小木曽望乃は勇者である?~勇者の章~   作:桃の山

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一話と二話は本編以前のオリジナル話です。


讃州中学勇者部の日常

 友奈たちや望乃の活躍もあり、平和が戻ってきた讃州中学勇者部。

 勇者部は平和な日々を過ごしていた。

 依頼を終えた望乃はのんびりと勇者部の部室のドアを開けた。

 

「ただいま~」

 

「あ、おかえりなさい」

 

 そう返したのは依頼の確認のためパソコンの前に座る樹。

 

「あれ~? みんないる~」

 

「そうなのよ。今ちょっと暇してるのよ。だから暇つぶしに夏凜の話を聞いてあげてたの」

 

「暇つぶしって何よ!」

 

 風と夏凜が向かい合って話している様子だった。望乃は奥にいる友奈の方へ向かう。友奈は園子と雑談していたようだった。

 

「望乃ちゃん、どうしたの?」

 

「えっとね~、お腹すいたからお菓子食べよっかな~って」

 

 そう言いながら望乃が自分の鞄から引っ張り出したのはスナック菓子の袋。

 

「友奈ちゃんと園子ちゃんも食べる~? うどん味」

 

「うどん!」

 

「味!」

 

 友奈と園子が目を輝かせる。

 

「お菓子でうどん味って大丈夫なんですか?」

 

 気になったのか、樹もパソコンから離れて三人の傍にやってくる。

 

「大丈夫だよ~。おいしいよ~。はい、友奈ちゃん」

 

「あーん!」

 

 望乃が友奈の口までお菓子を運ぶ。

 

「コギー、私にもちょ~だい」

 

 園子に急かされて園子の口にも運ぶ。

 

「うどんの味だー」

 

「パリパリのうどんだ~」

 

「……全然おいしそうに聞こえない」

 

 笑顔でおいしそうに食べる二人の感想を聞いた樹は、そのお菓子をもらうかどうか悩んでいた。それに気づいた望乃はお菓子を樹の口に突っ込んだ。

 

「安心して。おいしいから」

 

 笑顔でそう言う望乃の気持ちをむげに断るわけにもいかない樹は、覚悟を決めて食べてみることにした。

 

「うどんの味……おいしい」

 

 望乃たちの言った通り、そのお菓子はうどんの味がしっかり表現されていて、おいしかった。

 

「なになに? うどんの話?」

 

 そこに風と夏凜もやってくる。友奈が説明すると、風も食べたいと言い出した。望乃からお菓子をもらって食べた風は、案の定目を輝かせた。

 

「本当にうどんじゃない!」

 

「それって望乃が買いためてるやつじゃない」

 

「持ち運べるうどんだよ~」

 

 その間もバリバリとお菓子を食べ続ける望乃。

 

「そんなの食べてたらもううどん屋に行かなくてもいいんじゃないの?」

 

「本物のうどんは別腹!」

 

 望乃と風が声を揃えてそう言った。夏凜はその勢いに少し押されながら「あっそう」と返して、煮干しを口へ放り込んだ。

 

 お菓子を食べ終え、友奈が風に聞いた。

 

「そういえば、夏凜ちゃんと何の話をしてたんですか?」

 

「ノロケ話よ」

 

「違うわ!」

 

「それはコギーとにぼっしーの?」

 

 園子が食い気味に聞き返す。

 

「違うって言ってんでしょうが!」

 

 風がごめんごめん、と夏凜に軽く謝りながら内容を話した。

 

「まあ、簡単に言うとね、望乃が朝弱いから起こす方法を教えてくれってこと。私にも似たようなのがいるからね」

 

「うっ」

 

 風にちらっと見られた樹があからさまに目をそらす。

 

「コギーも朝弱いんだ~。私と一緒だね~」

 

「そうだね~。偶然だね~」

 

「偶然っていうか望乃は元々乃木のコピーじゃなかったっけ」

 

