途中まではほぼ同じ文章、同じ内容になっており、「岡田さんに協力要請されたもこっちの返答」でエピソードが分岐しています。
「モテないしバッドエンドを迎える」を読んで下さった方も、そうでない方も問題なく読めるようになっているので、宜しければご一読下さいませ。
今日の授業もこれで終わりか。
昔はもっと放課後が来た瞬間にカタルシスを感じてたんだが……今はそうでもないな。
特に今日はカタルシスどころかかったるい。
なんだったら授業が永遠に終わらない方がマシだったとさえ思ったくらいだ。
原因は昨日の凸からの一言。
あの
「黒木。わかってるよな」
……早速、声かけてきやがったか。
わかってるよ。逃れられないって事くらいは。
呼び出し食らった昨日から、こっちはずっと憂鬱なままだ。
私は失敗した。
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
今クール新しいアニメが始まったしタイムリーだから取り敢えずやってみたが……なんの気分転換にもならんな。
とにかく、私は失敗した。
凸にあんなこと話すべきじゃなかったんだ。
遠足とネズミー空間の非日常的な雰囲気が、私を惑わせたとしか考えられない。
まさか、あの時の軽率な行為がこんな事態を引き起こすなんて、夢にも思わなかった。
あの
番組の公式HPに『本当にし○ちゃん達の声優はエロゲーに出てたんですか?』なんて問い合せるか普通!?
昨日それ聞いた時は本気で血の気が引いたぞ……
どんな思考回路してたらこんな事が出来るんだよ?
それでも、普通にスルーされて終わりだろうと高を括ってたのに……
返事が来るとかあり得ないだろ!?
どんだけスルースキルないんだよ公式!
これからその内容を聞く為に、凸が待ってる裏庭に行かなくちゃならない。
今までの『二度と行きたくない場所ランキング』の第3位は野球場、2位はコミケ会場、1位は近所の市立図書館だったけど、ぶっちぎりで1位が更新されそうな勢いだ。
公式からの回答は9割がた『声優の過去の仕事についてはお答え出来ません』みたいな内容だとは思うが、もし『そのような事実はありません』とかだったらどうする……?
嘘つき呼ばわりされて最悪シメられるぞ。
あの凸、ヤンキーとガチでやり合うくらいの脳筋だからな。
本当はガン無視してさっさと帰りたいけど、凸とは毎日教室で顔を合わせるからスルーは出来ない。
何か上手く言いくるめられる魔法の呪文みたいなのがあればいいんだが……
「黒木さん、帰らないの?」
「あっ……うん。今日はちょっと……用事があって」
「そうなんだ。それじゃ私達先に帰るね」
「バイバイ」
これでいつも一緒に帰ってる2人もいなくなってしまったか……
ここで『黒木さんと一緒じゃなきゃヤダヤダ!』とか駄々こねてくれたら助かったのに……
はぁ……仕方ない。
本当の地獄ってのを味わいに、裏庭に行くか……
「くく黒木」
「うわっ!?」
な、なんだ……絵文字か。
なんでこの教室にいるんだ?
「今日、まこっち達と帰らないの?」
「へ? あ、うん。用事あるから……」
「ふーん……私もこれから用事あるから、友達と一緒に帰れないんだよね」
「そ、そうなんだ」
「一人で帰るのって心細いなー。女だし、痴漢とか怖いなー。そう思わない?」
まあ、恐い目に遭った事は一応あるが……
痴漢じゃなくて薙刀だったが。
「えっと、別に毎日あの2人と帰ってる訳じゃないし、私は一人でも平気だけど……」
「……」
いや、そこで黙られても……
結局何が言いたいのかわからんし、これ以上こいつに構ってる余裕はないんだよ、今日は。
「それじゃ用事あるから……」
「待って!」
痛ぇ!?
なんつー圧力してんだよこいつ……ク○しんのシロみたいなサッパリ顔の癖に!
「わ、私と一緒に帰らない? 悪いようにはしないから……!」
「え? いやだから……」
「帰るだけだから! 何もしないから!」
それ絶対何もしない奴のセリフじゃねーだろ!?
こいつ何企んでやがる!?
もしかして……電車の中で私を痴漢避けに使う気か?
