カーマインアームズ   作:放出系能力者

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12人のデスゲーム編
40話


 

 ルールを説明しよう!

 

 まずは11人のチルドレンたちによるバトルだ! 選手にはこちらが用意した特製銃が支給される。この銃には強力麻酔弾が10発装填されており、当たれば即就寝! 明日の朝までグッスリ夢の中だ! せっかくのオフ会を寝て過ごすとは、なんてかわいそうな奴ら!

 

 この麻酔弾で眠った選手はアウトとなる! そして戦いを勝ち抜き、最後まで残った1名は、このオレサマとの頂上決戦にチャレンジする資格を得る! 決戦のルールは……そのときに改めて説明することとしよう。

 

 正真正銘、アイチューバーキングの称号をかけたタイトルマッチだ。見事、決戦を制することができたチルドレンにはキングの特権を譲渡しよう。オレサマが持つ全てのアイチューベ運営会社の株を譲り渡す。そして、これをもってオレサマはアイチューバーを引退する。

 

 ……セイセイ、みんななんて反応しやがる。言っておくが、オレサマは負ける気なんてさらさらないぜ? もちろん、男に二言はない。今言った条件は必ず守ると約束しよう。それがオレサマの意気込みであり、そして絶対の自信の表れだと言っておこう! そう簡単に倒せると思わないことだ。

 

 だが、今のルール説明では少しばかり不安に思うチルドレンもいるだろう。要するに銃撃戦、体を使ったバトルをするわけだから、得意不得意というものが当然ある。そこで、もう少しルールを追加しておこう。

 

 このオフ会に来てくれたみんな! ヘイ、君たちの結束を見せつけるときが来たぞ! なんとこのゲームは全観客参加型のイベントとなっている! 現在進行形で、観客席ではプレゼントボックスが配布されているところだ。受け取ったら中身を確認してくれ!

 

 箱の中に入っている物は二つ! 『麻酔銃』と『リストバンド』だ! この銃についてはさっき説明したものと同じだ。そしてリストバンドは腕に装着すると、ディスプレイに色を表示させることができる。装着時に11色の中から一つだけを選べるぞ。

 

 もうわかったかな? この色が11人のチルドレンに対応している。自分の好きなチルドレンの色を選んで表示させることによって、その選手の『チーム』に参加することができるぞ! チルドレンはアイチューバーとしてのカリスマによって自分のチームに人を集め、そしてゲストのみんなは自分が応援するチルドレンと協力して勝利を目指せ!

 

 優勝したチルドレンのチームには、全員に100万ジェニーをプレゼント! おおっと、オレサマのチームに入れないのかって? 残念ながらそれはできないぜ。だがもし、決勝戦がオレサマの勝利で終わってしまった場合は、2000人のゲスト全員にもれなく10万ジェニーをプレゼントしよう!

 

 リストバンドを装着していないとゲームに参加できないから失くさないように注意してくれ。麻酔銃で撃たれて眠ってしまっても大丈夫! リストバンドが装着者の睡眠を察知して信号が発信され、スタッフが部屋まで送り届けてくれるから安心だ。バイタルサインを読み取れるよう、リストバンドはしっかりと素肌の手首にはめてくれ。

 

 ゲーム開始は今からきっかり1時間後だ! 1時間が経過すると、銃のロックが解除されて発射できるようになる。それまでにチームで集まって作戦を立てよう!

 

 それでは諸君らの健闘を祈る! チェケラッ!

 

 

 * * *

 

 

「怪しすぎるでしょ」

 

 この唐突に催されたゲームに対して、勝手に選手とされてしまった私たちは困惑していた。誰もがポメルニの真意を図りかねている。単にオフ会を盛り上げるためだけのイベントとは思えない。彼は確かに突拍子もないことをする人間だが、さすがに今回は度が過ぎる。

 

 スタッフが舞台上に荷物を届けに来た。先ほど説明があった麻酔銃が11個、一人に一つずつ配られる。実銃など触ったことはないが、ずっしりと重くしっかりとした造りだとわかった。おもちゃではなく、武器なのだと実感できる。

 

 銃を届けに来たスタッフに問いただしたが、彼は配達を命令されただけでこのゲームについては何も知らなかったようだ。運営側は何も知らされていないという。だが、現場で会場の設備作業を行うスタッフに命令を出した人間は必ずいる。部外者が関わっているのならバレないわけがない。運営が何も知らないというのはおかしな話だ。

