「どうしたのポーチちゃ…。あっ!!。あれはセルリアンだよ、逃げて!!」
彼女の慌てた声が聞こえる。やはりコイツは危険な存在のようだ。彼女の指示に従おうとするが自分の中の何かが激しく喚き立てて動こうとしない。
改めてRE-45という物を見てみる。L字型の片手で持てるほどの小ぶりの道具。基本は銀色で各部分に細かな彫り込みがしてあり、小型の部品が幾つかついている。
次に持ち手の部分だが黒色で妙にザラ付いているが指にしっかり食い付く。持っていると少し冷たく、それで身を守るにはかなり小さい。しかし自分には何故かこれが頼もしく思えた。
「どうしたのポーチちゃん!!はやく逃げて!!」
再度逃げろと言われる。こんなやりとりが前にもあった気がする。何故か少し悲しい気持ちになりながらも前の敵を倒せという感情が強くなる。
再び冷静に手に持ってる物を確認する。すると上部になにやら透明な板状の物があり、覗くと赤のマークが見える。
構えていて分かるのだがちょうどセルリアンとマークの位置が一致する。どうやらこれはマークと相手を合わせる役割を果たしているようだ。
こんな事をしている間にもセルリアンが近づいてくる。だが手に持つ小さな存在がこの危機的状況を変えてくれるという確信があった。
「んっ?」
人差し指に何か当たるものがあり、指の辺りを見ると何やら小さな出っ張りがある。これを指で引けば何かが出来ると理解出来た。
しかしセルリアンの距離は思ったよりも近かったようだ。口みたいな物が開き、自分を捕食しようとせんとばかりに飛びかかってきた。
「うわぁっ!!」
咄嗟の判断でそれを拒むかのようにセルリアンに向けて足を突き出す。それが運良くセルリアンの下部に命中し、少しではあるが距離を稼げた。
「っ!ポーチちゃん!大丈夫!!」
彼女の声がする。辛うじて難を逃れたが未だ危険な状況は続いている。まだ距離が近いが、出っ張りを引くには問題ない。
思いっきり指を引く。
「!!、なんで…」
しかし何も起きない。慌てて手元を見てみると、何かがいけなかったのかその小さな出っ張りはピクリとも動こうとしなかった。その場で固まっている姿を見てセルリアンは好機とばかりにこちらに向かってくる。
「ポーチちゃん!!うみゃみゃみゃみゃ〜!!」
彼女がジャンプする。その手は大きく光っており、あの山で見たサンドスターの輝きがあった。
「え〜〜〜い!!」ポフン
〈!〉
その場から動けない自分を通り越してセルリアンにその手が命中する。するとセルリアンの体がバラバラになり、やがてサンドスターの粒子となった。
間近で見たサンドスターの粒子は七色の不思議な色をしており、まるでその存在が幻だったかのように消えていく。
「ポーチちゃん!大丈夫?セルリアンは危険だから近づいちゃだめだからね!」
彼女がそう言いながらこちらにやってくる。彼女に助けてもらったのだ。お礼を言わなくては
しかし消えていくサンドスターの粒子から目が離せない。その儚くも綺麗な粒子が自分が大切にしていた何かような気ががして。
「あっ…」
顔に熱い雫が流れてくる。何故だろう…。何も悲しい事なんて無かったのに。何も辛い事なんてなかったのに。だけど目からは涙が出てくる。何かの許しを請うかのように。
「どうしたのポーチちゃん…。そんなにセルリアンが怖かったの?」
彼女は心配そうにそう尋ねてくる。彼女には私がセルリアンに襲われた事が怖かったから泣いていると思われているらしい。
確かにセルリアンはこちらを捕食対象として見ていた。それにあと一歩の所で食べられる可能性もあった。そこで少なからず恐怖を感じていたのは事実である。しかし戦ってる最中は恐怖こそあったもののそれを上回る憎悪がたしかに存在していた。実際こうして倒した事でむしろ倒した事で喜びすらあった。
でも倒してこの消え行くサンドスターの粒子を見るとその気持ちは一変した。大切にしていた宝物が決して元には戻らないような気がして。ここに来て初めに感じた心の穴がどんどん大きくなって自分を呑み込んでいくような気がして。
