ハイスクールD×D~英雄の力を使う者~ 休載   作:アゲハチョウ

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4話

悪魔になってはや数週間。僕はいつも通り部室へと向かっていた。

 

「いい、イッセー。二度と教会に近づいちゃダメよ」

「…はい」

 

ん、どうやらいち兄が怒られているようだ。

 

「木場先輩、いち兄はどうして怒られているんですか?」

「ああ、兵藤くんはどうやら教会にシスターを送り届けたみたいなんだよ」

「教会は敵の領地」

 

なるほど、確かに悪魔にとっては教会は近づいたらダメな場所だよね。

 

「あれ、姫島副部長の姿が見えないけどお休みですか?」

「いや、朱乃さんなら大公と何か話しているよ。おそらく…」

 

すると部屋にノックの音が響き渡った。

 

「あらあらお説教は終わったみたいですね」

「朱乃…」

「リアス、大公からはぐれ悪魔の討伐命令が来ましたわ」

 

……はぐれ悪魔?

 

「そう、イッセー、アスカ。今日は貴方達二人には悪魔の戦い方について説明するわよ」

「悪魔の戦い方?」

「ええ、それじゃあ行くわよ」

 

リアス部長の言葉に続くかのように僕達は外へと向かった。

 

「はぐれ悪魔っていうのは主である悪魔を裏切って力に溺れてしまった悪魔のことだよ」

「へぇー、そうなんですか」

「それを討伐するのも私達の仕事」

 

僕は木場先輩と塔城さんからはぐれ悪魔の説明を受けながら山道を歩いていた。

 

「しかし、悪魔になって良かったことは夜でも目が利くようになったことだよな」

「それはいち兄だけだと思うよ」

 

確かに夜も目が利くようになったし、寿命も一万年近くになったからね。悪魔になって良かったと思うよ。

 

「…血の匂いがします」

「塔城さんって鼻がいいんだね」

「そうでもないです」

 

塔城さんが指差した方向には何かの建物が廃墟になった場所だった。

 

「はぐれ悪魔は廃墟とかを拠点にしているんだよ」

「野生感がパナイですね」

 

中へと入ると確かに少しだけ血生臭い匂いがした。

「グヘヘ、うまそうな匂いがするなぁ。不味そうな匂いがするなぁ。お前達はどっちだ!」

「「うへぇぇ」」

 

現れたのは上半身の部分が人間の女性の形をしているけど下半身の部分は完全に化け物になっていた。

 

「二人には悪魔の駒(イービル・ピース)の特性について話しておくわ」

「「特性?」」

 

今日はいち兄とよく台詞がかぶるなぁ~。

 

「まずは…」

「死ねぇ!」

 

はぐれ悪魔が木場先輩めがけて拳を振り下ろす。だけど、拳は当たることなく、腕が斬り落とされていた。

 

「ぎゃあああ!」

「祐斗の駒は騎士(ナイト)。特性はスピードでそれを活かす剣の腕を持っているわ」

 

すごい、あまりの速さに残像しか見えなかった。

 

「ぐぅぅぅ、邪魔だ!」

「「塔城さん(小猫ちゃん)!!」」

「大丈夫よ」

 

塔城さんがはぐれ悪魔に踏み潰されて助けに入ろうとすると部長が止める。

 

「!?」

 

数秒後、はぐれ悪魔の足が浮き出した。

 

「……えい!」

 

塔城さんがはぐれ悪魔の足を持ち上げて投げ飛ばした!もう一度言う投げ飛ばした!

