もこっち、自分のセンスがダサくないと証明する為パジャマパーティーの開催を決意
しかし想定外のメンツが集まった
ゆうちゃんの家に行くの何年振りだっけ……
高校に上がってからは来てないよな?
去年の夏休みは結構頻繁に会ってたけど、家までは行かなかったし。
取り敢えずチャイム押すか。 ピンポン>
ってか、ピンポン鳴らすの自体久々だな。
他人の家とか普段全く行かないからな……
「あっ、もこっち! 随分早いね。まだ30分前だよ」
「うん。少し打ち合わせしたいこともあるしね」
「そうなんだ。あがってあがって。久し振りだよね、もこっち家来るの。嬉しいなー」
ったく、相変わらず良い匂いさせてやがる……
やっぱり早く来ておいてよかった。
こんなフェロモン出しまくりビッチ形態のゆうちゃんだと、ウチの学校の雌共には刺激が強すぎる。
「ゆうちゃん。取り敢えず脱ごっか」
「え? え?」
「ホラ、今回パジャマパーティーだし。早く着替えないと」
「あ、そうだね。でもパジャマパーティーって言ってもそんなすぐには……」
「大丈夫。ゆうちゃんのパジャマは私が用意してきたから。はいこれ」
「え? え? え?」
……この2年とちょっとの間、ずっと果てしなく遠いビッチ坂を駆け上がっているゆうちゃんにオシャレのセンスで勝てる気がしない。
ゆうちゃんに普通のパジャマを着られてしまうと、私の存在が霞んでしまう。
悪い気もするけど、このユ○クロ通販で買ったダサめなパジャマを来て貰おう。
「遠慮しないで。プレゼントだから」
「あ、ありがとう。でもいいの? 結構するよね?」
「家使わせて貰うんだし、これくらいはしないと」
実際には100%私情だけどな。
これなら、なんとなくゆうちゃんのフェロモンをある程度封じてくれそうな気がするし一石二鳥だ。
「わー、可愛い! もこっちありがとう!」
こんな無地のピンクのパジャマでも余裕で着こなすんだから、ゆうちゃんマジチートだよな……
可愛いってのが全く皮肉に聞こえないのも凄い。
「こみちゃんも参加できたらよかったのにな」
「仕方ないよ。こみさん、今保護観察付き執行猶予の身だから。制限が多くて外出もままならないんだよ」
「そ、そうなの? こみちゃん大丈夫なのかな」
「心配ないよ。それよりトイレ借りて良い?」
「あっ うん。そっちだよ」
ふーっ……なんとか上手く取り繕えたけど、やっぱり他人の家って緊張するな。
ゆうちゃんの家でさえこうなんだから、他の奴の家なんて相当ハードル高いぞ。
もしネモが本気で私を家に呼ぼうとしてたらヤバかったかも……
あっ、昆虫用の飼育ケースだ。
多分、去年の夏休みにカブトムシ採った時のだな、あれ。
今は空っぽみたいだが……
今年の夏はどうなるんだろう。
やっぱり勉強ばっかりの夏休みなんだろうか。
そうしなといけないってわかってはいるけど、何か一つくらい、思い出に残る事をやってもいいかな……
っと、そんな先の事を考えても仕方ない。
早くトイレに……
あれ、洗濯機があるな。
こっちは脱衣所か。
結構高そうな洗剤使ってんだな。
やっぱり香水に頼るより、普段から良い洗剤使ってる方がフローラルな匂いが染み付いて良い女風になれるんだろうか。
こっちのは……なんだ、掃除用のか。
『まぜるな危険』
……こんな表記がされてる洗剤を、好奇心から実際に混ぜてみた奴って何人くらいいるんだろうな。
少なくとも私はそんなに馬鹿じゃない。
まあ、混ぜようと試みた事は一度や二度じゃないが……実際にはやってないんだから馬鹿じゃない筈だ。
でも今回は心ならずも混ざってしまった。
もうすぐ奴らがここへ来る。
本来、混ぜたら絶対に駄目な奴らが。
そういう時はどうするべきか?