 

 司会進行役の男が必死に場を取り仕切ろうとマイクを握り、観客に状況確認が終わるまで待機を促すが、ヒートアップしたファンたちの興奮は収まらない。その一方で、公式チルドレンたちは冷静に現状の分析を行っていた。

 

「ケータイの電波が圏外になってるんだが」

 

 私も確認してみたが、スマートフォンの受信環境は確かに圏外となっていた。他の人たちの携帯電話も同様である。これについてはスタッフから説明があった。なんでも、『電磁雲群』という雲に飛行船が誤って接触してしまったことで電波障害が発生しているのだという。

 

「電磁雲……? なんですか、聞いたこともない言葉ですけど」

 

「電磁雲はその名の通り、電磁波を帯びた特殊な雲のことッスル」

 

 プロハンター、ブレード・マックスが解説してくれた。この雲が発生した空域に飛行船などが近づくと、強力な電磁波の影響を受けて一時的に通信機器などが使えなくなる電波障害が発生する。

 

 その空域から離脱しても影響は数時間に渡り持続し続けるらしい。この電波障害の中でも機能できる通信機器もあるらしいが、それらは軍事兵器の類であり、普通は遊覧飛行船には完備されていないとのこと。

 

 実は、舞台上にいた11人のうち、バーチャル系アイチューバー、マジカル☆ミルキーの姿が消えている。彼女の姿を映し出していた映像機が動作を停止してしまったためだ。これも電波障害の影響によるものと思われる。

 

「それが事実だとしてもタイミングが悪すぎます。まるで狙ったかのように外部との通信が断たれるなんて、これから起きることを外へ漏らさないようにしているとしか思えない」

 

 そもそも、この電磁雲は海底を通る特殊な鉱脈の影響を受けて海上に発生するものであり、その発生場所と条件は非常に限定されている。パイロットがその場所を把握していないわけがなく、意図的に直撃するような航路を取らない限り、まずぶつかることはないという。

 

 そして、航路を引き返して空港に戻ろうにも、かなりの時間がかかるそうだ。この超巨大遊覧飛行船スカイアイランド号は、宿泊施設などを含めた総合アミューズメントパークをそのまま空中に浮かせたような重く、遅い船だ。

 

 はっきり言って、ただ浮かせることだけに巨額を投じた設計となっており、飛行能力は二の次三の次。運航速度は非常に遅い上、その巨大さゆえに着陸できる場所にも制限があり、来た道を引き返すだけでも一晩はかかるようだ。

 

 まさに空の孤島(スカイアイランド)。電磁波による航行への支障はなく予定通りの航路を進むらしいが、これだけ不安要素が積み上がれば、のんきにゲームに興じようなどという気はとてもではないが起きない。

 

 沈黙が降りる中、かちゃかちゃと金属をいじる音が聞こえた。作ってみた系アイチューバー、ツクテクが床に座り忙しなく手元を動かしている。彼が持っている物は支給された麻酔銃だった。それがこの短時間のうちにバラバラに分解され、無数の部品が床の上に並んでいく。

 

「ふんふん、これがこうなって、ここがなるほど、そういうことか」

 

 最後の一片まで分解し終えたツクテクは、綺麗に整列した部品を今度は組み立て始めた。まるで映像を二倍速で巻き戻しているかのように銃の形が組み上がっていく。ツクテクはあっという間に元の形に戻った銃を構え、引き金を引く。

 

 パシュッと空気が抜けるようなガス音と共に弾が発射された。銃口を向けられたゲーム実況系アイチューバー、キャプテン・トレイルが被弾する。

 

「あ、どう……え……?」

 

 どさりと倒れた。それを皮切りに、この場の緊張は瞬時に膨れ上がり、爆発した。戦闘の開始を認識し、私の脳のスイッチも切り替わる。時間の流れが遅くなるような感覚。

 

 ツクテクが次のターゲットに銃口を向ける。その先にいるのはアイドル系アイチューバー、ノア・ヘリオドールだ。彼はまだ倒れたキャプテン・トレイルの方を呆然と眺めており、ツクテクに狙われていることに気づいていない。凶弾が一直線に飛んでいく。

