「……ここは」
望乃は病院の一室で目を覚ました。それに気付いた看護婦によると、望乃は一日中眠っていたとのことだ。望乃を連れてきたのは六人の中学生ということも聞いた。それが勇者部であると望乃はすぐに分かった。
望乃の体は正常そのものであったため、すぐに退院できた。望乃は看護婦が買ってきたという服を着て病院を出た。
退院した望乃はのんびり夏凜の家に向かっていた。友奈と天の神に向かっていた時、夏凜は叫んでいた。何を言っていたのかは聞こえなかった上、精霊を使って言いたいことは言った。しかしやはり心配してるだろうと思ったのだ。望乃はものすごく怒られることまで想定して歩いていた。
その道中、風と樹らしき背中が見えて、望乃は声を掛けた。
「お~い!」
振り返った二人は望乃の顔を見ても大した反応を見せなかった。
「えーーっと、誰?」
「……あっ! お姉ちゃん、友奈さんと手を繋いでた人だよ!」
「えっ? あー、確かにそうだわ。でも何であの子が話しかけてくるのよ」
二人の言葉を聞いて望乃は唖然とした。それは、完全に初対面の反応だったからである。
どういうことか考え、そして理解した。妖狐は満開の代償は受けないとしか言っていなかった。つまり、『神の力』は受けるのだ。そもそも気にしていなかったが、この代償は使った者がではなく、小木曽望乃がだったのだ。それは望乃以外が使用しても、望乃が受けるということだったのだ。
それを理解した望乃は、とっさに嘘を吐いた。
「えっとね、看護婦さんが教えてくれたんだ~。あなたたちが私を病院連れて行ってくれたんでしょ~? そのお礼が言いたくて~」
この代償はたとえ望乃の口から真実を言っても記憶は戻らないだろう。だったら、変に混乱させるよりこうした方が良い。望乃はそう考えていた。
「そういうことね。私は犬吠埼風。こっちは妹の樹よ」
「よ、よろしくね」
「よろしくね~。それからありがとね~」
「気にしないで。ていうか、何であんなとこにいたのよ」
「あ~、秘密かな~」
望乃はあえてそう返した。どう答えてもボロが出そうな気がしたからである。
「じゃあ、裸だった理由は?」
「それも秘密……って、私裸だったの?」
「え? そうだけど?」
――そっか。私の存在が消えたから、私が使ってたものも一緒に消えちゃったんだ。友奈ちゃんにヘアピンを渡した意味なかったな。
「どうしたの?」
樹が何やら考えている様子の望乃に声を掛ける。
「ううん、何でもないよ。あれ? 樹ちゃんが敬語じゃない……もしかして、私のこと年下と思ってるの?」
望乃が樹に聞く。
「えっ? 違うの?」
「小学生じゃないの?」
「私、中学二年生だよ! 失礼しちゃうな~」
「す、すみません!」
「全然見えない……」
正確には歳は下なのだが、ややこしくなるため言わなかった。
「今度讃州中学に転校するんだ~」
「そうなの? 道理で見かけないわけだわ。じゃあ、その時はよろしく!」
「そうだね、よろしくね。じゃあ、私行くね~」
「あっ、待って! 名前聞いてない!」
「ん~? 私の名前は小木曽望乃! よろしくね、風ちゃん、樹ちゃん!」
望乃はそう言って二人の前から去った。残された二人は首を傾げていた。
「お姉ちゃん、私あの人の名前、初めて聞いた気がしない」
「私もよ。それに私、風ちゃんって初めて呼ばれたはずなのに、前からそう呼ばれていた気がするのよ」
二人は頭にハテナを浮かべていた。
望乃は向かう先を変更して、銀の墓場までやってきていた。望乃が声を掛けてもやはり妖狐は現れなかった。望乃はちゃんと戻って来れた報告をした後、二人に向けて礼を言った。
誰か来る前に墓場から出ようとした時だった。
「あれ?」
「あなた、確か……」
東郷と園子が望乃の前から歩いてきて鉢合わせした。二人の様子を見る限りやはり二人も忘れているようだった。
