朝起きたら、やたら喉が渇いていた。
唇もカサカサで、目の奥が熱い。
その時点で予感はあった。
「37度8分。今日は学校休みなさい」
「うん……」
風邪。
ここ何日か、ストーカーに怯えてて心労が祟ったのかもしれない。
あと再燃した乙ゲー熱に乗っかって三日連続で睡眠時間四時間を切ったのも良くなかった。
……これまでなら、体温計を見た瞬間『よっしゃこれで今日は一日中ゲームできる!』と喜んだんだよな。
「良かったじゃない、この時期で」
「え?」
「受験シーズンに入ってから風邪引いたら大変でしょ?」
……ああ、そうか。
もう風邪引いて喜ぶ事もなくなるのか。
今のままじゃいられなくなっていく。
きっと、これからもそうだ。
高校を卒業したら――――どうなるんだろう?
「解熱剤はあるけど……風邪薬の方がいいわよね? 切れてるみたいだから今から買ってくるね」
「あっ うん」
「おじいちゃんの家みたいに置き薬だったらよかったんだけど、高いのよね、あれ」
置き薬……? バタン>
知らないワードだな、ググってみるか……
置き薬(配置薬)、正式名称は『配置販売業』。
販売業者が直接消費者の家庭を訪問し、複数の薬を消費者に預け、次回訪問した際に使用された分の料金だけ徴収するシステム。
消費期限が切れた、または近付いている薬は販売業者が回収して新しい物に取り替える。当然料金は無料――――か。
一見お得だけど薬自体の値段は定価だから、ドラッグストアで買うより割高。
アニメの円盤を公式の通販で買うようなもんか? ちょっと違う気もするが……
でも、どうせなら定額払う代わりに薬使い放題とかの方が今の時代に合ってそうだけどな。
備えあれば憂いなしって言うけど、今の時代は備えなくてもすぐ買えたりするからな。
「ゲホッ! ゴホ!」
いかん……無駄に小難しい事を考えた所為で知恵熱が出た。
いや普通に風邪が悪化したのか?
なんか寒気もしてきたし……これ38度の大台行ったんじゃないか?
ヤバイな……7度台はまだ余裕あるけど、8度台は全然笑えない。
そこで留まればまだいいけど、その先には死に直結する9度台があるからな……
もう一回熱を測ってみるか?
だけど38度9分とか出たら本気でシャレにならない。
ど、どうしよう……怖くて熱測れない……
っていうか死ぬほど寒いんだが!
そ、そういえば解熱剤ならあるって言ってたな……
お母さんが帰って来るのを待ってたら手遅れになるかもだし、取りに行こう。
薬は確かこの棚の……あっ、これだ。
市販の薬じゃないっぽいな。
カプセルか?
いや……これ……
「座薬かよ!」
一人で座薬なんて無理だろ……どんだけハードル高いんだよ。
誰かに入れて貰うにしたって、この年で座薬なんて恥ずかし過ぎる……
あ、あれ……?
なんか、意識が遠く……なって……
まさか私、ここで死ぬ……!?
それまでピンピンしてたのに容体が急変して死んだ人いっぱいいるし、今まさに急死のレールに乗ったの……!?
怖い……こわいこわいこわい!
嫌だ、まだ死にたくない……!
私にはまだやり残した事が――――
「あら、なんで部屋で寝てないの? お薬買ってきたわよ」
「お母さん!? お母さあああああああん! ふぐっ……ひっ……ふうう……げほっげほっ」
「ど、どうしたの。風邪くらいでそんな気弱になって」
良かった、良かったよう……
「ほら、早く飲みなさい」
……ふう。
薬飲んだ途端に意識がハッキリしてきた。
市販の薬にこんなに即効性がある訳ないし、プラシーボ効果なんだろうが……
「ちゃんと安静にしてなさい。時間があるからって遊んじゃ駄目よ」
「そ、そんな事しないよ。子供じゃないんだから」
「ふふ、智子もそういうこと言う年になったのねえ」
二階に上がる途中に聞こえたそのお母さんの言葉が、どういう感情で言ったものなのかは……わからなかった。
娘の成長を喜んでいるんだろうか?