 

「ふん!」

 

 しかし、その射線上に巨体が割って入った。ブレード・マックスが目にもとまらぬ動きで身を呈してノアを守ったのだ。麻酔弾はブレードの体に当たったが、はじき返されて床を転がった。

 

「まあ、こんな細い麻酔針じゃ『纏』すら貫けないか。威力もエアガンを違法改造した程度だし、弱らせたところに撃ち込みでもしない限り使えねぇな」

 

 ツクテクは実験の考察でもするかのように平然としていた。麻酔で眠らせただけであり、銃弾で撃ち殺したというわけではないが、その態度はあまりにも淡々としている。

 

 確か、銃はロック機能が設定されており、一時間後のゲーム開始時刻にならなければ発射できない仕組みになっていたはずだ。だからこそ、私たちは敵同士として争うことが予定されたゲームを前にして、まだそれなりの緊張状態を保つに留まり、争うことよりも全員で現状の把握をすることに努めていた。

 

 それがもはや一触即発の状況となっている。私は自分の銃をもう一度確認してみるが、弾は発射されなかった。ツクテクの銃はなぜ発砲できたのか。考えられるとすれば、彼が銃を分解し、組み立てなおしたことによるものと思われる。

 

 ロック機能を自力で解除したのかもしれない。彼の技術をもってすれば不可能とは言えない。ついさっき配布されたはずの銃をその場で改造してしまうツクテクの技術に戦慄する。

 

「常識のかけらも持ち合わせていないバカが一人いるようですが、一応、弁解があるなら聞きましょうか」

 

「何言ってんだよ、たかがゲームだろ? むしろ、お前らの方がビビリ過ぎなんだよ」

 

 ブレードが麻酔弾で撃たれたキャプテン・トレイルを診ている。マスクを外し、脈拍や呼吸、瞳孔の様子などをチェックする。

 

「寝ているだけッスル」

 

「ほれ見ろ、別に死んだわけじゃねぇ。つまり、何の問題もないってわけだ」

 

 ツクテクは、あっけらかんと笑いながら言いきった。

 

「俺はこのゲームを楽しむ気満々だぜ。アイチューバーキングの称号なんざどうでもいいが、あのお山の大将を蹴落とせるってとこは気に入った。お前らもその気なんだろ? えぇ? かまととぶってないで見せろよ、お前らの『念』を」

 

 その直後、ツクテクの体から禍々しい威圧感が放たれた。思わず身がすくむようなプレッシャーに襲われる。その威圧に比例するように、彼の体を覆う生命力が輝き、満ち溢れた。

 

 そして、驚くべきことにこの場にいるほとんどの人間が、ツクテクの威圧に対抗するように強い生命力の波動を発し始めたのだ。これは何かの技なのだろうか。私の体も生命力でまんべんなく覆われているが、彼らのように強い力の気配は感じない。

 

 唯一、ノア・ヘリオドールだけが生命力の膜を作り出せていなかった。頭頂部から煙が立つように力が漏れ出ていくのみで、これは街中などで一般的に目にする人々と同じ状態だ。そのせいなのか不明だが、彼だけがツクテクの放つプレッシャーに中てられ、顔を真っ青にして震えあがっていた。ブレードが盾となるようにノアの前に立っているが、四方八方から浴びせられる威圧を防ぎきれていない。

 

「おお、なんということでしょう。まさかほぼ全員が念の使い手だったとは。運命の導きを感じずにはいられませんな」

 

「いくらなんでも出来過ぎな気がしますが。こんな偶然ありえますか?」

 

「いや、偶然じゃねぇべ。古今東西、いかなる分野であろうと突出した才気の持ち主は、程度の差こそあれ自ずと念の片鱗を見せ始めるものだべ。ここに集まった人間は誰もが万人の目に留まる超一流の才気の持ち主。逆に言えばトップアイチューバー足るもの、念の一つも使えないようでは務まらないということだべな」

 

 この生命力のことを彼らは『念』と呼んでいるようだ。詳しく聞きたいところだが、皆が当たり前のように共通認識していることを、今は問いただせるような雰囲気ではなかった。

 

「面白くなってきたじゃねぇか。だが、敵の能力もわからない状況で、ここで大乱闘するのはさすがに俺も避けたいところだ。勝負はルール通り、開始時刻となってから始めようぜ」

