ほのぼの回
あの後、セルリアンの攻撃で一部壊れたイカダを修理してボスの所まで帰った私達はカバさん、ジャガーさんと別れて目的地へと進むことにした。
「じゃあね、サーバル、ポーチ。最近セルリアンの活動が活発になって襲われている子が増えているらしいから気をつけてね」
「じゃあな〜サーバル、ポーチ。何やらおっかない奴もいるみたいだし注意するんだぞ〜」
「うん!また狩りごっこして遊ぼうね〜!」
「皆さんありがとうございました〜!」
そう言って私達は別れる。付いてきて欲しい気もしたが彼女達には他にもやる事があるそうだ。
折角知り合ったのにと少し残念な気持ちになりながらも先を進む。すると
「セルリアンに会ったら基本逃げるんですのよ〜。万が一戦う事になっても、小さいのはいいけど大きいのは駄目ですのよ〜」
と少し歩いた先で彼女が注意してくる。
「分かりましたー」
「だいじょうぶだよ〜!」
と返事をする。あのでかいセルリアンは運よく倒せただけだ。今度からは気をつけないと思い、再び歩き始めると
「特にサーバル、貴方全然汗かかないんだから小まめに水分補給するのですの〜」
とまた彼女の声が遠くから聞こえる。
「はーい!」
彼女が返事をする。水分補給は大切だ。倒れては進むものも進めない。そう思い足を前に出すと
「ポーチちゃんも、あそこではああ言いましたが、無理しないで周りを頼るんですのよ〜」
と彼女が言う。
確かに一人で出来る事には限界がある。頼るのも手だろう。…心配してくれるのはありがたいのだが前に進みにくい。
結局、彼女が見えなくなるまで話は続いた。その間サーバルの返事がどんどん適当になっていく。…顔ぐらいは向いた方がいいんじゃないかな?
・・・・
『ココハジャングルロープウェイダヨ』
「「わぁ…!」」
そうしてしばらく歩くと何やら一風変わった灰色、白色で出来たロープウェイ乗り場…と言う所に辿り着く。
目の前にはどこまで続くか分からないほどの崖が広がっていた。
「これどうやって登るのだろう…」
心配になってボスに問いかける。もしこれを登るとすればボスは間違いなく置いていく事になる。するとボスに自慢げに
『ダイジョウブダヨ ロープウェイニノリ…ノリ…ノリ… ケンサクチュウ…ケンサクチュウ…』
…何かあったのだろうか?ボスがどんどん萎れていく。次第にアワアワしか言わなくなり、ボスが固まる。
「どうしよっかー、ボスはこの調子だし…がけぞいに登ってみる?あのへんから登れそうだよ!」
そう言って彼女は登っていく。私は困った顔でボスを見る。…はじめこそ色々な情報や案内を行っていたボスだが最近はポンコツっぷりが目立つ。まぁ、可愛いので問題ないのだが。
そう思いボスを抱き上げて座りやすそうな所に座る。しばらくかかりそうなのでボスの耳を弄る。
思いのほか感触が良くてしばらくの間、耳をひたすらもみ続ける。
「うわぁぁ~~!!」
「サーバルちゃん!?」
少し待っているとサーバルちゃんが悲鳴と共に地面に落ちてきた。膝に乗せていたボスを放り出して彼女の元に向かう。彼女は少し痛そうにしながらも笑っている。
「も〜心配させないでよ…。ボスが答えを出すまでしばらく待っていようよ」
そう言いながら再びボスの元に向かう。腕の彼女はバッテリーが少ないからと言って、緊急の時以外は基本話さない。
誰かなんとかしてくれないかな〜と我ながら他力本願な考えをしながら空を見る。すると
「わたーーしはーーートーーーキーーー!なかまーーーをさがしてるーーー!どこにいるのーーーなかまたちーーー!」
何や大声で歌いながら赤と白の女性がこちらに向かってくる。その音量は凄まじく耳元で歌っているように感じる。
「すごい声だね…」
「うん…凄いね…」
少しげんなりする。すると彼女はこちらの側に着地して挨拶をしてくる。
「こんにちは!初めまして、私はトキ。私の歌どうだった?」
「ち、力強いこえだったね…」
「う、うん…個性的で良かったよ…」
うん…いい声だったと思うよ。この声なら何処からでも聞こえそうだ…。
「うふふ…。ありがとう…、やっぱり誰かに聞いてもらうのっていいわね…」
彼女は満足したのか笑みを浮かべる。どうやら彼女は歌う事が好きなようだ。
「うん…これならどこでも聞けるね」
と少し本音を言う。それがいけなかったのか彼女は目の色を変える。まるで獲物を見つけたと言わんばかりの目だ。
「アンコール?ということかしら?」
彼女は良い意味で捉えたようだ。ま、不味い…!