「ここに来ているということは、あなたやっぱり勇者か巫女ということ?」
「それか、神樹様の生まれ変わりか」
東郷と園子が望乃に聞く。
「……私は勇者でも、巫女でも、神樹様の生まれ変わりでもないよ。ただの、人間だよ」
望乃はそれだけを言うとその場から去ろうとする。しかし東郷に手を掴まれた。そして東郷は望乃の顔をじっと見た。
「……やっぱりこの子、そのっちに似てる! 顔だけじゃない、話し方も声も似てる。あなた……何者なの?」
「……そのっちっていう人が誰かはわからないけど……私はあなたたちの敵じゃないから警戒する必要なんてないよ。それじゃあ!」
「待って! 私は乃木園子。こっちはわっしー」
「そのっち! わっしーで紹介しないで。私は東郷美森よ」
「私たちの敵じゃないって言うなら、名前教えてくれないかな?」
「私は、小木曽望乃! 二人も私を病院に連れて行ってくれたんでしょ~。美森ちゃん、園子ちゃん、ありがとね~」
「小木曽さん、東郷でいいですよ」
「ううん、美森ちゃんって呼ぶ」
望乃は頑なに呼び方を変えなかった。そしてそれに東郷はなぜか前にもこのようなことがあったような気がした。望乃はそのままのんびりとどこかへ行ってしまった。
「小木曽……望乃って」
二人とも望乃の名前を入れ替えたら園子の名前になることにすぐに気付いた。
「わっしー、私あの子の正体、わかっちゃったかも。あの子、精霊だと思う」
「えっ?」
「全く関係ないのにあの場にいたとは思えないよ。なのに勇者でも巫女でも神樹様の生まれ変わりでもないってことは、他にないと思う。それも私の」
「そのっちの精霊にそんな子がいたの?」
「ううん。いなかったと思う。多分そうだと思うんだけど、よくわからない。人の姿をしてる理由も、ゆーゆと手を繋いでた理由も……」
東郷と園子は二人で考えるが、記憶がない状態で正解にたどり着くことはできなかった。
風や樹、東郷や園子までも望乃のことを忘れてしまっていた。望乃は夏凜と友奈も忘れてしまっているだろうと予想できていた。会うべきか悩んでいる内に、望乃はいつの間にか夏凜の家の近くまで来てしまっていた。
その時、夏凜が家から出てきて望乃の方に歩いてくる。突然のことに望乃は動けず、夏凜は望乃に気付いた。
「あんた、確か……何してんのよ、こんなところで」
やはり夏凜にも記憶がないようだった。
「……何でもないよ~。かり……あなたは、お買い物?」
「そうだけど……何で分かったのよ」
「あ~、勘、かな?」
用事のない日は大抵、今くらいの時間に一緒に買い物に行っていたのである。
「ふーん。まあ、いいわ。それじゃあ、私は行くから」
「……ねえ、良かったら手伝おっか?」
「はあ?」
「夜ご飯のお買い物でしょ? 手伝うよ~」
「いらない」
夏凜はそう言うと、スタスタと歩き出す。望乃はそれについて行く。結局望乃は店までついてきて、夏凜の買い物を手伝った。
夏凜はこの前の戦い以降、なぜか物足りなさを覚えていた。勇者部とは一緒にいる。しかし家に帰ると急にそれが襲い掛かって来るのだ。前から一人だったはずなのに、家やベッドが広く感じたのだ。しかしその少女と一緒にいると、なぜか和らいでいた。なぜか安心してしまっていた。
そんな心境から、夏凜は少女を家の中に入れてしまった。そして成り行きで少女がご飯を作ることになった。少女はどこか手慣れている様子だった。作った料理を味見すると、なぜか懐かしいような味だった。
作り終えると、少女は家から出て行こうとする。
「じゃあ、私行くね」
「待ちなさい。名前、教えなさいよ」
「名前? 私の名前は小木曽望乃だよ~。よろしくね~」
望乃はそう言い残して出て行った。
夏凜の目からはなぜか涙があふれていた。
「何で……涙が……出るのよ」