決まってる。
安全確保第一だ。
その為の作は既に打ってある。
キバ子と
これはゆうちゃんにさえ教えてない、私だけが知っている秘策。
昼の部は1~3時、夕方の部は3時半~5時半。
ヤンキーとキバ子には昼の部の時間帯、
これでキバ子と
あと、結局ネモにも夜の部の日程で招待状渡したんだっけ。
あいつ、どんだけ『今回の主旨は修学旅行のリベンジだから一緒に行動してないお前は誘わなかった』って説明しても全然機嫌直らなかったからな……
「もこっち、場所わかったー?」
「あっ、うん。大丈夫だから」
さっさとトイレ済ませて戻ろう。
私もパジャマに着替えないといけないし――――
「お邪魔しまーす……」
ゆうちゃんの部屋、相変わらず女の子っぽいな。
でも前に私が来た時よりファンシーになってる気がする。
このテディ○アっぽいスマホ入れ、中学の時はなかったような……
もしかしてこれって、元彼の貢ぎ物か?
……深く考えないようにしよう。
変に口に出してゆうちゃんの古傷を抉っても何もいい事ないしな。
「もうすぐパーティーの開催時刻だね。みんな迷わないで来られるかな」
「道案内系のアプリがいっぱいあるし、大丈夫だよ。住所も事前に知らせてあるし」
一旦駅に集合して、参加者全員で……ってプランもあったけど、それだと事前にゆうちゃんのパジャマを指定できないし、参加者によって来る時間がまちまちだから、現地集合ってことで落ち着いたんだよな。
ゆうちゃんには悪いが、今回は私の引き立て役になって貰おう。
容姿に差がある分、来ているパジャマのセンスの差がギャップによってより鮮明になる筈だ。
「それじゃ、私もそろそろ着替えておこうかな」
「うん。もこっちはどんなパジャマにしたの? これとお揃い?」
「違うよ。ゆうちゃんは可愛い系で、私のはカッコいい系……これ」
ボストンバッグは以前のダサいやつのままだけど、これまで買い換えてたら完全に予算オーバーだから仕方ない。
「え? これ?」
「うん。パジャマっぽくないように見えるかも知れないけど、ちゃんとしたナイトウェアなんだ。どうかな?」
ネットで見つけた時は興奮したな。
暗殺者風ナイトウェア。
フードが目深に被れるタイプで、アイマスクも不要な一品。
全身真っ黒だけど、スカートにはフリルが付いてるから可愛さもアピール可能(しかもスカートはミニ)。
そしてフードにはケモ耳が付いてるヤンキーホイホイ仕様。
実用性はもちろん、可愛さ、カッコよさ、そしてテンプテーション的な要素も兼ね備えた完璧なパジャマだ!
「あっ うん。もこっちに似合ってるよ」
よし、ゆうちゃん票はまず獲得!
万が一の時の事も考えてもう一着別のデザインのも持ってきてたけど、これでいけそうだな。
ただ……ゆうちゃんは少しイエスマンっぽいところがあるからな。まだ油断はできない。
ピンポーン>
「あっ、誰か来たみたいだね」
「私が対応するから、ゆうちゃんは部屋で待ってて」
さて……勝負はここからだ。
殆ど知らない人の家を訪ねる不安感。
そこに突然現れる、クールでハイセンスなパジャマを着た私。
このシチュエーションがポイントだ。
誰だって、緊張してる時に知ってる奴を見かけたら、普段以上にそいつに親しみや愛おしさを感じるもの。
俗に言う吊り橋効果だ。
この場合ゆうちゃん家効果だけど。
「開いてる。どうぞ」
さあ、私の虜第一号になるのは誰だ……?
ガチャリ>
「……え? 誰?」
なんでこいつが一番乗りなんだよ! 一番私から遠い存在なのに!
「あっ……く……黒木だけど」
くそっ、フード目深に被ってるからこいつじゃ私ってわからないだろうよ、そりゃ。
知らない人の家から誰かわからない奴が出て来たんじゃ、センス良いとかそれ以前の問題だ。
せっかくの作戦が一瞬でパーかよ……
「まこっちは来てる?」
「い、いや……来ないけど」
「え? なんで? 誘ってないの?」
「誘ったけど用事があるって……」
ああそうか、こいつガチレズさんと交流あるんだった。
だから今回参加したのか?
でもそれだったら私じゃなくてガチレズさんに声かけるよな……
「他のやつらは? 何人くらい集まる予定?」
「え、えーと……ここの2人含めて6人、かな。1人は遅れて来るって」
「へー……まこっち抜きでも4人は集められるんだ」
な、なんだ……?