「わたーーしはトーーーキーーー!なかまをさがーーしてーーー!」
『警告 213DBの音波を確認 パイロット直ちにその場から退避してください』
耳に衝撃波をうける。耳から彼女の声が聞こえるが騒音のせいか何を言っているか聞き取れない。
結局そのまま一曲終わるまで耳は休まる事がなかった。
・・・・
「山頂に行きたいんです!」
私は彼女にお願いをする。このままボスを待ってても無理そうだからだ。
「一人ずつで良ければいいわよ」
すると彼女はこの山の上に用があるらしく喜んで引き受けてくれた。しかし彼女一人では限界があるらしく、一人はしばらくここで待機となりそうだ
「ふん!ポーチちゃんじゃないとボスは喋れないから任せたよ!」
そう彼女は言うと崖の方に向かっていく。先程落ちてきたのに大丈夫なのだろうか…?
「大丈夫…?無理せずに待ってたほうが…」
「へーきへーき!それよりどちらが先に着くかきょうそうなんだからっ!」
そう言いながら彼女は崖を登っていく。トキさんの方は準備が出来たのか何やらこちらに何かを巻きつけてくる。
「これでいいわ…。じゃあ、行きましょうか」
「よろしくお願いしますね」
彼女はニコリと笑みを浮かべると翼を空へと広げる。するとサンドスターの輝きと同時に体が宙に浮き、次第に上へと上昇を開始する。
「うわぁ…!」
「空は初めて?」
どんどん小さくなるて地面を見ている私に彼女はそう尋ねてくる。今まで跳んできた事はあっても飛んだ事は一度もなかった。
今までにない体験に思わず笑顔になる。さっきまで居た場所がもう手のひらサイズになっている…
「凄い!凄いです!トキさん…!」
「ちょ、ちょっと暴れないの」
彼女が注意するがなんのその、地面がどんどん小さくなるに比例して私のテンションは高くなる。
あっ…!前にカバさん達と出会った川があんなに小さく見える!
「あっ…。あれは!」
もう少し前を向いてみるとサーバルちゃんと初めて会ったさばんなちほーが見えてくる。私達の旅はあそこから始まったのだ。
少しの間とは言え、あんなけ歩いた道が腕の長さに収まるとは驚きである。
「やっほーーーーー!!」
テンションが落ちる所を知らない私はとうとう叫び始める。何故か叫びたくなったのだ。
この光景を見ているとなんだかこの土地全てが私の物に感じてくる。
「た、楽しそうでなによりだわ…」
何故かげんなりしている彼女を尻目に私は足をブラブラさせる。楽しくて仕方ない。しばらく上機嫌でこの素晴らしい光景を見ているとふと頭に歌詞が浮かぶ。
「♪〜」
「あらっ?」
何処かで聞いたような気がする歌を歌い始める。すると彼女は歌に興味が湧いたのか歌について尋ねてくる。
彼女も歌う事が好きなのだし、これを気に一緒にどうと誘ってみる。
「デュエットってわけね…いいわ」
了解を得た私は一通り歌詞を教えた。そうして私達は歌い始める。彼女は歌のプロなのか歌詞を教えただけなのに私の歌に合わせてくる。
先程は騒音に聞こえた彼女の声が何処か心地よく、そして懐かしく感じる。二人で歌っているからだろうか?
