りをつかんで投げ落とす。ステアード連射。そのまま空いた腕の砲身展開。出力最大。
「っ、まずい!あっちは!」
「くそう、私がこんな!?」
「えっ!?こっちに来る!?」
「このままじゃ、射線に!」
砕け散れ。
「んの、バカ野郎!」
思いっ切り、顔面をぶん殴られた気がした。
【……俺は】
「止まったか……バカ兄貴」
気が付くと、ミストさんが俺の体……デバイスに拳を突き立てていた。情報をかき集める。目の前にはボロボロのビクトーラ。そして『その背後にあるセリウスIIの姿』。
そうか、俺は”シェルディアとレムごと奴を撃とうとした”。その事実に気づき、背筋が凍る。俺は何をやっているんだ。
「アトリームの事もあるし、キレるのはわかるけど落ち着いてくれ」
【す、すまない】
俺が、キレた?なんで急に……まさか、欠片を喰った影響なのか?いや、でも影響が外に出るなら何でクリスタル・ハートが止まらない?わからない。わからないがわかる事が一つある。
【ありがとう、ミスト。取り返しがつかない事をするところだった】
「何、今までのお返しだよ」
ミストさんが居なければ、俺は最悪二人を殺していたという事だ。守ろうとしていた相手に、何をしているんだ俺は!
「もう、びっくりしたよミスト!気を付けてよね!」
「こ、怖かったぁ」
「ごめん、『俺が』熱くなりすぎた!」
【いや、今のは】
「いいから」
訂正しようとした俺を、ミストさんが制する。気遣ってくれてるのはありがたいが、後ろめたい気持ちの方が大きい。とりあえず、意識を切り替えよう。反省はその後だ。
【奴は?】
「あ、あんなところに!」
気が付くとビクトーラは、少し離れたところに居た。その背後にはいつの間にか時空間ゲートが。
「待て、逃げる気か!」
「くやしいけど、そうさせてもらうよ!」
「逃がすもんか!」
レヴリアスとセリウスIIが追撃するが、すぐにビクトーラの姿はゲートの中に消えていった。そして、近くにいた二機もまたゲートに引き寄せられる。
「く、またか!シェルディア!レム!」
「なんなの、これ!」
「お兄ちゃん!ショーヤ!」
【シェルディア!レム!】
そうして、ゲートに飲み込まれる寸前、俺はレヴリアスのカメラを通してベザードの姿を目に焼き付けた。助けられない事を許してほしいとは言わない。だけど、仇は打つ。そう、身勝手な約束と共に。
そんな訳でベザード滅亡(軽い
次回から地球編。どこから始めるか……またプラントかなぁ