10分で読めるわたモテSS   作:umadura

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モテないしゆるくキャンプする

 

 

 

 

『カレーめん♪ カレーめん♪』

『しかし……うまそうに食うな』

 

 

 これが噂のキャンプアニメか。

 ネモが前期のイチオシって言ってたけど、確かに受けそうなアニメだな。

 夏頃には全国各地でぼっちキャンパーが溢れかえるんじゃないか?

 

 実際、これ観る前はソロキャンプなんて何が面白いのかサッパリ理解出来なかったけど、ちょっと興味湧いてきたしな。

 野外で食べるご飯がやたら美味そうに見えるのもポイント高い。

 このあと焼肉もするんだよな。なんか肉焼く賽銭箱がすぐ売り切れたって話題になってたし。

 

 原っぱで肉焼くとか原始人の所業だけど、一人なら別に原始人になろうと猿になろうとOKだからな。

 っていうか人間って大抵一人だと猿になる生き物だし。

 

 この手の女同士がイチャイチャする萌え豚アニメはゴミカス呼ばわりしてきた私なんだが……最近はそこまでの嫌悪感はないな。

 寧ろちょっとした親近感さえ覚えるくらいだ。成長して心が広くなったんだな。

 

 まあ、だからといって自分もキャンプしてみようとは全く思わんけど。

 くそ面倒そうだし、金も掛かりそうだし……

 

 でも一応、2話目も観ておくか。

 

 

『それ夏休みにキャンプやろうとしてネット注文したのに、9月に届いてほったらかしになっとった激安テントやないの』

『きゅ、980円……?』

 

 

 きゅ、980円……?

 テントってそんなに安いの?

 TE○GAより安い……いやTEN○Aの方がまだ安いか。

 

 ま、まあ、幾ら安くたってキャンプなんてやる気はしないけど。

 もう高3だしな……アニメの真似して周囲のリアクション待ちでワクワクするのが許されるのは中2までだろ。

 

 でも一応、3話目も観ておくか――――

 

 

 

 

 ピンポーン>

 

「どうもー」

 

 ……買ってしまった、格安テント。

 980円じゃなかったけど、2,000円台でしかも即日配達なんて書いてるから、つい……

 

 いや、今更後悔して何になる。

 そんな事しても私の財布から旅立った2,989円はもう帰って来ないんだ。

 今の私に出来るのは、これを一回でも使って自撮りしまくって友達に自慢する事くらいか……

 

 幸い、家には一通りのキャンプ道具が揃ってる。前に弟がキャンプ行った時のお古だけど。

 

 やってみるか、ぼっちキャンプ。

 取り敢えず近場のキャンプ場を探してみよう。

 

 やっぱり市内にはあんまりないな。

 なるべく移動距離が少なくて……あと有名所は人が多くてウェーイ勢から絡まれる可能性もあるし、人気のないキャンプ場にしよう。

 

 口コミ情報が少なくて、使用料が安くて、初心者向けで、ネット予約が出来て……それと管理人が無口な所だな。

 キャンプ最大のネックはキャンプ場の管理人と会話しなきゃいけない事だからな。

 

 手続きの時だけならどうにか耐えられるけど、キャンプ中に見回りに来て世間話されたり己のキャンプ道とか語られたりしたら最悪だ。

 想像するだけで全身が震えて来やがる……

 

 口コミとかキャンパーのサイトとか見る限りだと、態度が横柄な管理人も結構いるみたいだな。

 逆にクレーマーレベルのキャンパーが逆ギレのレビュー晒してるのも多いみたいだが……

 

 

 

 

 ……はっ!

 ついクレーマーと常連キャンパーとの熱いレスバトルに魅入って無駄な時間を使ってしまった。

 どっちもクズな性格してるから会話がいちいち面白過ぎる。

 

 にしても、キャンプのマニアってアニオタや鉄オタと同じ臭いするんだが……急に怖くなって来たぞ。

 

 やっぱ止めとくか……? 