 

「小猫は戦車(ルーク)。特性は単純馬鹿げた防御力と攻撃力よ」

「俺、これからは小猫ちゃんにケンカ売らないようにするよ」

「その方がいいよ」

 

塔城さんを決して怒らせないようにする事を心の中で密かに誓うのであった。

 

「うん?」

 

木場先輩に斬り落とされたはぐれ悪魔の腕が微かに動いたような気がした。

 

「リアス部長、危ない!」

 

僕は咄嗟に神器を発動する。

 

使い魔との絆(ボーンズ・サーヴァント) modeアサシン!」

 

僕は両手に持っていたナイフで腕を斬り刻んだ。

 

「ありがとう、アスカ。助かったわ」

「ありがとな、アスカ」

「いえいえ、大丈夫ですよ」

 

あと少し反応が遅れたら大変なことになっていたかな?

 

「次は朱乃ね」

「うふふ、いけない子にはお仕置きしないといけませんね」

 

姫島副部長は笑顔を浮かべながらはぐれ悪魔に魔法による雷の攻撃を繰り出していた。

 

「あらあらうふふ、まだまだ元気みたいですわね」

 

な、なんだろう。今の姫島副部長は怖いです……。

 

「朱乃は女王(クイーン)。キング以外の全ての駒の特性を持っているわ。そして、朱乃は究極のSよ」

「「究極のS」」

「うふふ、大丈夫よ。仲間には優しいから」

 

はぐれ悪魔の肌が黒く焼け出しても攻撃を止めることはなかった。

 

「朱乃、その辺でいいわ」

「あらあら、もう少しいじめたかったわ」

「こ、怖いな」

「うん、怖いね。いち兄」

 

姫島副部長の言葉に僕といち兄は震えていた。

 

「最期に言い残すことはないかしら」

「……殺せ」

「そう、なら消えなさい!」

 

リアス部長の魔力がはぐれ悪魔に当たると跡形もなくはぐれ悪魔は消えてしまった。

 

「今のは…」

「部長は滅びの魔力というのを持っていてね。その魔力をもって戦うことから紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)って呼ばれているんだよ」

 

ルイン・プリンセス、滅殺姫。確かに滅殺だよね。髪の毛一本の残らず消えたし、リアス部長って何処かお姫様みたいだもんな。

 

「それよりアスカのその姿、前に会った時とは違うわね」

「え、あ、そうですね。これはアサシンの時の姿ですよ」

「アサシン、暗殺者ですか」

「今度はどんな英霊なんだい?」

 

うん、皆興味津々みたいだよ。

 

「ジャ、ジャック・ザ・リッパーです」

「「「「「え?」」」」」

 

うん、そんな顔するよね。みんな唖然としてるよ。

 

「そ、そんな顔しないで下さいよ。それとリアス部長と姫島副部長に塔城さん、距離をとらないで!」

「そのなんだ、アスカ。どんまい」

 

ううっ、わかってたさ。みんなが引くくらい。

 

「引かないでください。ジャックは可愛い女の子なので」

「可愛い……」

「え?」

 

なんだろう、塔城さんの纏う雰囲気が変わったような。

 

「あら、ジャック・ザ・リッパーは男のはずじゃないかしら?」

「あれ?知らないんですか?ジャック・ザ・リッパーって一応性別不明なんですよ?」

 

そうジャック・ザ・リッパーは史実上性別不明なのだ。何故なら目撃者は全て死体になっているからだ。

 

「あら、でも私が知っている国民的探偵アニメの映画では男だったわよ」

 

それは名探偵コ○ンの中での話なんですよリアス部長。

 

「でも、多くの作品では男の人として描かれてますね」

「え、えっと…、ジャック・ザ・リッパーって誰っすか?」

 

今度はいち兄の言葉に場が凍りついた。

 

「さて、帰りましょうか」

「はい、そうしましょうか」

「…藤丸くん、一緒にケーキを食べましょう」

「あ、うん…」

「え、みんなどうしたんですか」

 

慌てるいち兄の肩に木場先輩が手を置く。

 

「兵藤くん、後で僕で良ければ教えてあげるよ」

「お、おう。なんか木場しか味方がいないみたいだよな」

 

こうして僕達の初めてのはぐれ悪魔の討伐はいち兄の知識の無さを披露して終わりました。


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