ハイスクールD×D~英雄の力を使う者~ 休載 作:アゲハチョウ
フラフラになりながら僕は一歩ずつ仲間たちがいる場所へと歩いている。
「アスカっ」
「リアス部長」
皆が駆け寄ってくる。途中で躓いて倒れかけた僕をリアス部長が受け止めてくれた。
「アスカ、大丈夫か!」
「なんとかね、いち兄」
「無茶しすぎです」
「ごめんね、塔城さん」
「今、傷を塞ぎますね!」
「ありがとうございます、アルジェント先輩」
「大丈夫、アスカくん」
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。イリナちゃん、ゼノヴィアさん」
「アスカ君…」
「決着、ついて良かったです。木場先輩」
「っ、ありがとう」
かけよって声かけてくれる中で姫島副部長だけはすこし距離を開けていた。
「…姫島副部長」
「アスカくん、私は」
「大丈夫です。今はオカ研副部長でありグレモリー眷属の
僕がそういうと姫島副部長は涙を流しながら手を握ってくれた。
「ソーナに結界を解除しても大丈夫と伝えておかないと」
「コカビエルは気絶しているのか」
「うん。一応ランサーの能力で作った鎖で縛り付けてあるけど、引き渡したりするなら早くした方がいいかもね」
リアス部長は姫島副部長にソーナ会長に言伝てを言い渡す。結界は解かれてソーナ会長たち生徒会メンバーがこちらへと向かってきた。
「アスカくん、大丈夫ですか!?」
「はい、なんとか。ソーナ会長たちも大丈夫ですか?結界の維持は大変だったと思うんですが」
激しい戦いだったから結界を張っていたソーナ会長たち生徒会メンバーもそれなりに疲れているはずだ。
「私と椿姫は大丈夫ですが匙を含めた他のメンバーは魔力の消費が激しいですね」
「そうですか」
匙先輩たちを見てみると疲れているのがよくわかる。僕も宝具を二回放っているからその余波とでも結界の維持に苦労したはずだ。
「ほう、まさかコカビエルが負けるとはな」
「「「!?」」」
声がした方へと一斉に向くと、そこには白い鎧を身に纏った誰かがいた。
「しかも赤龍帝ではなく英霊使いに負けるとはな」
「白龍皇!」
ソーナ会長の言葉に皆が臨戦態勢をとる。
「安心しろ、今日は戦いに来た訳じゃない。それにそこの英霊使いならともかくとしてそれ以外のメンバーでは俺には勝てないな。まあ、その英霊使いもその有り様では戦力としては皆無だが」
そのまま白龍皇はコカビエルとはぐれ神父フリードを担いで去ろうとする。
『無視か、白いの』
するといち兄の展開している
『起きていたか、赤いの』
お互いに赤と白と呼び会う。
『せっかく出会ったのにこの状況ではな』
『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある』
『しかし、白いの。以前のような敵意が伝わってこないが?』
『赤いの、そちらも敵意が段違いに低いじゃないか』
『お互い、戦い以外の興味対象があるということか』
お互いに運命で決められた戦いよりも今の宿主たちの事に興味があるみたいだ。話を聞いている限りでは。
『そういうことだ。こちらはしばらく独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ』
『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』
もう、話すことはないのか。二体のドラゴンたちの声はそのまま聞こえなくなった。
「それじゃあ俺もここで失礼するよ。いずれ戦う宿敵くんに英霊使い君」
そのまま白龍皇は去っていった。
「これが木場先輩の
「白と黒が混ざりあって綺麗だな」
「アスカくん、それにイッセーくん。僕は……」
木場先輩が何か言いたそうにしているけど、
「ま、細かいことは言いっこなしだ」
