「グイャァァァァァッ!!」
「………ッ!!」
―カチッ
…はっ!?どうしてナルガクルガが浮いたまま止まってるの…!?
「間一髪間に合った様ね」
振り返ると、メイド服姿の女の人がいた。
「えっと…あなたは?今どういう状況なの!?」
「私は十六夜咲夜。今は時が止まっているわ」
時を止める!?そんなの師匠でも出来ないのに…
「あなた、格好からして外から来たばかりなのかしら?」
「…ええ。ついさっきよ」
私は回復魔法を自分にかけ、刃が砕け散ってしまった剣を鞘に仕舞う。
「あなた、武器はそれしか持ってないのかしら?」
「ええ。でも大丈夫よ。今から作るから」
「作る…?」
よく分からない顔をする咲夜さんをよそに、私は炎を出す。そのまま維持させ、今度は鉄の双剣を作り出し、2つを融合させる。
「うーん、やっぱり灼炎のロガー辺りが限界ね…どうしたらもっと上手く出来るのかしら」
「あなた、魔法を使うの?」
「ええ。それで、これは切りつけても大丈夫なのかしら?」
ナルガクルガの前に立ち、剣を構える。
「切りつける分には構わないけど、ダメージは入らないわよ?」
そうなのね…無駄な攻撃は剣の耐久性的にも避けたい。剣を生成する魔法は一見便利に見えるが、剣の性能も、耐久力も鍛冶屋の剣に劣り、その場しのぎにしかならないものだった。手数の多い双剣だから余計だし。
一度ナルガクルガから離れ、特製の鬼人薬と秘薬を飲み体制を整える。
「準備が出来たようね。行くわよ。3、2、1…」
―カチッ
咲夜が懐中時計の竜頭を押し込むと、再び時が流れ出す。
「グイヤァッ…!?」
絶対に仕留めたと思っていた人間が完全復活していることに戸惑う声をあげたナルガクルガは、もう一度飛びかかりをするべく力を溜めようとするが、突如前足にナイフが突き刺さる。
「させないわよ」
どうやら咲夜は戦うメイドだったらしい…両手にナイフを持ち、戦闘モードに入っていた。
「牽制を頼むわ!」
さて、さっさと片付けましょうか。
NowLoading…
「オラッ!」
「グオァッ…!」
レイが離脱してから約5分。やっとイビルジョーは倒れ伏した。
「全く、てこずらせやがって…」
俺は、倒れ伏したイビルジョーに接近する。
この時、疲労からか俺は本当に絶命しているかどうかを確認するのを忘れていた。次の瞬間―
「グオアアアアッ!!」
「ッッッ!?」
立ち上がった絶命したはずイビルジョーの咆哮で硬直した俺に、イビルジョーが龍ブレスを放つ…ことは無かった。
「スペルカード発動。神槍『スピア・ザ・グングニル』」
覚悟したその時、上空から凛とした声と共に紅い槍のようなものがイビルジョーに直撃し、吹き飛ばされていく。
「おいおい、嘘だろ…!?」
「思ったより軽いのね、そのゴーヤ」
再び同じ声がし上を向くと、先程の槍を手元に戻した幼い少女が降りてくる。その少女の背中には大きな翼が生えていた。
「お前は誰だよ!?」
「私は誇り高き吸血鬼にして、紅魔館の主。レミリア・スカーレットよ」
自分を吸血鬼と名乗ったその少女は、幼さに似合わぬカリスマ性溢れる威圧をイビルジョーに向ける。
「グルァッ…!!」
そんなことを気にも止めず、立ち上がったイビルジョーは禍々しい紫色のオーラを纏い、フラリフラリとこちらに向かってくる。
その様はさながらゾンビの様だった。
「こいつ…チッ、近づかないでおけよ」
「近づかなければいいのね?そのくらい朝飯前よ」
何をするつもりか、薄いカードを取り出し再び飛び上がる。
「しっかりと避けて頂戴ね?スペルカード発動!紅符『スカーレットシュート』」
先程と同じ〈スペルカード〉を発動すると、小さな体から大量のエネルギー弾の様なものがイビルジョーに放たれる。当然それは、イビルジョーの近くにいる俺にも向かってくる。
「おいおいおい!?」
慌てて飛び上がり避け始める。この攻撃には人がギリギリ抜けられるぐらいの隙間が作られていて、必死に飛び回ることでやっと避けることが出来る程だった。
「グオァッ…」
イビルジョーは当然その巨体のせいで避けることが出来ず、雨あられと降ってくるエネルギー弾をもろに食らっていた。
「グオァァァッ…!!」
最後の気力を振り絞ってレミリアにブレスを浴びせようとするが、当然そんな事は俺がさせない。
「狩技…『鏡花の構え』!!」
本来この技はモンスターの攻撃に対し反撃でカウンターを放つ技なのだが、こうやって敢えてレミリアの攻撃に当たれば…
「オウラアァァァッ!!」
イビルジョーに攻撃を当てることが出来る。
胸に当たった攻撃は、弱っていたイビルジョーにとどめを刺すのには充分の威力だった。
「ゴアアアアッ…」
イビルジョーは、今度こそ倒れた。
「もう生き返ったりしないよな…」
生肉を出してみたりしたが、イビルジョーが立ち上がることは無かった。
「はぁぁぁぁ…死ぬかと思ったぜ。ありがとうな」
「そうよ、感謝しなさい!」
…さっきの溢れ出ていたカリスマ性は何処に行ったんだよ…
「すまん、仲間の援護をしに行かないと…」
―ドドドドドドドド…
突如轟音がし始め、した方を向くと、レイがナルガクルガに乗り、ナルガクルガがレイを振り落とそうと全力で走っていた。…こっちに向かって。
「止まれって言ってるのよー!?」
「あれが仲間?」
「何やってんだよ!?取り敢えず退避するぞ!」