・ 対巨影用特殊部隊、大狩第6小隊は、 先の使徒形巨影伐作戦において、身元未確認の女児を1名 保護 本文において現在 身元確認を行っている者なりー。
第6小隊により現場から保護された少女に 第六支部医務室専属医師、赤木京子は様々な質問を投げた。
「アヤナミレイちゃん、で良いのね?」
青い髪と赤い瞳の少女は、黙って首を縦に振った。
「 どこに住んでたかとか、お父さんとお母さんのお名前わかる?」
今度は 首を黙って横に振った。
「そっか……。大丈夫よ。 先生の仲間たちはね、長い間あの恐い怪獣さん達から、街を守ってきたの。
パパもママもきっと無事。レイちゃんもきっと、お家に帰れるからね。」
少女は喜怒哀楽を顔に出さないまままた黙って首を縦に振った 喜びとか悲しみとか不安とか そういうもの一切表に出さない子供を、彼女は初めて見た。
色々な問題を抱えている子供は、このご時世であればなおさらにたくさんいる。
巨影襲撃により被災した子どもたちが、何らかの異常を後に引きずってしまうことなどザラにある。
だが、レイの場合はそのような子たちとまるで違う。
まるで、最初から自分たちと違った世界を生きているような、噛み合わなさと言ってもいいような違和感を覚えるのだ。
自分の言葉など、耳には届いているが、心にはまるで届いていないように見える。
まるで、感情そのものが欠如しているような……嫌な言い方をすると、それはある意味気味悪さにも感じられた。
レイが医務室を出るのと入れ替わりに、 第6小隊長の大狩が入ってきた。
「赤木先生!どうなりました、あの娘は……。」
「 健康状態は正常ですよ。心身ともにね。」
「健康状態
「あ、いいえ、なんでも……。それより 使徒形の解剖はどうなったんです?」
大狩は、参りましたとでもいうように、タバコに火をつけてつぶやいた
「また未知の物質でね……驚くことに、 人間と酷似した遺伝子が検出されたんですよ。もう何が何だか……。」
「人間と……!?」
「ええ。 総本部の中には、ついに神の使いだとか、宇宙生物だとか、話が飛躍のとどまるところを知らず、情報が錯綜しデマが溢れかえるばかり。まあこんなダークファンタジー みたいな状況になれば無理もないでしょうが。そうは言えど、東京第6地区の平和は、我々小隊が守らねば……!」
「 頼りにしてますよ隊長さん。あと、医務室ではタバコ禁止ですからね。」
「いっけね!一本だけ!見逃してくださいよ〜!」
「ダ〜メッ!」
「厳しいな〜。」
第6小隊に保護された少女綾波レイは 担当官の指示により 医務室から一時、第6小隊チームハウスで預かることとなった。
隊長代理、と言うかお母さん的ポジの 柴田ユキがその場を仕切り、簡単な自己紹介が行われた。
「碇ミライです…… 第6小隊では罠を張ったり、ちょっと珍しい武器を使って戦う担当で……趣味は……ラジオかな。」
「はい、拍手〜!」
レイは、 顔色ひとつ変えず、うんともすんとも言わずに 、ユキに従い拍手した。
「ホンマ、これだからミライは付き合いづらいばい。自己紹介言うんはもっと明るく勝社交的にやるもんばい?あんたみたいに辛気臭く雇ったら子供も逃げてしまうばってん!」
「はぁ……すみません。」
「 だからそれが駄目ばいに、申し遅れましたわ、ウチは
第6小隊では情報操作と敵の解析、武器のメンテナンスやらせてもらってますわ。以後よしなに〜!」
「 うるせー以外、ミライとあんまり変わりねーじゃねーか、エセ九州人。」
「 うるさか!そげんゆうあんたはどげんなっとっと!?さっきから黙りこくってばっかりばってん。レイちゃん困るばい?」
「三崎ダン。第6小隊では斬撃及び接近戦闘を担当してる。次の任務で死ななかったら以後よろしくな。」
「かぁ〜! 一番の若手で新人のくせに 根暗な親父くさい自己紹介ばい。そげなこつやから 女にモテんばい?」
「斬ったの?その剣で、巨影を?」
キューのクレームを無視して レイはダンに尋ねた。
彼女は、ダンの背中の大剣を指差している。
「ああ、たくさん斬ったよ。人も一人……。」
まるで何か後ろめたいことでもあるかのように、寂しげな雰囲気を出してダンは答えた。
「 何ばい、今の話。 そげな話うちは一度も……。」
「誰にも話してねーよ。 この小隊入って一年未満といえど、 狩った化け物の数はどの隊員より多いからな……それまでに、私とて色々ありましたよ、先輩。」
ごまかすと同時に皮肉るダン。