「そうですよ。木葉先輩の中では区切りがついたんですよね?聖剣のことも仲間のことも」
「なら、いいじゃねえか。こうしてまたオカルト研究部とグレモリー眷属の仲間として戻ってこれたんだからさ」
「うん」
憑き物がとれたような爽やかないつもの表情を見せてくれた木場先輩。そして三十分後に魔王様の加勢が到着して事件は一件落着なのだが……。
「やあ、赤龍帝に英霊使い」
「「なんで、ここに!?」」
数日後。オカ研の部室へと入るとそこにはゼノヴィアさんがいた。
「神がいないと知って破れかぶれ悪魔に転生したのさ。幸いなことに所有しているデュランダルが凄いだけで私自身には特別な力があるわけではなかったから駒一つで転生できたわけだ。これからはこの学園の二年生として通うことになったわけだ。これからよろしくね、アスカくんにイッセーくん♪」
「いきなりかわいい声出すんじゃねえ」
「ふむ、イリナの真似をしたわけだが」
「イリナちゃんは(声は)可愛いですけど。ゼノヴィアさんの場合は(声は)凛として綺麗な方だと思うんですけど」
「う、うむ。そうか…その、なんだ。真顔でそんなことを言われると照れるな」
何故か照れられてしまった。そしてリアス部長と塔城さんがいる方から冷たい視線を感じる。
「ところでイリナちゃんは」
「イリナなら私のエクスかリバーを含めた5本とバルパーの遺体をもって本部に帰らせた。神の不在を報告したのは私一人であったお陰でイリナは異端とされなかった」
「イリナに報告しないようにに言ったのか?」
「ああ、彼女の信仰心は私以上だ。主の不在を知ってもそれは変わらないだろう。だから、私だけが異端の烙印を押されることでなんとかなったと言うわけだ」
ゼノヴィアさんの表情はどこか晴々としていた。
「しかし、この学園は恐ろしいな。まさか魔王の妹が二人も在籍していたとはな」
「二人?」
「一人は部長さんですから」
「この学園にいるのは生徒会長?」
僕といち兄とアルジェント先輩は驚きの声をあげた。
「今回の事は堕天使の総督であるアザゼルから神側と悪魔側に真相が伝わってきたわ。エクスカリバーの強奪はコカビエルの独断によるもので、そのコカビエルも三竦みの関係を脅かして再び大戦を引き起こそうとした罪により『
落ち着いた僕たちに堕天使側からの報告を説明してくれたリアス部長。
永久冷凍ってことは二度と外の世界には出れないってことらしい。
「本来なら白龍皇の介入によって事を収めるつもりだったみたいなのだけれどもその前にアスカが収めてしまったのよね。だから、近いうちに正式に天使側の代表と悪魔側の代表、それとアザゼルが集まる会議が開かれるそうよ。そこで謝罪と話したいことがあるらしいのだけれど、アザゼルが謝るかしら」
リアス部長の話から察するに堕天使総督のアザゼルは豪胆な人物のようだ。
「一応、その会議には私たちも招待されているわ。事件に直接関わっているし解決もしているからね」
「マジですか…」
そんな会議にお呼ばれされていいのかな?
「……白い龍は堕天使側なのか」
「ああ、そうだ。堕天使の総督であるアザゼルは
ゼノヴィアさんの言葉に聞いたいち兄は言葉をなくす。話終えるとゼノヴィアさんはアルジェント先輩へと向き直した。
「アーシア・アルジェント。私は君に謝らなければならい。主が居ないのであれば、救いも愛もなかったわけだ。君の気がこんなことで晴れるとは思わないが私を殴ってくれても構わない」
「……そんな、私はそんなことをしません。確かに最初は辛かったです。でも、今は大切なヒト、大切な方々と巡り会うことができたこの出会いと環境だけで、幸せなのです」
その言葉にどこか救われたような表情をするゼノヴィアさん。そんな瞬間を見た僕はまるで聖女の慈しみを受け救われた咎人のような絵だった。
「さて、新しい仲間も増えたことだしここからまた活動を再開するわよ!」
こうして再び平穏な日々がやって来たのであった。