「とにかくいつも望乃を起こすのが大変なのよ。今日の朝だって……」

 

 夏凜は今日の朝の出来事を勇者部に話し始めた。

 

「望乃! 早く起きなさいよ!」

 

「う~ん。あと五杯」

 

「夢の中で何食べてんのよ!」

 

 夏凜は朝に非常に弱い望乃を叩き起こす。望乃と一緒に暮らすようになってから、夏凜の日課になっていた。

 初めはまだ起きてくれていたが、日に日に起きないようになっていた。

 夏凜は最終手段として窓に向かって指を差した。

 

「……あ、空飛ぶうどん」

 

「え? どこどこ~?」

 

 望乃がバッと起きて窓からキョロキョロと周りを見渡す。

 

「ないよ~?」

 

「あるわけないでしょ、空飛ぶうどんなんて! どんだけ食い意地張ってんのよ!」

 

「え~? でも前見たよ。うどんがぷわ~って空を飛んでるの。それでね、風ちゃんが「女子力!」って言いながらうどんを追いかけて飛んで行っちゃったんだ~」

 

「どう考えても夢じゃない!」

 

「え~?」

 

「……という具合よ」

 

 夏凜の話した内容は、普段の望乃を見ていれば簡単に予想できるものだった。

 

「空飛ぶうどんかー。おいしそう!」

 

「ていうか、望乃から見ての私の印象ってそんな感じなの?」

 

 そのため、友奈と風が反応した箇所は別のところだった。

 

「そんなことはどうでもいいのよ! もう起こす方法がないのよ。普段のほほんとしてるくせに学習能力高いから同じ手は効かないし!」

 

「あの」

 

 樹が小さく手を挙げながら口を開く。

 

「樹、何か案が?」

 

「それって望乃さんのいるところで相談したら意味がないんじゃ……」

 

「た、確かに」

 

「今気づいたんですか?」

 

「それに気づくとは、さすが我が妹!」

 

 風が樹をよしよしと撫でる。

 

「それにしてもコギーがにぼっしーとうまくやってるみたいで良かったよ~。少し心配だったんだぜ~」

 

「しっかり二人で役割分担してやってるわ」

 

「……ねえ」

 

「どうしたんですか? 風先輩!」

 

 樹を思い切り撫でた後、考えるような素振りをしていた風が夏凜に視線を向けて聞いた。

 

「夏凜……いややっぱり望乃、聞きたいことがあるんだけど」

 

 風が視線を夏凜から他人事のようにしていた望乃に移した。

 

「何で望乃に変えたのよ」

 

「だって、望乃の方が正直に答えてくれそうだし。それで、聞きたいことなんだけど、ご飯って望乃が作ってるのよね?」

 

「うん。夜のご飯だけだけどね~」

 

「じゃあ、掃除は誰がやってるの?」

 

「お休みの時に私がやってるよ~」

 

「洗濯は?」

 

「家事はだいたい私がやってるよ~」

 

「……夏凜、全然やってないじゃないの」

 

「や、やってるわよ! 朝だって、起こしてるし!」

 

「朝起こすだけって、要するに夏凜は――」

 

「誰が目覚まし時計よ!」

 

 風が言い切る前に夏凜がツッコミを入れる。

 

「夏凜、よく私の言おうとしてたこと分かったわね」

 

「だいたい分かるわよ」

 

「夏凜ちゃんの目覚まし時計……」

 

 風と夏凜お会話を聞いていた友奈は、その光景を想像してみた。

 

『にぼっしーにぼっしーにぼっしー』

 

「なんか面白そうだね!」

 

「何を想像してんのよ!」

 

「毎朝コギーを起こすにぼっしーか~」

 

「あんたも変な想像しない!」

 

 お役目を終えた勇者部は平和だった。友奈も、風も、樹も、夏凜も、最近入ったばかりの園子も毎日楽しそうに過ごしていた。今の勇者部に違和感を覚えることもなく……。

 不意に望乃が立ち上がった。そして五人を見渡した後、口を開いた。

 