 管理人にネチネチ文句言われたり常連客からウダウダ絡まれたりしたら、寿命が1年くらい縮まりそうだ。

 あのアニメだって、そういうイヤな所は完全排除して良い部分だけを強調して描写してるんだろうし……

 

 いや。

 ここで折れたら、アニメに影響されてギターを買ったものの一回も弾かずにヤ○オクで『未使用です!』とか堂々と書いて売った連中と同類になってしまう。

 

 私はあいつらとは違う。

 意地でも一回は使って、あとは弟にでも格安で譲ろう。

 

 ん? AC電源付きサイトとかあるんだな。

 テントで電気ストーブも使えるのか。

 

 ……それ、キャンプする意味あるか?

 

 今の時期は夜でもそんなに寒くないし、電源はなくていいか。

 とにかく他人とのコミュニケーションを極力取らなくていい所は……

 

【森林だいしんりん公園】

 

 おっ、ここは良さげじゃね?

 なんかドッキリ食らって動揺しまくってる時にアワアワして付けたみたいな名前なのはともかく、チェックイン自由ってなってるし、そもそも管理人がいないっぽい。

 

 しかも料金無料……!

 車で1時間くらいの距離だし、明日土曜だし、お父さんに連れてって貰うか。

 

 後は何を持って行くかを決めとこう。

  

 テントと寝袋(シュラフ)は決定として……他に何が必要だ?

 確かあのアニメの4話くらいにそういう話があったような……お、ここだここだ。

 

 ええと、洗面道具、着替え、トイレットペーパー、ごみ袋、焚き火の道具、調理道具、食器、レジャーシート、サンダル、懐中電灯、救急セット……用意するのはこれくらいか。

 なんだよ、キャンプって意外とチョロいな。

 

 あと大事なのは食い物だな。

 焼肉は絶対食いたい。グリル台とか多分レンタルできるだろうし。

 他にも、焼きマシュマロと焼き鳥と……餃子鍋は下準備面倒臭いから餃子だけ持って行って適当に焼くか。

 

 これ全部買うと結構な浪費だな……肉は一番安いのにしとくか。

 タレに漬け込んだのは安いし賞味期限も長めだから、あれ買おう。

 

 そうだ、虫取り網も持って行こう。

 この時期はまだトノサマバッタはいないだろうけど、ショウリョウバッタならいるかも。

 オニヤンマとギンヤンマもゲットできるかもしれないし。

 

 ゆるキャ○△を観て思い出した。

 構ってくる奴が増えて、周りに人がいる環境に慣れきってしまった所為かもしれない。

 いつの間にか……萌え豚アニメの主人公みたいなユルい日常を淡々と繰り返してきた。 

 

 それにももう飽きた。

 かつての自分に戻るのも悪くない。

 

 明日の天気は……曇りか。

 降水確率は10%だし、大丈夫そうだな。

 

 なんか思ってたよりワクワクしてきた……!

 明日は久々に昔の感覚を取り戻せそうだ。

 あの、何もかもがキラキラ輝いて見えた子供の頃を――――

 

 

 

 

「本当に一人で大丈夫か?」

 

「大丈夫。もう行っていいよ」

 

「何かあったらすぐ連絡……」

「だから大丈夫だって」

 

「……わかった。夜にはお母さんに連絡入れるようにな」

 

 やっと行ったか。

 荷物とか全部運んで貰っておいて邪険にするのもなんだけど、一刻も早くぼっちキャンプの気分に浸りたかったからな。

 お父さんといたんじゃ、ただのファミリーキャンプだし。

 

 にしても……思った以上に何もないな、森林だいしんりん公園。

 なんかロッジっぽい建物が並んでる絵をイメージしてたんだが……これただの森の中じゃないか?

 キャンプ場っていうより多目的広場みたいだし、こんなもんか。

 

 周りには幾つかテントがあるけど、こっちに干渉してくる気配はない。

 案外、全員ぼっちキャンプなのかもな。

 

 やっぱ野クルよりしまりんスタイルだよな。

 野クルってなんか野グソっぽい名前だし。

 

 さて、まずはテントを張ろう。

 張り方は昨日何回も2話を見直して完璧に覚えたから大丈夫。

 

 ――――ということで、実際に組み立ててみた\○\

 

 ……ポール固定するのに手間取ったけど、なんとか完成したな。

 一人用のテントだけあって中はネカフェの個室並に狭いけど、どうせ寝るだけだし問題ないだろ。

 

 まずは外からスマホで撮影して……今頃普通の休暇を過ごしている連中に送信してやろう。

 

 [絶賛キャンプ中]

 

 さて、誰が最初に反応するか……

 

 ピコピコ>

 

 [キャンプ?家族と?]

