せんじょうのフレンズ   作:エースなパイロットさん

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番外編みたいなもの
冒頭のパイロットさんのお話。


ふらぐめんと 1

『パイロット 間もなく目的地周辺です』

 

「…もうそんな時間か」

 

 俺はその声で目が覚める。どうやら第三実験惑星アーズ26に着いたようだ。ベッドから降りるとヘルメットを腰のフックに引っ掛けて、各武装の点検と忘れ物が無いか確認をする。

 今回は比較的楽な任務と聞いているがパイロットの仕事に安全な物など存在しない。仮にも一つでも手順が狂えば戦友とご対面なんて事になりかねない。

 メイン武器であるライフルから滅多に使わないハンドガンまでと装備を一通り念入りにを確認していく。

 

「よしっ!」

 

 無事に確認が終了した所で外はどんな感じだ思い、個室に付いている窓の方を見る。

 そこには漆黒の宇宙と人類発祥の地である惑星地球にそっくりと噂されている緑の大地と青い海が広がる惑星が見える。

 折角なのでポットからコーヒーを入れて、その光景を眺めながら一服する。

 

 こういった人類が生存可能な惑星は宇宙進出が進むにつれて他にも複数確認され、その類似点と第二の地球として各惑星で人類が繁栄してきたことからアーズと名付けられた。

 その中の一つがこの惑星と言う訳だ。この惑星が実験惑星に選ばれたのは惑星調査団がサンドスターと呼ばれる謎粒子が発見した事が原因らしい。何やら凄い粒子らしく今後のモノ作り全体をイチから変えてしまうような代物なのだそうだ。

 

「おっと…」

 

 時計を見るとそろそろ惑星にジャンプする時間になる。今回は敵地侵入では無いので待機する必要は無いのだが万が一に備えてタイタンの元に行っておきたい。

 カフェインのお陰で残っていた微かな眠気が吹き飛び、頭がスッキリした俺は急いで装備を持って投下待機室に向かう。

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「おはようございます。マーティー中佐」

 

「おはよう。朝からご苦労さん」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 通路に出るとジャンプ開始前で忙しいのか各設備を点検して回る整備兵達で溢れていた。フェーズシフト技術は今では船の標準装備となり、安全性も確かな物なのだが万が一の事があってか緊急時以外は点検を行うようになっている。整備兵と他愛のない会話をしながら急ぎ足で投下待機室に向う。

 

 そういや今回の任務はいつもの仕事もあるのだが珍しく相棒にもお呼ばれがかかっている。何やらそこの研究所長がヴァンガード級タイタン見てみたいらしい。

 

 ヴァンガード級タイタンとはミリシアが開発した新造タイタンで、かの有名なジャック・クーパーの機体もそうらしい。

 IMCではタイフォンの戦闘で鹵獲したヴァンガード級タイタンを解析する事で製造に成功している。

 普通のタイタンとは比べて装甲、機動性など性能が強化されており、あらゆる武装を使いこなすヴァンガードシステムのお陰でどんな戦況や環境でも有利に戦闘可能な代物となっている。

 なにより特徴的なのがAIである。高度なニューラルネットワークによりタイタンに個性を持たせ、パイロットをより広範囲、より臨機応変にサポート出来るようになった。

 そしてコアが戦闘で得たデータを蓄積、解析を行うことでAIそのものが戦闘経験を得る。それにより得られる最善とされるサポートにより的確な戦況判断が可能だなっている。

 しかし利点だけと言う訳ではなく、コストパフォーマンスが悪いという最大の欠点がある。

 ヴァンガード級建造には通常の何倍ものコストと建造時間がかかるが性能の向上はそこまで変わるわけではない。更に効果が期待出来るのはエリートの中のエリートで無ければ意味がないものだった。

 そのあまりにも非効率的な物は実験目的の少数しか生産されず非常に珍しい物となっている。

 

『十分後にこの船はフェーズシフトを開始します。総員準備をお願いします』

 

 アナウンスが聞こえてくると同時に待機室のドアを開ける。そこには全長7m、基本色が赤に白のライン、膝や肩など要所要所にオレンジの塗装が施されたタイタンが待機してある。これが我が相棒、パストである。

