quest!   作:resot

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resot 「うーん・・・。」
サツキ 「・・・あのさ。」
resot 「何です?」
サツキ 「いや、なぜ私がこんなとこに?」
resot 「いや、最近作者様とキャラクターが会話する流れを前書きにする人が多いじゃないですか。
    面白そうだから、私もやってみたくて・・・。」
サツキ 「パクリってわけね。」
resot 「まあ、そういうことになりますかね?」
サツキ 「で、私はどうすれば?。」
resot 「えっと・・・」
サツキ 「何も考えてないのかい!!!」
resot 「マジすいません!リスペクトですから!次回はもう少し書けるようにしますから!」


第18話 雷!

目を開けると、見慣れた天井が目に入る。

いつもと変わらない木目の天井が、光に照らされている。

 

 

「・・・。」

 

 

起き上がると、そこにも見慣れたギルドの風景。

 

 

「あの・・・。」

 

 

私は近くを通った女の人に声をかけてみた。

でも聞こえなかったのか、書類を大量に持ったまま走っていった。

 

 

「・・・聞こえてたくせに。」

 

 

チラリとこっちを見たのはすぐわかった。

 

別にあの声が通ったからといって、何か用があったわけではない。でも、誰かと話したい気分だった。

あたりを見渡しても何にもいつもと変わらないように見える。

あるものは書類を運び、あるものは書き物をしている。その光景をぼーっと眺めていた。

 

でも何となく、避けられているのだけはわかる。

 

 

「・・・もう。」

 

 

周りに、ハンターは一人もいない。

今、皆何してんのかな。

 

 

「あの・・・。」

 

 

顔を上げると、目を真っ赤に腫らした職員さんの顔があった。

 

 

「リュウさんがハンターさんを呼んでました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう。」

 

「・・・おす。」

 

リュウは至っていつも通りに、私に声をかける。

 

 

「・・・サツキ。」

 

「・・・ごめん。私、裏切った。」

 

「気にするな。お前のせいじゃない。」

 

 

そう、いつも通り喋る彼。

 

 

「無理しなくて、いいよ。」

 

「・・・やっぱ、バレたか?」

 

 

笑うそいつの無理する姿なんか、見る気にもならなかった。

だって、目に涙が溜まってんじゃんか。

バカじゃないの。

 

 

「辛いな、やっぱ・・・俺も、死にたくなる。」

 

 

言葉にするだけなら簡単なことなのに。

結局ベガさんが目を覚ますことはなかった。

ただ、それはあまりにも重い一言だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の目の前でハンターが死ぬ。

また、死んだ。

まただ。また。また死んでしまった。

死なせてしまった。

 

そんな思考ばかりが頭を支配してしまう。

 

でも実際に、リュウとの約束は守れなかった。

 

唯一違うのは、私の心だった。

消えない後悔。あの時こうしていれば。その気持ちだけは募っていくばかりだ。

 

・・・でも、もっと打ちひしがれている人たちを見ていたら、私は恐ろしく冷静になった。

当たり前だ。

この村のハンターたちはベガさんをよく知っている。みんなの苦しみは、私たちとは計り知れないだろう。

ここに来て2年程度の私も、こんなに辛いのだから。

 

でも、だからこそ嫌になる。

仲間が死んだのに、あの時のトラウマは、今回は蘇らなかった。

・・・なんて自分勝手なやつだ、私は。

なんて、自分を否定する言葉が次々と出てくる。

 

それに、私たちを追い詰める出来事がもう一つ。

血陰の到着がまた遅れた。

 

原因はこの・・・

 

 

ドンガラガッシャーン!!!!!

 

 

・・・激しい雷雨だ。

この天候に、足止めを食ったらしい。なので、この村はオスロさんがしばらく守ってくれていたそうだ。

・・・本当にやばいのが襲来していたら、まずかっただろう。

 

 

「あ・・・。」

 

 

しばらく待つと、仲間たちが入ってくる。

セリアさんにセレオさん。ミナミさんにサーサさん。

 

 

「・・・。」

 

 

何も言わない。

皆下を向いたまま、暗い顔つきで座る。

むしろこの状況下で、まともに呼びかけに人が集まることの方がすごい。

 

人が死ぬ。

それはそんな簡単なことではない。

 

 

「・・・、ミルさんは?」

 

セリアさんが口を開く。

 

 

「・・・さあ、。」

 

「さっき、ギルドの裏手に行ったのを見たような・・・」

 

「リュウ、私見てくる。」

 

 

ーーー何ができるのよ。

何もできないのに、飛び出してしまった。

ただ、一つだけわかることもある。

 

だって、大切な幼馴染を失う思いは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドの裏は、小高い丘になっている。

そこからは、ユクモ周辺の森が一望できる。

・・・今は雨が降っていて、よく見えないが。

 

 

「ミルさん・・・」

 

 

そこに、ミルさんは立っていた。駆け寄っていくが、こっちを見ない。

真っ直ぐに森の方を見つめている。

 

何か、声をかけなきゃーーー。

 

 

「……サツキか。」

 

「ミル、さん………。」

 

