10分で読めるわたモテSS   作:umadura

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モテないし友達を見つめる

 

 

 

 

 ふーっ……

 

 今朝はやたら電車混んでたな。

 なんか絵文字っぽい奴もいた気がしたけど……見間違いだよな。

 どこにでも書かれてそうな顔だし。

 

「黒木さん。おはよ」

 

「あっ、おはよ」

 

 ガチレズさんか。

 今日は田村さん(あいつ)とセットじゃないんだな――――

 

「放課後、二人きりで話したいんだけど……良いかな?」

 

 

 !?

 

 

 え……ガチレズさん……

 

 ついに私を喰おうとしてる!?

 

 そこまで距離を縮めたつもりないんだが……向こうはもう頃合いとでも思ってたのか?

 幾らモテるのを半ば諦めてるからって、女に喰われる気はないぞ……?

 

「え、えっと……きょ、今日はその、用事が……」

 

「そうなんだ。それなら明日は?」

 

「あ、明日? 明日も確か……」

 

「明後日は?」

 

 し、しつけぇ……!

 しかも表情がこんな朝一から切迫してるし……!

 

 このままだと、まこもこTrick……いや、ゆりまこもこTo Lieあんぐるが完成してしまう。

 ラッキースケベとバイオレンスの渦に巻き込まれるぞ……!?

 

 ……仕方ない。

 だったら下手に引っ張って悶々とさせてレズゲージ溜めるより、今日の間にどうにかして切り抜けるしかない。

 

「あ……あーっ! そう言えば今日の用事、夜からだった! 親戚と一緒にご飯食べに行くんだよ、うん」

 

 これなら長時間の拘束は出来ないし、校内に生徒が残ってるから安全に過ごせるだろ。

 もう大丈夫―――― 

 

「よかった。なら放課後、体育館の裏で話すね」

 

 体育館裏……だと……!?

 トイレよりはマシだが、いざって時に助けが呼び難い場所だな……

 

 まさかガチレズさんが嫌がる私を襲うとも思えんが……性癖が絡むと豹変する人っているらしいからな。

 何事もないといいけど……

 

「おはよ」

 

「あっ、ゆり。お、おはよ」

 

 ……?

 なんか田村さん(こいつ)が来た途端、ガチレズさんが動揺してるような……

 

 え?

 半分冗談だったんだけど、これガチのTo Lieあんぐるパターン?

 

 

『ずっとゆり一筋だったけど、黒木さんも気になるの……』

 

 

 ま、まさかこんな事言ってこないよな……

 想定してたよりもずっとヤバい事態になるんじゃ……

 

「おはよ、黒木さん」

 

「あっあっうん、お、おはよ」

 

「……? なんか二人とも様子が変だけど」

 

「そんな事ないよ! ね、黒木さん!」

 

 あからさまにガチレズさんの様子がおかしい……

 これ本当に三角関係のこじれなの……?

 

 

『最近ゆりが構ってくれないの……だからいっそ黒木さんに……ふふ……』

 

 

 想像しただけでどっと汗が……

 まさかこんなとある日に貞操の危機がやって来るとは。

 

 神よ……! 百合の神よ!

 ノンケの私が……はじめて祈る……!

 もし、本当に……おまえに性欲を司る力があるのなら、ガチレズさんだけは発情させないでくれ!

 

 

 

 

「起立! 礼!」

 

 ……もう放課後が来てしまった。

 今日の授業、全く頭に入って来なかった……

 

「真子、帰らないの?」

 

「う、うん。ちょっと用事があって……ごめん」

 

 田村さん(こいつ)には一切何も話してないんだな、ガチレズさん。

 こうなるといよいよ怪しい……っていうかほぼ決まりな気がしてきた。

 

 こ、こういう場合……ロストバージンになるのか?

 っていうかロストバージンって死語か?