 

「真っ先にトレイルを始末した奴がよく言うべ」

 

「念も使えないザコに用はねぇだろ? じゃ、俺は好きにやらせてもらうぜ」

 

 そう言い残して、ツクテクは悠々と舞台を去って行った。それに続くように、数人のチルドレンが解散していく。

 

「おお、悩める子羊たちが私の助言を待っています。私は彼らと共にありましょう。ここで失礼させていただきます」

 

 メンタリズム系アイチューバー、銀河の祖父はファンの身を案じているようだ。舞台傍に集まっていたファンを引きつれてスタジアムを後にした。

 

「……」

 

 マジック系アイチューバー、快答バットは無言で立ち去った。元から声を発しない人物ではあるが、それが素の性格なのかキャラとして作っているのかわからない。その思惑は不明のまま、身を隠すようにどこかへ消えた。

 

「正直、こんなくだらないゲームに興味はねぇべ。キングの称号? そんなもんに何の意味がある。ここに集まってる連中は、別にポメルニの名前なんか借りなくったって一人でやっていけるようなアイチューバーだべ。それでも俺が公式チルドレンとしてあいつの下についていたのは、ポメルニという人間を認めていたからだ」

 

 ダンス系アイチューバー、J・J・J・サイモン。彼があらわにしている感情は、他の誰とも違った。それは燃え上がるような怒りだ。その感情は重圧を放つ生命力として表れている。

 

「別にあいつが決めたルールに従ってやる必要はねぇべ。この船のどこかにポメルニはいるはずだべ。こっちから探し出す。そして、ぶっ潰す。操られてるってんなら殴って正気にもどしてやる。それがブラザーってもんだべ」

 

 彼はポメルニを直接探し出すために行動するようだ。その後をついて行こうと、一歩足を踏み出しかけたが、彼の背中がついてくるなと拒絶しているような気がしてそれ以上進めなかった。

 

 そして舞台上には5人が残った。【シックス】【ブレード・マックス】【ノア・ヘリオドール】【ジャック・ハイ】【ベルベット・アレクト】の5人だ。

 

「まあまあ、みんなここは甘いものでも食べて落ちつこう、ねっ、ねっ」

 

 イタズラ系アイチューバー、ジャック・ハイが全員に飴を配り始める。食べてみたが、すごくすっぱかった。サイダー味をベースにしているようで、口の中で泡がしゅわしゅわと猛烈な勢いではじけてむせた。周りを見回したところ、私以外の誰も食べていない。

 

「で、この居残り組はどうするつもりですか? 私としては停戦協定、可能ならば協力体制を築きたいと提案します」

 

 炎上系アイチューバー、ベルベットの提案に私は胡乱げな目を向けた。これまでの彼女の言動を考えれば、ポメルニを追い落とすためにゲームへ参戦してもおかしくない。何か裏があるような気がしてならない。

 

「私を何だと思ってるんですか? 今回の大スキャンダルは後で盛大に利用させてもらうとして、とりあえずそれは無事に家に帰ってからのことです。この騒ぎは彼一人の力で実現できる域を越えている気がします。その背後にあるものを暴きだすまでは慎重に行動した方がいいでしょう」

 

 そのための同盟だった。頭数だけで言えば、11人のうち5名が共同戦線を張ることになる。いや、キャプテン・トレイルがアウトとなり、マジカル☆ミルキーもいなくなったことを含めれば9人中の5人だ。

 

「マーッスルマッスル! 吾輩は構わないッスル! アイチューバー同士、争う必要などない! 仲良くやっていこうではないか!」

 

「はは……何が何だかわからないけど、僕でも力になれることがあるなら何でもするよ」

 

「オイラも同盟組むのは賛成かなー。イタズラは好きだけど、このゲームはイタズラってレベル超えちゃってるよねー。でも、ちょっとオイラは用があるから、後で合流するよ」

 

 ジャックが一旦席を外すと断りを入れる。どうやら彼の知り合いが会場に来ていたらしく、その無事を確認して保護しておきたいようだ。携帯電話が使えないので連絡が取れないため探しに行くと言っていた。

 

 ともあれ、全員が協力する意思を示した。現状における最大勢力が結成されたと言えるだろう。

 