時間の経過を寂しく思っているんだろうか。
何にしても、今はゲームって気分じゃないな。
37度2分くらいなら、もっと素直に喜べたのに。
……あ、そう言えば前に
私も送っておいた方がいいのか?
今の体調なら、それくらいは普通に出来そうだし……送っとくか。
[今日風邪で休む]
こんなもんかな。
極限まで無駄を省いた、我ながら完成度の高い報告文だ。
ピコピコ>
……お、もう返事来た。
こういう時に反応早いのはガチレズさんだろうな。
[大丈夫? ゆりとお見舞い行ってもいい?]
やっぱりな。
お見舞いか……うつしたら無駄に罪悪感背負うし遠慮しとこう。
ピコピコ>
ん? 今度は
[うつらないように対策して行くから大丈夫]
先回りしてきやがった。
なんか外堀埋められたみたいで微妙だが……交通費だってバカにならないからな。
[37度台だし心配無用]
[わかった。お大事に]
相変わらずガチレズさんのレズは早いな。
違った。
レスは早いな。
後は
[りょ]
……は?
[間違えた] 了解]
焦った……急に陽キャ化したかと思った。
ん?
なんか前に似たようなやり取りがあったような……
[覚えてる?]
……思い出した。
前にあいつが風邪引いた時の『お○ん○ん』誤送事件だ。
なんであんな忘れて欲しい過去覚えてるんだよ……
[イヤミか貴様ッッ]
[貴様じゃないけど]
[ゆり、黒木さん病気だからそろそろ]
[ごめん。お大事に]
……なんか最後グダグダだったけどこれでよし、と。
次はネモか。
あいつは結局家に来なかったから、この場所も知らないだろうし、お見舞いに来るとは言い出さないだろう。
[風邪で今日は休む]
コピペはなんか気が引けるから少しだけ変えて……送信、と。
[アイスでも買って来ようか?]
早っ、そして来る気マンマンかよ。
差し入れを第一に話すところがネモらしいが……
[来なくていい]
[借りとか思わなくていいけど?]
[違う。そもそも家知らんだろ]
[それもそっか。お大事に]
……あいつ、スタンプとか使いそうなのに全然使わないんだよな。
私に合わせてるのか?
あと連絡取り合うような相手は……ゆうちゃんくらいか。
ゆうちゃんは別の学校だし報告の必要はないんだけど……最近あんまり会話してないし、この機会に送っとこう。
[今日はカゼで一日寝てるから連絡あっても返事できないかも]
なんか無駄に説明口調になったけど、まあいい。
ピコピコ>
おっ、来た来た。
[大丈夫? 珍しいねもこっちが風邪引くなんて]
そういえば、中学の頃は風邪なんて殆ど引かなかったな。
高校入ってからは、ゆうちゃんには弱い所見せたくないから報告した事なかったし。
まあ……お見舞いに来てくれるのを期待するのが疲れる、ってのもあったんだが。
[うん。馬鹿は風邪を引かないってあれ迷信だね]
[そうだね] [お薬ちゃんと飲んだ?] [ないなら持ってこようか?]
[大丈夫、飲んだよ] [ていうか今日平日だから学校]
[あ、そうだよね] [それじゃお大事に]
ゆうちゃんは相変わらずだな……
さて、やる事やったしそろそろ寝よう。
なんか天井が低く感じるな。
前に風邪で寝込んだ時は、もっと高かった気がするのに。
「……」
眠れない。
当たり前か、さっきまで寝てたんだから。
こういう時は羊を数えろとか言うけど、実際には単調なカウントの繰り返しなんて却って目が冴えるだけだ。
何か別の事を考えよう。
にしても、風邪で休むってだけで大忙しだな。
いつの間にここまで交友関係が広がったんだっけ?
つい一年前までは中学の頃より孤独を感じてたのにな……
今にして思えば、高校に入ってからの私はモテばかり意識し過ぎて、女友達を作る努力を怠っていた気がする。
中学の時はゆうちゃんに私の方から話し掛けたんだよな。
あれが高一の時に出来てたら……
いや、待てよ?
