巨影狩り   作:鈴木遥

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使徒と狩人と始まりの少女

・ 以下は、警視庁機密特務隊の 通信無線を傍受したものである 。なお、この内容はあのお方の手に渡り次第、何らかの形で厳正に処分されたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 対巨影用特務隊から通信指令室へ 。実践準備は概ね完了。 そちらの情報操作等諸々の準備が完了次第、作戦に移る。」

 

『こちら通信指令室、了解。全住民の避難を確認。特務隊長の判断に任せ、作戦の開始を許可する。』

 

隊長の大狩(おおがり)は無線を切り、視線を部下の三崎(みさき)ダンに移した。

 

「……だ、そうだが、準備はいいか?三崎……。」

 

「 武装はね。心の準備は、何時間かかってもできませんよ……。」

 

新人隊員、三崎ダンは泣き言を零した。彼らの部隊は、国の 直接の指示で動いていながら これまでにないほどの法律特例 措置が施されていた。

 

任務を達成する上で起きた損害や、破壊活動による賠償 負債の保証などは 全て国が負担し、ヘリコプターや大型車での移動費用も同じく。

 

更に、 彼らの存在は彼らの希望に添い、国民にはあらゆるメディアがその情報を伏せている 。今、日本という島国に、彼ら5人の職業を知る者が、果たして何人いるだろうか?

 

「隊長、目標を確認!恐らくですが、〚使徒型〛かと思われます……!」

 

同じく 新人隊員の早田雪(はやたゆき)が言った。

 

「よし早田。 目標の2キロ先でワゴンを停車。全員所定の位置につけ。」

 

「了解!」

 

大狩の視線の先には、ビルを焼き、建物を崩す怪物の姿があった。

 

大ムカデ型の使徒。頭部の上には骸面、赤い体皮の裏には骨格のようなモノが並び、その中央に赤い球体型の心臓部、コアがあった。

 

ワゴンから降りると同時に、桃色の閃光が眩しく光った。

骸面の下の眼から、レーザーを発射したのだ。

 

レーザーが通った場所は、焦げて大穴が出来た。

 

「ちっ……思ったより早く動くな。キュー、俺のそば離れんなよ。早田、クラウンビル三階の窓から狙撃用意。

碇、同じくクラウンビルの屋上からだ。閃光弾全部投げろ。三崎、早田と碇に注意しながら、コアをやれ。」

 

『了解!』

 

メンバー四人の無線を切った大狩の元に、電脳キーボードを持った金髪お団子の少女が駆け寄る。

 

「隊長、良かったとですか?こがいな強行に出て。」

 

「足は早くビームは強力、ましてコアも厄介な位置にあると来ちゃあ、一刻を争う。」

「ま、おっしゃる通りですわ……。」

 

狙撃担当の早田と、爆撃、接近銃撃担当の(いかり)ミライは、作戦開始からちょうど三分で、クラウンビル三階に到着。

 

「隊長、たった今碇クンが閃光弾投げてくれましたけど、大きいし距離あるし、コアも変なとこにあるし……とりあえず、どうしますか?」

 

『退避準備を整えた上で、目標の器官部を狙撃し続けろ。危険を感じたら、すぐにヘルメットを被れ。』

 

「了解!」

 

『三崎、いまどの辺にいる?』

 

「クラウンビル三つ手前、まもなくです!」

 

『よし!目標の真下に着いたらジャンプ、向かいのビルの壁に着地、壁を蹴り上げ、そのまま空中でコアを斬れるか?』

 

「また無茶を……了解!」

 

 

 

 

 

 

腰の大剣に手を掛け、身体に流れる力を流し込む。

 

入力(インストール)……!!』

 

ダンの手に宿る紫の光は、やがて刀身へと移っていく。 人間の文明に仇なす巨大な怪物たちは、 太古の昔からこの光を嫌っていたのだ。

 

やがて刃は、巨人の腕ほどの大きさに肥大化した。

 

ジェットシューズのエンジンを回し、道路を滑走するダン。 その時、彼は第4の使徒の足下に、いるはずのない人影を見た。

 

短い髪は青色で、 肌は色白。 純粋で汚れを知らない赤い瞳は今この戦場で最も似つかわしくない存在と言える。

 

(ウソだろおい!なんでこんなトコに……。)

 

考えている暇もなく、ダンは大狩に無線を繋いだ。

 

「隊長!作戦変更です!目標の足元に少女を確認!こちらの救助を最優先し、同時にコアも叩きます!」

 

『また無茶を……了解!死ぬなよ。』

 

 

 

 

無線が切れた先で先で、大狩はらしくもなく焦りを見せた。

 

「お嬢ちゃんだァ?どういうこったい、キュー。」

 

「確認入れたんやけど、住民票に記載されとるひとは、みんな非難すんどるばい。」

 

「じゃあ、使徒の足元にいんのは一体……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンは思い切り壁に飛び移り、体勢を変更。そのまま壁を蹴り上げ、内側の背骨中央のコアに斬りかかる。

 

「うぉらァァァァァァァァ!!」

 

ザンッッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コアは真っ二つに裂け、使徒は破裂し、全身から血を吹き上げた。

 

その際、ダンが着地する寸前に、使徒は苦し紛れのレーザーを一発、足元の少女に向けて放った。

 

「おい!待っ……!!」

 

ダンの叫びも空しく、レーザーは彼女に衝突する……その瞬間、突如彼女の首のロザリオが光り、彼女の身体に光のバリアを形成した。

バリアは、街に大穴を開けた使徒のレーザーをモノともせず、その攻撃から彼女を守り切った。

 

神聖にして強固なるそれは、さながら神話の戦に用いられる神々の盾の様だった。

 

 

時間差でコアが砕け散ると、さらに真っ赤なスコールが降り出した。地面に着地したダンは、いの一番に少女を抱きかかえ、その場を離れる。それは、都心を一夜で沼地に変える災害そのもの。ここに居れば、ダンも彼女も命が危ぶまれる。

 

『こちら大狩。使徒の消滅を確認。直ちに撤退されたし……。』

 

 

「言われなくてもそうするよ!さっ、お嬢ちゃん、早くこの中に……!!」

 

「なぜ逃げるの?」

 

「え……!?」

 

「今助かっても、いずれ人類は巨影に滅ぼされる。なぜ苦しみもがいて生き延びようとするの?」

 

こんな時に何を言ってるんだ。そう喚きたい気持ちより、なぜだろう、と本当に疑問を持った。

 

巨影を狩り始めてまだ日は浅い。が、命のやりとりを数回繰り返す内、なぜ巨影を狩るのか、なんの為に狩るのか、常々疑問だった。

 

(どう言えば良い……!?戦地において生きる意味を考えるこの娘に、オレは一体何と……。)

 

数秒悩み、答えは気がつくと出ていた。

 

「やりてえ事をやりきるためだ。」

 

「……?」

 

「オレにゃまだ、先の人生にやりてえ事が山ほどあんだ。いつか死ぬとしても、それは今じゃねえ。幸せだって、自信もって死ぬ時さ。その日まで、人類(オレたち)は戦うべきだと思う。」

 

「それが、あなたの正解(こたえ)……。」

 

ビルの中の掃除用具入れに隠れながら、迫り来るスコールを凌いだ。

 

幾度となく吐き気と悪寒を覚え、血なまぐささに意識が遠のきかけた。

されど気を失わなかったのは、目の前に確かに生きている不思議な少女を、是が非でも守り抜く決意からだろうか。

 

数分後、駆け付けた救助隊によって、二人は血の沼に沈んだ箱から脱出した。

 

 

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