夏凜は理由の分からない涙に困惑していた。
これまでに風と樹、東郷と園子、そして夏凜と会った。ここまで来たのだから、友奈とも会いたいと望乃は思っていた。しかし、夏凜のご飯を作っている内に日が暮れてしまっていた。望乃が今日は一旦帰って明日会いに行こうと考えた。明日は学校があるのだが、別に友奈が一人の時に会わなければならないわけでもないのだから、問題はなかった。
しかしその時望乃は気付いた。自分に帰る家なんてないことに。それに気付いた望乃は適当な場所にどうするか考えるために座っていた。
「あれ? どうしたの?」
そこにどこからか帰っている最中の友奈が覗き込むように見ていた。
望乃が事情を説明すると、友奈が提案した。
「じゃあ、私の家に泊まる?」
そうして、望乃は友奈の家に泊まることになった。
「私、結城友奈! あなたの名前は?」
「私は小木曽望乃! 中学二年生だよ~」
「私もだよ! 一緒だね! ……あれ?」
「どうしたの~?」
「望乃ちゃんの名前初めて聞いた感じがしない。でも初めて聞いた名前だし」
「……そっか。それより、友奈ちゃんは何してたの?」
「これだよ!」
友奈が摘んできたのであろう花だった。
「押し花にするんだー!」
友奈の趣味である押し花を作るための花を摘んでいたようだった。
それから二人は友奈の家に着くまで花に関する話をしていたのだった。
望乃は友奈の家に泊まる許可を得て、ご飯を食べた。そして友奈にお願いして一緒にお風呂に入った。そこで望乃は背中を洗うという口実で友奈の体を確認し、烙印が消えていたことに安堵した。
その後、二人は友奈の部屋で友奈が讃州中学に転校することを聞いて、学校のことを教えてくれていた。
「あっ! そうだ! 望乃ちゃん、部活って入る?」
「……ん~、決めてない。友奈ちゃんはどんなところに入ってるの?」
「あれ? 私入ってるって言った?」
「いや、そうじゃないかなって思っただけだよ~」
「そっか! 私はね、勇者部に入ってるんだ!」
「勇者部……」
「勇者部は人の為になる事を勇んで行う部活なんだ! すっごく楽しいんだよ! いつも七人で楽しいこといっぱいやってるんだー!」
「……七人?」
「うん! 私と東郷さんと風先輩と樹ちゃんと夏凜ちゃんと園ちゃんと……あれ? 思い出せない。六人だったかも!」
それから友奈は勇者部でしてきた活動を望乃に教えた。そのいずれも望乃にも覚えがあることで、望乃は話に入りたい気持ちを抑えて笑っていた。
「友奈ちゃんの言う通り、楽しそうなところだね~。私もそこに入りたいな~」
「じゃあ、望乃ちゃん一度来てみる?」
「そうだね~。明日見に行ってみようかな~」
「本当? みんなにも伝えておくね!」
「うん、よろしくね~」
そうして、もう夜も遅くなってきていたので二人は寝ることにした。望乃は友奈のベッドで友奈と一緒に寝ることになっていた。
「そういえば、友奈ちゃん、ありがとね」
「え? いきなりどうしたの?」
「私を病院まで運んでくれたことと、泊めてくれたことだよ~」
「それくらい気にしなくていいよ! 運んだのは風先輩だし!」
「……友奈ちゃんが生きてて本当に良かった」
「え? 何か言った?」
「もう、寝よっかって」
「そうだね!」
二人は背中合わせで眠った。
友奈が目を覚ますと、隣で寝ていた望乃はいなくなっていた。机の上に手紙が置いてあった。
『放課後くらいに勇者部に行くよ。』
手紙には一文だけ書かれていた。望乃は既に出て行ってしまったようだった。
友奈は制服に着替える際、スカートのポケットに何か入っていた。
「あっ! これ望乃ちゃんに聞くの忘れてた」
スカートのポケットから取り出したのは先日なぜか握っていたヘアピン。それを目にした瞬間、何かがものすごい勢いで襲い掛かってきた。すぐにそれは収まり、友奈は立ち尽くしていた。