「ねえ、みんな」

 

「どうしたのよ、突然」

 

 望乃の突然の行動に、風が少したじろぎながら聞く。他の四人も頭にハテナを浮かべながら望乃の次の言葉を待つ。

 

「何か、足りないと思わない?」

 

 望乃のその言葉に、勇者部はさらにハテナを浮かべた。

 最初に返したのは夏凜だった。

 

「何? もしかしてまたお腹減ったとか?」

 

「そうなの? だったら、少し早いけどかめや行く?」

 

「何か食べるものあったかな?」

 

 夏凜の言葉を聞いて、風が提案して樹が食べ物を入れてないか鞄の中を探す。

 三人の反応に、望乃がぷくーっと頬を膨らませる。

 

「む~。私そんなに食いしん坊じゃないよ~」

 

「どの口が言うか!」

 

 風と夏凜が同時にツッコミを入れた。

 

「じゃあ、何だって言うのよ」

 

 夏凜が呆れたような顔でそう聞く。

 望乃は友奈と園子の顔をじっと見る。

 

「?」

 

「? どうしたの~?」

 

 二人とも望乃の意図が分からず首を傾げる。

 

「…………ううん。何でもない。足りないって言ったんだけど、私も正確に分かってないんだよね~」

 

「何よそれ」

 

「まあともかく、今日はもううどん食べましょ! そしたらすっきりするんじゃない? 樹、依頼は?」

 

 風に聞かれて樹がパソコンを操作して依頼の確認をする。

 

「新しい依頼はないよ」

 

 それを聞いた勇者部は、それぞれ帰宅の準備を始める。そして出口の方へ向かっていく。

 望乃は勇者部の部員の名前が書かれた黒板を一瞥してから後を追った。

 

 勇者部がよく利用するうどん屋、かめや。勇者部一行はそこへ訪れていた。

 勇者部が雑談をしながらのんびりうどんを食べる中、話に加わらずに勢いよくうどんを食べていく望乃。

 それは普段と変わらない光景だった。

 望乃の箸が止まる。どんぶりの中は既に食べ切っていた。しかしそこで望乃は、普段じゃありえないことを口にしたのである。

 

「ごちそうさま」

 

 望乃が箸を置いて手を合わせる。その行動に勇者部は驚きを隠せなかった。なにせそれをやったのは、どれだけ周りが止めても最低三杯は食べる望乃である。

 

「じゃあ、私ちょっと用事があるから行くね」

 

 望乃はそう言って立ち上がる。

 

「また、明日ね」

 

 勇者部の誰かの返答も待たずに、望乃は店から出て行ってしまった。

 勇者部の面々はただただ呆然とするしかなかった。

 

 勇者部と別れた望乃は当てもなく歩いていた。

 歩いている内に辺りが暗くなり始めていた。

 歩いていた望乃の隣を車いすに乗る黒髪の少女とそれを押していた母親がすれ違った。

 その瞬間、望乃は車いすの少女に向かって反射的に声を掛けた。

 

「……みっ!」

 

 その親子はハテナを浮かべながら望乃の方を見た。

 

「……ごめんなさい。人違いでした」

 

 望乃が一言謝ると、親子はそのまま行ってしまった。

 

「あの人、お胸おっきくなかった」

 

 望乃はスマホを取り出して時間の確認をする。

 

「そろそろ帰ってご飯作らないとな~」

 

 その時望乃のお腹からグーッと大きな音が鳴る。望乃は一杯じゃ少なかったかな、なんてことを思いながらお腹をさする。

 そして両手を大きく上げて体を伸ばす。

 

「あ~あ、ぼた餅食べたいな~」

 

 誰に言うでもなくそう言って、望乃は帰路に就いたのだった。

 




次回もオリジナル話の予定です。

のんびりやっていこうと思っています。
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