 代わりの言葉が思い付かないから何て言っていいかわからんのだが……

 

「それじゃ今日は黒木さんと……」

 

「あっ、黒木さんも用事があるって! ね!」

 

「あっうん、今日はちょっと遅くなる……かな」

 

「そう……じゃ、また明日」

 

 寂しそうに教室を出て行く田村さん(あいつ)を見送るガチレズさんの目が哀愁に満ちてて恐いんだが……

 

「黒木さん」

 

「は、はい!?」

 

「体育館裏、行こっか」

 

「はい……」

 

 ……人は、こうやって大人の階段を昇って行くんだな。

 

 さよなら、昨日までの純潔だった私。

 揉まれまくって巨乳になったとしても、心までは変わらないよ――――

 

 

 

 

「……へ? 変わったって……何が?」

 

「ゆりが。黒木さんと出会ってから、随分変わったと思うんだ」

 

 な、なんか予想してた話と全然違うんだが……

 さっきの私の覚悟が行き場なくして顔の辺りでチリチリしてるぞ。

 くそっ、別に恥かいた訳じゃないのに無駄に恥ずい……!

 

「黒木さんはどう思う?」

 

「でも、私は元々の性格知らないから……どんな感じだったの?」

 

「うーん……滅多に笑わなくて、滅多にはしゃがなくて、滅多に同意しない子だったかな」

 

 今と何一つ変わらねぇ!

 やっぱ陰キャってそう簡単に変われないんだな……将来大丈夫なのか? あいつ。

 

「修学旅行から帰って次の日に、ゆりが黒木さんをお昼に誘ったんだよね?」

 

「え? あっ、うん……そうだけど」

 

「あ、それが変とかじゃないんだよ? でも、ゆりが誰かを誘って一緒にお昼食べるのが意外過ぎて……」

 

 思い出したくもないが……多分、担任から『黒木のことよろしくね』とか言われたのを実践したんだろな。

 

 っていうかガチレズさん、もしかしてずっとその件を気にしてたのか?

『私のゆりが私の全然知らないクラスメートと急に仲良くしようとしてる!?』みたいな……

 

 だとしたら解決は簡単だな。

 多分担任に言われてやっただけ、って教えてあげればいい。

 

「えっと、それは」

 

「黒木さんと仲良くなってから、私の知らないゆりがどんどん出て来て……

 きっと黒木さんの前だと、本当の自分を出せるのかなって」

 

「いや、だからそれは……」

 

「ふふ……」                                   ┃_╹)

 

 え? 今笑った?

 

 ガチレズさん、ヤンレズなの?

 もしかして私、刺される……?

 

「実は黒木さんに頼みたいことがあって」

 

「た……頼み……?」

 

 これもう完全にナイフか包丁出して『お願いだから死んで』って言われる流れじゃん!

 

 あわわわわわ……

 どうしよう、何も対策が思い付かない……!

 

 終わった――――

 

「ゆりにあげるクリスマスプレゼント、何が良いか悩んでて……協力して貰えないかな」

 

「……へ? クリスマス?」

 

「今年受験だし、12月になってから考えても余裕なくて良い物が浮かばなそうだから、今の時期から何あげるか決めとこうかなって」

 

 いや、理屈はわかるけど……まだ春だぞ?

 これから半年以上ずっとレズ想いに耽り続ける気なの?

 

 でもまあ、嫉妬で刺されるとかじゃなくて良かったが……

 

「黒木さんなら、ゆりが心から喜ぶ物がわかると思うんだけど……どうかな?」

 

「そんなこと突然言われても……」

 

「そっかー……そうだよね。ごめんね、変なこと聞いて」

 

 しょんぼりさせてしまったか。

 

 っていうか、田村さん(あいつ)には用意する気マンマンなのに私にはクリスマスプレゼントはないのか?

 いや、でもバレンタインの時も私にくれたみたいに、ついでに用意する予定はあるのかもしれん。

 あの時は明らかに田村さん(あっち)の方がいいやつ貰ってたけど……

 

 待てよ?