「なんてことはない、うるさいやつが一人、村のために死んだ。それだけだ。」

 

 

あまりに予想外の言葉に少し驚く。

声もいたって落ち着いている。

 

 

「え?」

 

「それだけだよ。勝手に死んだあいつが悪いんだ。

余計に私を庇いやがって。

あの時動けなかったのはあいつだろう?完全に判断ミスだ。」

 

「ミルさん?」

 

 

近づいていって、顔を覗き込んだ。

 

 

「・・・っ」

 

 

心臓が止まるかと思った。

雨の中だというのに、それとわかるくらい、彼女の頰に涙が伝っていた。

口元から血が流れている。

 

 

「ミルさん、血・・・」

 

 

口から流れた血は、胸元を真っ赤に染めている。

唇を歯で髪破ってしまっていた。

 

 

「ちょ・・・ミルさん、何してるんですか?」

 

 

唇を噛み破り、胸元を真っ赤に染めながら泣くミルさん。

何も声がかけられない。

 

 

「全く、お節介なやつだ。」

 

 

「ミル、さん・・・。」

 

 

どうしたらいい。私は、何ができる。

どんな声をかければ・・・?

 

 

「・・・昔、ここでな。あいつと話をしたことがあった。まだ私たちは見習いでな。

何のために、何を守るためにハンターになるかっていう話だった。

・・・あいつの答えを、私はすっかり忘れていたよ。」

 

 

何か、何か言わなければ。

 

 

「あ、あの……」

 

「ほんと、何で忘れてたのか・・・。あいつ、なんていったと思う?何を守りたいって言ったと思う?」

 

「ミルさんーーー。」

 

「あいつ、私を守りたいってーーーそう言ったんだよ。」

 

 

そう言って、ミルさんは崩れ落ちた。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

叫び声が、雨音の上から聞こえてくる。

当時の私を、見ているみたいだった。

そして、わかった。何も言うことができない。

声のかけ方がわからなかった。

 

どうしたらいいの?

こういう時に、なんて声かけたらいいの?

一体、どうしたらいいの・・・?

 

 

「サツキ・・・。」

 

 

振り返ると、そこにはカンナがいた。

 

 

「カ、カンナ・・・?」

 

 

カンナは、私の呼びかけに応えずスタスタと歩いていく。

私の横を通り過ぎ、ミルさんの方へ。

しゃがんでいるミルさんを見る。

 

 

「ミルさん!」

 

 

そう叫ぶや否や、彼女はミルさんの顔を思い切り持ち上げる。

 

 

「ちょ、カンナ待って!」

 

 

止める間もなかった。頰に思い切りビンタした。

 

バチイィィン!

 

カンナは、頰に思い切りビンタした。

 

 

「ちょ、ちょっと、カンナ?!」

 

「ミルさん、立ってください。」

 

 

ミルさんは何も言わない。

ただ虚ろな目で、カンナの目を、真っ直ぐ見ている。

 

 

「なぜ、リュウさんの呼びかけに応えないんですか?」

 

「・・・・・・。」

 

「サツキに、私たち何て言ったんですか?一緒だよって言いましたよね。

一緒に異変解決するんだよねって。

・・・だったら、解決しなくちゃ。

私たちは、止まるわけにはいかない。

私たちがここで止まったら、ベガさんは本当に死んでしまう!!」

 

 

叫ぶように声を出すカンナ。

 

 

 

「私たちが、意思を引き継がなきゃ。

・・・あのベガさんが、ミルさんが泣いているのを望むと思いますか?」

 

「・・・・・・。」

 

「行きましょう。この戦いを、終わらせるんです。私たちの手で。」

 

「・・・・・・。」

 

「立ってください。

そして、私たちを導いてください。

私は信じてます。ずっと昔にミルさんに憧れた日からずっと信じてます。

私の指揮官は、ミルさんしかいないって。

・・・だから、指揮してください。

あの人の繋いでくれた命を!この村を守るために死んだ命を!

ミルさんと私たちで繋ぐんです!!!」

 

 

ミルさんは、下を向く。

 

 

「ベガ・・・。」

 

 

それから、こっちを向く。口元の血を拭った。

いつものミルさんの目だった。

 

 

「二人とも、ありがとう。

・・・行くぞ。」

 

「はい!!」

 

 

ミルさんは、そう言ってギルドの方へ歩いて行った。

 

 

「カンナ、ありがとね。」

 

そう言うのがやっとだった。

 

 

「やめてよーー。」

 

 

震える声がした。

 

 

「もう、こんな思い、したくないよ……。」

 

そう言って、カンナは私に抱きついてきた。

 

 

「ううっ うっ・・・・」

 

 

堪えるような声で泣くカンナをだきながら思う。

 

強い子だ。

私なんかより、ずっとカンナは強い。

 

だからこそだ。

私が支えられることはーーー。

 

 

「必ず、異変を解決しましょう。」

 

 

狩りしかない。

そして、この子を守らなければ。ミツキと同じ夢を持ってる、この子を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「揃いましたね。」

 

リュウは言った。力のこもった声だった。

 

