10分で読めるわたモテSS   作:umadura

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モテないし女二人で買い物に出かける

 

 

 

 

 今日は付き合ってくれてありがと。

 どうしても欲しかったから、これ。

 

 あはは、だよね。もし1人で来てたらこんな風に笑って帰れなかったかも。

 

 ……これが本当に自分の将来に役立つかどうかなんて、わからないんだけど。

 

 え? うん。

 一応考えてはいるけど、先のことはわからないから。

 自分がやりたい事とできる事が一致すれば最高なんだけど。

 

 趣味を仕事にしたら、それが楽しくなくなる……って聞くし、それはちょっとだけ怖いかな。

 でもちゃんと楽しめてる人もいっぱいいるから、多分大丈夫かな?

 

 不安?

 うーん……半々くらい。

 

 そう、期待半分、不安半分。

 やっぱり競争激しい世界だから。

 

 今っていろんな表現方法が試されてるし、ちょっと変わったのが受けることもあるから、チャレンジし甲斐があるとも言えるけど……

 見向きもされない怖さって、どうしてもあるから。

 でも頑張らないとね。

 

 あ、待って。

 はい、これお礼。

 大した物じゃないから気にしないでね。

 

 んー……今日だけじゃなくて、あの時のも兼ねて、かな?

 うん、そう。あの時。

 

 あの時は本当にありがと。

 ちょっとビックリしたけど、それも良い思い出かな。

 

 それと、さっきの話、真面目に聞いてくれて嬉しかったよ。

 別に聞かれて恥ずかしいって訳じゃないけど……いいかな?

 そう、2人だけの秘密。

 

 それじゃ、またね。

 あっ、もしよかったらまた――――

 

 

 ――

 

 ―――― 

 

 ――――――――

 

 ――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「――――やっぱり3年生の三者面談って、将来のこと具体的に聞かれるよね?」

 

 ……っと。

 今一瞬ボーッとしてたな。

 ガチレズさんの声がやけに遠くに聞こえたぞ。

 

 昨日深夜にテレビ付けてたら、なんかいきなりテニス始まったからつい見はまったんだよな。

 普段スポーツとか全く見ないし、知らない外人が二人でパコパコ打ち合ってるだけの退屈な映像なのに、そのパコパコがなんかリズミカルで妙に心地よかった所為だ。

 

「2年の時も聞かれなかった?」

 

「聞かれたけど、そこまでしっかりとじゃなかったよ。やっぱり進路が第一だったし……黒木さんは?」

 

「へ? あっ、えーと……どうだったかな」

 

 しっかり話を聞いてなかった、とは言えないな。

 なんとなく、三者面談がどうこうってのは頭に残ってるけど……

 

「黒木さんって文系が得意だったよね。やっぱり大学も文系?」

 

「あー……今のところはそうだね。今更得意科目が変わるとも思えないし」

 

「ゆりは行く大学決めてる?」

 

「まだ。今の時期に絞っても意味ないし」

 

「それはそうだけど……目標がないと宙ぶらりんっていうか」

 

 なんか、昼飯時にこういう話題が出るのって受験生って感じするよな。

 

 これが夏過ぎて秋くらいになると、昼休みもみんな遊ばないで机に向かってカリカリやってるんだろうか?

 いや、もう夏休みの時点で合宿みたいなのするんだろうか?

 受験生が身近にいた事ないからわからんな……

 

「せめてやりたい事とか将来何になりたいとかが決まってたら、そこに向かって頑張れそうだけど……」

 

「真子はそう言いながら影でしっかり頑張るタイプでしょ」

 

「そ、そんな事ないよ? ゆり、もしかして修学旅行の時の事まだ根に持ってる?」

 

「まさか。いつの話してんの」

 

「目が笑ってないんだけど……」

 

「そう?」

 

 ……田村さん(こいつ)、ガチレズさんと話してる時は陰キャの面影薄れるよな。

 そこが余計陰キャっぽいんだけど。

 

 逆にガチレズさんはそういう所が庇護欲擽られてるのかもな……

 そんな百合分析しても仕方ないが。

 