 もしここで協力してガチレズさんを満足させたら、同等のグレードのプレゼントを貰えるかも。

 まあ、友達から貰うプレゼントに過剰な期待はできないが――――

 

「本人にそれとなく聞くくらいならできるけど……」

 

 このままガチレズさんが思い悩んでヤンレズになられても私が困る。

 使えない奴って思われるのも癪だしな。

 

「本当!? ゆりにバレないように探って貰えると助かるんだけど、お願いしてもいいかな?」

 

「う、うん……わかった」

 

 なんか微妙に面倒事を引き受けてしまった気もするけど……多分大丈夫だろ。

 本人から好きな物を聞き出すだけだし、夜にでもさりげなくLINEで聞いて、それを明日ガチレズさんに伝えれば任務完了(ミッションコンプリート)

 余裕だな。

 

 

 

 

 ……ふぅ。

 風呂も入ったし録画チェックもしたし、後は田村さん(あいつ)に聞くだけだ。

 

 でも、いざ好きな物を聞くとなると、取っ掛かりをどうするか全然思い付かないな……

 いきなり『好きな物って何?』とか聞くと、いかにも私がプレゼント用意しようとしてるって思われそうだし。

 

 そもそも私の前で本当の自分を出してるってのはあくまでガチレズさんの見解で、田村さん(あいつ)が本当にそうだって保証はない。

 万が一、私が聞き出した情報が適当に答えたやつで、クリスマス当日にガチレズさんが渡した時に微妙な顔されたら……ガチレズさんの中で私の株が大暴落するぞ。

 

 ……そうだ!

 

 田村さん(あっち)にも『クリスマスプレゼントの事で相談がある』って持ちかけて、ガチレズさんに何をやるのがいいか聞くってのはどうだ?

 その流れで『じゃあ例えば何貰ったら嬉しい?』って聞けば自然に情報が得られるし、相談受けといて適当に答えるような真似もしないだろ。

 今の私自身がそれを証明してるしな。

 

 我ながら完璧だ。

 危機回避能力に加えて戦略(タクティクス)さえも身に付けて……将来は政治家もありだな。

 会議とか居眠りしてもいいみたいだし、ウザい追求に遭ったら入院すればいいし。

 

 [今年のクリスマスにプレゼント交換とかやる?]

 

 送信……と。

 まずはこの導入で、ここからガチレズさんへのプレゼントに迷ってると送って、次に――――

  

 [なんで今クリスマスの話?]

 

 ……そりゃそーだ。

 戦略の事ばっか考えてた所為で、そもそもこの時期にクリスマスの話題自体が不自然って前提がどこかにすっ飛んでた!

 策士策に溺れるってこういう事か……!

 

 [真子とそういう話したの?]

 

 ま、まずい! 一つのミスが命取りに!?

 このままだと私がガチレズ軍の斥候だってバレる。なんとか誤魔化さないと……

 

 [してないよ] [昨日たまたま読んだマンガがクリスマスの話だったから]

 

 [ふーん] [でも今年は受験だから大勢で集まるのは難しいかも]

 

 なんかあんまり乗り気じゃないみたいだな。まあそれが普通か。

 このままこの話題を引っ張っても怪しまれるだけだろうし、諦めて話を逸らそう。

 

 [話変わるけどコンビニの店員に顔覚えられて買う物先に言われたらどうする?] [私は店変えるんだけど] 

 

 [すごいわかる] 

 

 意外とすんなり同意するんだが……ガチレズさんがこいつと相性悪いだけなのでは……

 

 とにかく、これで本人から好きな物を聞き出すのは難しくなった。

 なら当人以外に聞くしかないな。

 ガチレズさん以外で、田村さん(こいつ)が好きな物を知ってそうな奴と言えば……

 

 

 

 

「あ? 田村が好きな物?」

 

 たまたま登校で一緒になったから聞いてみたが……

 なんでも自分を押しつけるヤンキーに他人の好みを把握できる能力はあるんだろうか?