「我々も、前を見なければなりません。ベガさんのためにも。

それが、一番彼が望むことです。」

 

 

あまりにも力強く、迷いのない声だった。

 

 

「私はみなさんを信じます、と言いましたよね。

・・・まだ信じています。俺は、まだみなさんを信じています。

必ず、帰ってきてくれると。そう信じて、準備を進めています。

見せてください。あなたたちの力を。守りたいという意思は、みんな同じです。

守りたかったっていう意思も、皆持ってます。

同じ痛みを抱える者同士、恐れるものなどありません。」

 

 

リュウの言葉を、皆黙って聞いていた。

 

 

「戦いましょう。そして、ベガさんに報告しましょう。」

 

 

その声を聞いて、一人、また一人と顔が上がる。

 

 

「………セリア、行こっか。」

 

「そだね。」

 

「我々も、戦おう。村の英雄のために。」

 

 

リュウはふう、と息をついた。

 

 

「クエストです。」

 

 

その声は、さっきより更に力強かった。

 

 

「村の付近に雷狼竜、ジンオウガの存在が確認されました。」

 

 

その言葉に、私の背中にも力が入った。

ジンオウガ。

懐かしい名前だ。

あの夜の出来事を思い出した。

 

 

「ついに、奴が村に戻ってきたようです。」

 

「・・・それで?」

 

「紅葉。あなたたちに、お願いできますか?」

 

 

ベガさんは、何を望むだろうか。これ以上止まること?いや、そんなはずがない。彼に失礼だ。

村のために亡くなった英雄のためにも。

 

 

「「はい!」」

 

「セレオ、ミナミ、サーサの3名は村で待機。4人の不在中、村はあなたたちで守ってもらいます。」

 

「りょーかいでっす!」

 

「セレオ、任せたよ!」

 

「みなさん!!!」

 

 

ドアが開く。

そこに突然入ってきたのは、村長さんだった。

 

 

「一つお話があります!

今の今まで、過去の文献を漁ってたんですけど・・・!」

 

「お、落ち着いてください!」

 

 

リュウがたしなめる。

いつも落ち着いている村長さんが取り乱すなんて初めて見た。

 

いつも通りのよく通る声が響く。

 

 

「この村に伝わる古龍、アマツマガツチ。そのモンスターに関わる伝説が、もう一つあったんです。

かのモンスターの力の源、『天空の龍玉』。言い伝えですが、その宝玉を使って神は人に命を与えた、と・・・。」

 

 

背筋がピンと張る。

 

 

「つまり・・・?」

 

「ユクモの生き返り伝説は、もしかしたらここからきているのかもしれません。

伝わってきた文献は受け継がれるだけであまり解読はしてこなかったんですが・・・。

詳しく見てみたら、書いてありました。

これを使えば、もしかしたら!!」

 

 

ベガさんを助けられるかもしれない。

そして、もしかしたら。

 

私のずっと探していたもの。求めていたもの。

 

ミツキーーーーーー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・これでいいかな。」

 

 

武器を磨き終えてふと一息つく。

窓の外に目をやると、その瞬間に雷が落ちた。

 

 

「雷・・・。」

 

 

部屋で準備をしていると、目に入るものがあった。

それは、よく見る白い雷ではなかった。

青い色をした雷。あの時巻き込まれた、ジンオウガの雷と同じ色。

 

首にかけた封龍石に手を延ばす。

ぎゅっと握りしめた。少しずつ力が湧いてくる気がする。

ミツキ、お願いがあるの。

私に、力を貸して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ・・・。」

 

 

村の入り口にたどり着くと、オスロさんがいた。

 

 

「どうも。まだお帰りでなかったんですね。

・・・本当にありがとうございました。」

 

「いえ。あなたたちも、頑張ってください。私も、元いた場所で頑張りますから。

あっちも大変みたいでーーー。もちろん、こちらほどではないでしょうがね。」

 

 

何を言えば、といった顔で話すオスロさん。

この人も、気を使ってくれているのだろう。

 

 

「大丈夫ですから。」

 

 

そう言っておいた。ガーグァの荷車がやってくる。オスロさんは、それに乗り込んだ。

 

 

「そう言えば、オスロさんはどこのギルドなんですか?」

 

 

そういえば知らなかった。

 

 

「ああ、言っていませんでしたね。私は、ココットという村のギルドなんです。」

 

「ああ、ココット!」

 

 

確か、サーサさんもココットの出だと温泉で聞いたことがあったな。

温泉での会話を思い出していた。

 

 

「サーサさん、そしたら知ってるんじゃないですか?ここに来たの、最近みたいですし。」

 

「え?一体なんのことです?」

 

「え?サーサさんも、ココットの出だと言ってましたけど・・・。」

 

 

オスロさんは首を傾げた。

 

 

「あんな方、私ギルドで見たことないですよ?なにかの間違いではありませんか?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は、初めて目の前で人が死ぬのを見た。

蘇る記憶に向かって、ブンブンと首を振る。

今は、集中すべき時だ。

 

リュウさんが指定した場所は本当に村から近かった。

門からほんの1里くらいかな。

あたりには木が生い茂っているが、ところどころ踏み荒らされたような跡が残っている。

本当に村の近くまで来ていたようだ。中には、焼け焦げたようなものまで。

 

 

バチバチバチバチバチ!!!!!