「でも、三者面談の時に将来についてはっきり言えた方が推薦には有利かも」

 

「ゆりもそう思う? 私もそう思うんだよね……黒木さんはどう?」

 

「どうかな。やっぱり自分の夢語れる生徒が心証はいいのかも」

 

 ……もし本当にそうなら、例え嘘でもなんでも『私はこれになります!』って将来の夢、持ってた方がいいのかもしれないな。

 それも、しっかりとした知識のある分野で。

 しかも担任がよくわかってない分野なら、誤魔化しが利きそうだ。

 

 私の場合、将来の夢とか全くピンと来ない。

 自分がなりたいものっていうより、なれるものになりたいタイプだからな。

 変に背伸びして痛い目見るより、7割くらいの力で評価されたい。

 

 となると……エロ関連に強いのを活かしてAV業界に殴り込むか?

 いやいやいや、そんな夢を学校の教師に語ってどうする……完全にイカれてる奴じゃねーか。

 

 ならラノベ作家はどうだ?

 事実上エロ小説を書くようなもんだし。

 そうじゃないラノベも山ほどあるのは知ってるけど、手っ取り早く売れるには多少時代遅れでもエロが一番だからな。

 

 それに、私ほど作家の気持ちがわかる読者はいない。

 って事はつまり、読者に気持ちを伝える作家になれる才能もあるって事だ。

 エロい事考えて書けばベストセラー作家になれるなんて、人生チョロ過ぎだよな。

 

 でもなあ……ラノベ作家になったら年上の女編集が付いてボロクソ言われたり勝手にくそダサいタイトルに変えられたりしそうだしな……

 

 なら純文学を書くとでも言ってみるか?

 いや無理だ……馬鹿みたいに分厚い本とか書く以前に本棚に並んでるの見るだけでウンザリするし、文学少女っぽい服も持ってない。

 

 ……マンガ家はどうだ?

 絵は描けないが、適当に絵を描ける奴を捕まえて原作者になるって手もある。

 このクラスにもいるくらいだし、探せば何処にでもいるだろ、絵が描ける奴なんて。

 

 とはいえ、マンガの原作者になる方法ってよくわからん。

 どういうコネがあったら連載取れるんだ……?

 

「あっ、そういえば黒木さん」

 

「へ? な、何?」

 

「食後の散歩ってまだやってるの? 日課とか言ってたけど」

 

 一体いつの話だよ!

 なんでそんなどうでもいい事覚えてるんだよ。お前もゆうちゃん系か?

 ただでさえ名前似てるから間違えそうになる時あるんだぞ……勘弁してくれよ。

 

「あ、ああ……うん。じゃあ今日は早めに行こうかな」

 

『スマンありゃウソだった』とか『もう止めた』って言えば済む話だけど、認めるのもなんか癪だ。

 さっきの続きでも考えながら、廊下で食後の運動でもしよう。

 

 ええと何だっけ……そうそう、マンガの原作者になる方法だったな。

 方法はわからんけど、もしなれるんなら楽に連載できる所がいいよな。

 

 やっぱ、き○ら系が狙い目か?

 原作っつっても日常系四コマにストーリーとか要らないから、人気出たキャラに『そんな大きいの入りません~』とか適当に卑猥な妄想が捗るセリフ喋らせとけばいいだけだしな。

 しかも単行本板チョコ並に薄いから低燃費で印税稼げそうだし……

 

 あっ、そうだ!

 同人誌なら更に薄いぞ。下敷きくらい薄いよな、確か。

 

 それに同人作家なら簡単になれる。

 要はコミケに申し込めば、その時点でもう同人作家なんだよな?

 

 どうせそんなこと担任が知る筈ないし、『将来作家を目指してます。まず自費出版で本を出して、売れたら出版社から声が掛かると思います』とでも言えば心証良くなるんじゃね?