 

 早いな田村さん(こいつ)

 いかにも休みの日一人で部屋にこもってそうだもんな……

 

 [一人だけど]

 

 [一人?] [なんで?]

 

 [まだ一般にはそんなに知られてないけど、今ソロキャンプが水面下で流行ってるから]

 

 [そうなんだ] [でも一人でキャンプして楽しい?]

 

 ……痛いところ突いてくるなこいつ。

 正直、現時点では何が楽しいのか全然わからん。

 テント組み立てて体力消耗しただけだし。

 

 [黒木さん、キャンプやってるんだ]

 

 ガチレズさんも来たか……

 確実にインドア派の田村さん(こいつ)よりは前向きな話ができそうだな。

 

 [虫とかいない?大丈夫?]

 

 [虫なら多分いっぱいいる]

 

 [そうなの?ちゃんと寝られそう?]

 

 ……虫取りに夢中になって眠れないガキと同じ扱いされてないか?

 それともセミと間違ってるのか?

 

 [大丈夫] [今の時期はそんなに鬱陶しいのはいないから]

 

 [あ、そうなんだ] [なら大丈夫だね]

 

 [なんか話が噛み合ってないと思う]

 

 私もなんとなくそんな気がするが……まあいいか。

 

 [これから定期的にレポートするから] [何かリクエストとかある?]

 

 [それじゃ、キャンプ場の景色をお願いしていい?]

 

 ガチレズさんは景色か。

 簡単なようで意外と難題だな。

 ここ、緑は多いけどインスタ映え的な景色じゃないんだよな……

 

 [適当に自撮りしてくれればいいよ]

 

 何故自撮り指定……?

 田村さん(こいつ)は何を送れば喜ぶのか全然わからんな……

 牧場だったら牛の写真でも送ってやれたんだが。

 

 [了解] [それじゃ景色を自撮りしてくる]

 

 さて……どこで映るか。

 そう言えば、ネモにも送ったのに反応がないな。

 あいつが真っ先にシュバッてくると思ったのに。

 

 ――――クロ、影響されるの早すぎ。アハハ

 

 みたいな感じで……

 

 ま、既読スルーじゃないみたいだし、その内気付くだろ。

 それよりいい感じのロケーションを探そう。

 

 

 

 

 ダメだ……

 歩いても歩いても平地と森しかない。

 富士山みたいなわかりやすい撮影ポイントはないし、川とか吊り橋とかもないから何処も代り映えしない。

 

 あっ、そうだ。

 虫捕まえて、そいつをフレームインさせるか。

 

 ……あれ?

 今、頬に何かポツンって……雨?

 

 でも降水確率10%だぞ?

 仮に降ったとしても大した……

 

 

 ドバババババババババババババババババババババババババ――――

 

 

 ……何この雨量。

 滝行? これが私のErosなの?

 もう今更テントに戻ってもなんの意味もないくらい一瞬でズブ濡れって……

 

 うわあああああああ!

 ああああああああああああああああ!

 

 ……なんかもう一気にテンション下がった。

 この雨じゃ虫取りどころか焚き火も出来ないし……もしかして一日中テントの中で過ごさなきゃいけないの?

 それもう体育祭の途中で具合悪くなった可哀想な奴だろ……

 

 ムカつくから、この豪雨の中をあえて撮影してやる。

 あえてね。

 

 カシャ>

 

「……あ!」

 

 しまった、スマホ濡らしたら壊れる!

 あれ? 防水? これ防水? どっちだっけ?

 

 と、とにかくテントに戻らないと!

 スマホ壊れてたら今日はもう何もできない……

 人生で最も無意味な一日になってしまう!

 

 タオル、タオル、タオル……ああもう、こういう時に限ってリュックが四次元ポケット!

 お、これだ!