 

 

突然、轟音が鳴り響いた。

4人ですぐに武器を構える。

 

 

「気をつけろ!」

 

 

あたりを見回す。

音がした方を見ると、木々の向こうで、雷がバチバチと落ちている。

 

 

それは、青白い雷。

私が前に見たあの光と同じ色だった。

 

 

「・・・近いな。」

 

「そうですね。」

 

 

草の茂みを飛び越え、木の合間を縫ってーーー。

 

目の前に、少し開けた場所が現れた。

湖のほとりだった。雨の中、生えるススキが垂れ下がっている。

そして、そのススキの中に、雷が激しく落ちている場所があった。

次々と立ち上る光の柱。その中心に、そいつはいた。

 

 

「出やがった・・・。」

 

 

雷狼竜、ジンオウガ。

背中は、夜闇の中、灯のように輝いていた。

バチバチと輝く背中を下に下っていくと、その先が不自然に途切れている。尻尾が切れていた。

武器を強く握りしめる。

 

 

「あの時のやつだ・・・」

 

「ええ、そうみたいね。」

 

「それじゃ・・・」

 

「行こう!」

 

 

ジンオウガもこちらに気がついた。

途端、かなりのスピードでこっちに走ってくる。

 

 

「相変わらず速いなぁ!」

 

 

でも私はもうあの時の私とは違う。

体が軽い。あの時より体はずっと動きやすい。

まずは回避。

そして、頭を追いかけて切りつける。

 

ちなみに私はもちろん、双剣で来た。セリアさんは片手剣。そしてミルさんはランス。

紅葉単独での狩りは久々。

 

 

しばらく攻撃していると、パターンも見えてきた。

まず危険なのは、前足で私たちを叩きつけてくる攻撃。

ただ問題は、一撃ごとに雷が前足に落ちてくる。

 

 

あたりの空気がピリピリとひりつくような感覚。

あれに触れたら、絶対感電するな。

 

それから、全身を使った旋回や体当たり。

ミルさんはガードできるけど、私たちは躱すしかない。それに、かなり速い。

 

前のディアブロスほどではない。

でも中々読みづらい動きを見せてくる。

ディアブロスは割と直線的な動きが多くて、回避もその速度さえ振り切ってしまえれば危険はなかった。

途端にジンオウガは体当たりの構え。

 

私もとっさに反応する。

 

 

「右・・・

に動いておいて左、かな。」

 

 

<大事なことは、ジンオウガの攻撃をかわすには奴を騙す必要があるだろうってことだ。>

 

 

ミルさんの言葉を思い出す。

その「ディアブロスとは違う速さ」をミルさんに伝えた時に返ってきた言葉だった。

 

 

<相手の反射神経を信じろ。>

 

 

 

前もそうだった。

逃げ回りながらも、ジンオウガを振り切ることはできなかった。真っ直ぐ走るだけではなく、止まり、曲がることができるから人間の細かな動きにもついてくる。

 

 

だから簡単に言えば、カマをかける必要があるってこと。

 

突然の方向転換をしなければ、最後にジンオウガの反射神経によって追いつかれる。

 

 

右に一歩。

そんで・・・

 

 

「残念でした!!」

 

 

左にかわす。

 

 

真横を通り過ぎるジンオウガの足に剣を突き立てる。血が吹き出す。

 

 

「よしっ・・・ってやば!」

 

 

でも、何より厄介なのが・・・

 

不意に、ジンオウガの背中が輝きだす。

そのまま体を捻って、空中で回転。

途端、光の玉が曲がりながら向かってくる。

 

 

「・・・まず!」

 

 

この玉がよくわからない。

私は横へ回避。だが、玉は急激に曲がって、こっちへ向かってきた。

 

 

当たる!

 

 

でもバチーン!と音がして、光の玉は消えた。

 

ミルさんが間に入ってくれたらしい。

虫がチラチラと飛び交う。

この虫が電気の源らしい。

それにしても、この玉、軌道が全く読めない。

 

 

「カンナ、大丈夫か?」

 

「はい、大丈夫です!」

 

「それにしても・・・動きに無駄がなさすぎる。気をつけろよ。」

 

 

次はサツキへの体当たり。

そして攻撃のあとも、すぐに次の攻撃につなげてくる。

回避はできても、攻撃できないのでは意味がない。

サツキも比較的安全な後ろ足などを切っているが、ダメージは十分じゃないだろう。

 

 

「なんか大きな攻撃をしたいなぁ・・・。」

 

 

いや、まてよ?

 

 

「サツキは後ろ足ばっか切ってる?

