quest!   作:resot

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サツキの過去を聞いたハンターたちは、何を思うのか?
続きです!


第16話 笑顔!

少しずつ、霧が晴れていく。

でも真っ白な霧ではなく、むしろ真っ黒な霧。

 

もう何度繰り返したかもわからないあの悪夢が、ようやく晴れていくのがわかった。

 

身体がわずかに動く。

うん、大丈夫そう、かな・・・

 

 

「サツキどの、サツキどの?」

 

しわがれた声に名前を呼ばれた気がした。

薄眼を開けると、そこにはどこかで見たようなおじいさんの姿。

 

「モグラさん・・・?」

 

いつかに見た、モグラさんの顔だった。

 

「おお、目が覚めたか。」

 

私は起き上がった。

頭が痛い。

 

でも耳につく雨は依然として降り続いている。

 

あれ?私、なぜこんなところに・・・?

 

ふと目の前に、赤い目が現れた気がした。

戦慄が走る。

汗が一気に噴き出して、呼吸が乱れる。

 

「サツキさん、これを!」

 

手渡されたコップの水を飲み干した。

ダメだ。必死に頭から記憶を振り払う。

 

こんなとこで、また倒れるわけには・・・

 

 

 

ゆっくりと呼吸をする。

 

「スーッ、ハーッ。」

 

 

 

 

 

少しだけ、落ち着いた。

顔を上げる。

 

生きてる・・・。

どうやら私は、また助けられてしまったようだ。

 

 

「目覚めましたか、サツキさん。」

 

 

ふとドアの方を向くと、村長さんがいた。

さっきの声・・・

そっか、村長さんがお水を・・・

 

悲しそうな顔をして、髪飾りをいじっている。

 

「ありがとうございます、本当に。そして、申し訳ありませんでした。」

 

「いいんですよ、サツキさん。

それよりも・・・許してください。」

 

「何か?」

 

「あなたの過去のことを、皆さんに話しました。」

 

「え・・・」

 

ドクン、と胸が疼く。

 

「なぜです?」

 

次に私の口から出たその言葉は、喧嘩腰だった。

・・・あのことは人に言うことじゃない。

 

それに、村長さんが知ってるはずがなかった。

 

「誰かから、聞いたんですか?」

 

「ええ。サツキさんの、お姉さんから。」

 

「なんで・・・」

 

「おかしいと思ったんです。あなたがリュウさんと共にやってくると聞いた時から。

だって、あなたが元ハンターだってことは知ってましたから。

・・・そして、あんな姉がいるハンターがどうしてやめたのか。

もしかして、ハンターになりたいのではないかとも思ったものですから。

 

だから、メゼポルタに聞きましたよ。

直接、お姉さんが話していただいたことにはびっくりしましたけどね・・・。」

 

「そんな・・・でも。」

 

「理由は単純です。あなたを助けたかったんですよ。」

 

「助けたかった?」

 

「お姉さんは、ただ一つ言いました。

リュウさんとサツキさんを、解き放ってあげてほしいって。」

 

解き放つ・・・?

確かに、私とリュウはミツキのこと、ずっと気にしてる。

私が、縛られてる?

いや、でもこれは縛られるべき罪だ。

 

たくさんの人が死んで、私だけが生き残った。

 

そして何より、私をかばって、家族ある女の子が死んだんだから。

そんな私の耳に、村長さんの言葉が降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは、戦いすぎなのですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

「だって、そうじゃないですか。一人であの事件を背負って、一人で戦う。

リュウさんもそうです。あなたたちを派遣したことに、ずっと負い目を持ってたった一人で戦っている。

苦しんで前を向くことが正しいことだと思い込んでいる。

ミツキさんのためだ。彼女の影にずっと囚われている。

・・・しかし、ここにいる人を見てください。

 

彼らは、なぜ狩りをしているのかわかりますか?」

 

「なぜ・・・?」

 

「守りたいからですよ。」

 

「大切・・・」

 

「はい。彼らは、守りたいだけなんです。

この村、そこに住む人。ギルドの人も、この自然も、そして、仲間も。

あなたもなんですよ、サツキさん。

 

あなたも、仲間なんです。」

 

「・・・そんなの、認めてもらえるはずないでしょう?」

 

「・・・確かに、受け入れられやすい話をしたとは思ってません。

でも皆、あなたと共に戦ってきたでしょう?