 傭兵時代の頃、運良くマーダー大将の目に止まった俺はARES師団にスカウトされた。コイツはそこで数々の任務をこなす事で評価され、マーダー大将の信頼を得た印とした貰ったのだ。

 

「おはよう、パスト」

 

 とりあえず挨拶をする。たとえAIであろうと相棒なのだ。コミュニケーションを取るのは当然だろう。

 

『パイロット おはようございます。間もなくこの艦はジャンプします。至急搭乗を』

 

 彼女はそう言うとハッチを開けて搭乗を促す。普段はタイタンと己をリンクさせる事でタイタンを操縦可能にするニューラルリンクを済ませるのだが戦闘に行く訳ではないのでこのまま座っておく。

 

『パイロット ジャンプまでの間少し時間があります。朝食を取ることを推奨します』

 

 リンクもしてないしヘルメットは要らないかと考えながら座っているとパストが提案してくる。特にお腹は空いてないので断るといきなり画面が真っ暗になる。…いい相棒だよ、まったく。

 

「分かった分かった…。食べるからモニターを点けてくれ」

 

『了解 パイロット、携帯食料は座席後部に格納されてあります』

 

 相棒が優しく食料の在り処を教えてくれる。座席からエネルギーバーを取り出して齧り付く。元々保存食なのでかなり甘いが味は悪くない。

 

『まもなくフェーズシフトを開始します。総員、衝撃にそなえてください』

 

 エネルギーバーを完食してタイタンの整備状況やログを確認しているとアナウンスが流れてくる。そろそろのようだ。

 

『パイロット ジャンプが実行されます』

 

 パストがそう言った瞬間船全体がが小さく振動すると同時に亜空間に入り込む。このフェーズシフトシステムのお陰で輸送船は大気圏を通る必要がなくなり、輸送船建造コストは大幅に下がったのだ。

 

 程なくして白黒世界の亜空間から色彩のある世界に戻ってくる。無事、目的地GPP研究所に到着したというわけだ。しばらく待機すると船のハッチが開くのでオート操作で船外へと向かう。

 

 船外へ出ると自然豊かな木々に囲まれた巨大な研究施設GPP研究所が見えてくる。そこには前もって連絡をしていたのかこの研究所の所長であるマッドナー博士と…ハットにメガネをかけた女性が居た。

 とりあえず話をする為に一度タイタンから降りる。すると所長が声をかけてくる。

 

「派遣されたエースパイロットとは君のことかな?」

 

「人より少し運があるだけですよ。初めましてマーティー・ブライヤンです」

 

「運も実力の内と言うじゃないか。喜んで歓迎するよ」

 

 そう言って彼は手を差し伸べてくる。ログで確認してた通りの研究者としては珍しい人柄溢れる若い男性だった。

 

「これが…より高度な人工AIを持つヴァンガード級タイタンですか…」

 

『初めましてマッドナー博士。私はARES師団所属のFT-332です』

 

 挨拶を行う相棒を彼は興味津々に見ている。タイタンは基本的に簡単な事務的会話しかしないのでタイタンが挨拶するのが珍しいのだろう。しばらく会話をした彼は隣にいる女性を紹介してくれる。

 

「彼女はここのサンドスター研究顧問でもあり、実験施設ジャパリパークのパークガイドを努めるミライさんだ」

 

「初めまして、ミライです。よろしくお願いしますね〜」

 

 そう言って彼女とも握手を交わす。何やら研究施設のガイドさんもやっている彼女は今時レトロな探検服を着込んでいる。

 

 「早速、中を案内するよ。ではミライさん、お願いします」

 

「はい、分かりました。では、マーティーさん行きましょうか」

 

 彼は彼女にそう頼むと忙しいのか研究所に帰っていく。彼女はどうやらここを案内してくれるらしい。

 

「パスト、先に格納庫の方に向かってくれ」 

 

『了解』

 

 俺はパストにタイタン格納庫に入るように命令を出すと彼女の後を着いていった。

 




GPP研究所
General-Purpose Particleの略。
サンドスターについて色々な実験や開発を行う研究所



好きなタイタンはイオンプライム君です。
スコちんの可愛さやトーンの可愛さも分かるけどここは譲れない。あのフード被ったかの様な装甲がいい…



後、コメント、評価共にお待ちしてます(小声)

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