ひょっとして・・・。」

 

 

後ろ足、か……。これは賭けかもしれない。

でも、やってみる価値はあるかも・・・。

 

 

「セリアさん、気を引いてください!」

 

 

セリアさんに声をかける。何も言わなくても、セリアさんは私を見て何か感じてくれたらしい。半ば強引に突っ込み、攻撃を加える。

一旦距離をとったジンオウガは、あの電撃の玉を繰り出す構え。

セリアさんは体制が悪いけど、そっちはミルさんが守ってくれることを信じた。

無理やり突っ込む。

 

 

「カンナ!」

 

 

というサツキの呼びかけも無視して、とにかく走る。そして、懐に潜り込んだ。

ピカピカと光る虫がブンブン飛んでいる。

 

ビリビリと感じる電気。

 

 

「うっとおしい!」

 

 

叫びながら振り払う。そのまま後ろ足を視認。

やはり、サツキの攻撃でだいぶ痛々しかった。細かい傷が大分固まって付いている。そこに、双剣の解放を持っていく。

鬼神化に一瞬でなり、思い切り切りまくった。

 

 

途端、悲鳴をあげてジンオウガが転倒する。

 

 

「皆さん、早く!」

 

 

4人が同時に追撃体制に入る。ジンオウガは体制を整えようとしたが、サツキが思い切り頭を後ろから殴ったせいでまた転げた。

 

 

「そのまま、ゆっくり転がってなさい!」

 

 

眩しい光。さらにサツキの閃光玉での追撃だ。

サツキが後ろからしか攻撃できない、ということは、モンスターの後方にはダメージがたまりやすい、ということだ。そもそもこいつの尻尾を切った時も、そうだった。

 

 

背後は意外と弱点だった。

 

 

ともかく、これで大きな攻撃を与えられただろう。

 

またジンオウガは光玉を打ち出してくる。これもそう。私たちを追ってくるなら、もっと引きつけてーー。

 

 

「おりゃ!」

 

 

かわす。

 

 

よし。いい調子ではないか?前のディアブロスよりは戦える。

1年前までは手も足も出なかったのに。

ちょっとは私も成長したのだろうか。

 

だが、体制を整えて驚いた。

 

 

「そんな・・・!」

 

 

雨の中、光の帯がジンオウガに向かっていく。

青白い光の帯に目を凝らすと大量の虫が見える。それが、吠えるジンオウガに真っ直ぐに向かっている。

 

 

「攻撃だ!」

 

「いや待ってください!」

 

 

我に返ったミルさんの叫びを、サツキが遮る。

そう、ここで攻撃すると、前のサツキみたいになるかもしれない。

さらに集まっていく虫を見ながら、私たちは手が出せないでいた。

 

途端、雷がジンオウガの周りに落ちる。

バチバチと光る電気。

 

 

「白い・・・!」

 

 

背中は輝く白色だった。

 

 

「もう・・・そんなんになったらくらえないじゃんか・・・」

 

 

ここからはマジで集中しなくちゃ。

死ぬ。一歩間違ったらほんとに死ぬ。

 

 

そのまま、向き直ったジンオウガ。

 

 

「来る・・・!」

 

 

セリアさんの方だ。そのまま、飛びかかる。

明らかに前より速い。

 

 

「ほんっと、まだ上がるのか・・・!」

 

 

セリアさんはギリギリで回避。したはずだった。

そのままセリアさんが倒れこむ。

 

 

「な・・・!」

 

「セリアさん!」

 

 

サツキがとっさにジンオウガを誘導。

私はセリアさんの方へ向かった。

 

 

「大丈夫ですか!」

 

「うん、大丈夫!

でも・・・気をつけて、体が痺れてる。

周りの電気、尋常じゃない。」

 

 

セリアさんは立ち上がったが、まだ動きが硬い。サツキは大きく距離をとってかわしているけど、ギリギリでかわすとこうなるのかもしれない。

 

 

 

「・・・よし、いけるよ、もう!」

 

「セリア!行くぞ!」

 

 

セリアさんとミルさんも加勢に向かう。

私は、ジンオウガをじっと見据えた。

 

 

「やってやる・・・!」

 

 

このままでは、うまくいかないかもしれない。

相手はさらに強化された。

ディアブロスと同じくらい速く、そして電撃を持っている。

 

じゃあ、私にできることってなんだろう?

 

 

「カンナ、どしたの?!」

 

 

サツキが近くに寄ってくる。

 

 

「うん、サツキ。少し時間を稼いで。」

 

 

私は、3人がジンオウガの攻撃をかわすのを眺めながら、それに目を凝らした。

 

ベガさんも確かこうやっていた。

 

私は、大した力もないけど、今こいつを倒すためには、大した力を持たなきゃいけない。

 

あの力が、私は欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゾーンゾーンゾーンゾーン......」

 

 

みんなが時間を稼いでくれてる間に、何とか入れないだろうか。みんなを助けるために!

 

でも、その期待とは裏腹に、全く変化はない。

 

 

「・・・ああ、もう!なんで入れないのよ!」

 

 

ゾーン。

ゾーン。

ベガさんはこういう状況の中で入っていた。

前と何が違う?あの時を思い出せ、私!

 

 

 

「カンナ!考えるな!」

 

 

 

不意に、サツキが大声を上げた。

 

 

「考えるなんてアンタの性に合ってないわ!

