不殺を貫く魔術師の放浪日記   作:春野龍助

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満腹になり、太陽の暖かさで眠たくなる生徒も何人か居たのは予想通りだったな。

だからこそ午前中は座学にしたんだが、アレ程昼休みに遊んでて元気で居る生徒が居たのは驚きだし、こんな奴らを見てると戦争が起こった事を忘れそうになってしまうもんだな。


西暦2025年6月5日:講義にて④

昼休みが終わり、俺達と生徒は午前と同じ場所に集合した。

このまま座学を始めても良いんだが、流石に頭に入る程元気な奴は居ないだろうと思い方向性を変える事にした。

 

「さて、こっから後半戦になる訳だが・・・折角の綺麗な花畑に川、少し離れれば森があるのにここで座学ってのもつまらないもんだ。そこで、俺達はとあるゲームをしようと思う」

 

そう言うと、ダルそうにしてた学生や眠たそうにしてた奴も反応を示した。

分かりやす過ぎるだろお前ら。

 

「因みに、頑張った人には賞品があるので是非狙ってみて下さいね!」

 

「ル-ルは簡単、今から俺達は10分待つから全員隠れるか制限時間までに逃げ切れば良い。もちろん魔術使用は認めるし場所の制限は無しだ」

 

追加で言うと、制限時間とはこの講義が終わる時間までである。

 

「隠れて見つかっても私達が触れるまではアウトにならないので、私達に目くらましでも攻撃魔術でも使って大丈夫です!」

 

「ただし捕まった場合は此処に戻って制限時間か皆が捕まるまで教師による特別授業を受けてもらうから注意しろよ」

 

簡単に言えば復活なしの隠れ鬼ごっこという訳だが、授業や賞品と聞いたら大半の生徒がやる気になった。

 

「最後に、賞品をもらう人数や条件は非公開なんで自分で考えてみてくれ」

 

「説明は以上です!でな皆さん用意してください!!」

 

そう言った途端に立ち上がり話し声が飛び交っていた。

 

「やってやるぜ」 「楽勝だな」という声がちらほら聞こえたが、さてどうだろうな?

 

「10分経ったら合図としてここから上空に信煙弾を発射するから見逃すなよ。それじゃ・・・始め!」

 

宣言と同時に蜘蛛の子を散らすかのように色んな所に逃げ出した。

やれやれ、さっきまでのぐったりしてた奴らとは思えない行動力だ。

 

「ルーファス、手筈通りに行くぞ。上手くすれば30分で終わるだろうしな」

 

「了解しましたよご主人」

 

と、会話しつつ準備体操をして体を整える。

時間はもうすぐで10分経とうとしていた。

 

「良し、それじゃ行くとするか」

 

「はい!」

 

お互いに準備を終えると俺達は”仕掛け付き信煙弾”を上空に発射した。

そして、魔法陣が作動し、大規模な結界を作った。

 

これが俺とルーファスが昼休みに用意していたものである。

 

円になるように精霊の加護を得た札を置き、信煙弾を媒

体として発動する。

 

これによって結界の「外」と「内」の二手に分かれて探す事が出来るという訳だ。

 

分かり易く例えれば札が爆弾で信煙弾が遠隔操作のリモコンという所だな。

 

一度結界に閉じ込められれば出る事は不可能だろうが、それほど大規模な結界というのも当然何時間も持たないがその分学生では壊せない程の強度さを得ている。

 

上手く行けばこれで半分半分になっているんだが、流石にそこまでは行きすぎだろうと考えている。

 

「そんじゃ、俺が結界の外行くから内側を頼んだぞ」

 

「了解ですよご主人!」

 

二人でそう返事をすると一斉に上空に飛び、各自のペースで捜索を開始した。

 

魔力を目に宿し、光を操る精霊に力を貸してもらって反射を利用し景色を拡大させる。

結界が作動して戸惑っている奴も居れば頑張って逃げ切ろうとしている奴も居た。

 

ま、ルーファスの事だからミスはしないだろうが逃げ切れたらソイツは大した者だなと内心思いつつ結界の外側に逃げている奴らを探すことにした。

 