 

 取り敢えずそれで行くか。

 ……そういえば、薄い本って家にないな。

 今更だけど一度買ってみるか。

 

 通販だとお母さんに対応された時が厄介だ。

 と○のあなで直接買おう。

 

 問題は……買ってるところを生活指導の教師とかに見られるとマズいって事だ。

 時期が時期だけに、下手は打ちたくない。

 見張り役が要るな。

 

 出来れば、同人誌とは縁のなさそうな奴がいいかな。

 仮に教師や同じクラスの奴に見つかっても、あの子と一緒だしエロ同人なんて買う訳ないか……ってなりそうなクラスメート。

 ゆうちゃんだと放課後に合流するの大変だし、見張り役ちゃんとこなせるか微妙だからな……

 

 よし、決めた。

 ネモを誘ってみるか。

 

 あいつ将来エロい仕事もやることになるし、なんなら資料として貸してやってもいいし。

 今のエロゲーのエロシーンなんて殆どみ○○○語使ってるし、み○○○な○○○の同人誌も買おう。あっちの趣味はないが……

 

 でも……どうやって誘おう?

 ストレートに『放課後同人誌買いに行くから一緒に来て』って言ってみるか?

 

 まあ、ネモだったらそれでいいか。

 あいつなら買い物の時の会話にも困らないだろう。最近妙にグイグイ来るし。

 

 多分、帰り道はこんな感じになるだろな。

 

 

 

 今日は付き合ってくれてありがと――――

 

 

 

「あっ黒木さん。丁度よかった」

 

「へ?」

 

 えっと……か、加藤さん?

 

「今日、放課後空いてる?」  

 

「え……あ……空いてる……けど」

 

「良かった。少しの時間だけでいいんだけど、付き合って貰えない?」

 

 な、なんだ?

 もしかしてまたネイルのお誘いか?

 

 前に人差し指以外もやろうかって言われたけど、結局有耶無耶になってたんだよな。

 その件か……? 

 

 1本でも結構時間掛かったし、両手全部やるとなると2時間くらい掛かりそうだよな……

 そうなると放課後食い潰す事になるし、同人誌買いに行く時間も必然的になくなるぞ。

 

 よし、断ろう。

 幾ら女子力が格上の相手とはいえ、私は絶対に負けたりしない!

 

「い、いいけど……」

 

 口が言うこと聞かない……!?

 くそっ、直前にエロ同人のこと考えてた所為で即落ちしてしまった……

 

「ありがと。買いたい物があるから付き合って貰いたいんだけど、大丈夫?」

 

「か、買い物……? う、うん……大丈夫……かな」

 

「それじゃ放課後お願いね」

 

 ……約束してしまった。

 幾らちょくちょく話し掛けてきてくれる人とはいえ、まさか一緒に買い物に行く事になるとは。

 

 でも買い物ならラッキーだ。

 そんなにかからないって言ってたし、そのままの足で同人誌買いに行けるな。

 まあ、大分遠回りになるだろうが……

 

 いや、待て。

 それだと見張り役がいなくなるな。

 まさかあの人にそんな役やらせる訳にはいかないし……仕方ない、今日は諦めるか。

 

 でも、なんで買い物するのに私を誘う必要があるんだ……?

 自己紹介の時にプ……なんとかラのアクセ集めるのが趣味とか言ってたし、もしかして私に似合うアクセを買ってくれるのか?

 

 プレゼントされる理由なんてないし……ネイルの時みたいに私でコーディネートのお試しでもしようとしてるのかもしれないな。

『チビで貧乳な女に似合うアクセはこれだ!』とか、『目の下にクマがある女はこう飾れ!』みたいな。

 ……自分で言ってて惨めすぎるんだが。

 

 そう言えば遠足の時も結構私に構ってくれたよな。

 あの時から密かに機会を窺ってたのかも知れないな……

 

 あっ!

 そういえば私、ネイルのお礼ってしてなかったよな……

 

 まさかお礼待ち状態だったとか……?