・・・気にしなくていいから!アンタなんかいなくてもこんなの余裕だし!

だから、鬱陶しい同情とか心配とかしないでよね!」

 

「舐められたもんだよねーほんと、カンナちゃんなんかにさ。

新人さんはおとなしくしててくれていいんだよ!」

 

「セリアの言う通りだな。

超えてきた死地の数が違うんだよ!」

 

 

ミルさんのランスがジンオウガの胸元に刺さる。

革の手袋・・・そっか、電気を防ぐために!

 

 

 

 

ハンターっていうのは、モンスターを狩ってみんなを守る仕事。

だから、みんなは、一つ一つの戦いに頭と体を全て捧げる。

たった4人の命で何人もの人々を救う。

それはそういうことなんだって、教えてくれた仲間たち。

 

 

そして、私にできること。

 

そっか、そうだよ。

経験も実力も足りない。

 

だから、楽しむ。

 

 

そうだった、忘れてた。

私は、笑顔を今、失っていた。

何のために、私はハンターになったんだっけ。

 

 

「・・・スゥ。」

 

 

私は、目を閉じた。

みんなのために?

それだけじゃなかった。

 

異変解決?

ううん、もちろんそれだけならかっこいいけど。

でも、私は大好きなことを、精一杯楽しみたいって、そう思ったから。

だからどんなことがあっても、ここまできたんだから。

 

 

 

なんとしてもーーー。

 

 

 

こいつを、狩ってみせる。

 

 

 

 

 

 

ドクン、と心臓が震える。

 

血が送り出される音だ。

ゆっくりと目を開くと、少しずつ、全てが遅くなっていく。

頭が冴える。

血がまるで、身体中をめちゃくちゃに速く動いているような感覚。

 

さっきまでの喧騒がない。

雨音も、雷の音も、全部消えてる。

全部聞こえない。

 

でも、わかる。

ジンオウガの周りでは雷音が響いてるし

足元の水溜りは降って来る雨を跳ね返している。

聞こえないけれど、鳴っているのはわかる、不思議な感覚。

 

双剣を取り出す。

軽い。

まるで持ってないみたいに軽い。

何とも懐かしい、この感覚。

 

 

この戦いをーー。

終わらせる!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ジンオウガの背中が白く輝いている。

 

 

「食らったらダメとか、無理な提案してくれるじゃない・・・!」

 

 

見る限りだけど、もう私たちが食らえる電圧じゃなさそうだ。多分食らったら死ぬんだろう。

この前のディアブロスはかすり傷くらいならなんとかなった。

でもこれはどうにもならないっぽいわね。

掠っても多分感電して終わる。

 

集中力を高める。

頭の中から余計な思考を追い出した。

 

 

「皆さん、集中しましょう!」

 

「りょーかい!」

 

 

地面を叩きつけ、私たちを押しつぶそうとしてくる。速い。ディアブロスほどのサイズではないから、あれほどではないけど、速さだけ見たら同格だろう。

 

それに、何より恐ろしいほどの瞬発力だ。

 

本来、スピードというのは動く速さのこと。

だが、狩りに慣れれば慣れるほど、こちらについてはついていくのも容易になる。

私たちもより速くなっていくからだ。

だが、慣れにくい動き、というのもある。

 

それが瞬発力の高いモンスターの動きだ。0から突然100まで速くなるような相手は、普通の人間の反射速度を超えていることも多い。

 

慣れればそれにもついていけるらしいが、そこまでに辿り着いているハンターは残念ながらここにはいない。

 

結果的に今やってるのは単なる予測の回避。

 

それにまで反応されたら・・・

 

 

もう死ぬしかないってわけね。

 

 

ジンオウガが空中で回転しつつ、押し潰そうとしてくる。うまく回避したが、腕に電気が流れてきた。痛みが走る。

 

かわしても、周りの雨から電気が流れ込んでくるのだ。そのまま、ジンオウガが吠える。

 

 

「・・・!」

 

 

周りに雷が落ちてきた。

 

 

「いや、無理……!」

 

 

はっきり言って、雷など避けられない。

全身をなにかが駆け抜ける感覚。

 

 

「いったい!!」

 

 

いよいよ食らってしまった。

 

まず・・・

 

体が宙を舞って、叩きつけられる、はずだった。

 

ふわり、と誰かに抱えられる。

 

 

 

 

「大丈夫?」

 

「カンナ……あんた……。」

 

 

 

 

赤い目になったカンナを見上げていた。

 

 

「・・・かっこいい、わね。」

 

「まあね。」

 

 

前に、こんな風にカンナを抱き上げたことを思い出していた。

 

うん、あの時のカンナはほんと弱かった。

でも、今なら。今のあなたになら、任せられる。

 

 

「行ってきなさい・・・あとは、任せたわよ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

セリアさんが前に出ているのがまず私には見えた。

 

ジンオウガはセリアさんに向かって片手を振り上げる。私はとっさに間に割って入った。

 