私みたいな凹凸のない身体は痴漢に狙われないだろって魂胆か?
確かにこいつ、身体付きだけは妙にエロいが……
何にしても気分悪いぞ。
ここは尤もらしい理由付けて断っとくか。
「でも、私と並んでたら内さんが余計(痴漢には)魅力的に見えるかも……」
「え……?」
急に乙女の顔に!?
何こいつ、もしかして痴漢に遭いたいの!?
それを私に目撃させて興奮する、そういうプレイ目当てなの!?
「こ、校門の所で待ってるから」
「へ? だから今日は用事があって帰るのいつになるか……」
「暗くなっても待ってるから! わかるように合図送るから!」
「ちょ、待……!」
……行ってしまった。
まさか絵文字が歪んだ性癖の持ち主だったとは……今までカミングアウトの機会を窺ってたのか?
変態プレイに付き合って私まで巻き込まれたらシャレにならんし、今日は裏門から帰ろう。
さて……裏庭に行くか。
「……来たね」
なんか凸の顔が明らかに引きつってるんだが……これ怒り? おこなの?
どうにか言いくるめてこの場を収めないと……
『ク○しんは国民的アニメだから、そういう過去を認める訳にはいかないんだよ。イメージとかブランドとか大事にしないといけないから』とでも言えばって納得して貰えるか……?
でも『野球選手はゲイビデオに出てた過去をちゃんと認めてたぞ!』って返されたらどうする?
くそっ、こんな時にも野球は私の邪魔をする……!
あいつら女子アナとキャバ嬢と幼なじみにしか興味ない癖に、なんで喪女あがりの女子高生に絡んでくるんだよ……?
「何ボーッとしてんだよ。こっち来なよ」
「あっ……うん」
随分と殺気立ってやがるな……
もしキレられたら『この事をネモに言いつけるぞ』って脅すか?
それが一番効果ありそうだが……何か大事なものを失う気もする。
取り敢えず内容聞いてから対策を考えよう。
「えっと……ど、どうだった?」
「……」
この異様な空気……やっぱり『そのような事実はありません』パターンっぽいな。
もういっそ『私の勘違いだったよ! ネットで見た情報鵜呑みにしちゃいけないね!』って開き直って謝るか?
軽蔑はされるかもしれないが、全て丸く収めるにはもうそれしかないのかも……
「ど……」
ど?
どって何?
「どうしよう……私もう学校に居られないかも……」
何故そんな事に!?
「これ……返事……」
「あっ、うん。見させて貰おっかな。はは……」
急にトーンダウンしたな……
それとも、さっきまでの雰囲気は怒気じゃなくて悲壮感だったのか?
何がここまで凸を追い詰めたのか……
この度はWebフォームよりお問い合わせ頂きありがとうございます。
返答が遅くなってしまい、まことに申し訳ございません。
ご質問の件につきまして、担当の者より回答を差し上げます。
お問い合わせ頂いた内容は事実無根であり、当作品に出演されている声優の方々にそのような経歴は一切ございません。
ご指摘なされた声優の名前がお尋ねのゲームジャンルにおいてクレジットされている事実もございません。
近年、インターネット上で根拠のない誹謗中傷が横行し、流言飛語が飛び交う事で著名人の名誉を傷付ける案件が頻発しております。
そしてそのほとんどは泣き寝入りしてしまっているのが現状です。
私どもは長年番組に貢献して頂いている声優の方々がそのような憂き目に遭う事態を重く受け止めており、独自に『声優の尊厳を守る会』を立ち上げております。
声優の尊厳を守る会には大手事務所の弁護士が複数所属しており、声優に向けられた発言内容が悪質であるか否かを法の専門家たる弁護士の観点から慎重に判断し、場合によっては業務妨害罪を視野に入れ訴状の提出を粛々と行っている次第です。
お問い合わせ頂いた件につきましては、先日行われた製作委員会および声優の尊厳を守る会の中核メンバーによる会議にて事実無根であること、また重大かつ悪質な案件であることが確認されております。
また、こういったご質問を過去に複数お寄せ頂いており、同一団体における犯行である可能性も憂慮致しております。
つきましては、岡田 茜 様 と一度お話をさせて頂く機会を設けたく存じます。
大変恐縮ではありますが、お時間を頂ける日時についてご教示頂ければ幸いです。
ご返答お待ちしております。
「……」
うわぁ……
