その男は、ハンターだ。
背中には、巨大な大剣、「天翔大剣」を背負っている。しかし、身につけているのは明らかに私服だ。赤色の底の浅いハットを被り、長く伸ばした黄色の髪の毛はその帽子の隙間から背中まで垂れ落ちている。その髪がまた、オレンジを基調とした私服によくマッチしている。
まあ、こいつは男なのだが。
男は、左手に盃、右手に酒の入った瓶を持って歩いている。彼が歩いているのは、氷の上。正確には、氷の洞窟の中、といった方がよいだろうか。暗闇の中を、背中に刺した松明の明かりを頼りに歩いていく。途中、足を滑らせることはない。彼の身のこなしは、ただの人とは比べ物にならないのだ。
歩いて行くと、不意に洞窟の先から光が漏れるところが見える。彼は、迷わずそこに歩く。そのまま、光は大きくなっていってーーー。
彼は、拓けた場所に立っていた。洞窟はそこで終わり。そこは、広い広い空間だった。天井は暗くて見えないほど高い。円形の氷の部屋だ。そして、その中心に大きな剣が突き刺さっていた。到底、人間の持てる大きさではない。天まで届く剣。人々は、この剣を「天剣」と呼ぶ。男は、その前に座り込んだ。
「久しぶりだな…。アン。」
剣に向かって語りかける。
男は二つの酒を注ぎ、片方を剣の前に置いた。
そのまま、その片方を飲み干す。
「うまい酒だろ?お前の好きなやつ、買って来たんだよ。」
男は、それから何の脈絡もなく、自分の生活のことを話しはじめた。
最近「狩った」モンスターなど、手に入れた武器など。
なのに、その顔はひどく怖い顔をしている。
「今日は、話があって来た。」
そして、男は突然切り出した。
剣は何も答えない。
「アマツマガツチの暴走が、始まっている。」
男は、そういった。
「つまり、また世界の終わりが近づいているってことだ。わかるだろ?また繰り返される。神による、あのくだらないゲームがな。」
男は立ち上がった。そして、剣を思い切り蹴る。
カツーン!
響く音。
何もない空間に、その音だけがこだましていく。
「もう、奴らの好きにはさせない。俺が、この世界を終わらせるから。もう、犠牲を出すわけにはいかないんだよ。わかってくれ、アン。
俺は、もう読まない。読まなければ、わからない。知られない。他の二役がついても、俺が動かなければ関係ない。そうして、世界は終わる。
それで許してくれ...。俺の最後の罪滅ぼしだから。」
男は、元来た道に足を向けた。
「また、来るわ。」
これは、ハンターの物語だ。この世界が、一度終わりを迎えてから数百年。新しい文明が、この世界には芽生えた。そして、唯一この世界の真実を知る、この男。
名前を、キリサメと言った。