確か高校受験の時も誰かに話し掛けたような……ああ、あのコオロギの友達の人だったっけ。
なんか他にもいたような気がするんだが……思い出せない。
もしその子とゆうちゃんみたく友達になってたら、違う学校生活が送れたんだろうか。
でも、仮にそうなってたら修学旅行でぼっち班のリーダーなんてやらなかっただろうし、逆に今より狭い交友関係だったかもしれない。
風邪引いて喜べなくなったみたいに、なくした物もあるんだろうけど、代わりに得る物もある。
人生何がどう転ぶかなんてわかったもんじゃねーな。
だとしたら……
高校卒業して今の交友関係がリセットされたとしても、新しい出会いがあって、案外楽しくやっていけるのかもしれないな――――
――――――――――――――――
――――――――
――――
――
「――――智子。智子」
「……ん?」
あれ、いつの間にか寝てたのか。
今何時だ……?
「ごめんね起こして。寝たままでいいから聞いて。ちょっとお母さんこれから出ないといけなくなったの」
「え? なんで?」
「おじいちゃんがまた倒れたって。今日は帰れないかも」
また!?
おじいちゃんに悪気はないんだろうけど、倒れ過ぎじゃないか……?
「夜は智貴もお父さんもいるし大丈夫だと思うけど、今はどう? 熱は?」
「んー……多分大丈夫。朝よりちょっと楽だし」
「そう。それじゃ後はよろしくお願いね」
「はい」
……ん? 誰かいるのか?
「智貴が帰って来るまではこの子が看てくれるって。今学校が終わってお見舞いに来てくれたのよ。ちゃんとお礼言っておきなさい。それじゃお母さんは行ってくるから」
「あっ うん……」
お見舞い……?
「……」
えっ、
マスク被ってるけど間違いない。
あれ……?
お見舞いはいいってLINEで返事したような……
「三者面談の案内プリント。持って行くよう先生に言われたから。真子は学校の用事で一時間くらい遅れるって」
「三者面談……? 最近したばっかじゃなかった?」
「高3は夏休みの過ごし方が大事とかで、一学期中にするんだって」
マジか。
また担任とお母さんを会わせないといけないのか……地獄かよ。
「顔色悪いね。熱は? 朝は37度って言ってたよね」
「あー……朝測ったっきり。でも寒気そんなにしないし、多分大丈夫」
「……そう」
……終わりかよ!
でも念のために測ってみようか、くらい言えよ……
まあ病人相手にペチャクチャ喋られるよりはマシだけど。
「……」
「……」
にしてもこの沈黙はどうなんだ……
もう静かに寝てろって事なのかな……?
部屋に誰かいる時点で、落ち着いて眠れないんだけど……
「汗」
「え?」
「汗かいてない? 拭こっか?」
「い、いや……もう乾いてるっぽいからいい……」
「……そう」
こいつ、もしかして看病とかした事ないのか……?
この異常な手持ち無沙汰感はそれ以外考えられねーぞ。
ったく、しょうがないから看病させてやるか。
「えーと……ちょっと喉が渇いたかな」
「あっ、忘れてた」
ん? 買い物袋……?
「病人の水分補給にはこれが一番いいって」
オー○ス○ン?
これポ○リの隣に売ってる高い奴じゃないのか……?
「い、いいの?」
「黒木さんの為に買ってきたんだから、黒木さんが飲まないと意味ないよ」
何、その少女マンガ原作のドラマで決めゼリフに使われてそうな殺し文句……
でもま、そこまで言ってるんだから素直に頂くとするか。
「……しょっぱ」
「え? そうなの?」
「あー、でも染み渡っていってる感じもする。なんか潤う」
「なら良かった」
言葉と表情が合ってないんだが!
ガチレズさんいないと、こいつの感情表現って曖昧過ぎて全然わからんな……
キバ子ディスった時くらいわかり易かったら楽なんだけど――――
「あと、冷えピタ買って……」
ピンポーン>
お、噂をすればガチレズさんか?