おこなのは凸じゃなく公式の方だったか。
これ完全にコアメンバーガチ切れ案件だよな……
「私……訴訟されるのか……?」
「だ、大丈夫だよ。こういう質問してくる人が多いから、どういう事なのかなって純粋に聞きたいだけだよ……多分」
「でも訴状とか書いてるし……」
書いてるな……思いっきり。
現実問題、『おたくの番組に出てる声優がエロゲーに出てるって本当ですか?』って質問が訴訟の対象になるとは到底思えん。
でもここまで匂わしてる上、直接会おうとしているのは明らかに普通じゃないし、多分脅しだとは思うけど100%そうとは言い切れない。
ク○しんは映画も毎年やってるし、完全に家族向けのコンテンツとして定着してるアニメだからな……
そのイメージを守る為に、エロゲーネタを拡散してる奴を根絶やしにしようとしていても不思議じゃない。
「これってさ、もし番組のスタッフか誰かに実際に会ったら、私のこと色々聞かれるよな。学校とか友達とか」
「さあ……? どうだろね……」
「そしたら……陽菜に迷惑かかるよな? 私、声優のこと詳しくないし、私じゃなくて陽菜が吹き込んだとか思われたら、陽菜の将来が……」
いや、さすがにそこまでムチャクチャな事にはならないと思うが……
でも学校にバレたらこの
そしてこいつが問い合せた内容が私の吹き込んだものだってバレたら、私にまで飛び火しかねないぞ。
そもそも――――
「なんでわざわざ問い合せたの? 普通しないよ?」
「知らないよ。本当かどうか聞きたかっただけ。まさかこんな大事になるなんて……」
なに開き直ってんだ? こいつ……
ってかこいつをコアメンバーと会わせたら何言い出すかわからないぞ。
保身の為にも、ここは引き留めておかないと。
「えっと……今高3だし勉強で忙しいから会うのは無理だって返事するのがいいんじゃないかな……ネットで知ったから何気なく聞いただけで団体とか知らないって添えとけば、きっとわかって貰えるよ」
「でも名前知られてるし、向こうが勝手に調べるかも」
「それはないと思うけど……っていうか、なんで本名で問い合せたの? 普通はHNとか使うよね……?」
「は? そんないい加減なことしないよ。本名じゃなかったら真面目に聞いてるって思われないじゃん」
知らねーよこいつマジ面倒臭ぇな!
もうこうなったら我関せずで通すしかない。
そもそも私は事実を言っただけで、何の責任もないし関係もないんだ。
これ以上特に親しくもないこいつの暴走に付き合ってられるか!
「とにかく会わない方がいいと思う。それじゃ私、人待たせてるから……」
「ちょっと待ってよ! あんた陽菜の友達なんでしょ!? 陽菜に迷惑かかったら嫌じゃないの!?」
くそ、痛いところを……
ネモに被害が及ぶ可能性は限りなくゼロに近いと思うが、万が一この件に関与してるって誤解されたら『難アリ』認定されて、デビューの妨げになるかもしれない。
何しろ声優にとってはパンドラの箱みたいな問題だからな。
最後に残った希望がエロってのも生々しい話だが……
「なっ、なら私はどうすればいいの?」
「アニメとか声優のこと、詳しく教えてよ」
「へ……?」
「私がしっかり受け答えできたら、陽菜にまで話はいかないし、疑惑の目が向けられることもなくなるだろ?」
「でも、そうしたら私に疑惑の目が向くんじゃ……」
「それは自業自得じゃん。声優がエロい目に遭うって教えたのあんたなんだし」
そこまで言ってねーよ!
こいつどんな文面で問い合せたんだよ!
「私が上手くやれば陽菜にもあんたにも迷惑はかからないよ。私が一人でやったことだってわかって貰えるんだし。でもその為には、アニメと声優についての最低限の知識がないと辻褄が合わないだろ?」
言ってることはわからないでもないが……
「お願い、黒木。陽菜の為だと思って」
……元を辿れば、私がこいつらと学食で一緒になった時にアニメの話さえしなけりゃ、こんな事にはならなかったんだよな。
なんとなく人に構われるようになって、なんとなく誰かと会話する機会が増えて……
いつの間にか、私の中に妙なしがらみが生まれている。
何かをすれば、それが他人に影響して、自分に返ってくる。
高2の途中までは、学校内でそんなのは一切なかった。
私が欲しかったのは、本当にこれなんだろうか……?