『集められる』って……どういう意味だ?
「とりあえずお邪魔しまーす。つーかどの部屋?」
「あっ、こっち……」
なんかいきなり出鼻挫かれてしまったな……
目的が読めない上に1mmも親しくないから、どう接していいのかもわからん。
少なくとも性格が悪いってのは知ってるが……
……待てよ。
確かこいつ、ネズミーで結構派手にモメてたよな。
まさかこいつ……
今ツルんでるグループでハブられたから、別のグループに転がり込もうとしてるんじゃ……?
だとしたら、今日の参加は次の居場所を物色する為……?
ま、何にしろアホだなこいつ。
私にはグループとか派閥とか関係ないし、そもそもヤンキーやネモは別につるむ
さすがに学校の違うゆうちゃんに取り入ろうとはしないだろうけど……一応気を付けておくか。
ピンポーン>
ん? また誰か来たか?
「ちーす」
家の人出て来てないのに勝手に上がって来た!?
この厚かましさと常識のなさはヤンキー以外あり得ない。
なら私のセンスを見せつける最大の
即刻玄関に引き返す!
「こ、こんちゃー……」
「あ? 誰だてめー」
こいつもかよ!
このネズミー馬鹿には中の人を見極めるって概念がないのか……?
仕方ない、フードを一旦脱いで……
「わ、私だけど……」
「お前かよ。なんでそんなハロウィンみたいな格好してんだ? おっ、さては今からネズミー・ハロウィーンに行く予定立ててんだな?」
すっかりネズミー馬鹿キャラが定着してやがる……!?
っていうか、フード脱いだらケモ耳見えないじゃん! ヤンキー対策の意味ないじゃん!
馬鹿か私は……くそっ、完全に予定が狂ってきてやがる……!
「ちょっとー、早く案内してくんない? ほったらかしとか意味わかんないんだけど」
うっせーキバ子! お前はそのキバで肉でも食ってろ!
「ん? もう誰か来てるのか?」
「あっ うん。キバ……えっと……南さんが」
「南?」
……まあそりゃ、不思議に思うよな。ほぼ接点ないからな。
「ねえってば。何して――――」
あっ、キバ子が固まった。
どう考えても相性が良い組み合わせじゃないしな……
「よ、吉田……さん、も参加してたんだ。へぇー意外ー。こういうの興味ないって思ってた」
おっ、ビビりながらも行ったな。意外と根性あるのか?
さて、ヤンキーはどう返すかな……?
「お前こそなんでいんの?」
「――――」
キバ子がレ○プ目に!?
容赦ないと言えば容赦ないが……何か今の一言にトラウマでもあるのか?
「……(ブツブツ)」
レ○プ目のまま何か呟き出した……これって結構ヤバいんじゃ……
くそっ、ゆうちゃんの家で傷害事件とかシャレにならんぞ。
なんとか落ち着かせないと……
「み、南……さん? えっと、よ、吉田さんには別に悪気はないと思うから、そんな思い詰めなくてもいいんじゃ……」
「は……? 悪気がないとか……んなワケねーだろ……あんなこと言う奴マジで死ねば……」
うわ……これやべーな、精神崩壊寸前だろ。
ヤンキーの方を説得するしかないか……
「よ、吉田さん。ちょっと(ヒソヒソ)」
「あ? なんだよ?」
「南さん傷付いたみたいだから謝った方がいいんじゃ……」
「は? なんで? あたし何かしたか?」
やっぱ悪気ゼロかよ……これだからヤンキーは……
どうする?
正論で諭しても私がキレられて終わりだろうし……
「はぁ……やっぱそうだよね。ヤンキーって人傷付けても謝れないよね。謝ったら負けみたいな謎の対抗意識とかプライドがあるもんね。そういう文化だし仕方ないか……」
「あ? てめーあたしがそんなガキ臭ぇこと考えてるとでも思ってんのか?」
「い、いや別に……」
……ん?
今のって……
「おい。なんか知らねーけど悪かったよ」
おおっ、ヤンキーが謝罪を……!?
悪いと思ってないのに謝れるなんて、こいつ意外と大人なのか?