「制限されていない結界の外側か・・・一人じゃ面倒だな」

 

そう思った俺は錬金術で作っていたカードを使う事にした。

コイツは予め俺の魔力を宿らせている言わば「媒体」という奴なので精霊魔術だろうが召喚魔術だろうが使う事が出来るという優れモノ。

 

もちろんこのカードの魔力を俺に戻す事も出来るので回復薬としても使えるのである。

 

「来たれ、我が眷属・・・主の元に集いて並べ」

詠唱を終え、20枚のカードを四方八方に投げた。

 

講義では言い忘れていたが、詠唱とは簡単に言えば「言霊」である。

精神を集中するためだったりもするが、基本的には「言葉にも魔力を込め、精度や威力を上げる」というのが一般的だ。

 

そうすると、魔力の媒体だったカードが魔法陣となって光り輝き、次の瞬間に奴らが現れた。

これが召喚魔術であり、今召喚したのは俺が前から契約していた精霊である。

 

「よう、来てくれて助かったぜお前達」

 

「貴方様の呼びかけなれば、いつ何時でもはせ参じます。主。」

 

一斉に跪き、忠誠を誓って来る。いや謙虚なのは良いが正直言って俺はこういうのは苦手なのだ。

 

「それは助かる・・・が、今回はそこまで重大って訳じゃ無いから気軽にしてくれ」

 

取り合えず事情を話すと了承し、一斉に散って捜索を開始した。

 

「さて、ここまでは良いとして・・・後はもう一つの罠が作動するのを待つだけだな」

 

ルーファスが結界の札をしかける時、結界の外用にも札を幾つか仕掛けているので、掛かればすぐに分かる。

 

魔力は決して多くは無い方なのでこういった戦法は実戦でも良く使う。だが罠が全て作動した所で全員捕まえる事は不可能なのでもちろん地上に降りて探す事にする。

 

流石に人数を多くしたのか、開30分近くで4分の1は見つかっているらしい。

かれこれ俺も10人は軽く捕まえている。

 

大抵が魔術を行使しての保護色か透明人間になっていたので魔力を目に宿し光の聖霊術を使って千里眼擬きの魔術を使用すれば難なく破る事が出来た。

 

捕縛型の罠に掛かった奴も居たので結構楽に捕まえる事も出来たが、ここからただ探したり見つけたりするだけの鬼ごっこなので多少省く事にしよう。

 

結論から言えば、俺達は全員の生徒を捕まえる事が出来た。

 

逃げ足の速い奴や遠い所に隠れている奴も居て苦労はしたが、良く考えて行動している奴も居る事が分かって安心だ。

 

結構ギリギリであったんだが、ルーファス一人で結界内の奴ら全員を捕まえる事が出来たというのは相変わらず凄いと思う。

 

「よし・・・これで全員だな。」

 

生徒の表を見ながら点呼を取り、全員無事かどうかを確認する。

 

念の為行方不明者が出ないように何人かの教師は影から見守っていてくれていたが、それでも全員居て一安心だ。

 

「では改めて、隠れ鬼ごっこは私達の勝利となった訳ですがそれにしても皆さん隠れるのは非常に上手いですね!」

 

「確かに結構探すのに苦労したな・・・今回何故こんな遊びを提案したか分かってる奴も居ると思うが、これは午前の授業内容を出来るだけ聞いて応用出来ていたのかというテストと、実際の魔術師と今の生徒との実力差を教えるためだ。」

 

「要はこの経験を活かして、一層勉強をして頑張ってみて下さいという事ですね!」

 

「特に罠に掛かってた奴はもう少し頑張った方が良いかもな。」

 

「さて、お話もこれくらいにして・・・皆さんお待ちかねの賞品をお渡しようと思います!」

 

「結構これ目当てで頑張ってた奴が多かったからな・・・景品は全部で3つある。」

 

「努力賞、優秀賞、最優秀賞って感じですかね。」

 

「だな、それじゃ最初から最優秀賞の発表から行くとしよう。」

 