こんな厄介事に巻き込まれて、いちいち何かある度に心がザワザワするような日々を、私は望んでたんだろうか……?
ここでこいつを振り切って家に帰れば、こいつはネモに『
そうなると、凸やネモと交流のある連中全員からシカトされるかもしれない。
女のグループってそういうもんだしな。
今日一緒に帰るのを断ったのがきっかけで、今後疎遠になるかもしれない。
勿論、それくらいでいきなり縁が切れるのは無理がある。
でも、今回の凸との一件で私がクラス内で浮いた存在になったら、関係を見直そうと考えるのはそんなに不自然じゃないだろう。
私は社交的になった訳じゃない。
性格が変わったとも思ってない。
ちょっとは変わったかもしれないけど、それは本当にちょっとで、今の交友関係なんて何か一つでも間違えば一気に崩れてしまうくらい脆いものだってわかってる。
ここが運命の分かれ目かもしれない。
修学旅行以降、この半年くらいずっと続いていた確変みたいな状態を維持するか。
それとも今の人間関係を壊して、最低限の知り合いだけで形成された退屈だけど穏やかな日々に戻るか。
私は――――
「教えるだけなら……いいけど……」
このしんどい日々の継続を選んでしまった。
これでもう、後戻りは出来ないな……
「それ以上は別に望んでないよ。教えてくれるだけでいいから」
それが教えて貰う立場の態度か?
陽キャってこういうとこあるから嫌いなんだよ……
「それで……具体的には、何を教えればいいの……?」
「なんでもいいよ。基本的な知識と、適当にそれっぽいこと言うくらいで大丈夫だろうし」
「それじゃ簡単にバレるよ。そういう中途半端なのが一番嫌われる世界だから」
「……よくわからないんだけど、そういうもんなの?」
「常識だけど? それと、変な問い合わせした時点で相当敵視されてると思うから、ちょっとでも怪しまれるとヤバいよ」
何しろ相手はコアメンバーだからな。
違うアニメだけど、ドル箱アニメさえ平気で潰すような連中だ。
そいつらがオラついてる訳だから、知ったかは火に油注ぐだけで完全に逆効果だ。
もし問い合せそのものを挑発や皮肉と取られたら本当に訴えられかねないし、身辺調査とかされるかもしれない。
事を穏便に収めるには、『ああ、こいつ本当に何も考えずにネット民の書き込みを鵜呑みにしたピュアなアニメファンなんだ……』と思わせて、戦意を削ぐしかない。
その為にはリアリティが必要だ。
「じゃ、じゃあどうすればいいんだよ!」
「ストーリーを作るしかないよ。ある時期にあるアニメにハマって、声優になりたいって思って、ネットで浅くかじってみたら子供の頃から観ていたアニメに出てるキャラの声優達がエロい演技をしているのを知って、ショックを受けて思わず問い合せてしまった……この路線で行くしかない」
アニメファンじゃないのにこんな問い合わせするのはあり得ないし、ある程度年季入ったアニオタも別の意味でこんな問い合わせはしない。
中間層を装うのがベストだろ。
「……そ、そっか。なんか全然意味わかんないけど、あんたが頼りになるのはわかったよ」
冷静かつ的確に納得させたところで……次はシミュレートでも始めるか。
「確か元バスケ部だったよね? ならバスケを題材にしたアニメでその道に入ったっていうのが妥当かな。それも女バスの」
「そんな都合の良いアニメあんの?」
「あるよ。7年くらい前のだから丁度いいと思う」
スマホでチェックしてみよう。
タイトルは確か……そうそう、これだ。
「これだけど」
「ちょっと見せて貰って良い?」
「いいけど」
多少引かれる気もするが……前にエロゲー見せた時と比べれば可愛いものだろ。
「ちょ、ちょっと待って。え? これ?」
「そう、それ」
「なんか小さい女の子が裸になってる絵があるんだけど」
「バスケやってる時は体操着だから問題ないよ」
「そ、そういう問題か……? っていうか、これ好きな奴って……ロリコン、だよな」