ゆっくりに見えるジンオウガの動き。

足の裏が迫っている。

セリアさんの体を少し押し上げてから、一気に足に力を込める。

そのまま攻撃の範囲外へ一気に出た。

 

セリアさんが軽い体で助かった。

 

 

「カンナちゃん!」

 

「ここは私に!」

 

「・・・!わかった!」

 

 

セリアさんはそのまま離れていく。

サツキをお願いします、とすれ違いざまに話しておいた。

 

目の前の相手に向かい合う。

先ほどよりずっと遅く見えている。

まずは電気の玉を発してくるが、その曲がり方の具合もよくわかる。

 

一気に距離を詰めて斬りかかる。

心地よい切れ味。

 

さっきと全然違う。剣に力が入る。

 

切っ先から電気が流れ込んできてしまうのを防ぐために道具袋を手袋みたいにしてきた。

 

その分握力はいるけれど、今の私なら大したことはない。

 

そのままジンオウガは、全身を使った回転攻撃。

でもそれも見えてる。後ろに一歩下がると、目の前を尻尾が通過した。

 

前に切って、短くなった尻尾がここで力を発揮してくれた。

 

わずかな足首のひねりだけでそのまま前へ出る。

全身に力が思うようなタイミング、思うような力で入る。血は脳にいっているイメージなのに、体も暖かい。

そのまま、落ちてくる雷をかわして、飛び上がる。頭に生えた短い二本の角を、思い切り切りつけた。

 

 

「ガァァァァァァァァ!!!」

 

 

角が飛ぶ。

叩き割った角の断面が赤く滲んでいるのが見えた。

 

手なんて抜かないんだから。

 

ジンオウガが苦しそうにのけぞったのをみて、そのまま顎を剣のつかで思い切り殴りあげる。

 

そのまま、前足をほぼ同時に切りつける。

すぐそこに雷が落ちる。

 

・・・

 

でも、自分のところに落ちないのも何と無くわかる。頭を浮かされ、前足を切りつけられたジンオウガは完全に体の前側が浮いている。

 

なら、これならどう?

 

即座に鬼神化。そのまま、後ろ足へ猛スピードで向かった。

 

 

「えい!!!!」

 

後ろ脚を切ってしまえば、そのままジンオウガの体が宙を舞う。その浮いた胸元、今見えている限り一番弱いところを狙って。今出せる最速で剣を振り続けた。

 

 

「吹き飛べぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

血が吹き出す。

だがジンオウガが倒れてもやめない。

 

 

 

起き上がろうとしているのだろうが、意味がない。

起き上がるな。

これまでなんども倒れたのは私たち。

 

もう二度と、お前らを起き上がらせはしない。

 

二度と、お前らにやられたりなんかしない!!

 

 

 

 

「はあああぁぁぁ!」

 

 

 

私は更に剣のスピードを速めたーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさん。」

 

 

我に帰ると、目の前にサツキの顔があった。

 

 

「・・・サツキ?」

 

 

息が苦しい。

それと、腕がやけに痛む。

 

 

「えっと、どうなったんですかね・・・?」

 

「おっと、動かないでね。あんた今、体ぶっ壊れそうでしょ?

ゾーンで鬼神化するなんて・・・。

無茶苦茶ね、あんた。」

 

「カンナちゃん、ほんとすごかったよー!」

 

 

ふと目をやると、ジンオウガが仰向けに倒れていた。

周りのススキが一面なぎ倒されている。

 

 

「勝ったん、ですか?」

 

「ええ、どっかの誰かさんがやったみたいよ。」

 

「さ、帰ろう。みんなが待ってるからな。」

 

「そう、ですね・・・。」

 

「立てる?

って、無理そうね・・・。しゃあないわね。」

 

「カンナちゃん、体の力抜いといてね!!」

 

 

セリアさんに抱えられてサツキの背中に放り出された。

 

 

「軽っ!」

 

「やだなぁ、褒められてる?」

 

「筋肉全然ついてないわね、あんた・・・」

 

「へへ・・・。」

 

「カンナ。」

 

 

ミルさんの声に呼ばれて振り向くと、珍しい先輩の笑顔があった。

 

 

「ありがとう。」

 

「いやいや・・・。」

 

「・・・あいつも喜んでると思う。」

 

「そう、ですね。」

 

 

ミルさんはやっぱりすごい人だ。

 

だって・・・私は大好きだった人が死んだ後にそんな顔ができる自信はないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サツキに背負われて村へ帰る途中、セリアさんが口を開いた。

 

 

「そろそろ『血陰』来てるかなー?」

 

「あぁ、来てると思うがな。」

 

 

ミルさんが答える。

 

 

「そんなにひどい嵐だったんですかね・・・?」

 

「・・・ま、メゼポルタからだとあの霊峰のあたり超えなきゃいけないからね。

現にあっちからの荷車なんて長らく来てないってリュウが言ってたし。」

 

 

サツキが答える。

 

 

「まあ、でもそのチームならアマツマガツチも多分狩れるよねー?」

 

「多分、ですけど。」

 

「なら、私たちの出番はここで終わり?」

 

 

セリアさんの疑問は正直私も持っていた。

 

 

「まぁ、あの人たちなら多分大丈夫だし、一番合理的な判断はそれだろうな。」

 

「ってことは、あとは信じるだけ・・・。」

 

「そういうことかー、なら私ちょっと休みたいなぁ。ディアブロス戦から一回も休んでないもん。」

 

「確かに、本当にきつい二連戦だったからな・・・

温泉に入って治癒したいとこだ。」

 

「あの温泉あっという間に疲れ取れますからね・・・。

私もお酒ちょっとのみたいですs…。」

 

 

 

 

ドシャーン!