 とにかく自分よりスマホ拭かないと……

 

 ……あ、よかった。ちゃんと動く。

 最悪の事態は免れたけど……これもう着替えないとダメだな。

 明日着る予定で持ってきた服だったのに……

 

 着替える前に1枚自撮りしとくか。

 

 カシャ>

 

 よし。

 それじゃ、さっきのと合わせてあの二人に送ってやろう。

 

 [水も滴るいい女]

 

 ……あいつら、ちゃんとツッコめるかな。

 ガチレズさんとか本気で心配してきそうだけど……

 

 ピコピコ>

 

 [;゚ロ゚] [早く着替えないと風邪ひくよ]

 

 あっ、やっぱり。

 スタンプ使ってまで驚かなくても。

 

 [大丈夫、もう着替えてる]

 

 [よかった] [冷たい飲み物は飲まないようにしてね]

 

 ママみを感じる……

 

 っていうか田村さん(あいつ)全然反応しないんだけど、寝てるのか?

 部屋の中でもイヤホンで音楽聴いてるんじゃないだろな。

 

 ピコピコ>

 

 お、やっと来た。

 

 [ありがとう] [保存した]

 

 ……は?

 

 [あんなの保存してどうするの?]

 

 自分で撮っておいて言うのもなんだけど、私が濡れてるだけでなんの面白味もない画像なんだが……

 

 [待ち受けにする]

 

 [え?] [なんで?]

 

 [冗談なんだけど]

 

 どういう冗談だよ! わからねーよ!

 

 [ゆりがそんな冗談言うの初めて見たかも] [楽しそう]

 

 [そんなことないよ] [真子は大げさだから]

 

 いやお前だろ…… 

 

 [雨あがったらちゃんとした景色送るから]

 

 [無理はしなくていいからね]

 

 ふう……

 なんか思ってたのと全然違うけど、一応これで私がこの時期にぼっちキャンプしたっていう証拠は残せたな。

 今後本格的にキャンプブームが到来したら、先取りしてた私を見直すよな、あいつら。

 

 ネモは……まだ既読ついてないか。

 

 雨はまだ降り続いてるし、外で出来る事は何もないな……

 暇潰し用に持ってきた積みラノベでも消化するか。

 どれから手を付けようかな……

 

 

 

 

 ……全3巻読んでみたけど、最初から最後まで展開が急すぎて結局何も頭に残らない話だったな。

 5年くらい前に出たラノベだけど感想少ないし評判も散々だし、全然人気なかったんだろな。

 時間の無駄だった。

 

 今何時だ?

 そろそろ昼ご飯を……って、もう夕方!?

 

 1冊1時間で3時間くらいって感覚だったんだが……駄作だと読むのに時間が掛かるのか?

 

 いつの間にか雨も止んでるし。

 これなら一応焚き火も出来そうだな。

 

 あれ、ネモからLINE来てるな。

 2時間前か。気付かなかった。

 

 ……ん?

 

 [こっちもキャンプ中だよー]

 

 何!?

 しかもこの画像……凸とかいつものメンツと一緒かよ!

 

 [くたばれリア充]

 

 [やっと返信きた] [クロやっぱりしまりんスタイルなんだね] [ぼっちキャンプ楽しい?]

 

 くそが……!

 あいつまさか、私に惨めな思いさせる為にあのアニメを勧めてきたのか……?

 

 私が今日ぼっちキャンプをするように誘導して、同時に自分は仲間とキャンプする計画を立てて、私がキャンプ自慢した所にウェーイなキャンプでカウンターをかます超高等な煽りテクニック……!

 ネモ、恐ろしい子!

 

 [お前、私をハメたな?]

 

 [ハメたって何が?]

 

 [トボけるな!] [おかげでこっちはとんだピエロだよ!] [今頃、掌の上で踊らされた私をみんなで大笑いしてるんだろ?]

 

 [あはは、クロ何言ってんの?] [っていうか、キャンプやりたいって思ったんだったらまず私に声掛けてくれれば良かったのに]

 

 白々しい……!

 どうせ私がそうしないのは計算尽くだろ!? 

 

 [そうしたら、二人でキャンプに行けたのにね]

 

 ……あ?

 

 [せっかく準備してたのにクロが全然声掛けてこないから、他の子達誘ったんだよ?]

 

 何? このからかい上手の根元さん。

 あいつ、あれも観てたのか?

 

 [こんな大雨じゃ、どうせ楽しくなかったろ?]

 

 [そっち雨降ってるの?] [こっち全然だけど]

 

 [え?今そっち県外?]