「一人の例外もなくそうだけど」
「嘘だろ……私これを好きな演技とか絶対無理なんだけど」
まあ、そうだろうな。
でも仕方ないんだ。
女でバスケ好きがハマるアニメは間違いなく黒子の方だけど、あっちを観て声優目指す女なんていないから。
「な、なあ黒木……こういう小さい女の子の声優って、子供がやってるんだよな?」
「いや、大抵成人女性だけど」
「陽菜もこういう役やんのか?」
「そのアニメ結構人気あって2期までやったから、当たった方だよ。もしやれたら泣いて喜ぶんじゃない?」
「……」
ある意味エロゲーより過酷な現実を突きつけられて抜け殻になったか……
でもここからが本番だ。
声優を目指そうと思ったって事は、誰かしらの演技が気に入った訳で、そこを突き詰めていかないといけないからな。
「私もそのアニメ観た訳じゃないから、ネットで評判良さげなシーンを適当に幾つか選んでみる。『このアニメのどこが好き?』って聞かれたら、そのシーンを答えるといいよ」
「あんたさ……なんか普段より活き活きしてない?」
その後、やたら難癖ばっか付けてくる凸に色々と教えてやった。
「これで大体いいと思う」
「そうだな……助かった。色々ありがと」
小学生の頃、同じく小学生のヒロイン達が割とガチでバスケやってるアニメにハマって、バスケと声優に興味を持つ。
それからしばらくバスケ三昧でアニメから遠ざかってたけど、最近自分の原点だったそのアニメを観直す機会があって、当時の事を思い出す。
ネットで声優の事を興味本位で調べてたら、衝撃の事実を知ってつい公式HPで問い合せてしまった。
完璧なシナリオだ。
これならコアメンバーも納得するしかないだろう。幾らコアメンバーでも。
「うわ、もう辺り真っ暗じゃん。校門閉まってるかもだけど、一応確認しとく?」
「う、うん……そうだね……」
「なんでさっきまであんなに饒舌だったのに急に辿々しくなるんだよ」
「そんなこと言われても……」
「はぁ……ま、いっか。ほら行くよ」
くそ、苦手分野から離れた途端イニシアチブ取りやがって!
やっぱ
「あー、やっぱ閉まってるわ」
「だったら裏門から……」
「ん? 校門の向こうに誰かいない?」
「へ? で、でももうこんな時間だし……」
「いや、いるよ。なんか――――」
ガシャン!>
「え? な、何? 今の音何?」
「さ……さあ……」
ガシャン!ガシャン!>
「これって、外から校門揺らしてる?」
「いやそんな、囚人じゃないんだから……」
ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャ!ガシャ!ガシャ!!ガシャ!!ガシャ!!ガシャ!!!ガシャ!!!ガシャ!!!!ガシャ!!!!!ガシャ!!!!!!!!!!>
「ひ、ひぃぃぃぃ!?」
「逃げろ! 早く逃げろーーーーーー!」
なんなんだよアレ!?
なんか一瞬、暗闇にボーッと見えたのは……
「おい! なんかしんちゃんに出て来る犬みたいなのが見えたんだけど!?」
そうだ、シロだ!
シロの呪いか!?
エロゲーに出てるとか言われてキレたシロが私達を殺しに来たのか!?
それともコアメンバーの脅しか!?
製作委員会って恐ぇ……!
もう二度と業界の闇とか円盤の売上は弄らないようにしないと……!
「とにかく一旦戻るぞ。校舎に……」
「こ、こ、校舎はもう閉まってるんじゃ……」
「え? でも玄関の所に人が……」
……嘘だろ?
でも確かに、ガラス越しに人らしきものが見えるような……
あ、あれは……
「寝てた」
「「こっちもシロだああああああああああああああ!!」」
――――後日、玄関のシロもどきはうっかり教室で夜まで寝過ごした、騎馬戦で上になってたポテンシャルの凄い奴だったと判明。
でも、校門のシロは結局なんだったのかわからなかった。
あとク○しんの問い合わせの件は凸が大人達から普通に注意されて普通に終わった。