 

 

 

 

すごい音がした。

 

 

「セリア!!!」

 

「うん!!!」

 

 

二人が武器を取り出す。

振り返ると、森の奥の空に、青い雷が落ちている。

 

 

「ちょ……。まさかさっきのやつ!」

 

「そんなはずは・・・!」

 

 

そうセリアさんが言った後だった。

今度は別方角で青い雷。

 

 

「一体・・・!!!」

 

「まさか、まだ別の個体が!?」

 

「そんな!」

 

 

それはまずい。

この状況じゃ!

 

そして、今度はまた別のところで雷の落ちる音。

 

 

「走れ!」

 

 

ミルさんの合図に合わせて、セリアさんも武器をしまう。

 

 

サツキがスピードを上げる。幸い、何も現れない。

5分ほど走って、無事に村の門にたどり着いた。

 

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

 

肩で息をするサツキを尻目に、振り向く。

 

 

 

村の前の森のあちこちの空から、青い雷が落ちている。それだけではない。獣の唸り声が、鳴り響いていた。

 

 

「嘘でしょ……。」

 

「これ全部、ジンオウガ?」

 

 

少なくとも、10体はいる。

異様な光景に、私たちは唖然とするしかなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私たちは、そのままギルドまで走った。

 

状況がわからなかった。

必死に狩ったモンスター。それと同じ雷があんなに?

 

 

「そんなはずは・・・!」

 

 

カンナを背負ったままギルドへ向かう階段を登っていく。

まさか。あまり考えたくない、最悪の状況が思い浮かぶ。

あの量のジンオウガ。

 

そんなの、相手にできるはずがなかった。

 

 

「とにかく、リュウに相談だな。」

 

 

ギルドのドアを開けた。中で、慌ただしく動く人々。

 

 

「リュウはどこだ!?」

 

 

ミルさんが職員さんを捕まえて聞く。

 

 

「あ、ミルさん!!

ってことは、紅葉の皆さんまで!

よかった、生きてる・・・」

 

「今はそれどころじゃないだろう!」

 

「あ、はい!

リュウさんなら、今あっちの応接室で、お客人と・・・。」

 

「あ、ごめんね。

リュウくんとの話、終わったわ。」

 

 

職員さんが応接室を指差そうとした瞬間に、声がする。

透き通るような、高い声。

 

 

「...............!!!」

 

 

雨音の中でも、はっきり聞こえるその声は、とても懐かしかった。

 

 

「ソニアさん、いいんですか?

せっかくの久々の再会なのに。こんな普通で。」

 

「いーからいーから。」

 

「・・・君達が、紅葉か。」

 

「ホームズさん、そんな睨みつけちゃダメだって。

さて、皆さん。待たせたね、ほんとよくやったよ。

・・・ね、サツキちゃん。」

 

 

あっけにとられる私たち。

リュウに続いてドアの向こうから歩いてくる二人に、完全に空気負けしていた。

 

一人は、明らかにおじいちゃんにしか見えない男性。

オレンジ色だけれど、いつものマントを羽織っている。

切れ長の目に、白いひげ。灰色の髪の毛。

 

明らかに普通のハンターとは雰囲気の違う男。

『忍面』ーーー。

 

私の師匠でもある人。

誰よりも気高く、誰よりも強く、そして誰よりも、ハンターに「命」を賭ける男。

ハンターランク現在第3位のオールラウンダー。

 

 

「あなたが、ホームズさん、ですか?」

 

 

ミルさんが言う。

 

 

「いかにも。噂は聞いているぞ、『紅』。ホームズが私だ。」

 

「ってことは、もしかしてあなたが・・・?」

 

 

もう一人は「血陰」の片割れ、ということ。

第3位に釣り合うハンターは確かにこの人しかいない。

長い紫の髪が、黒い兜の合間からのぞいている。190センチはあろうかという長身に抜群のスタイル。

背負った武器は、まごうことない穿龍棍だった。

 

 

「久しぶりだね、サツキちゃん。」

 

 

そして懐かしい声で私の名前を呼ぶ女性。

 

 

 

 

誰もが、彼女のことをこう言う。

 

<もし彼女が男だったらーーーーーー。>

 

 

歴史上、最速でオールラウンダーの称号を手にして、あっという間にハンターランク「第2位」まで登りつめた天才。

クエストの達成数も他を圧倒し、何度も世界の数々の村を救ってきたハンター。

 

 

「姉さん・・・。」

 

 

私の姉、ハンターランク985。

『月光』ソニアもそこにいた。

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