 

 [県内だけど、南の方]

 

 こっちは北だよくそが!

 こんな所でもリア充とぼっちの明暗クッキリか……

 

 [クロは夜何食べるの?]

 

 [焼肉とか焼きマシュマロとか]

 

 [あー、同じ。こっちはバーベキューするよー]

 

 [おいBBQと一人焼肉を一緒にするな] [BBQなんてほぼ乱交だから]

 

 [クロはキャンプ場でもバカだなー]

 

 あ!?

 

 [あ、準備始めないといけないから一旦落ちるね] [夜の1時くらいにまたLINEするから]

 

 [なんでそんな時間なんだよ] [嫌がらせか?]

 

 [だから違うって] [夜景の見せ合いしよ]

 

 ……ああ、ゆるキャ○△でやってたやつか。

 アニメの再現とか、そういうのもやるんだなあいつ。

 まあ声優目指すくらいだし、童心っていうかガキっぽい所も心の何処かに残ってるのかもな。

 

 [その時間じゃ起きてるかどうかわからんけど]

 

 [起きるまで連投するよ?]

 

 率直に怖いんだが……こいつたまに変なスイッチ入る時あるよな。

 

 [ねえクロ]

 

 [なんだよ]

 

 [私のオススメ観てくれてありがと]

 

 ……。

 

 [そういうのって、嬉しいよね]

 

 同意求められても困るんだが……

 夜景の交換とか恥ずいけど、仕方ない。付き合ってやるか。

 

 豪雨の所為で最悪のキャンプになったと思ったけど、それなりに思い出にはなったか?

 少なくとも、友達からお礼を言われるくらいの事は出来たんだし、よしとするか。

 

 こういう事を一つ一つ積み重ねていけば、私でも何かになれるかもしれない。

 それが何なのかは、今は全然わからないけど。

 

 さて、私も夜ご飯の準備するか。

 まず肉を……

 

 ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?

 

 肉にアリがビッシリと!

 な、なんでこんな事に!?

 

 あっわかった!

 タオル取ろうとしてリュックをガサガサしてる時にパックのビニール破いたんだ!

 

 うわ……リュックの中アリだらけだ。

 他の食料はパックの中だから大丈夫だけど、なんかもうアリにたかられてる時点で食欲湧かない……

 

 やっぱりキャンプって一人でやるもんじゃないな……アニメに影響されるのはこれが最後にしよう。

 外でリュック掃除するか――――

 

 

 

 

 ――――――――――――――――

 

 ――――――――

 

 ――――

 

 ――

 

 

 ピピッ>

 

「ん……」

 

 もう朝か……

 

 結局昨日は夜にまた天候がグズついて、夜景交換は出来なかったんだよな。

 あの二人にもロクな画像送れなかったし……終始グダグダなキャンプだった。

 

 せめて外で朝の新鮮な空気でも吸って、英気でも養うか。

 あー腹減った……

 

 

「――――あ」

 

 

 テントを出た瞬間にこの目に飛び込んで来たのは――――大自然そのもの。

 

 赤く淡い朝日に向かって、渡り鳥が飛び立っている。

 何百羽……下手したら何千羽かもしれない。

 昨日はこれだけの数の鳥が、森の中で羽を休めていたんだろうか?

 

 何ていう種類の鳥なのかなんてわからないけど、とにかくものスゴい数だ。

 見てるだけで心がザワつくっていうか……

 

 この光景は――――

 

「……昨日肉にたかってたアリにそっくりじゃねーか!」

 

 最後の最後まで自然は私に味方しなかったな……相性悪いんだろうか?

 でも一応撮ってあの二人に送っとくか。

 景色を送るって約束してたしな。

 

 ネモにも送るか。

 

 [交換不要]

 

 私は別に景色で感動とかしないしな……マジどうでもいい。

 そもそも、そんな人間がキャンプやったって得る物なんて何もないんじゃ……

 

 渡り鳥がどんどん朝日に吸い込まれていく。

 なんか……アレだな。

 

 なんでハ○ターの原作ってあそこ(アリ編)で終わらなかったんだろうな。

 キリの良い所で綺麗に終われるし、グダグダな所はカットできるし、やっぱアニメが一番だな。

 中にはそうじゃないアニメもあるが……

 

 

 

 


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