 いやいや、ある訳ない。アホか私は。

 

 いかんな……発想が完全に陰キャ寄りになってる。

 相手はクラス内でも指折りのリア充なんだ。

 私の思考を投影しても、自ら陽の光を浴びて消え去るマヌケなヴァンパイアにしかならない。

 

 とはいえ、こうやって思い出した以上何もしないってのもな……

 向こうが『やっていい?』って頼む形だったから、別にいいかと思ってたけど……この機会に何かお返しするか。

 

 幸い、多少の持ち合わせならある。

 これでさり気なくプ……なんとかラのアクセをプレゼントしよう。

 場合によっちゃプレゼント交換になるし、絶望的なセンスの差に打ちひしがれそうな気もするが、ただ与えられるだけよりはマシだ。

 

 多分向こうが先にプレゼントしてくるだろうから、その後で渡そう。

 帰り道の会話をシミュレートしてみるか。

 私だってその気になれば上流階級との会話もキッチリこなせるってところ、見せてやらないとな。

 

 いつもの話し方じゃダメだ。ドモるのもどうにかしないと。

 なるべく陽キャみたいな口調で、堂々と話すのを心掛けよう。

 えーと……例えば『ありがとう』じゃなくて『ありがと』の方がいいよな。陽キャ共ってフレンドリーなのが美徳とか思ってそうだし。

 

 よし、大体こんな感じで……

 

 

 

 今日は付き合ってくれて――――

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン>

 

 

 げっ……もう昼休み終わりか。

 仕方ない、放課後までにイメージトレーニング重ねておくか。

 

 

 

 

 ……あれ? もう放課後? なんか早くない?

 

 で、でも一応20通りくらいの会話はこなしてみせたし、イメージさえ完璧ならきっと上手くいく筈。

 今の私はバ○のイメージトレーニング並に仕上がってるぞ。

 

「黒木さん、帰る?」

 

 ……あ、そう言えばまだ田村さん(こいつ)らに話してなかったな。

 

「えっと、今日は用事があるから」

 

「また成瀬さんと会うの?」

 

「あっいや。今日は……」

 

「お待たせ黒木さん。行こっか」

 

 ちょうど本人がやって来たな。話が早い。

 

「えっと、そういう訳だから……」

 

「……………………………………………………そう」

 

 えっ、何この間。随分固まってたな。

 しかも再起動した途端に離れて行ったし。

 いや、私が逆の立場でも多少は近いリアクションになるかもだけど。

 

「あっ、いつも一緒に帰ってるんだよね? だったら――――」

 

「い、いや別に毎日って訳でもないから……」

 

「そう? ごめんね、いつもの生活リズム乱して」 

 

 おお……これが上流階級の気配りか。

 ガチレズさんも気配り上手だけど、なんか質が違う気がする。まろやかっていうかミルキーっていうかママの味っていうか……

 

「ゆりー……あれ? 黒木さんは?」

 

「今日は用事があるって」

 

 ……あいつには一生無理な境地だな。

 

「それじゃ行こっか」

 

「あっ うん」

 

 緊張……いや、緊張なんてしなくていいんだ。

 相手はあくまで同級生、クラスメート。

 シミュレーション通りにすれば自然と会話も弾むし、優雅な放課後が待ってるんだ。

 

 落ち着け……落ち着けぇ……はぁはぁ……ちくしょう髪から良い匂いしやがる……

 

「ど、どうしたの? 息が荒いけど」

 

「い……いや、大丈夫! ちょっと理由もなく咽せそうになっただけだから!」

 

「あー、あはは。あるある」

 

 よ、よかった……思った以上に適切かつ円滑な応答が出来てるぞ。

 これなら本当にいけるかも……

 

「と、ところで、今日はど、何処に行くの……?」

 

「言ってなかったっけ? プロのネイリストがやってるお店なんだけど」

 

「……え?」

 

「どうしても欲しいジェルが今日まで30%引なんだー。普通のはドンキとかマツキヨにもあるけど、欲しいのはそこにしかなくて。2つ買いたかったんだけど1人1つまでしか買えないみたいで、今日に限って茜も他の子も用事が入ってて……黒木さんが一緒に来てくれて本当助かった」

 

「そ、そうなんだ。はは……お役に立てて……」

 

 よくねぇえええええ! アクセ買いに行くんじゃないのかよ!

 想定してた展開がもう根底から覆されたぞ!?

 まだ学校の廊下なのに!

 

 こ、こういう時はどうしたらいいんだ?