 

 でも私とガチレズさん以外で田村さん(あいつ)と親しい奴なんて他に知らないしな……

 

「そんなのあたしが知るわけねーだろ。田中が知ってんじゃねーの?」

 

「その田中さんから聞かれたんだよ。あんまりそういうのハッキリ言うタイプじゃないからって」

 

「そうか? 割と思ってること言ってくる奴だろあいつ」

 

 ……言われてみればそんな気もしてきた。

 まあまあ付き合いも長くなってきたけど、なんか実態が掴めんな……

  

「この前ウサギの耳喜んで付けてたし、ああいうのでいいんじゃねーの?」

 

「あれはネズミー空間以外で付けてたらやばいやつじゃ……」

 

「あ!? なんでやばいんだよ!」

 

 いや凄まれても……

『あんなん宴会芸の道具だろ』って言わないだけでも遠慮した方なのに。

 

「だったらプリンとかでいいだろ」

 

「プリン? なんで?」                              ┃_╹)

 

「女なら大体好きだろプリン。歯がなくても食えるし」

 

 なんで女の好みに歯の有無が関係あるんだよ!

 シンナー中毒で歯が溶けてるのはヤンキーだけだろ!

 

 やっぱりヤンキー(こいつ)に女子っぽい会話は無理だ。

 他に話が通じそうなのは……

 

 

 

 

「え? 田村さんがプレゼントされて喜びそうなもの?」

 

 最近たまに田村さん(あいつ)と話してるところ見るし、ネモなら気の利いたアドバイスくれるかもしれない。

 少なくともヤンキーよりは女子力あるだろうし……

 

「クロ、田村さんにプレゼントあげるの? なんで?」

 

「へ? 私はあげないけど……」

 

「だったらどうしてこんなこと聞くのかな?」

 

 ……なんか圧を感じるんだが。

 

 どうする?

 ガチレズさんからは田村さん(あいつ)にバレないようにとは言われてるけど、ネモにならバレても別に問題はない……よな?

 でも一応名前は伏せとくか。

 

「いや、だから……私じゃなくて、別の人から頼まれてて」

 

「それ本人って知られたくない時の言い訳じゃん」 

 

 違げーよ!

 確かにそれっぽいけど今回はそうじゃないんだよ!

 

「仮に別の人に頼まれてたとしてもクロが一生懸命リサーチして田村さんにプレゼントする物を決めてる時点でそれもうクロから田村さんへの贈り物でしょ? 違う?」

 

 だから違うって言ってんだろ!?

 なんでこいつ偶に意味不明なキレ方するんだよ!

 

「まあ別にいいけど……私、田村さんと親しいわけじゃないし好きな物とかわからないよ? あ、でも……」

 

「何か心当たりあんの?」

 

「前にコーヒー牛乳飲んでたの見たけど、あれ好きなんじゃない?」

 

「いや、幼児じゃないんだから……コーヒー牛乳プレゼントされて喜ぶ女子高生がいるかよ」

 

 つーかなんで出て来るの食い物ばっかなんだよ……私の周りって三大欲求に忠実なのばっかだな。

 

「そう言えば、イヤホンして音楽聞いてるのも偶に見るけど。音楽はどうなの?」

 

「あー……それな」

 

「イマイチな感じ?」

 

 最近はイヤホンしてるところあんまり見かけないんだよな。

 それに、ああいう趣味のやつって人から貰うより自分のこだわりで買うって感じだしな……

 

 そもそも音楽関係のプレゼントならガチレズさんだって真っ先に思い付くだろうし、多分それが喜ばれないのわかってるんだろう。

 

「田村さんって寡黙だしマイペースだから、無理して喜ばそうとしても期待通りにはいかないんじゃない? って言うか、クロから貰ったら何でも喜びそうだけど」

 

「だから私じゃないって言ってるだろ……」

 

 でもまあ、言いたい事はなんとなくわかる。

 少なくとも空気読んで喜んだフリするタイプじゃないし、媚び売っても反応薄そうだよな……

 

 つーか田村さん(あいつ)、人によって印象違い過ぎないか?