「大丈夫だよ…ポーチちゃん!セルリアンなんて私が自慢の爪でやっつけちゃうんだからっ♪」
彼女はそう言いながら自分を抱きしめてくれる。なぜ初対面の私にこうも優しくしてくれるのだろう。こんな風に彼女に慰められては必死で止めようとした涙が溢れてくる。
「うぐっ…っ…!グズッ…、うぅ…」
思わず声が出る。彼女はどんな時でも自分を見捨てたりはしなかった。辛い時でも頑張ろうと慰めてくれた。この少し獣くさくも何処か甘い香りが私の心を、この楽しそうで優しい笑顔が探していたもののような無くした大切な物を埋めてくれるかのように。
気がついたら私は彼女の胸の中で赤子のように泣いていた。この冷たくも温かい胸の中で…。
・・・・
は、恥ずかしい…。彼女がこちらを向くが私は彼女の方に顔を向けられない。どうやらあの戦闘の後、彼女の胸に泣きついたまま寝てしまったようだ。まったくなんて事をしでかしてくれたのだと過去の私はに問い詰めたい。
「はい、ポーチちゃん!これジャパリマンだよ。食べるとおいしいんだよ〜」
彼女が微笑んで渡してくる。それを恥ずかしながら受け取る。どうも泣き疲れてそのまま寝ていたせいかお腹が何かくれと必死に求めてくるからである。
「あ、ありがとう。それよりここは…」
日もすっかり落ちて辺り一面真っ暗になっている。しかし頭上の上には何やら光源があるらしく私と彼女周辺は明るい。
「ポーチちゃんあのまま寝ちゃったし、暗くなってきたらポーチちゃん目が見えないと思ったからかついできたんだよ〜」
そう言う事らしい。そして私はとうとうダメ人間判定されてしまったらしい。動作一つ一つが優しい。
「そ、そうなんだぁ…ありがとう」
そう言って会話を終えてしまう。あんな事があったのだ。まともに話せないのは当たり前じゃないか。
「さぁ〜食べて食べて!甘くておいしいんだから!」
彼女はそう言いながらジャパリマンにかぶりつく。私もつられて一口齧ってみる。すると口の中にほのかな甘さが広がり思わず笑みになる。
「おいしいでしょ…!他にもあるからたべてたべて!」
他にもあるらしく彼女の横にどんどんジャパリマンを置いていく。一体どこからこんなにジャパリマンを調達してきたのだろう。
もう一度周りを見渡すと暗いと思っていた周囲は空に広がっている満点の夜空のお陰でそれほど暗くない事が分かった。こうして夜空をのんびりと見ていると改めて助かったんだな実感できた。
…さっきくっついていたせいだろうか。人温もりがほしくなった私はジャパリマンを取る口実に少し彼女の近くに寄った。
「少し…横いいかな?」
「別にだいじょうぶだよ!さあ、どれにする?」
彼女は訪ねてくる。手には青と緑の色をしたジャパリマンが置いてある。
「じゃあ…緑の方を…」
「わかったよ!はい、どうぞ♪」
そう言って緑のジャパリマンを差し出してくる。そして受け取る際に勇気を出して先程の礼を告げる。
「…さっきはありがとうね、サーバルちゃん」
「なぐさめるのもガイドのしごとだからね〜。元気になってよかったよー」
彼女はこちらにそう言いながら笑いかけてくる。初めてあった時にその笑顔に怯えていたなんて嘘のようだ。
「まだまだ図書館まではとおいからね!ゆっくり行こうね〜」
「そうだね。たどり着く前に倒れたら元も子もないからね…」
そう笑い返す。こうして笑いながら食べていると気持ちもだいぶ落ち着いてくる。…このジャパリマンは渋い味がする。
しかし平穏というものはどうやら続かないらしい。
ジャパリマンを食べていると腕から何かが震えるような感触がある。気になってみてみると何やら腕の装置にある円柱の部分が迫り上がり、青白い光を発している。すると何処からか
ガサッ…ガサッガサッ
と音がした。慌てて先程は使えなかったRE-45を探す。どうやら近くに置いてあったらしくライトに照らされて鈍く反射していた。それを咄嗟に掴み上げて構える。たとえ使えなくても最悪投げればいいだけの話だ。