「みんなにも……教えなきゃ!」
望乃は友奈より先に起きてよく夏凜が鍛錬をしていた浜辺に来ていた。もちろん誰もいない。そしてそこで望乃は今までのことを思い出していた。
結局私有したままの自分が生まれる前の園子の記憶。生まれてから園子や夏凜と過ごした二年。その後勇者部で過ごした一年。どれも大切な思い出だった。
しかしその思い出を覚えている者は他にいない。もう望乃を覚えている者はいない。
だからまた一から勇者部と接する必要があった。今までの思い出を封印して、新入部員小木曽望乃として勇者部とこれからを過ごしていく。説明したら勇者部は混乱し、また辛い思いをさせてしまうだろう。ようやく平和が戻ってきたのに、そんなことはさせたくない。
だから望乃は決意した。今日、新しい小木曽望乃として勇者部に行くことを。
二度目の転校時と同じように転校手続きを終わらせて、望乃は勇者部の方へ向かった。
望乃は勇者部の部室前で立ち止まって大きく深呼吸をする。
このドアを開けた瞬間から望乃の第二の人生が始まる。
覚悟を決めてドアに手を掛ける。
「何やってんのよ」
その時後ろから声を掛けられた。突然話しかけられ、望乃は非常に驚き、振り返った。
「びっくりした~」
望乃に声を掛けたのは夏凜は望乃のことをじっと見ていた。
「あっ、えっとね、友奈ちゃんに勇者部のことを聞いて、見学してみようかな~って思ってきたんだけど……」
「……友奈から聞いたわ。そんなとこで突っ立ってないで入ったら?」
夏凜が望乃を押しのけて部室のドアを開ける。望乃は夏凜に続いて中に入った。
「あれ? 誰もいない」
「みんなちょっと用事があって荷物だけ置いてるのよ」
「そうなんだ~」
望乃は部室を興味津々に見ているように見せかけて、部員の名前が書いてある黒板を確認した。やはりそこに望乃の名前はなくなっていた。それから部室を観察する。望乃の視線はあるもので止まった。それは壁に張られた勇者部五箇条が書かれた紙だった。先日まで勇者部五箇条だったそれは、勇者部六箇条になっていた。
新しく追加されたところには、『無理せず自分も幸せであること』と書かれていた。
これはきっと神婚しようとした友奈を見て作ったのだろうと望乃は思った。
その視線に気付いた夏凜が説明する。
「それ、ちょっと前までは五箇条だったのよ。でも自分を犠牲にしようとするやつがいたから、もうそんなことをさせないために作ったのよ」
「……へ~」
「何度言い聞かせてもそいつは相談もせずに自分を犠牲にしようとした。生きたいって思ってるくせに、無理して自分に言い聞かせて、そいつは笑ってた」
「え?」
友奈のことを言ってると思って聞いていた望乃はその言葉に違和感を覚えた。
「かり……そういえば、あなたの名前、聞いてなかった」
「……そうだったわね。私は、人一倍他人を大事にして、自分よりも他人を優先して、のんきで、器用で、何度も抱きついてきて、食べることが大好きで、いつも笑ってる……小木曽望乃の親友、三好夏凜よ!」
「え? 何で……私のこと……」
「忘れたりしないって言ったでしょ?」
「初めて聞いたよ」
「そ、そう。まあ、忘れてたのは事実だし……」
「それより夏凜ちゃん、何で私のこと覚えてるの? 消えたはずじゃ……」
「その前に……あんた、言うことあるんじゃないの?」
「言うこと? ……勝手なことしてごめんなさい」
「違う」
「え、えっと、あっ、た、ただいま?」
「何で疑問形なのよ」
「うん、ただいま!」
その時部室のドアが開いた。
「おかえりー!」
そこには残りの勇者部の五人がいた。その状態に望乃は頭にハテナを浮かべる。
「いやー、夏凜がさー、先に二人で話したいって言うから、隠れて見てたのよ」
「望乃さん、無事で良かったです」