でもまだ一時間には程遠いような……予定が早まったのか。
「見てくるね」
「あっ うん」
今更二人っきりが気まずいってのはないけど、通訳いた方が意思疎通はし易い。
寒気も咳も殆どなくなって来たし、ちょっと余裕出て来たな。
この際だから、風邪にかこつけて色々して貰うか……?
でもゆうちゃんと違ってあいつらにはセクハラしたいとは思わんし、何がいいかな――――
「お邪魔しまーす。クロ、大丈夫?」
「……」
な、なんでネモが……!?
来なくていいってキッパリ言ったろ、確か!
「アイスは要らないって言うからポ○リ買ってきたけど……」
そっちに取ったのかよ。
っていうか家なんで知ってんだ?
まあ大方、担任から住所聞いてグーグルマップで調べたんだろうが……
「もう必要ないのかな? それじゃ冷蔵庫に入れとくね。いい?」
「あっ うん」
「ここがクロの部屋かー……へぇー……」
感想言わずに出て行きやがった。
初めて入った家を縦横無尽かよ。
「根元さん、よく来るの?」
「え? いや初めてだけど」
「そうは見えなかったけど……普通初めての家の台所入れる?」
いや入らん。
幾らネモが陽キャっていっても、普通はそんな事しないよな……
まさか台所に行くフリして弟の部屋に……!?
って、それはコオロギか。
あんな便所虫とネモを一緒にしてどうする、そもそもネモは弟に用ねーだろ……アホか私は。
なんか思考がまとまらないな……急に寒気がしてきたし。
ここに来てまた風邪が悪化したのか……?
「顔色悪いけど、大丈夫? 寝てた方がいいんじゃない?」
「あー……うん。そうしよっかな」
私が寝れば二人とも帰るだろう。
このままだと本当にうつしかねないし、この二人と同時に会話するのはしんどい――――
「お待たせ。クロ、リンゴ入るかな」
「え……?」
こいつ、まさか他人様の家の包丁を勝手に……?
「あっ、違う違う。家ですり下ろしてきたから」
すり下ろしリンゴだと……!?
そんなのもう何年も食べてないな。なんか懐かしい……
「……」
……なんだ? 更に寒気が……
「えーと、それじゃ……頂こっかな」
「食べさせてあげよっかー?」
「いらん」
「冗談だってば。はい、スプーン」
厚意はあり難いが疲れる……陽キャの看病ってのもそれはそれで厄介だな。
しかもリンゴえらい黒くなってるし……食欲引くわ。
ん、でもサッパリして美味しい。
昼殆ど食べなかったし、これはありがたいかも……
「それ食べたら夜ご飯まで横になってよっか。今タオル冷凍庫で冷やしてるから、後で取ってくるね」
何この手際の良さ……陽キャって凄えな……!
声優目指してるのに、昔からこんな性格だったんだろうか?
いや声優目指してるアニオタがみんな暗いって訳じゃないのはわかってるが……
「……」
寒気が更に……!? キュウウ>
しかも何かを握り潰すような異音が微かに聞こえてきたような……
「でも、クロの部屋って……」
「な、何?」
「意外とそこまでオタク臭くないね。ぬいぐるみとかあって女の子っぽい感じだし、ちょっと拍子抜け?」
「いちいちチェックすんなよ……」
二次元絵ポスターをベタベタ張りまくるような如何にもオタクって部屋でも想像してたのか?
それとも、自分の部屋がそうだから、私もそうだって決めつけてたとか?
……あんまり想像出来んけど。
「黒木さん弱ってるから、あんまり喋らせない方がいいんじゃ」
「あっ、ごめん」
「……」
「……」
……いや、確かにベラベラ喋られるのも困るけど、二人いて二人とも黙られるのも居心地悪いんだが。
ここ私の部屋なのに、なんで主の私が肩身狭い思いしないといけないんだよ!
「ゴホッ、ゲホッ」
「「あっ、大丈夫?」」
うおっ、今すげぇ綺麗にハモったな……
「……」
「……」
なんで二人して顔を逸らす……?