サーバルも音に気付いたのかセルリアンを倒したサンドスターの光をまとった手を構える。先程ののほほんとした空気が嘘のようだ。
ガサッガサッガサッ
相手がどんどん近づいてくる。思わず握る手が強くなる。どうやら音からして大きさはあまりないようだ。
ピョコピョコピョコ
やがて硬い地面を歩く足音が聞こて、姿も見え始める。それは丸く青く…可愛らしい姿をしている。
「なんだ〜ボスじゃん!驚かせないでよ〜」
そう言い彼女は警戒を解く。どうやら知り合いのようだ。見れば見るほど可愛いい姿をしている。ボスと呼ばれるフレンズがこちらを見たまま停止している。
「ボス〜この子なんのフレンズか分からないんだてって。ボス何かしってる?」
彼女はそう尋ねるがまるで彼女が存在しないかの如く無視を続ける。停止してるのはいいのだが暗闇の中で目だけが光ってるのは怖いのでやめてほしい。
ピョコピョコピョコ
すると何か終わったのかこちらにやってくる。彼女が懸命に話しかけてるのに無視するなんて酷いやつだ。
なんて思ってると私の前で再び停止する。何か用があるのかとボスを見ていると。
『ハジメマシテ パイロット。ボクハラッキービーストダヨ。ヨロシクネ』
なんて挨拶してきた。まさか真っ先にこちらに挨拶してくるなんて思わず
「あ…ラッキービーストさん?はじめまして…」
なんて言ってしまう。見た目通りの優しい声なんて思ってる始末だ。しかしなんで私なんかに挨拶してきたのだろうなんて思ってると
『タイタンJT-357ニヨル キュウエンヲ カクニン。シキュウ オウエンニ ムカワレタシ』
と今度は冷めたような声で話しかけてきた。なんかコロコロ性格の変わる奴だ。
どうやら助けを求めに来たらしい。現にラッキービーストとやらは元来た道に戻りつつもこちらを見ている。
「あっ…うん。分かったからちょっと待って」
仕方ない。慌ててRE-45を腰に戻すとラッキービーストの後についていく。そういや先程から彼女が固まったまま動かない。どうしたのかと声をかけようとしたら
「ボスがしゃべったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と大きな声で言い放つ。どうやらラッキービーストは普段無口のようだ。
・・・・
「ボスってめったに喋らないからボスと会話してるところ見てびっくりしたよ〜」
ボスの後を追いかけながら彼女とお喋りをする。ボスはどうやら複数体存在して、たまにジャパリマンを届けてくれるらしい。
「ポーチちゃん。だいじょうぶ?ここに木の根っこがあるから注意してね」
「うん…ありがとうね。サーバルちゃん」
先程からボスの後を追っているのだがここは森らしく星の光が入らずかなり暗くなっている。ラッキービーストが足元を照らしながら進んでくれてるのだが何度か転けそうになった。なので彼女の過保護度もあがるのは当然だろう。
「しかし…こんなところになんの用事なの?」
「誰か助けて欲しいフレンズがいるみたい…」
自分も詳しくは分からないがどうやら助けを求めているフレンズがいるらしい。しかしJT-357とはまた変わった名前だ。まるで私が腰に付けているやつみたいだ。
そう思って腰についたRE-45を見る。前は使えなかったがジャンプキットと同じく何かコツがあるのだろう。
そこでようやく腕の装置の光が先程より激しく点滅している事に気が付く。結局この点滅もよく分からない。
『トウチャク』
そう言ってラッキービーストは停止した。しかしここは先程の場所とは違って光源がなく、何も見えない。だがどうやら彼女には見えるらしく、その顔は何処か不安そうだ。
『JT-357、パイロットノ ユウドウニ セイコウ。ツウジョウモードニ イコウシマス』
それと同時に話している対象に向く。そのお陰で全貌が明らかになる。
『こんちには パイロット』
優しい声のそれはなんとそれは7mもある大きな巨人であった。
サーバル「けもの臭くなんかないよ〜!!」
しかしこれを作るきっかけになった人に真っ先に出会えると思わなかった_(:3 」∠ )_