彼らがなんで狩りをするのか。

あなたがどういう思いでいるのか知った彼らが、どうするのか。

・・・普通だったらいい反応ではないでしょう。

だからこそ、今までと変わらず、あなたの戦いを支えてくれるハンターたちだと、私は賭けてみたんです。

そして、その答えをあなたは聞かなければなりません。」

 

みんなが、あれを聞いて、答えを・・・?

 

考えてもわからない。

怖い。

 

みんなが、守りきれないハンターを、迷惑しかかけていないハンターを、どう思うのか。

考えたくもない。

 

 

その時だった。

バンっ!!

 

ドアが勢いよく開いて、リュウが入ってきた。

 

「村長!なぜ、モンスターの襲来が私に報告されないのです?」

 

「リュウ?」

 

「サツキ、目が覚めたか。よかった。だが、そうも言ってられない。

・・・村の門のど真ん前、30メートルほど前でモンスターが暴れているらしい。」

 

「な・・・!」

 

 

 

 

信じられない。私も行かなければ。

無理矢理にでも、身体を起こそうとする。

 

でも、ふらついてしまった。

ベッドに倒れこむ。

 

「サツキ、無理するな。

・・・それより村長、説明してください!

まず我々に報告するのが筋なはずでは?」

 

村長さんは、にっこりと笑って私たちを見た。

 

「私は心配など微塵もしていません。皆、私の村のハンターです。

村に危害が及ぶことはありません。」

 

「どうして、そこまで・・・?」

 

そんなの間違っている。100パーセント村に危害が及ばない保証はない。

彼らを、どうしたらそんなに信じられるというの?

 

「村長!それはおかしいです!」

 

「あなたたちは、この狩りを見ていてください。

・・・出過ぎた真似だと理解しています。

でも、どうかお願いします。

ついてきてください。」

 

深々と頭を下げる村長さん。

リュウも黙ってしまった。

モグラさんもうんうんと頷いている。

 

 

「大丈夫ですよ、本当に。」

 

 

その声に、迷いはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドボルベルク、それがあのモンスターの名前です。」

 

村長さんが教えてくれた。

 

 

見たところ、尻尾のハンマーによる叩きつけ攻撃。巨体を活かした体当たり攻撃。

これが主な攻撃で、途中で何度か回転攻撃もするようだ。カンナは、足元に潜り込んで足を切りつけている。

双剣がキラリと光った。すると、突然巨体が転倒した。

 

 

「足の怯み・・・」

 

足を攻撃することによって稀に引き起こせるモンスターの転倒。

怯みを引き起こしたのは、間違いなくカンナだった。

 

 

「カンナのあんなの、初めて見た。」

 

「カンナさん、さすがですね。」

 

 

6人もハンターがいれば、優勢に戦いを進められるだろう。

でも、なぜだろう。

外から見ていると、何故か視線はカンナに吸い寄せられた。

いつも中にいて、気がつかなかった。

 

 

そのままカンナは、尻尾に向かって走り出す。双剣が輝いた。

 

「鬼神化!」

 

ズバンッ!という音とともに、尻尾の先が切り落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

「なんで?」

 

彼女に視線がいってしまう理由。

しばらく見ていれば、わかった。

 

 

笑ってる。雨と血が舞う中、カンナは笑っていた。

 

 

 

「どうして・・・そんな笑顔でいられるの?」

 

 

 

たまらず、ドボルベルクは後ずさる。だが、続いて回転を始める。

だが、すでにセリアさん、セレオさんが足下に潜り込んでいる。足を切りつける二人。

 

 

「カンナ!」

 

 

見ると、カンナが一人、遠く離れたところから走り始めた。その先にはミルさん。

両腕を前に出し、ドボルベルクを顔だけで視認している。

 

「それ!」

 

 

 

ジャンプしたカンナに、ミルさんの腕が乗る。そのまま、ミルさんは思い切りカンナを、ドボルベルクに放り投げた。

いくら大きいとはいえ、その回転の尻尾の高さはせいぜい人の頭の高さ。

 

高さ的にそれより高い尻尾は無意味だし。

 

 

 

だから、それより高く飛んでしまえば、確かに楽に近づける。

そのまま、カンナはドボルベルクのコブに、思い切り二本の剣を突き立てた。

 

「ガアアアアアアア!」

 

たまらず倒れるドボルベルク。

 

「乱舞!!!」

 

 

 

そう叫んだカンナが、コブに向かって剣を振る。

血の出方が尋常じゃない。

多分、あそこは弱点なのだろう。

 

 

 

 

 

そして、その数秒後。

 

「ウガアアアアアアア・・・!」

 

 

 

ドボルベルクは、倒れ伏した。

 

 

・・・・

 

「よおおおおおおし!!」

 

 

ハンターたちの歓声が上がる。

勝った・・・!