「コギー、昨日はごめんね。気付いてあげられなくて」
「私も、ごめんなさい」
勇者部は望乃に頭を下げて謝った。
「別にいいよ。みんなのせいじゃないから。それより何でみんなの記憶が戻ってるの?」
「これだよ!」
友奈が望乃に見せたのは、望乃が友奈に渡したヘアピン。
「あれ? これ、消えてなかったの?」
「私たちね、望乃ちゃんと会って後にこれを見たら望乃ちゃんのこと、思い出せたんだ!」
「確かに昨日みんな会ったけど……」
このヘアピンは本来なら消えるものであった。しかし友奈が望乃を助けに来た際に手に持っていたことが幸いし、精霊たちからの贈り物と消えないようにした。それは、神に等しき力を直前に使っていた友奈が持っていたからこそ可能だった。友奈がその時を思った望乃を救いたいという気持ちがそのヘアピンに効果をもたらした。
小木曽望乃の顔と名前を知ったうえでヘアピンを見ると、小木曽望乃に関する記憶が戻る、という効果を。
説明を終えると、友奈が望乃に近付いて前髪辺りに何かをする。
「うん! やっぱりこれは望乃ちゃんが一番似合うよ!」
友奈は望乃にヘアピンを付けてそう微笑んだ。
「友奈ちゃん、ありがとう!」
望乃も同じように笑みを浮かべた。
そんな望乃の肩に東郷がポンと手を置く。
「どうしたの? 美森ちゃん」
「望乃ちゃん、これから楽しいことしましょう」
「楽しいこと?」
「そう、楽しい楽しいお説教の時間よ」
東郷はにっこりと笑う。
「……ん~? お説教?」
「望乃ちゃん、言ったわよね? 文句なら後で聞くって」
「そうねー。望乃には言っておかないといけないことがいっぱいあるわね」
「諦めなさい、望乃。ていうか、私も言いたいことあるから」
「あらら~」
望乃は同じようなことをした友奈を除いた五人(特に東郷、風、夏凜)から説教を受けたのだった。
望乃が説教を受けている内に日が暮れてしまい、望乃は夏凜と共に夏凜の家にやってきていた。
「わ~。久しぶりだ~」
「昨日も来たでしょ!」
望乃はベッドに飛び乗る。
「望乃が使ってたものとか全部消えちゃったからまた買わないといけないわね」
「ん~。この布団、にぼしの匂いが――」
「しないわよ!」
夏凜はベッドの上ではしゃぐ望乃を見て、後ろからそっと抱き付いた。
「夏凜ちゃん?」
「……本当に良かった。望乃が帰ってきて。あんた、もう二度とあんなマネしないでよ」
「大丈夫だよ~。もうしようにもできないから~」
「お役目がなくても、あんたはまた何かを抱えるかもしれない。でもその時は必ず私に相談しなさい。じゃないと、今度はビンタじゃ済まさないわよ」
「……大丈夫だよ。私は園子ちゃんに支えられて、夏凜ちゃんと仲良くなって、勇者部のみんなとも仲良くなれて、精霊としか生きる道がなかった私を変えてくれた。私に居場所を与えてくれた。だからもう私はみんなを裏切りたくない。これからもみんなと一緒にいたいから。それに私、見たいから」
「何をよ」
「夏凜ちゃんが美森ちゃんとの友奈ちゃん争奪戦に負けて、風ちゃんに励まされて、最終的に風ちゃんと結婚するところ~」
「そんな未来ないわよ!」
「え~。じゃあ、私と結婚する?」
「……はあ? な、何でそうなるのよ!」
夏凜がカーッと顔を赤くして、望乃から離れる。
「あはは。冗談だよ~。でも……」
望乃は夏凜の手をギュッと握った。
「私が生きたいって思っちゃったのは、夏凜ちゃんのせいだから、責任取ってよね?」
「言われなくても、ずっとそばにいてあげるわよ!」
「そっか~!」
望乃と夏凜は二人で満面の笑みを浮かべたのだった。
今回で最終回みたいな感じですけど、次回で最終回です。最後はほのぼので終わりたいという理由からそのようになりました。
内容的には風の卒業式辺りをやろうと思っています。