結局、私達は目的地に着くまで歌い続ける。それはいつの日か見た光景の様に
・・・・
「到着。いい声だったわ」
そう言いながら彼女の足は再び大地を踏みしめる。どうやらここが目的地らしい。
「ありがとう、トキさん」
彼女にここまで連れてきてくれた礼を言いながら私も地面に降りる。周りを見渡すと緑豊かな草原の中に立派な建築物がある。
どうやらまだサーバルちゃんは来ていないらしい。
「とりあえず建物に入ろう。」
そう言い出し、私達は建物の側まで来る。なにやら取っ手があり、引っ張ってみるとチリンチリンという音と共に建物に入れるようになる。
中に入ってみると誰かが奥から駆け寄ってくる音と共にその姿を見せる。
「わぁぁ~!いらっしゃ~~い!ようこそ~ジャパリカフェへ~!どうぞどうぞ、ゆっくりしてってぇ~!」
全体的に白く、モフモフと触り心地が良さそうな白髪の女の子が出迎えてくれた。どうやら歓迎してくれてる様でこちらの手を握るとブンブン振り回してくる。
「いや〜待ってたよぉ〜!。やっとお客さんが来てくれたよぉ〜!嬉しいなぁー!。ねぇ何飲む~?色々あるよ、これね、カフェラテっていうんだってー!博士に教えてもらったの!。ここからお湯が出るからそれを使ってねぇ」
「あ、あの…!」
彼女はカフェラテというと物を勧めてくれているようだが私達はバッテリーを回復させに来たのだ。私は腰にあるバッテリーを取り出しその旨を伝えると
「なんだ…お客さんじゃないのか…ペェッ」
と言って唾を床に吐き捨てる。せっかくの待ちに待ったお客さんがこんなので申し訳ない…。
「あ…それなら向こうの奥で見たよ」
と言いながら彼女は木の枠がある透明な板の向こうを見る。そこには何やらボロボロの建物がある。
とりあえず案内してくれるそうなので皆で向かってみる。
『目的地に到着 パイロット、バッテリーの回収を』
どうやらここで合っていたらしい。腕の彼女がそう言ってくる。早速、中に入ると色々と変色したや破損した物で溢れていた。
それに長年開けてないのかホコリが溜まっており、思わずくしゅんとくしゃみが出る。
「これじゃないかな?」
そして彼女は指を指す。そこには暗闇の中でも充填された物なのか部分的に緑色に発光してるバッテリーがあった。
「ありがとうございます!これ借りていきますね」
礼を言いながら前に進み、それを抜き出す。抜き出したバッテリーは特に損傷もなく、充填されたのか何やらほのかに温かい。
それを確認した私は一旦それを床に置いて、腰についていた物を代わりに差し込む。すると空のバッテリーは何かの作動音と共に固定される。
『バッテリーを充電中… 完全充電まで残り276時35分25秒です』
と告げてくる。…回復までにかなりの時間がかかるようだ。持って来た物はここにしばらく置いておくしかない。
そう思い、回収したバッテリーを腰につける。これでとりあえず目標は達成した。後はサーバルちゃんを待つだけだ。
・・・・
ここで待つのもあれなので私達は一度、じゃぱりカフェと言う先程いた場所に戻る。
席について休憩していた私達の前に先程のカフェラテと呼ばれる飲み物が置かれる。戻った際に奥に向かったアルパカさんはこれを作ってくれていたようだ。
泥水の様な色をしているがとてもいい香りがする…。
紅茶の色に少し警戒を示すトキさんを尻目に興味津々で飲んで見る。口の中に優しい甘さが広がり、顔がとろける。甘さの後のほのかな苦味が甘さを引き立ててくれるようだ。
そして先程の飛行で寒くなった体をカフェラテの温めてくれる。今まで美味しいと冷たい川の水をがばがば飲んでいたのが滑稽に思えてくる。
美味しそうに飲む私を見たトキさんも飲み始める。彼女もこんなに美味しい物を飲んだ事がないらしく、びっくりした表情を浮かべている。
「そういえばこことても素晴らしい所なんですけど誰も居ないですね〜」
そう言いながらカフェラテを口に含む。この建物からは落ち着いた雰囲気が出ており、長時間居ても苦にはならない。
そして何よりこの温かくも甘いカフェラテが美味しい。崖さえなければいつでも来たい…いや、登ってみるのも…?と馬鹿な事を考える位にいい場所なのに誰も居ない、これは謎である。
「コナイネーダレモコナイネー」
彼女はそう言いながらため息をつく。彼女もどうやら気にしているようだ。なぜかと問うとどうやらここら辺はこういった山が多く、場所が分かりにくいらしい。現にトキさんもこんな場所があるなんて知らなかったようだ。
「えぇ?そんなに分かりにくいの〜?」
と彼女が言う。彼女はここの崖を登ってくるから気が付かなかったようだ。せっかく紅茶をご馳走になったのだ。困っているなら是非とも手助けしたい。
何より場所が分かりにくいのであればここに来る事は困難になるだろう。…そんな事は私が許さない!