「……な、なーんだ。ビックリしたじゃん。全然気にしてないから」
明らかに気にしてるけど、レ○プ目じゃなくなってるし一応落ち着いたみたいだ。
遠足でモメてた時は喚き散らしてた気がするけど、さすがに相手がヤンキーだとそうもいかないか。
とにかく大事にならなくて良かった。
「それで他には誰が来るの? あとは根元とか、あいつ……田村、も?」
そうか、こいつ参加表明した割にその後殆ど接触してこなかったから、日時とここの住所くらいしか教えてないんだった。
「う、うん……一応その2人だけど、田村さんは来られるかどうかまだわからないって」
「ふーん。べ……ベストメンバーじゃーん! ハハ、アハハ」
一瞬、『別に来なくてもいいけど』って言いそうになったのを必死になって堪えたような……
「おい、いつまでもこんなトコでくっちゃべってないで、部屋行くぞ」
「あっ うん。こっち」
確かに、ゆうちゃん待たせたままになってんな。
この2人を会わせるの未だに抵抗あるけどな……特にデリカシーゼロのヤンキーが何言い出すかわかったもんじゃない。
「♪~」
まあ、
「ねぇ、前は大勢でつるんでなかったよね。遠足の前とかに何かやった?」
「え? いや、特に何もしてないけど……」
なんだこいつ……もしかして私が遠足でぼっちになるのが嫌で事前に媚び売りまくったとでも思ってんのか?
「でも吉田と教室で喋ってるのそんなに見たことないし、仲良さそうには見えなかったけど?」
……なんでこいつそんなこと知ってんの?
そんなの私の教室での動向をずっとマークしてないとわかりっこないよな?
え……?
もしかしてこいつ……私のストーカー?
いつも私を監視してるっていうあの『美莉』とかいう奴、まさかキバ子のことなの!?
そういえば、こいつの下の名前知らないし……なんかもうそうとしか思えなくなってきた。
って事は、グループからハブられたとかじゃなくて私目的!?
遠くから眺めるだけじゃ満足できなくなって、パーティーにかこつけてついに接触を試みたのか……!?
ど……どうする?。
私自身もヤバいけど、私と仲良くしてるとこ見られたらゆうちゃんもヤバいぞ。
ここはもう、ムリヤリにでも理由を付けてお帰り願うしかないか……?
もしパジャマ忘れてたらその時点で追い返す……よし、それでいこう。
「み、南さん。パジャマ持ってきた? 今回のパーティーでは必須なんだけど……」
「当たり前じゃん。パジャマパーティーでしょ? ほら」
チッ……まあ必須って招待状に書いてたしな。
何か他の手を考えないと……
「ジェ○ピケもいいけど、やっぱローラ○シュ○イっしょ。見て見てこのリボン。ヤバくない?」
知らねーよパジャマのブランドなんて!
つーか私のパジャマの方がずっとヤバいし!
そんな花柄の何処がいいんだよ?
そんな事より、こいつを追い返す手段……手段……
「あ、そう言えばこれ買った時、同級生っぽい奴がコワリィッチのルームウェアじーっと見ててマジうけた。いるよね、たまにそういうガキのまま体だけ成長した女。大抵メンヘラで、喋ってみたらくそキモいんだけど。後ろ向いてて顔見えなかったけど、どうせニヤニヤしながら眺めてたんだろね。あーこわ。アハハ」
「ふーん……」
あ。
半開きになってるヤンキーの鞄からなんか青いのが見えたんだが……
「え? な、何? 吉田……さん? なんでそんなキレてんの?」
「教えてやろうか……?」
「あっ、わかった! コワリィッチの話聞いてイラッとしたんでしょ? 吉田さんみたいな人はああいう子供向けのキャラとか嫌いだよね。っていうか、あいつよく見たら口無駄にデカくてキモいもんね!」
「オラーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「なっ、なんで!? 黒木ちょっと助け……あーーーーーーーっ!」
「待てコラてめーーーーーーーー!」
血相を変えてゆうちゃん家から逃げて行くキバ子を、ヤンキーが鬼の形相で追いかけていく……
なんか見た事ある光景だな。
ト○と○ェリー?
一応希望通りの展開になりそうだけど……なんだろう、胸に去来するこの空しさは。
結局、キバ子が私のストーカーかどうかハッキリとはわからなかったけど――――
「もこっちー、随分遅いけど何かあった?」
「ゆうちゃんは知らなくていいことだよ」
「?」
取り敢えず今日知ったことは、あいつが凄いバカってことだな……
次回に続きます!