「では名前を呼ばれたらこちらに来てくださいね!コホン、最優秀賞に選ばれたのは・・・・・中等部2年5組のフォートレス・ロイさんです!」

 

一斉に拍手が飛び交いながら、フォートレスという少年がこちらにやって来る。

 

「最優秀賞の条件は”結界の外に入る状態で魔術を使わずに最後まで逃げ延びる”事だ。」

 

「何とこの条件に見合う生徒さんはフォートレスさんただ一人だけだったのですからすごいですね。でもどうして魔術を使わなかったのですか?」

 

「実は、もし魔術を使ったら逆に探知されそうという考えに至ったので敢えて使わず只管遠くに逃げて距離を取っていました。」

 

「確かに魔術での保護色で景色と同化する奴がほとんどだったが、そんな奴は高確率にで見つかっていたな。」

 

「という事は結果的にその考えで最後まで逃げ延びたという事ですね!おめでとうございます!」

 

「それじゃ最優秀賞を取ったフォートレスさんには俺達が特殊な方法でエンチャントを加えた魔導書を贈呈しよう。」

 

「こちらは一つだけ覚えたい魔術を想いながら本を開くと自然と習得が出来る優れものですが、一度使うと無くなるので注意です。」

 

この魔導書を作るのに半年以上掛ったが魔術の理論を全て暗記しているルーファスにも、魔力が低くてそもそも魔術をあまり使えない俺にも不要だったので賞品として渡すことにした。

 

結果的にフォートレスという少年は喜んでいたので良かったと思う。

 

「では次に優秀賞の発表です!優秀賞は・・・・・・・高等部3年2組のラークさんです!」

 

「優秀賞の条件は”罠に掛かっても脱出して逃げ延びる事”だったが、ラークさんは豪快にもそれを達成したという訳だ。」

 

「あんなの結構楽勝だったッスよ!」

 

「元気も性格も豪快ですね!では優秀賞を取ったラークさんには魔力を増強する腕輪と制御をサポートする指輪を贈呈します!」

 

「それじゃ最後の努力賞だが・・・これを取ったのは高等部1年4組のクレア・フォンデットさんだ。」

 

「条件は確か”結界内に居る状態で2回以上私達から逃げ延びる”でしたね。」

 

「良く逃げ切れたと感心するばかりだな・・・流石高等部に居るだけの事はあるという事だな。」

 

「お褒め頂き光栄で御座います。」

 

「では努力賞を取ったクレアさんには賞品として素早さを強化する指輪を贈呈します!」

 

「以上で全部言い終えたな・・・・これで俺達の講義は終わりだ。実戦では無いにしても本物の魔術師とはどんな人を指すのか、自分の限界は今何処なのかが分かった奴も居ると思うが、この経験をどう活かすかまでは俺達は何も言わない。」

 

「ただ、自分なりの努力で是非目指している理想の姿に近づけるように私達は応援していますよ!」

 

これ以降は俺達は何もせず指揮をファナリア学院長に任せる事にした。

 

俺達もまだまだ一端の魔術師だが、それでも素質があると思える奴も数人は居たのだから、中々に名門校だなと内心思った。

 

その後はと言うと全員学院に一旦戻り、そこから自由下校となった。

俺達も学院の職員室に呼ばれ、約束の金貨5枚を受け取った。

 

さんざんお礼を言われたが、ここまで感謝されると恥ずかしいなと正直思ってしまった。

 

1日中動き回って疲れた俺達は学院を出ると宿に戻り、食事や風呂を済ませるとそのままぐっすりと眠った。

 

これ程長い一日だと感じたのは結構久々だったな。

 

話が一区切りついたんでここら辺で一旦止めるとしよう。

 




最後までお読み頂きありがとうございます。

とうとう講義が終わりましたが、これでもかなり省略しました(苦笑)

ルーファス目線を入れても良かったのですが表現が難しかったり探すだけのつまらない描写だけなので無しにしましたが、会話文をもう少し入れたかったですかね。

ともあれ、次の話からは新しい場所へ旅に行くので是非お楽しみにしていて下さい。

それでは、次の話で会いましょう。
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