小木曽望乃は勇者である?~勇者の章~   作:桃の山

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 お久しぶりです。


 十月十一日は小木曽望乃の誕生日です。なので特別編を書いてみました。

 
 


特別編

 十月十一日。

 この日、勇者部は休みだと言われ、望乃は暇を持て余していた。友奈や東郷、園子を遊びに誘ったが用事があるとのことで、風と樹もこの前日に今日は用事があると言っていた。夏凜は気が付いた時にはもういなくなっていて、スマホにメッセージが送られてきていた。

 

『今日は遅めに帰ってきなさい』

 

 鍵は基本的に夏凜が持っているため、夏凜が帰っていない以上帰宅は不可能だった。

 望乃はぷらぷらと歩き回ることにした。

 

 

 

 数日前。望乃が料理部に行っている時だった。東郷がふとこんなことを言った。

 

「そういえば、望乃ちゃんの誕生日っていつなんでしょうか?」

 

 それを聞いた望乃と遅刻している園子を除いた四人が顔を見合わせる。

 

「いつって、前に夏凜が八月三十日って言ってたじゃない。入部届けにもそう書いてあるし」

 

「確かにそうです。しかしそれはおそらく望乃ちゃんの本当の誕生日ではありません。なぜなら八月三十日というのは、そのっちの誕生日ですから」

 

「あっ、そうか! 望乃は乃木のコピーだったから乃木の誕生日を答えてたってわけね」

 

「私も望乃本人から聞いただけだから、その誕生日が偽りでもおかしくはないわね」

 

「じゃあ、望乃ちゃんの本当の誕生日はいつなんだろう」

 

「でも、夏凜さんでもわからないことを知ってる人っているんでしょうか」

 

「呼ばれて飛びててジャジャジャジャ~ン!」

 

 そこで、園子がドアをガラッと開けて入ってきた。

 

「別に呼んでないわよ」

 

「あれ~? 呼ばれたと思ったんだけどな~」

 

「もしかして園ちゃん、望乃ちゃんの誕生日知ってるの?」

 

 友奈に聞かれて園子はドヤ顔でグッと親指を突き立てた。

 

「ちゃんとあるのね。元々精霊だった望乃ちゃんに名前がなかったように、誕生日もないのかと思ったわ」

 

 東郷がホッと胸を撫で下ろす。

 

「いや、ないんじゃないかな? コギーも自分の誕生日を知らないと思うしね」

 

「ど、どういうこと?」

 

「わっしーの言う通り、名前もなかったコギーには誕生日っていうものは存在しない。血液型は、私と同じだと思うけどね。でもそれに相当する日は存在する。コギーがこの世に生まれた日はあの日しかないからね」

 

「そのあの日っていうのは?」

 

 園子はちらっと東郷の顔を見た。そしてその日を口にした。

 

「十月十一日だよ」

 

「! そのっち、その日って……」

 

「うん。あの戦いの日。あの戦いでコギーは生まれたんだから」

 

「そうよね。気付かなかった自分が恥ずかしいわ。でも、それだと望乃ちゃんも知っていてもおかしくないんじゃないかしら」

 

「コギーはきっとこう言うよ。『みんなは気まぐれで買った人形に誕生日を作る? ふつうは作らないと思う。それと同じことだよ~』って。だからコギーは自分の誕生日なんて気にしたこともないと思う」

 

「望乃はもう人間なのに、いつまでそんなことを言ってるのよ」

 

「まあ、コギーにとっては自分が精霊だってことが常識だったんだし、その考え方が抜けないんじゃないかな」

 

「それにしてもあれね」

 

「まあ、そうね」

 

 風の言おうとしていることを察した夏凜が同調する。

 

「乃木の望乃のモノマネものすごく似てるわね!」

 

「そんなこと考えてたの? ほぼ本人なんだから当たり前じゃない!」

 

「望乃さんの誕生日、もうすぐですね」

 