 

「ごめんね、力になれなくて」

 

「いや謝られても……協力どーも」                         ┃_╹)

 

 ネモもダメか……

 こうなるといよいよ八方塞がりだな。

 あいつ交友範囲狭いからな……

 

 ……待てよ。

 ガチレズさんは田村さん(あいつ)が喜ぶ物を知りたいんだから、別に田村さん(あいつ)が好きな物じゃなくてもいいんじゃね?

 

 好きとさえ自覚してなかったような憧れや欲望。

 まだ目覚めていない女としての(サガ)歓喜(エロス)……

 

 この路線で参考になりそうな人は……

 

 あの人しかいないな。

 

 

 

 

「……大人の女性が喜びそうなプレゼント?」

 

「う、うん……な、何かそういうの知ってないかなって」

 

 No.1ホステスの貫禄十分な加藤さん(この人)なら、絶対女の喜びも知ってるだろ。

 そういう人の選んだ物なら間違いないはず……!

 

「それって、ブランド物とかそういう感じの? 私、そんなに詳しくないけど……」

 

「え? い、いや……別に高い物じゃなくても良いん……だけど……」

 

 さすがNo.1、息を吐くように高校生のレベル越えて来やがる……!

 一体何人の男を虜にしてきたんだ……?

 

「あげる相手は先輩とか?」

 

「あっ、え、えっと……と……友達に……」

 

「んー、それだったら黒木さんが選ぶのが一番なんじゃないかな」 

 

「で……で……でも……」

 

「私、これ貰ってすごく嬉しかったよ」ジャラ>

 

 それは――――私があげた三牛士キーホルダー!?                ┃皿╹)

 全部付けてくれてる……!?

 

 何この人……女神?

 

「可愛いよね、これ。気に入っちゃった」

 

「そ……そう? えへへ……」

 

「その友達もきっと、黒木さんが心を込めて選んだ物なら喜んでくれると思うよ」

 

 そうか。

 私が選んだ物なら何でもいいのか。

 だってこの人が言うんだし、間違いないよな……

 

 

 

 

「……はっ!?」

 

 しまった……ついNo.1の世界に引きずり込まれてしまった。

 

 私があげるんじゃないんだから、私が心を込めても何の意味もないんだよ!

 その説明をする間もなく完全に自我を持って行かれてしまった……あれが誘惑(テンプテーション)ってやつか。

 

 結局収穫は何もなし。これだけ歩き回ったのに……

 もう適当に私の好みで選ぶか?

 いや……ここまで来てそんな投げやりな結論は出したくない。

 

 こうなったら、徹底的に田村さん(あいつ)を見続けてやる。

 本人にバレないように遠くから生態観察して、私やガチレズさんも知らない隠された嗜好や性癖を暴いてやる……!

 

 

 

 

 登校……普通。                                 ┃_╹)

 

 授業中……普通。                                ┃_╹)

 

 昼休み――――

 

「昨日あれ見た? マツコの……」

「え? もう見てないけど」

 

 ……普通。                                   ┃_╹)

 

 放課後――――

 

「黒木さん、自販機のお釣り確認しなくていいの?」

「え……? 黒木さんジュース買ってないよね……?」

 

 ……ふ、普通。                                 ┃_╹)

 

 休日――――

 

 [今日何してた?] 

 [一日中家にいたけど]

 

 

 

 

 ダメだ、隙がない……

 なんなのあいつ、世捨て人なの?

 ここまで手掛かりがないんじゃ、もう手の打ちようがないぞ……

 

 この教室の中にこれだけたくさんの人がいるのに、誰も田村さん(あいつ)を見てない。

 まるで昔の私みたいだな……はは……

 

「黒木さん」                                   ┃_╹)

 

「あ、えっと、例の件は……」

 

「ごめんね、難しいこと頼んで。でももう大丈夫だよ」

 

「へ?」

 

「うっちーが教えてくれたの。おさげを結んでるヘアゴムがちょっと味気ないから、もっとオシャレで可愛いのを買ってあげたら喜ぶかもって」

 

 な……

 

 なんであんなに観察しまくった私より

 絵文字の方がそんな細かい所見てるんだ……!?                 ┃ー╹)

 

 

 

 


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