 そ、そうだ! 初心に返って乙女ゲームのシミュレーションを思い出せ!

 相手は男子じゃなくて女子だけど、乙女ゲーのシナリオ書いてるのは大抵女だし、乙女ゲーの男の行動パターンもほぼ女の思考になってるよ! 絶対!

 

「黒木さんって、普段どんな服着てるの?」

 

 来た!

 どうやってこの難局を乗り切るか……!

 

 

 1.エロかっこいい智子は突如冷静で的確なアイデアがひらめく

 2.友達がきて助けてくれる

 3.乗り切れない。現実は非情である

 

 

 ……なんか違うの出て来た!?

 これ全然乙女ゲーの選択肢じゃないんだけど!

 

「え……えっと……その……ふ、普通かな……」

 

 強制的に3が選ばれてしまった……現実の選択肢は無条件で時限式かよ。

 

「黒木さんスカート長いのが好きみたいだし、サッシュベルトとか似合いそうだけど。今度コーディネートさせてくれる?」

 

「へ!? あ、え……そ、そうだね……お願いしよっかな……」

 

 ダメだ。何にも出て来ない。

 もう本当に何にも全くこれっぽっちも言葉が出て来ない。

 

 今更軌道修正なんて出来ないし、もうずっとこの感じでいくしかないな……はは――――

 

 

 

 

「ありがとうございましたー」

 

 や、やっと終わった……

 

 まさかこんなに怪しげなビルにある店とは……ネイルショップってもっと明るいイメージだったんだが。

 もし事前に聞いてなかったら、いかがわしい連中の事務所だって本気で勘違いしてたぞ。

 危うく『アンタあたしを売ったわね!?』って叫びそうになったからな……同人誌を買う予定だった一日がこんな事になるとは……

 

 にしてもプロのネイリストの爪ってアレだな、ちょっとしたグロ映像だな。

 蓮コラ並にヤバかったぞ。

 

 ……まさか、ああいうの目指してるんじゃないよな?

 

「ど、どうだった……? あの店員の爪」

 

「んー……ちょっと私の趣味とは違ってたかな」

 

 よかった、私の感性がおかしい訳じゃないんだな。

 実際、私にやってくれたネイルは全然違うタイプのだったし。

 あんなゴテゴテした石みたいなの盛られてたら発狂してたぞ。

 

 でも、ちょっと寂しそうだな。

 本当なら店員と仲良くなって、色々聞いたりしたかったんだろうけど、趣味が合わないとそういう気にもなれないんだろう。

 ここで気の利いた言葉の一つでもかけて、当初予定してたお礼のプレゼントでも渡せれば絵になったんだろうけど……

 

「ざ、残念だったね」

 

 ……こんな事しか言えない。

 もし立場が逆だったら、向こうは絶対気の利いた言葉で慰めてくれそうなのに。

 私にも一生無理な境地だな。

 

「ん? そうでもないよ?」

 

「へ?」

 

「今日は付き合ってくれてありがと」

 

「……あ、う、うん」

 

「どうしても欲しかったから、これ」

 

「さ、30%引って結構大きいもんね」

 

「あはは、だよね。もし1人で来てたらこんな風に笑って帰れなかったかも」

 

 意外と、思った以上にショックだったんだろうか?

 まあ、高校生がプロのネイリストと親しくなるチャンスなんてそうそうないしな。

 

「……これが本当に自分の将来に役立つかどうかなんて、わからないんだけど」

 

 将来……か。

 やっぱり、そろそろ私も真面目に考えないとダメなんだろうか。

 同人作家を本気で目指すならともかく、今の私にそんな気はないからな……

 

 そんな私がネモとかこの人みたいなちゃんと夢を持ってる人間を評価する資格なんてないんだろうが、もう少し話を聞いてみたい。

 ネイルなんて私の人生には一切関わってこない分野だし、この人も卒業したら私とは全く関係ない世界で生きていく人なんだろうけど……

 

「やっぱり将来はネイリスト志望なんだよね?」

 

 もう少し話をしてみたい。

 なんとなく――――そう思った。

 

 

 

 

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