「おい!もっとスピードは出ないのか!!」
「やってるにゃ、ミルさん!これ以上は無理にゃ!」
「このままじゃ荷車がもたん!おい、カンナ!そこちゃんと押さえとけ!」
その言葉と同時に、荷車が大きく揺れた。
「ひ、ひいいぃ!」
しっかりと捕まっていないと振り落とされそうだ。
砂原での任務を終え、帰途に着いた私たち紅葉。
だが、砂原を抜け、山に入った途端、大嵐に見舞われた。
最近、雨が多いな、とは思っていた。
だけど、今回の嵐は明らかに異常すぎる。
風も雨もめっちゃ強いんだけど…
雨は横殴りなので、ほとんど屋根が意味を成していない。吹き込む雨に打たれ、私たちはユクモ目指して、尾根を進んでいる。
崖の下には川。いつもは小川みたいなのに、今日は濁流になってしまっている。
風と雨で目が開けられない。
全く、最近の天気ときたら。
ここまでは初めてだけど、最近ユクモ地方の天候は安定しない。嵐が多いし、それに合わせてなのか、モンスターの活動も活発になってる。
ハンターとしては仕事が増えて嬉しい悲鳴なんだけど…
必死に目を開けると、遠くの山並みがうっすらと見える。
目に入った雨を拭って目を凝らすと、信じられない光景が見えた。
「………!!!?」
悲鳴すらあがらなかった。
山並みの一つ、一番高い山。
普段はユクモ村からも見える。真っ白な雪に一年中閉ざされた山。誰もその実態はよく知らない。
立ち入ることを許されているのは、村長と、村長が認めた者だけ。
霊峰と昔からユクモで呼ばれ、祀られてきた山だ。
だが、目の前の異変は明らかだった。
その山の頂上が見えない。
ーーー竜巻だ。
それも、山頂からその2割程までを覆うほどの、超巨大竜巻。それが、山頂のあたりに、まるで白い柱のように、雲まで立ち上っているのが見える。
「セリアさん、あれ・・・」
「うん・・・見えてるよ。何だろう。」
あまりの驚きに、言葉が出ない。口がパクパクしてしまった。
だが、突然、森の中に入って、その光景は見えなくなった。
「ダメにゃ、たまらないにゃ!そこの洞窟へ!」
私たちの荷車は、駆け込むように洞窟に入った。
すぐに降りるよう指示される。
屋根があるので、雨は止まったが、身体中ビショビショ。
秋の空気が冷たい。
完全に、風邪を引きそうだ。
「もしもし、リュウさん?もしもし?ダメだ、通信も届かない。……仕方ない、ここで待とう。雨が収まるまで、荷車の毛布で寒さを凌ぐんだ。」
そもそも、その毛布だって濡れている。やばい。ほんとに寒い。洞窟の奥は、真っ暗だ。行くこともできない。
ーーー遭難って、こんな気分なんだろうか。
さっきの光景が頭を駆け巡る。
今でも信じられない。
あの山を覆うほどの竜巻。
「…まさか、ね。」
多分見間違いだろう。きっとそうだ、そうに違いない。
「ううー、寒いよ!」
「セリア、もう少しの辛抱だ。頑張ろう。」
だけど、4人で震えて、30分後。
雨は、嘘みたいに晴れ上がった。
「馬鹿な・・・一体どういう。」
「それだけじゃないよ、ミルさん。さっき、カンナちゃんと見たんだけど、霊峰に巨大竜巻が見えてさ?」
「竜巻?」
「そう、霊峰の半分くらいまで覆うんじゃないかっていうくらいの竜巻。」
「そんなの、あるわけないだろう?」
…やっぱ、あれ本物?いやでも、まさか…
「私も見た、気がします。多分…。」
「・・・、とにかく、村に戻ろう。話はそれからすればいい。頼む。」
水浸しの道に、燦々と照る太陽。
何が起きているのかわからない。
でも、脳裏によぎるあの強烈すぎる光景だけが、この後に起きる事態があまりよくないことを連想させていた。
しばらく待っていると、リュウさんと事務の人たちが入ってきた。
「待ってました、ではお掛けください。」
席につく。
「では、話します。先程の雷雨での対応、お疲れ様でした。幸い、ユクモ含め、近隣の村に死傷者はいません。
…ですが、最近の天候の不安定さは無視できないものがあります。それに、報告があります。先程の雷雨の最中、霊峰に巨大竜巻が観測されました。」
「竜巻?」
やっぱり…あれは本物なの?