半分感謝、半分私欲でしばらく私は考える。すると先程の紅茶が効いてきたのか頭に妙案が浮かぶ。
我ながらいい考えだと思いながら、机に手を叩きつけた私は彼女達にこう告げる。
「私にいい考えがある…!」
・・・・
「トキさんそこ曲がってもらえますか?」
今、私達は必死に草をむしっている。何も考えが浮かばなかったので草に八つ当たりしている訳ではない。
「そろそろいいかな…。それじゃあ草を抜いた所に石を置いていきましょう!」
私はそう言うと高台から飛び降りる。石はバッテリーを取ってきた場所の近くに大量に落ちてある物を活用した。元々邪魔な物だったらしくまさに一石二鳥である。
ここからしばらく石を黙々と置いていく。抜いた場所に石が敷き詰められていくのを見ると達成感がある。それほど広さはないので石の敷き詰めはそこまで時間がかからなかった。
そして最後の石を置いた私は敷き詰められた事を確認する為に再び高台に登る。よし!これで大丈夫だろう。
「ではトキさん。アルパカさんと一緒に飛んでもらえますか〜?」
と命令を出す。彼女達は不思議な顔をしながらも飛び始める。しばらくすると何かに気づいた彼女達は声を上げる。どうも私のした事に気づいたようだ。
私の策はここら辺の草をカップ状に抜き足を敷き詰める事で空からも見えるようにしたのだ。小屋の方に矢印を書いたのでこの小屋がなんの為にあるのかも分かるだろう。
「…?」
私もたまには仕事するんだからと胸を張っていると何者かに足を掴まれる。足元に何者かの手が見える。
「う、うわぁぁ!」
驚きのあまりその手を蹴りそうになるも手の次に顔が見える。どうやらサーバルちゃんが到着した無事に山を登りきったようだ。
「山登りがこんなに大変だったなんて…」
「なになに、早速お客さんかな~!」
疲れ果てたサーバルちゃんの元に彼女達が集まってくる。疲れたサーバルの為にもカフェラテを飲みながらゆっくりしようと彼女をじゃぱりカフェへと案内した。
・・・・
「じゃあ気をつけてね~?FT…?が動くといいね~!」
「また私の歌が聞きたくなったら、いつでも呼んで!」
「ありがとうございました〜!」
あの後じゃぱりカフェで一服した私達はロープウェイ乗り場の作業員用走行器と言う物に乗る。
これは草むしりをしていた際にボスが探し出してくれた物だ。
そのボス本人はと言うと私の背中に括り付けられている。決して罰でこうした訳ではなくこの作業員用走行器に問題があった。
これは手で支えながら足で漕ぐといった物らしく、ボスを抱える事が出来なくなったのだ。
そこであれこれ悩んだ結果、行きにトキさんが私を運んでいた時の様子を思い出して再現したの現在の姿となった。
ボスが紐のせいで二等分されそうな感じに凹んでいるが少しの間だけなので我慢してほしい。
彼女達の送り迎えを背中に受けつつ漕いでいく。この方向だとちょうどさばんなちほうとジャングルちほうの間なのでFT-365さんの所に辿り着けるだろう。
『警告 敵タイタンフォールを確認 至急バッテリーを』
そう思いながら漕いでいると腕の彼女から通知が来る。緊急時でもないのに警告などどうしたのだろうか。
不思議に思いながらもペダルに足をかけようと…
すると突然、空が裂ける。思わずその発生源の方を見る。そこには轟音と共に落下する何か巨大な球体があった。そしてその球体はどうやらジャングルちほうの方に向かっている。
「なんだあれ…?」
思わずつぶやいてしまう。かなりのスピードで落下しているそれはやがて何かの起爆音と共に弾け、正体を表す。その姿はFT-365の同族にみえたが、全身黒色でその目は赤く怪しく光っていた。
「何あれ!何あれ〜!」
隣の彼女は今起こっている不思議な現象に興奮している。しかしその様子を見ていた私は無性に不安を覚えた。
その自由で不可侵な空を切り裂く様は、まるで侵略者とで言うかのように見えたからだ。
携帯小説書くのに慣れてないので何処で段落変えたらいいか全然わからん!