その時ハウスの壁に立てかけてあった緊急アラームが鳴った。巨影の襲撃を表す物だった。
同時に大地震にも匹敵するほどの揺れを感じた。
巨影が近くにいる事は明白だった。
「何!?」
「また襲撃!?今日二度目じゃない!」
未来という気が焦り始める中 ダンはただ一人黙々と、剣を磨き始めた。
「誰も一回で終わりますなんて言ってねえよ。
奴らの目的がわからない以上、1日に何度襲ってきたって不思議はない 。 むしろ今まで一日一体のペースで進んできたことの方が俺は不思議だね 。」
彼らが戦う化け物が世界で初めて確認されたのは、10年前、雨の夜の新宿だった。
どこからともなく、全くの突然街中に現れた『光の巨人型』の化け物を筆頭に、たった一夜にして数十体の怪物が日本各地で目撃、確認された。
目的も動機も分からない突然の攻撃により、交通やエネルギー供給はもちろん あらゆる都市機能が麻痺させられ、 被害総額と死者行方不明者は、戦後起こったどの災害をも上回った。
この事件をきっかけに、国連は 各地を襲った巨大生物を
『巨影』と命名。
ダン達第6小隊をはじめ、世界数十カ所の支部を持つ巨大害獣駆逐『ビッグモンスターキラーズ 』(通称 bsk )
が発足した。
この組織が認定している『巨影』は大きく分けて3種類存在する。
使徒形の目的は破壊。 心臓部が コアと呼ばれる赤い球体型の臓器で、その行動目的他生態は一切明らかになっていない。
ウルトラ型の目的は光の巨人型の駆逐、逆も然り (希少種、光の巨人型の目的は、ウルトラ型の駆逐)。
その他巨獣型は、中には人間の襲撃や捕食を目的としてる種もいる。奴らは、『巨影』というひとくくりの生物と認定するには、多彩すぎたのかも知れない。
レイを医務室に預け、 バトルスーツに着替え 5人は現場となっている渋谷109前へ、ヘリを向かわせた。
現場はパニック状態だった。先ほど使徒形が現れたにも関わらず、ようやくいつもの賑わいを取り戻していた渋谷109前には 、ティラノサウルスのような怪物がいた だがそいつは 手首に蟹のようなハサミを付け 頭頂部に平行な角を生やしている。
キューは、頭に装着した円盤型のスキャナーで、目標となる怪物の情報を解析した。
「スコープにより敵を『ウルトラ型』と確認。 本部のパーソナルデータによると、目標は 確認番号 61 、サドラばってん。大狩隊長おらんけど、どぎゃんすっと?」
「電話は繋がりません。」
「ミライ、トランシーバーは?」
「いま確認します。」
「 繋がり次第大狩さんの指示を仰げ、オレは……先に行く!」
ミライがぎょっとして振り向いた時には、ダンはすでに パラシュートをつけてヘリから飛び降りていた。
「ちょっとダン君!?隊長命令もなしに……!」
「わりー柴田!大狩さんに謝っといてくれや!」
招待の誰一人ダンの命を心配していないのは、彼が第6小隊就任前の活躍を見ていたからだ。
若くしてき本部が舌を巻くほどの成績を収めた彼は、何度も目標に対して正面から突っ込んで行き、そのすべてを無事に生還している。
そして 入隊前から親交のあった彼ら3人は、彼が絶対に いいだしたら聞かない人間であると知っていたが為に、決してそれを止めようとしなかった。
暴虐の限りを働くサドラのすぐ近くに、白髪に赤い目の少年が立っていた 彼の姿は、サドラから逃れようとする住民、住民を化け物から逃げそうとする救助隊、その他その場にいるあらゆる人間の目に写っていなかった 。
彼は、この星の住人ではないのだから。
はるかな昔 人類が神の時代と呼び讃えてきた時代から、 彼は地球を見守っていたのだ。
「レイは、 彼らの側に着いたみたいだね。
これは完全な裏切りだ。でも『あの人』は、レイを殺しちゃいけないという。
不公平だと思わないかい?サドラ。」
その問いかけに答えるように サドラはますます攻撃の手を強める この戦火の中 彼は道行く人々とまるで逆方向へ進んでいた。
第6小隊の帰りを今か今かと待つ、bsk 東京支部に向かって。
「僕にはわからないよ。
地上に醜く這いつくばってまで子孫を残し、種の殲滅を防ごうとする人類の気持ちが。
僕にはわからないよ。醜い怪物になってまで己が明日を生きようとする君たち人類の気持ちが。
答えはきっとといても出てこないだろう。だからサドラ 、君の攻撃を持って、人類を問いただしてくれ 。
僕から逃げたいのなら、 生き延びたいのなら、 試してみようじゃないか。
絶望の中でどうやって君たち人類ガ 明日を掴むのか。」