「まあ、そこのお姫様と王子様は使い物にならなさそうなので、実質的な戦力は私と、ブレード、ジャックの3人になりますね」

 

 お姫様とは私のことで、王子様とはノアのことらしい。確かに弱いかもしれないが、改めて戦力外通知をされるとちょっとムッとなる。相手がベルベットであるからなおさら。

 

「別に要らないとは言ってませんよ。戦力にならなくても使い道はあります。弱者の保護は大義名分を立てるのにうってつけです。例えば先ほど、ブレードがツクテクの攻撃からノアをかばいましたが、その様子を見ていた人間はおおむねブレードを善、ツクテクを悪と判断することでしょう」

 

 私たちを擁護することで大義名分を立て、発言権を強くする。さらにこのゲームには2000人のファンの存在も大きく影響してくる。軍隊として訓練されたわけでもない一般人が集まったところで烏合の衆にしかならないが、それでも統率力を高めるための材料は少しでも多い方が良いと彼女は語った。

 

「とはいえ、最低限の自衛くらいはしてもらわないと話になりません。そこのヘタレプリンスは殺気だけで倒されかけてましたし」

 

「面目次第もないよ……」

 

「当面の目標は、ツクテクを倒すために協力することになるでしょうね。下手に相手をすれば殺されかねない敵です。覚悟して下さい」

 

 殺されるとは大げさなと思った。確かにツクテクは傍若無人な態度を取っていたが、一応は麻酔銃を攻撃手段とすることに終始していた。何も命まで取りに来ることはないだろうと。

 

「甘いですね。あの殺気を含んだオーラは並みの使い手に出せるものではありません。日常的に殺しに手を染めていると考えた方がいいでしょう。前々から予想はしていましたが、おそらくマフィアとつながりのある流星街の人間です」

 

 流星街とは、この世の何を捨てても許される場所。その歴史は古く、1500年以上前から存在していたと言われている。私はただの大きなゴミの処分場だと思っていたが、ベルベットの話によればとんでもなく危険な場所らしい。

 

 どの国家にも属さず、いかなる政治組織の影響も突き返す空白地帯であり、公には無人の地とされているが実際には多くの住人がいると推測されている。一歩足を踏み入れれば、その瞬間から人間だろうと『ゴミ』扱い。

 

 多くのジャーナリストが現地の様子を報道するために潜入したが、奥地へ向かった者は誰ひとりとして帰って来なかった。どの国でも国外で消息を絶った邦人がいれば捜索と保護のために手を尽くすものだが、流星街が関わった案件には手が出せないほどだと言う。その実態は謎に包まれている。

 

 彼らの存在が表沙汰となるケースは稀だが、中には例外もいる。身分や国籍と言った個人情報の管理から逃れた彼らは、『存在しない人間』としてマフィアなどの犯罪組織に雇われることがあるという。表舞台に素性を晒した流星街出身者の多くが、国籍不明の凶悪犯罪者として知られている。

 

 ツクテクは流星街のゴミ山に住み、そのゴミを使った工作動画を主にアップしていた。裏社会の事情を知っている者から見れば、その時点で異常だと気づく。そこはのんきに工作などやっていられる場所ではない。

 

 だが、ベルベットの話を聞いても私はにわかには信じられなかった。ツクテクが投稿していた動画はよく見ていた。どれも想像力に溢れた素晴らしい作品ばかりだ。誰からも見向きもされないであろう廃棄物が、彼の手にかかればたちまち生まれ変わる。動画の内容は小さな子供でもわかりやすいように丁寧に作りこまれていた。あの微笑ましい動画を作っていた裏で、彼が人殺しを行っていたなど信じられない。

 

「人間なんてそんなものですよ」

 

 蔑みも誇張もなく、ベルベットは当たり前の事実を述べるようにそう言った。なぜだか無性に否定したくなったが結局、自分の気持ちを表す言葉は思いつかなかった。

 

 






やってみた系:ポメルニ
いたずら系:ジャック・ハイ
ハンター系:ブレード・マックス
ダンス系:J・J・J・サイモン
アイドル系:ノア・ヘリオドール
マジック系:快答バット
メンタリズム系:銀河の祖父
作ってみた系:ツクテク
バーチャル系:マジカル☆ミルキー
炎上系:ベルベット・アレクト
アニマル系:シックス

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