まさか今ので笑ってる?
いやいや、まさかそんなベタな……
「大丈夫? クロ」
「あっ うん。ちょっと気管支に何か入った」
「あはは。何かって、何が?」
「知らん。見えねーし」
「でも、そういうの偶にあるかも」
「え? 田村さんもそうなの? おかしいの私?」
……なんか急に会話が弾んでる気がするんだが。
咳一つでなんでこんな空気になってんの?
「根元さんって、黒木さんといつから話すようになったの?」
「あー、一年の時からクラスは一緒だけど、話すようになったのは二年になってからかな? だよね? クロ」
「え? あ、うん」
「……」
何故睨む……?
「田村さんは? 修学旅行で一緒の班だったんだよね?」
「その時からかな。黒木さん、変な事もいっぱい言ってたけど真面目に班長してくれて――――」
なんか二人ともエンジンかかってるけど、私が病人だって忘れてないか?
……いや、私もか。
さっきまでの寒気が嘘みたいに消えてるし。
よし、熱でも測ってみるか。
――――置き薬みたいに、なくしてもその分だけ補充されるのなら、大丈夫かもって思った。
でも本当にそうなのか?
こういう時間を、新しい環境になってもまた作れるのか?
卒業が……怖くなってきた。
ふと、そんな気がした。
「……へー。でもそれ勝手に出て行ったんじゃなくて、田村さん達が他の人と回るって思って遠慮したんじゃない?」
「え? なんで? みんなで回ればいいだけだと思うけど……」
……なんかいつの間にか白熱してないか?
お前ら、看病しに来てトークバトル繰り広げるとかどんだけフリーダムなんだよ……F○ガール並だな。
ピピッ>
「ぼっち慣れしてる人はそういう風には取ら……クロ、熱測ったの?」
「あっ うん。一応」
「見せてみー」
こいつ、私が見る前に取りやがった。
ま、体感では37度ちょいくらいまで下がってると思うけど……
いや、これもしかして平熱フラグじゃね?
それで『もしかして仮病?』ってネモから白い目で見られて、
そんなオチが見える――――
「……」
「……」
えっ、何?
なんで二人とも顔が青く……
「クロ! 寝て! すぐタオル持ってくるから横になって!」
「黒木さん気をしっかり持って。まだ大丈夫だから」
「えっ、“まだ”って……? っていうか何度だったの?」
「……」
何故首を横に振る……!?
「知らない方がいい事もあると思う……」
何故目を逸らす!?
「えっ、私そんなにヤバいの……? こんなに何ともないのに……?」
「落ち着いて。えーと……大丈夫。もしもの時には救急車呼ぶから」
「救急車……!?」
私死ぬの!?
死に至る熱なの!?
だから感覚マヒしてなんともないの!?
「田村さん、解熱剤があった」
「良かった……あっ、でもこれ……」
えっ何?
今『解熱薬』って言ったよな?
あの一階にあった解熱薬、持ってきたのか……?
「……」
「……」
何頷き合ってるんだ……?
ま、まさか……
「黒木さんには弟が……」
「ならその人が適任……」
近親ア○○○ァ○○を強要!?
何の準備もしてないのに!?
ピンポーン>
「遅れてごめんなさい……って、どうしたの? なんで黒木さん泣いてるの?」
「真子……それ以上は」
「?」
まさか友達だと思ってた奴らに究極の羞恥プレイを画策されるとは……
女友達怖えぇー……やっぱ大学ではモテを目指して一から出直そう。
――――結局、途中で『おじいちゃんはもう大丈夫』って連絡を受けたお母さんが途中で引き返して来てくれたおかげで『弟に 座薬入れられ もこっ散ル』の五七五は詠まれずに済んだ。
ただ、私の体温があの時何度なのかは最後までわからなかった。
あと私の部屋で覚えのない冷えピタの箱が無残な姿で発見されてちょっと怖くなった。
ちなみに、置き薬には座薬以外の解熱剤も用意されているらしい。
やっぱ備えって必要だわ……