恐怖がよぎる。あんな竜巻、もろにくらったら…
「あ、あの…私とセリアさん、見ました。」
「ほんとに?」
「ほんとです、ベガさん。霊峰のてっぺんから2割とかまで見えなかったですもん。」
「そして、今の霊峰を写した写真です。」
職員の人が見せてくれた写真。
ブレが激しく、わかりにくい。
ただ、てっぺんの方は何か靄みたいなものに覆われている。
「天候が不安定で、無人探査機でもこれが限界。ただ、何か霞か雲のようなものに覆われていることだけは確かですね。」
「一体、何が起きてるのー?」
セリアさんの声は随分気楽だが、それ以外の人たちはそうではない。
みんな、異常事態を確信している。
聖なる山を覆った異常な竜巻。何もないわけがない。
何かが、起きている。
「謎です。ただ、この件についてはギルドで調査を既に開始しています。メゼポルタにも報告済み。ただ、皆さんの力が必要になることもあるでしょうし、モンスターの活動もより活発になるでしょう。くれぐれも、気をつけてクエストを行なってください。」
「一つ案が。」
手を挙げたのはミナミさん。
「我々で、調査チームを派遣すればいいのでは。そうすれば、事態の把握もより早くなるはずです。」
「そうね、それがいいかも。」
ミルさんも続く。
確かに、その方がいいかも…
「いえ、それはできません。」
しかし、リュウさんは切り捨てた。
「なぜだ?これから手遅れになるかもしれないんだぞ。」
「それでも、事態がきちんと把握できるまで、あなたたちを送り込むわけにはいきません。」
「おい、若造。お前、状況わかってるのか?」
「なんと言われようが、この状況下で派遣はできません。」
チッと舌打ちをして、ミナミさんは引いた。
「け、けんかはやめて、ね?」
セレオさんが助けてくれた。
喧嘩してる場合じゃないのは間違いない。
「霊峰・・・あそこに入ったことがある人も少ないですし、きちんと準備が整えばそれも考えます。ですが、現段階での派遣は危険すぎる。そう思います。」
「そうは言っても、ねえ?」
集会を終え、階段を降りているとベガさんが言い出した。
「確かに危険ではあるが、あれは事態を甘く身過ぎている面もあるかもしれないな・・・」
ミルさんも言った。
「彼、若いからね。でも、取り返しがつかなくなってからじゃ、ね?
…ま、今はできることをするしかないけどね。俺らはこれから遠征だから、そんじゃあねー」
そう言って、白光の4人は去って行った。
みんな不安な顔をしている。
このままでいいのだろうか…?
「私たちも、明日から仕事だからな。とにかく、今日は休もう。」
そうして、私たちも解散した。
夜になって、不思議と、森が見たくなった。
村の入り口に向かう途中も、みんなが家を片付けている。この村の人たちは、本当に自然と向き合うのが上手いのだ。私たちを信じてくれてるから、普通の生活をしている。
それに、応えなきゃいけない。
私は、村の入り口の階段に腰かけた。
森は真っ暗。風が吹くたびに、ザワザワと揺れている。
この2ヶ月ほどで、すっかり紅葉は散ってしまった。夜は冷え込む。さっきの雨で、よく風邪引かなかったな。
最近のことを、思い出す。
やけに活発に活動するモンスター。
私としては、狩りが捗るし、悪くないのだけれど、どうも引っかかる。
そして、竜巻。確信した。何か、異変が起きている。
とにかく、普通の人に被害が出なければいいけど。
その時だった。
村の入り口に人影が現れた。
さっと身構える。
「た、助けてくれ!」
でも、それは男だった。私と年は同じくらいだろうか。
「ど、どうしたんです?」
「ここから少しあっちにいったとこに住んでるんだけど、突然、でかいイノシシが・・・作物や家を荒らされてる!頼む、何とかしてくれ!」
「と、とにかく、上にギルドがありますから、そちらへ!」
男を促して、上に走らせた。
頭をフル回転させる。
どうする?これは緊急事態。一刻も早く行った方がいいのでは?それに、多分そいつはドスファンゴ。ここらじゃ有名な巨大イノシシだ。庶民の手に負えるはずがない。
幸い、防具も古いやつだが身につけているし、武器も一応双剣を握っている。
…とにかく先に向かおう。
ミルさんやセリアさんが後から来てくれればそれでいい。
夜の真っ暗な闇を、私は駆け出した。
そして、ここから異変は始まる。
私たちの長い長い物語は、ここからだった。
キャラ紹介!
リュウ
サツキの幼馴染のギルドマスター。とある事件で有名となり、この若さでユクモギルドを統括する。
青い長髪。実況動画見ると、同じ名前の方がやってます。それと同じイメージです。
投稿大変遅くなりましたね…。
はい、しゃーないです。学校大変なんで、大目に見てください…。
これからもマイペースにやっていきます。
失踪だけはしないと宣言はしておきますね…。