「そうよ、樹! 私が言いたかったことはそれよ!」

 

「嘘つけ!」

 

「よし!」

 

 その時、友奈が勢いよく立ち上がった。

 

「みんなで望乃ちゃんの誕生日会をしましょう!」

 

「でももうあまり日にちが……」

 

「大丈夫! 望乃ちゃんの本当の誕生日が過ぎてたら無理だったかもしれないけど、まだ過ぎてないから、みんなでお祝いしましょう! 望乃ちゃんも絶対喜びますから!」

 

 友奈の言葉を聞いて、勇者部はうんと頷いた。そして全員立ち上がり、誕生日会をサプライズで開くことに決まった。

 

「それじゃあ、絶対望乃を喜ばせるわよ! 勇者部ファイトー」

 

「おー!」

 

 

 

時間は戻って現在。ぷらぷらと時間を潰していた望乃のスマホが着信音を鳴らす。確認すると、夏凜からだった。

 

『帰ってきていいわよ』

 

 その文を見て望乃は何一つ疑うことなく帰路に着いた。

 

「ただいま~」

 

 自宅に帰ってきていつも通りののんびり口調で挨拶をする。ドアを開けた先には夏凜が望乃の帰りを待っていたかのように立っていた。

 

「おかえり。帰ってすぐで悪いけど、ちょっと来て」

 

 夏凜はそう言って頭にハテナを浮かべている望乃を奥まで引っ張って行く。

 

「じゃあ、開けて中に入って」

 

「? うん」

 

 夏凜のよくわからない行動に首を傾げながらも、望乃は夏凜が言った通りにした。

ドアを開けた瞬間、

 

「ハッピーバースデイ! 望乃ちゃん!」

 

 友奈の掛け声の後、複数のクラッカーの音が部屋中に響き渡った。

 

「……」

 

 ところが、望乃は全くの無反応だった。

 

「望乃ちゃん?」

 

「えっと……」

 

 望乃は今の状況に困惑しているようだった。

 

「望乃が困った顔するなんて珍しいわね」

 

「今日、誰かのお誕生日だったっけ~?」

 

「望乃ちゃんの誕生日だよ!」

 

「私にお誕生日なんてないよ~」

 

「コギー、今日があなたが生まれた日で間違ってないよね?」

 

園子にそう聞かれて望乃はしばらく考える。

 

「……確かに、私が生まれたのは今日かもしれないけど、でも、でもだよ? みんなは気まぐれ買ったお人形にお誕生日を作る? ふつうは作らないと思う。それと同じだと思うんだよ〜」

 

 それを聞いた瞬間、勇者部は一斉に笑い出した? その状況に、望乃は頭にハテナを浮かべる。勇者部の笑いが落ち着いたところで風が謝罪をした。

 

「ごめんごめん。乃木が前に行ってたセリフをほとんど同じだったからついね。それから望乃、誕生日っていうのは生まれた日を祝う日なのよ。だからあんたが何と言おうと今日は望乃の誕生日よ」

 

「それに望乃はもう人間でしょ」

 

 風のセリフに、夏凜が付け加える。

 

「私たち、勇者部の仲間ですから! 祝いたいんです!」

 

 樹が力強くそう言う。

 

「ああ、そっか。今まで気にもしてなかったけど、考えてみたらそうだね。うん、今日は私の誕生日だ~!」

 

「じゃあ改めて、ハッピーバースデイ! 望乃ちゃん!」

 

 友奈の掛け声と共に、望乃の誕生日会が始まった。

 

「じゃーん! ケーキだよ!」

 

「でかっ!」

 

「これは食べ応えあるね~。ジュルリ!」

 

「口で言うな!」

 

 友奈が持ってきたケーキは大きなホールケーキだった。

 

「ケーキ入刀~」

 

「わ~パチパチ!」

 

「何でケーキ入刀があるのよ!」

 