 

 

 

うおおおおー!

後ろから、雨音に負けない叫びが上がる。振り返れば、ユクモ村の人々がいつの間にか集まっていた。

 

 

「やいカンナー!カンナのくせに!」

 

「ミルさん、ベガさん、かっこいいー!」

 

 

みんな、異変の中、モンスターの襲来まで受けて不安だろう。

でも、こんなにたくさんの人が応援してくれている。期待してくれている。

カンナは相変わらず笑っている。

 

 

 

 

 

確かに、思い出した。そうだった。

こんな中で、戦うのが私は好きだった。

目の前が、少し滲む。

 

 

 

「サツキ。」

 

 

 

いつの間にか、カンナが目の前にいた。

 

 

「サツキも、ミツキさんから解放されよう。忘れなくていい。

・・・でも、囚われてたら、いつまでたってもミツキさんは悲しいまま。

大丈夫。必ずミツキさんを生き返らせることはできる。

私たちも手伝うから。だから、サツキもありったけの力でさ。

 

今はさ。狩りを楽しもうよ。」

 

「・・・うん!」

 

カンナは、リュウの方を向いた。

 

「リュウさん。私たちで、この異変を解決しましょう。

事態は一刻の猶予もありません。もう何日連続雨だと思ってるんです?

大丈夫です。」

 

カンナはにこりと笑った。

 

 

 

「私たちは、強いですよ。」

 

 

 

後ろには、笑顔のハンター達。私たちは、顔を見合わせて、笑ってしまった。

 

 

 

「生意気なカンナだな・・・

サツキ・・・もっかい信じていいか?」

 

答えは、決まってる。

 

「任しときなさい、当然じゃない。」

 

 

リュウはみんなの方を向いた。

 

 

「守りましょう。この村を。そして、この世界を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、後ろに誰かいる気がした。振り向こうとしたら、背中を押された。

わかったよ。

私も、好きに歩くから。もう少しだけ、待っててね。

私の、大切な相棒さん。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・、なんだ、もう出発してたんですか。」

 

 

俺は、その報告を聞いてさっきみんなに言ったことを思い出した。

サツキを、もう一度信じる。そして、今度はもう大事なものを失わないようにするんだ。

この異変は、我々だけで解決してみせる。と、メゼポルタに連絡しようとしてみたら、この連絡だ。

 

先鋒隊が、もう出ているらしい。

しかも・・・驚きだ。

 

 

 

「しかも、あなたたちが出るんですね。いいんですか?

メゼポルタギルドは、自分たちの()()()()()をメゼポルタから離して。」

 

 

 

「うーん、まあ、いいんじゃないかしら?

それが上の判断らしいし。何かあっても、あっちには戦力溢れてるしね。

・・・それに、いい話も聞けたしね。私にとっては、最高の。」

 

 

「サツキのことですね。」

 

 

「そう。・・・カンナちゃん、か。うん、サツキちゃんがね・・・」

 

 

電話の向こうでは、涙ぐむ女の人の声がしていた。

 

 

「何か、やっぱり嬉しいな。」

 

「全く、あやつもつまらぬことを考えるものだ。」

 

 

今度は男の人の声がした。

 

 

「まあ、くだらぬことに気を取られていて、それが取り払われたのだから、悪いことではないがな。」

 

「そういうこと言わない!ねえ、リュウくん。カンナちゃんによろしくと言っておいて。私たちもできるだけ早く向かうからさ。」

 

「ええ。お待ちしていますよ。」

 

 

この人たちが来てくれるなら、正直後は待っているだけでもいいかもしれない。だが、彼らの覚悟を信じるなら、我々も動かなければ。

 

 

「こっちも、ベストを尽くします。だから、お願いしますよ。『血陰』のお二方。」

 

 

雨が、少し弱まった気がした。




サツキがやっと自分の気持ちに気がつくお話でした。
この話が書きたくて今まで長々とやってきたんですね、はい。
ごめんなさい。

そして、謎の二人の正体は・・・?
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