「じゃあ、夏凜ちゃんと風ちゃんでいってみよ~」

 

「何で!」

 

「コギー、部長とにぼっしーの組み合わせ好きだね~」

 

「でも、望乃ちゃんの誕生日なんだから、望乃ちゃんはやらないと!」

 

「ていうか、何でやる前提なのよ」

 

「やっぱりここはコギーとにぼっしーだぜ~」

 

 園子がグッと親指を突き立てる。

 

「何でそうなんのよ!」

 

「夏凜ちゃんがやらないなら私がやろっかな!」

 

「友奈ちゃん!?」

 

「でも、夏凜。今日は望乃誕生日なのよ?」

 

「そ、そう……ね。仕方ないわねやってあげるわよ。感謝しなさい!」

 

 すぐに折れた夏凜を見て、望乃以外の全員がチョロイ、と思った。

 

「私と夏凜ちゃんで初めてのきょうどうさぎょうだ~」

 

「その言い方やめなさいよ!」

 

 結局、本当にケーキ入刀をすることになり、夏凜は恥ずかしがりながら望乃とケーキを切ったのだった。

 

 その後、友奈が押し花を送ったり、東郷がぼた餅を渡したり、樹が歌で祝ったり、風が女子力アップをプレゼントにしようとして断られたりした。そして園子がプレゼントを贈る番になった。

 

「私のはこれだよ~。コギーが好きな部長とにぼっしーの本!」

 

「何よそれ!」

 

 風と夏凜が声を揃えて言った。

 

「わ~、ありがと~。読みたかったんだ~」

 

「あと、これも~。コギー×にぼっしーの本。自信作だよ~」

 

「ありがと~」

 

「望乃、ホント好きよねあんた」

 

「心配しなくても夏凜ちゃんにも読ませてあげるからね~」

 

「いらないわよ!」

 

 そんなこんなで時間は過ぎていった。最後に記念に写真を撮ろうということになった。

 

「友奈ちゃんはそこで、夏凜ちゃんはそこ。よし、じゃあ撮るよ~」

 

「いや、望乃が写らないでどうすんのよ!」

 

「あっ、忘れてた~」

 

「じゃあ、私が撮るよ!」

 

 友奈が望乃と代わってスマホで自撮りの形で写真を撮った。そしてその写真はすぐに勇者部に送られた。

 勇者部が帰った後、望乃と夏凜は後片付けをしていた。

 

「全く……あいつら、またごみを大量に増やしてって……」

 

「何だか、夏凜ちゃんの誕生日を思い出すね~」

 

「そうね」

 

「あの時は、私の誕生日会をするなんて微塵も思っていなかったな~」

 

「……望乃」

 

「ん~? どうしたの~?」

 

「こ、これあげる!」

 

 夏凜がそう言って渡したものはマフラーだった。

 

「プレゼントよ! 大事にしなさいよね!」

 

「ありがと~。大事にするよ~」

 

 そう言って望乃はマフラーを首に巻く。

 

「いや、まだ暑いでしょ」

 

「うん、暑い」

 

 望乃は首に巻いたマフラーを外す。

 

「夏凜ちゃん! だ~いすき!」

 

 望乃は夏凜にギュッと抱き付いた。

 

「十年後も二十年後も一緒にいようね!」

 

「そんな先のこと、わからないわよ」

 

「え~」

 

「でもそうね。約束するわ」

 

 夏凜はそう言って笑った。その笑顔につられるように望乃も笑った。

 

「そういえば言い忘れてたわ」

 

 夏凜は望乃を引きはがして手を握った。

 

「ん~? 何を?」

 

「誕生日おめでとう。望乃」

 

「うん! ありがとう! 夏凜ちゃん」

 

 互いに手をしっかりと握り合いながら、笑いあったのだった。




 望乃ちゃん、誕生日おめでとう!


 以上です。ありがとうございました。
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